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公共選択理論で有名なノーベル賞受賞者ジェームズ・ブキャナン教授は、多様な価値を有する国民が行う社会の基本ルール(憲法や税制改革など)の選択は「数の問題(多数決)」ではなく「価値の問題」であると述べている。したがって、その選択は、全員一致に近い仕方で行われるべきだとしている。 |
社会・文化
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長らくブログをお休みしていたことをお詫びします。 |
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7月11日の第22回参議院選挙で民主党が大敗し、自民党とみんなの党が大幅に議席を増やした。これにより、民主党が多数を占める衆議院で議案の可決ができたとしても、参議院で否決される可能性が高くなったため、菅政権はより難しい国会運営を迫られることになった。
それを見越してか、フィナンシャル・タイムズ(電子版)は、「選挙の敗北で財政赤字削減の取り組みが一段と遅れる恐れがある」と報じている。また、ロサンゼルス・タイムズ(電子版)も同様に、「国家の課題に対処する能力が低下する」と指摘している。
日本人の中にも、このような欧米メディアの指摘と同様の懸念を抱いている人は多いだろう。
このような指摘が出てくる原因は何だろうか。
それは、今回の選挙においても、財政再建、拡大する福祉費への対策、普天間問題、政治と金の問題などの解決策について、数値化して具体的に示すことができていないからである。
こう書くと、各政党関係者から「わが党のマニフェストに書いてある」とか、演説で説明していると反論されるかもしれない。
しかし、果たしてそれは政策形成における合理性、実証性が高いものだろうか。根拠となる情報を開示していただろうか。そして、市民への周知は十分だったと胸を張ることができるだろうか。
例えば、以前本ブログでも書いたが、財政問題について2月に財務省が公表した3年後の財政赤字見通しは55兆3000億円である(本年度44兆3000億円)。そして、今後3年間、財政問題を先送りすると、消費税にして約4%以上の値上げを必要とする状況になる(消費税1%で2兆2000億円の税収として計算)。
今回の選挙において、この数値について、有権者はどれだけ認識、意識していただろうか。
日本が財政再建について手続き論に終始していることは、海外の政治指導者やビジネスマンの目にどのように映っているだろうか。その結果、日本への投資や関心が薄れることへの懸念はないだろうか。
選挙が終わった今、国会議員がすべきことは、選挙への悪影響を恐れて語れなかったり、ぶれたりした財政再建問題について市民に語ることである。
特に、各省ベースでの来年度の予算編成期である現在、必要不可欠なことである。
少なくとも民主党政権は、来年度予算編成の正当性を得るために、年末まで十分に時間をかけて今後の政策に関する説明責任を果たす必要がある。それは、今回の選挙結果によって、有権者は民主党のこの9ヶ月間の政策実施および現在のマニフェストに対して、レッドに近いイエローカードを出したと言えるからである。
そして、サッカーならもう1枚イエローカードが出るまで余裕があるところだが、政治は国民生活に直結している。したがって、来年度予算の成立をもって衆議院を解散することを与野党で合意した上で、来年1月からの通常国会で十分議論を尽くし、民意の評価を受けるべきであろう。
その際の衆議院選挙では、「日本再生政策」を争点として、各党が実現可能な政策を公表、公議することが望まれる。
こうしたシナリオでも、来年4月の解散まで8ヶ月、新政権が新生日本の予算を執行できるまでにはそれから1年、その効果が出てくるまでに数年という時間がかかる。
先のG20首脳会議において、参加国は2013年までに財政赤字を半減することで合意した。幸か不幸か、このG20の合意に日本は縛られることを免れている。
しかし、そろそろ日本国民も「くれくれ病」から脱して、一人ひとりが自立性を高め、地方主権へと大きく舵を切るべき時である。日本再生のためのタイムリミットは近いのではないだろうか。
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過日、全国の私立学校の経営関係者が集まる会合で講師を務める機会を得た。そこでの中心の話題は、私学の経営の厳しさについてであった。
例えば、こども(0〜14歳)の人口は1950年には2943万人であったが、2009年には1701万1000人に減少している。この影響により、調査に回答した私立高等学校法人647校中333校が収入で支出を賄えない状況になっている(全法人数は717校、日本私立学校振興・共済事業団調べ)。
