米国を見る目

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オバマ米大統領は11月14日、シンガポールでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)出席を前にして、都内で米国のアジア政策について演説した。その内容は、4月のチェコのプラハ(「核兵器なき世界」を提唱)、6月のエジプトのカイロ(「イスラム世界との融和」を提唱)、7月のガーナのアクラ(「アメリカの将来」について)といった一連の演説に続くものとしては新鮮さに欠けていたように思う。

APECの地域空間は、EUの地域空間とは異なり、宗教、政治・経済体制・構造が多様性に富んでおり、国家間の結びつきも緩やかなものとなっている。こうした枠組み作りに代表される多元的、「東洋的」世界認識は、米国にとって把握し難い面があるかもしれない。
オバマ大統領が今回の演説で語った内容は、多くが日米、米中などの二国間問題や、環境、核開発、国際テロなど地球規模問題についてであった。それらは、「今、東京で」「APECを前にして」語らねばならない必然性がなかったように思う。観点を変えてみれば、アジア地域の問題は包括的に語ることができないほど1つ1つの問題が世界に与える影響が大きくなっているともいえるだろう。

緩やかな結びつきであるAPECは、12月1日にリスボン条約が発効するEUに比して、外交、安全保障分野での問題解決能力がほとんど備わっていない。例えば、オバマ大統領が演説で言及したイランや北朝鮮の核問題、アフガニスタン、パキスタンへの支援などでの組織的取り組みはあまり有効に機能していない。その一方で、オバマ大統領も存在の重要性に触れた中国の果たす役割が、この地域で突出するようになってきた。

オバマ大統領は今回の演説で、日米同盟(二国間協定)を新たなものにすると語った。また、中国とは戦略・経済対話を深めると述べている。これらの言葉からは、アジア地域での中国の役割の大きさを認めつつ、米中の価値観の違いから生じる対立のリスクマネジメントとして日本との関係を考えているように読み取れる。
オバマ大統領は、抹茶アイスクリームがお気に入りの知日家を演出した。しかし、同大統領が冷静な戦略家であることは間違いない。

米国の対アフガン政策

11月13日午後、オバマ米大統領が訪日した。今回の日本滞在期間はほぼ1日である。日程としては、13日に鳩山首相との会談、共同記者会見、14日にアジア政策演説、天皇・皇后両陛下との昼食会の後にAPEC首脳会議出席のためシンガポールに出発する。そして、引き続き中国(3日)、韓国(1日)とアジアを歴訪する。注目点は、14日のアジア政策演説と17日の米中首脳会談だと報じられている。ハードなスケジュールの中で、まず日本を訪問し、アジア政策を発表するとの米国側の配慮に対しては日本人として感謝すべきだろう。

そのオバマ大統領に対し、日米共同記者会見において「米国のアフガニスタン政策」に関する質問があった。この問題が米国の現在の政策課題の中でいかに大きなウェイトを占めているかがわかる。

このアフガニスタン政策では、オバマ政権内で不協和音が聞かれているとの報道がある。例えば、元駐アフガニスタン連合軍の司令官であったアイケンベリー駐アフガニスタン大使は、同国への増派はカルザイ政権の改革姿勢を見極めた上で検討すべきとしている。一方、現司令官のマクリスタル氏は1万から4万人の増派を希望している。
両者の観点の相違は、現状認識と近未来のアフガニスタンについてどのようなイメージを抱いていたかの違いの現れであるように思う。私は、近未来、軍事力によるタリバンやアルカイダの完全鎮圧ができず、アフガニスタン治安部隊の育成も十分進まない状況になる蓋然性は高いと考える。

かつて、カルザイが大統領に初めて選出された時、部族長をまとめるためにザーヒル・シャーに動いてもらうことを試みようとした人々がいたことを思い出す。今回、米国はカルザイを後押ししたことで選択肢を狭めている。アフガニスタンの国民和解の観点で政策を考えていけばより幅広い選択肢が見えてくるのではないだろうか。今後もカルザイを大統領として支援していくのであれば、その正当性を高めるために、かつてのようにロヤ・ジルガの開催も検討すべきである。
11月6日、ある大学の講義で、米国テキサス州のフォートフッド米陸軍基地での銃乱射事件が、現在、中東地域のイラクやアフガニスタンの空間で起きている戦闘と関係がないことを望むと学生たちに語った。
しかし、その後ニュースを見て、イスラム社会空間の反米、反イスラエル感情の連帯意識がより広範に、より強くなりつつあると直感した。

容疑者のダル・マリク・ハサン(39歳の陸軍少佐、精神科医)は、パレスチナ移民を両親に持つイスラム教徒である。ハサン容疑者は2丁の短銃で「アラー・アクバル」(アラーは偉大なり)と叫びながら100発以上を乱射し、13人を殺害、38人を負傷させた。同容疑者はこの犯行を前に身辺を整理しており、決意の上での犯行と見られているが、動機はまだ判明していない(現在、容疑者は撃たれて昏睡状態にある)。

