米国を見る目

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

全20ページ

[10] [11] [12] [13] [14] [15] [16] [17] [18] [19] [20]

[ 前のページ ]

米国では、新たな国家安全保障戦略がまとめられたり、ベーカー元国務長官、ハミルトン元下院議員が共同議長の「イラク・スタディー・グループ」(ホワイトハウスや議会に提言する組織、メンバー10人)が設立されるなど、イラン、イラクにおける政策立案が、より重要度を増しつつある。しかし、UAEのドバイ・ポーツ・ワールド(DPW)の米港湾施設管理問題同様、議会は、下院の委員会で、ブッシュ政権が反対の意向を示した(14日)法案を可決し、政府との不協和音を示している。同法案は、3月15日、「イラン自由支援法」として国際関係委員会を37対3で通過した。その目的は、イランのエネルギー開発に打撃を与えることで、同国の核開発を阻止することだと伝えられている。その内容は、イランのエネルギー産業に2000万ドル以上投資している全ての企業や国家に対し、米国の支援や融資等を禁止する経済制裁を課すというものである。これは、96年成立のイラン・リビア制裁法(ILSA、2001年8月に5年間の延長)を、イラン対応として強化したものと報じられている。
同法案は、今後上院および下院の審議で内容が検討されるが、仮にILSAと同じ目的での立法とすると、国際法的に次のような問題が生じる。第1は、WTOの政府調達協定(3条、8条)違反、第2にGATT第11条の「貿易数量の一般的制限の禁止」違反、第3は、国内法の域外適用に関する違法性である。つまり、国際社会では国連などの国際機関の拘束力ある決定以外、特定国が行う経済制裁措置に従う義務を一般的に負わないことになっている。この点から、現在もイランのエネルギー資源開発関連に深く関わっている(1)中国の石油化学公社、(2)ガスプロム(ロシア)、(3)トタル社(仏)、(4)ペトロナス社(マレーシア)、(5)ロイヤル・ダッチ・シェル社、(6)ENI社(伊)は、これまでもILSAの適用が回避されている。このように、法的解釈で係争となり得る法案を強化したとしても、その運用はかなり難しい。また、この法案成立をカードとして、ロシア・中国への外交圧力をかけようとするならば、逆効果となる可能性もある。
ブッシュ政権は、イラン核開発問題について、先般このブログでも書いたが、シャルテ大使が指摘したように「国際協調」で取組むべき姿勢を示している。しかし、米議会は国際対立の材料を自ら立案している。ブッシュ政権の支持率は、ピュー・リサーチセンターが15日発表した世論調査では、2月の40%から33%に急落している。議会は、本年11月の中間選挙を前に、「自国の安全保障」を強調する政策に賛同しがちである。同法案のまとめ役は、民主党との激戦が予想されるフロリダ選出の共和党議員である。また、ILSAの原案となったダマト法はニューヨークのユダヤ人を取り込もうとした民主党議員によるものである。このように、目先の短期的な利益、不利益に左右されることが、代表民主制の欠点であるのかもしれない。

☆「複眼で見る中東報道」(http://cigvi.exblog.jp)もご興味があればお読みいただければ幸いです。

3月8日、米国下院歳出委員会は、ドバイ・ポーツ・ワールド(UAEの国営企業、DPW)が米国の6港湾施設の管理を行うことを阻止する決議を賛成多数で可決した(賛成62、反対2)。本件は、今後、下院本会議および上院の審議を受けるが、法案通過後、ブッシュ大統領が初の拒否権を発動する可能性がある。DPWの港湾管理問題は、米国の主要6港(ニューヨーク、ニュージャージー、フィラデルフィア、ボルチモア、マイアミ、ニューオリンズ)の管理を行っていたイギリスのペニンシュラ&オリエンタル・スチーム・ナビゲーション社(P&Q)がDPWの子会社に買収されたことから始まる。本買収は、国土安全保障省、国務省、国防総省、財務省、FBIをメンバーとする米連邦外国投資委員会が承認していた。しかし、イスラエルのエルサレム・ポスト紙が、DPWの親会社に当たるドバイの港湾関税自由貿易公社がイスラエル製品のボイコット(アラブ・ボイコット)を行っていると報じたことで、米マスメディア、上下両院議員からこの問題への非難が高まった。2月26日、DPWは、議会の懸念を取り除くためとの理由で、45日間の追加審査の申請を自ら行っている。
この問題では、(1)米国の中間選挙を前に、ユダヤ人票やユダヤ系マスコミ報道、ユダヤ系企業による選挙資金に考慮た議員の動き、(2)ブッシュ政権を一日も早くレーム・ダックにしたいとの考えからの行動等の国内政治要員が絡んで、議論がより複雑になっている。DPWの港湾管理への反対理由は、(1)UAEが9.11テロの実行犯の中にUAEの出身者がいたこと、(2)アルカイダのマネー・ロンダリングの拠点のひとつであること、(3)核兵器開発疑惑のカーン博士のネットワークの拠点であったこと等、UAEという国家への不信感が挙げられている。また、港湾に限らず、安全保障上重要な施設が外国資本に管理されることを問題視している人々もいる。これらに対し、米国の港の8割が現状、外国資本によって管理されており、何故UAEの企業ではだめなのかという意見が聞かれる。また、テロの危険について、ある調査では港に荷を持ち込むトラック運転手、9000人中4000人に犯罪歴があり、また500人は偽造運転免許を使用していた結果があり、港の管理だけではテロの防止はできない、という声もある。2月21日ブッシュ大統領は、「この買収を認めなければ世界中に間違ったサインを送ることになる」と述べている。一部のマスメディアでも、“米国が中東の企業に対し別基準を適用しようとしている”、“中東に対する強い偏見がある”と、中東の人々に認識を与えることを懸念している。米国の政府高官は、9.11以降、米国とUAEはテロ対策上、強力な友好的パートナー関係にあると述べている。また、ある安全保障問題の専門家は、「米国土の安全を守るには、米国の港に到着してからでは遅い。不審者がいると思われる現地関係国の協力があって初めて、安全保障体制がつくれるのである」と述べている。
米国だけではないが、国内政治に目を取られすぎると、危機管理の本質すら見失うこともあるようだ。