収入源の授業料はといえば、1995年では年間で平均11万3155円であったものが、2009年には35万4505円と3倍以上になっている。
こうした状況であるため、国や地方自治体は私学への助成措置を取っている。私立の幼稚園から高等学校までの助成総額は6491億円である。生徒一人当たりにすると、高校で年間30万6142円、中学で29万8872円、小学校で29万7216円、幼稚園で16万9387円となる。
この助成に加え、公立高校の授業料の不徴収措置が取られることになったため、私立高校への助成の充実が図られることになった(1人当たり約12万円)。
こうした教育支援とは別に、今年4月から「こども手当」の支給がなされることになり、日本政府は「子ども、子育て新システム検討会」(2010年4月に第1回会議開催)のもとで、「こどもを社会全体で育てる政策」の実施を開始している。
この政策は、私学への助成だけを見ても分かるように、大きなコストがかかる政策である。しかし、それだけでなく、「親がこどもに教育を受けさせる義務がある」との考えで制度設計されている現行の義務教育制度に歪みが生じる可能性のある政策でもある。
現政権が始めた政策は、こうした大きな教育理念の変更がともなうものであるとの認識を、大人の側も、こどもたちの側も持っていないのが実情ではないだろうか。
民主党の政権基盤は連合や日教組などの組合組織である。同政権が社会福祉政策を重視することはある程度理解できる。
しかし、「こども手当」は所得制限なしで、しかも銀行振り込みで現金が支給されるところが多い。これでは、こどもが教育を受けるためという本来の目的が薄れてしまう恐れさえある。
この政策に果たして妥当性があるのかどうか、時間をかけて公論する必要があるだろう。
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6月4日、菅直人氏が第94代、61人目の首相に選出された。
菅氏は民主党の代表選挙において、鳩山氏から引き継いだ政策として、日米、日中、日韓の外交関係、地方主権問題、地球温暖化問題、新しい公共を紹介した。いずれも問題を明確化するには、従来の方法をとっていては難しいものばかりである。また、代表選で自身の目標として語った、日本の財政、経済、福祉を強くするという政策も、同様に難しい。
しかし、政策形成においては、「問題をチャンスに変える」という言葉がよく使われる。これは、問題を創造的に定義し直すことで、選択肢を多く見出し、チャンスにつなげるということである。
その際、初めの情報で作られた問題のイメージは強く働き、それを払拭することが難しいものであることを認識しておくことが大切である。そのことを意識して柔軟に政策選択を行わねばならない。
さらに、選択に当たっては①制約条件、②各選択の結果による影響、③実施コスト(シャドー・コストを含む)、④他の政策とのバランスなどを考慮する必要がある。
菅氏が挙げた上記のような問題群については、問題解決に向けて優先順位をつける必要もある。
さて、政策が成功するか失敗するかは、政治家、官僚、利益団体の資質やパフォーマンスにかかっていると考えられている。しかし、意外にも経済要因の影響も大きいとの研究がある(米国のA・グレーザ博士、L・S・ローゼンバーグ博士による)。
そうだとすれば、鳩山氏から引き継いだ問題群の実施に取り組むより先に、マクロ経済や、富の再分配、規制緩和などの改善に力を注ぐべきだろう。
そして、ボトムアップにより地方主権に道を開く努力も必要である。
明治元年3月につくられた五箇条の御誓文の中に、「広く会議を興し、万機公論に決すべし」(1条)、「上下心を一にして、さかんに経綸を行うべし」(2条)という条文がある。
ここで、同御誓文を持ち出すことに違和感を覚える人もいるだろうが、これは国の改革にあたり、政権指導者(当時は天皇)が先頭になり万民が心を合わせて臨むよう、まとめられたものである。これは、戦後復興のスタートとなる昭和天皇の人間宣言においても引用された。
日本の大きな変革期につくられ、引用されたこの文書は、日本が封建制社会から民主主義の近代国家へと変革するという目的達成のための目標事項であったともいえる。
現在の日本社会ではふさわしくない箇所もあるが、変革期の日本人が考え抜いて生み出したものとしてみれば、そこには、既存の制度を大きく変え、「失われた20年」に終止符を打つためのヒントを見出せるのではないだろうか。
第3条には、「旧来の陋習を破り」とある。
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