米国の報道では、ハサン容疑者が近くアフガニスタンに派遣されることについて悩んでいたという点が強調され、個人が精神的問題を抱えていたのではとの見方が出ている。一方、AP通信などは同容疑者が半年前にインターネットに自爆テロなどに関する投稿をしていたと報じている。

今回の事件と直接関係があるわけではないが、10月28日には、FBIのテロ対策部隊がミシガン州でイスラム教徒11人を武器の不法所持や暴力行為に関与したとして摘発している(1名死亡、3人が逃亡中)。CNNの報道では、同グループは米国内でイスラム法に基づく国家を建設することを目指していたとのことである。
また、パレスチナの地では、第3次インティファーダ(反イスラエル抵抗運動)を求める声が強まっている。

ハサン容疑者は職場で、米国によるイラク、アフガニスタンへの国際介入問題について同僚の兵士と言い争いになっていたと報じられている。このような論争をするハサン容疑者が感じていたのと同様の「やるせなさ」が中東地域の空間を蓋い、反米、反イスラエルの意識連帯が強まっているように思う。
11月1日、中東地域では前途多難を予感させる状況が生れている。1つはアフガニスタン大統領選挙の決選投票へのアブドラ氏の不参加表明、2つ目は中東和平問題でのイスラエルの占領地での入植活動の継続が明らかになったことである。

アフガニスタンでは、10月の米兵の死者数が59人となり、2001年の米軍の介入以来最悪となった(それまでは今年8月の51人)。2009年は既に281人に達している(昨年は155人)。さらに、スタンリー・マクリスタル駐アフガニスタン米軍司令官が4万人の増派要請を行っているが、オバマ政権は1万程度の増派とするのではないかとの報道がある。
また、政治的にも選挙管理委員会はカルザイ氏の大統領当選を発表したが、市民の中には不満の燃えが根強く残っている。カルザイ政権が国民対話に今後どれだけ真剣に取り組めるのか、課題は多い。
どうもオバマ政権は、アフガニスタンの出口戦略で大きな壁にぶつかっているように見える。

同様に、イスラエルとパレスチナとの中東和平交渉での両者の溝を埋められず、壁にぶつかっている。その打開のために、米国がミッチェル特使を度々派遣して仲介工作を試みているが、成果は上がっていない。
その原因はイスラエルのネタニヤフ政権の強硬姿勢にある。中東を歴訪したクリントン国務長官が10月31日にイスラエルを訪問し、ネタニヤフ首相と会談した。その中で、クリントン長官は従来の入植活動の全面凍結を求める姿勢を変更し、部分的凍結を良しとする発言を行った。
こうした米国の政策変更に対し、パレスチナ自治政府関係者は「和平交渉再開の機会を破壊した」と語っている(11月2日、アルジャジーラ・テレビ)。
イスラエルの入植活動については国連や国際司法裁判所も停止を求めている。アラブ側にはオバマ政権がその原則を覆そうとしていると映っただろう。

オバマ大統領が本年、トルコ、カイロで行った演説はイスラム教徒との融和の呼びかけであった。それは、前ブッシュ政権が悪化させた中東地域での米国イメージの回復に前向きに強めている事をアピールするものであった。しかし、アフガニスタンでのカルザイ氏への支持、中東和平でのイスラエル寄りの政策の継続によって、中東の人々に「変らぬ米国」を印象付けることになったのではと危惧される。
8月12日付ウォールストリート・ジャーナルは、米国の景気後退の終了時期について、米金融機関のエコノミストにアンケート調査を行った結果を掲載した。その結果、回答者47人中84%が、本年9月(第3四半期)までに景気後退は終了するとした。同日の株式市場もダウ工業株30種平均で120ドルも上昇した。

米国のメディアでは、連邦準備理事会(FRB)が米国経済の最悪期を脱したとの認識が紹介されている。また、FRBのバーナンキ議長もインフレ圧力を配慮しながら、長期国債の買い切り制度は9月末までと明言した。これで、FRBは政府の財政の穴埋め役を止めることになる。しかし、米政府の財政赤字は2008年10月からの09年会計年度で10ヶ月間赤字が続いており、その額は累計で2669億5800万ドル(約121兆6300億円)となっている。果たして米国経済の行方はどうなるのだろうか。

FRBは失業率が天井を打つのは来年半ば頃と見ており、それまでは事実上のゼロ金利政策をとると分析されている。家計の支出はまだまだ抑えられており、税収の回復も遅れている。米国の財政悪化は米ドルの信頼失墜にも結びつくものであり、オバマ政権は在任中に財政赤字を半分にするとの公約実現にこれまで以上に注力せねばならない状況である。したがって、オバマ政権にとって、イラクからの米軍の撤退、アフガニスタンでの軍事費の削減は第一の課題である。その次に、厳しい批判を受けている医療保険制度改革が重要課題となる。

おそらく、夏休み明けの秋が、日米ともに時代の分岐点となるのではないだろうか。

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