☆「複眼で見る中東報道」(http://cigvi.exblog.jp)の最新テーマは、「イラク:地域コミュニティーの回復が急務」です。ご興味があれば、お読みいただければ幸いです。

米国の対中国政策

明日、中国で第10回全国人民代表大会が開催される。今回は年率8%前後の経済成長を目標とする第11次五カ年計画が採択される。先般、米国防総合大学の中国アナリストであるサンダース博士とフロスト博士の話を聞く機会があった。両氏とも中国の将来は不確実性が高いと指摘した上で、米中関係は友好的であるとの評価を行った。日本では、米中関係が対立しているという前提で見る傾向がある(そうあって欲しいとの願望か?)。しかし、両博士や米国のチャイナ・ロビー、ロッキードをはじめとする米国企業の対中国認識は、どうも“対立”というものではない。
サンダース博士は中国の現状について、「急速な変化に共産党や社会が追いついていない。その中でナショナリズムの台頭が見られている」と指摘した。また、雇用、経済格差、環境、腐敗等の課題が表面化しており、人々の社会不満を経済成長によって解消してきたが、今後もそのような対応で切り抜けられるか「不確実」であるとの認識を示した。同氏によると、2005年だけで7万5000件(10名以上)のデモが起きているとのことである。
また、フロスト博士は「非対称」との表現を使い、アジア諸国が中国経済に依存しつつあるが、中国はそれに冷淡であると指摘した。日本が国連常任理事国入りを目指しても、賛同してくれたのはシンガポールのみであったのは、アジアのこの中国依存体質があるからだと述べた。そして、同氏は「中国は日本を周辺に追いやる方向で行動している」とも付け加えた。
両博士の中国分析は日本でも同様の分析がなされており、そう目新しいものではない。むしろ注目される点は、両博士が中国を国際的枠組みに参加させることで民主化や望ましい国家になるという「関与論」に立っているということである。今日マスメディアで取り上げられている対中国へのヘッジ戦略は、このような関与論が効果的に機能しなかった場合のバックアップ戦略であり、中国の行動に対する警戒ラインを示しているもので、決して敵対意識を示しているものではないことが窺い知れた。
米国は1999年、米国広報庁(USIA)を廃止し、国務省に統合している。このため、米国の政策について外国の人々への情報発信が必ずしも上手くいっていない。両博士の中国への好意的評価とは逆に、日本のメディアでの米中対立を描く誤認もそのような状況から生れているのだろう。中国問題に関して日米間での不信感を生まないためにも、日本は米国の対中国政策について幅広い情報収集と客観的分析をもっと行う必要があるのかもしれない。

☆「複眼で見る中東情勢」(http://cigvi.exblog.jp)の最新テーマは「対立解決のカギの一つ:イラクの民兵解体」です。ご興味があれば、お読みいただければ幸いです。

国際協力や国際秩序形成を考えるとき、”誰が、誰と”という主体が問題となる。本年のブッシュ政権の一般教書演説には「われわれは世界の圧制の終焉を目指す」との文言があり、シリア、イラン、北朝鮮(非民主国家)等にすむ人々への自由を拡大する旨が語られている。
冷戦の崩壊後、グローバル化する国際社会での新しい秩序づくりの模索は続いており、意見の違いを確認しあう作業すらまだできていない。その中で、仮に米国が米国と価値観を共有する仲間を集め、国際公共性を形成することになれば、そこに新たな対立の構図ができあがることになろう。これは国際社会にとって危険な状況といえる。秩序未形成の不安定な国際情勢の中、米国が排他的にならず、民主化や自由の拡大、エネルギー問題(新エネルギー開発)など様々な分野で、他国と意見のせめぎあいをしつつ開かれた協力体制を構築することが、国際社会にとっては望ましい。
こうした理想から見れば、今回のブッシュ大統領の一般教書演説は、対立を深め、民主化・自由化を押しつけるものであるとの批判があちこちから上るだろう。しかし、国際社会の一部で、自分のものさしを持たず、”画一的、幻想的な共同体”が形成されているようにも思う。そして、そこに”悪の凡庸さ”が巣くいつつあるようだ。今回の演説で名指しされたビンラディン、ザルカウィは、もしかするとこうした実例といえるのかもしれない。この立ち位置から見れば、ブッシュ氏の演説は、”米国民の安全・安心を守る”との誓約をした人物としては、現実的な対応策をまとめあげているとの評価もできる。つまり、米国政府は、国際公共性を生成する上で欠かせない役割を演じるのだが、実態は他国同様、国民国家の国益に強く縛られた存在である。近年、国益を前面に出しつつある中国やロシアが、このブッシュ大統領の演説で、さらに国益追求の機会をつかもうとするだろう。こうして、国際社会の”見せかけの協調”は綻びを見せていくのだろう。

全20ページ

[10] [11] [12] [13] [14] [15] [16] [17] [18] [19] [20]

[ 前のページ ]


.
cigvi2006
cigvi2006
非公開 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

過去の記事一覧

検索 検索

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

ふるさと納税サイト『さとふる』
実質2000円で特産品がお手元に
11/30までキャンペーン実施中!
ふるさと納税サイト『さとふる』
お米、お肉などの好きなお礼品を選べる
毎日人気ランキング更新中!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事