安全保障問題

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ロンドンの同時テロ事件(7月7日)からまもなく1年が経つ。昨年9月にロンドンを訪れた際には、表面的には、街には落ち着きが戻っているかに見えた。イギリスでは、この1年間に、ロンドンの地下鉄の監視カメラを倍増し(1万2000台)、国家保安部(MI5)の捜査対象(潜在的なテロリストとしてマーク)は、1200名へと増加した(2001年250名、2004年7月800名)。そして、同国でのテロ発生のリスクは依然として高いと言われている。マーク・セジマン博士(「テロネットワークの解明」の著者)は、欧州でイスラム過激派が生れる理由について、欧州人と見なされる人々と外国人と見なされる人々の区別が日常社会にあることを指摘している。そこで、欧州のイスラム教徒のアイデンティティについて少し考えてみたい。
7月1日、アフガニスタンのヘルマンド州で英軍兵士ハシュミ氏(24歳)が戦死した。彼はパキスタンからの移民(12歳のときに家族とともに移住)で、イラクとアフガニスタンでの“テロとの戦い”における最初のイギリス人ムスリムの兵士となった。彼はムスリムとパキスタン系イギリス人の両方のアイデンティティに誇りを持ち、そのユニークな立場ゆえに、文化の相互理解の架け橋となれると考えていたという(7月4日付インデペンデント紙電子版)。
一方、英国ムスリム協会のグラワラ氏は、新聞のインタビューで、テロなどの暴力行為は論外であるとしながらも、イギリスのムスリムの若者層には、イラク戦争など今のイギリスの外交政策に対し、もっとイスラム社会として強硬に立ち向かうべきだとの意見を持つ者もいると指摘した(7月4日付読売新聞)。本年2月のムハンマドの風刺漫画への、ロンドンでの2万人に及ぶ抗議デモは、そうした若者たちの不満が表面化したものとも考えられる。アフガニスタンで戦死したハシュミ氏とは異なり、彼らは、市民権を持っている国の人間としてのアイデンティティも希薄で、家族の出身国の人間としてのアイデンティティも持てないでいる。
このような人々の中には、サイバー空間でのイスラム共同体(ウンマ)に共感し、ムスリムとしてのアイデンティティに落ち着き先を見出している者もいる。そのようなウェッブサイトの中には4500以上と言われるイスラム過激派のサイトがあり、そこではテロ攻撃のノウハウや目標案内まで紹介されているという。摘発されているテロの未遂計画の中には、このようなサイトから学び、テロを準備していたグループも見られている。これらのグループは、アルカイダとの明確な接点は見出せないが、アルカイダの主張に賛同し自発的にテロを計画していると分析されている。こうした状況の中、ブレア政権は、新しい反テロ法を制定したが、テロリスト・グループの国外追放や入国制限強化は、議会の抵抗もあり、導入できていない。欧州では、ハシュミ氏の例に見られるように、これまでの移民と統合への政策協調が良い結果を生んできた。しかし、グラワラ氏が指摘するように、一部の若いムスリム移民たちには、従来の統合モデルは機能しないケースが増えてきているようだ。欧州人とは何かという根底的な部分を問うべき時かもしれない。

民主党を「戦う集団に変えていく」を目標に、昨年9月に党首に就いた前原氏が昨日辞任した。同党が偽造メール問題での危機管理能力のなさから国民の信頼を失ったことは、代表民主制において決定的失策である。しかし、この退任する前原体制は代表民主制にとって何も意味のなかったものなのだろうか。
一般のメディアでは、前原氏の外交・安全保障政策について、自民党とどこが違うのか、これでは二大政党とは程遠いとの指摘がしばしば見られた。しかし、自由主義対社会主義といったイデオロギー対立が終焉した今日、国のあり方の基本認識の共通性が高まり、むしろ目的の実現方法に差が生じている。米国やイギリスにおける二大政党制においても、この点は同様であろう。仮に、北朝鮮の核開発や中国の二桁成長の軍事費を両国の自衛問題としてのみ捉え、危機管理を怠ったとすると、国民の生命、財産等の安全安心を守る国家の役割を果たせているといえるのだろうか。やはり、安全保障は現在の東アジアの情勢を鑑みると、日本としても共通認識を高める必要があるのではないだろうか。
先般、前原氏の安全保障に関する認識を直接お聞きする機会を得た。そのポイントは、(1)平和主義の堅持、(2)シビアンコントロールの重視、(3)国連憲章51条に謳われている、安保理が必要処置をとるまでの間の個別的または集団的自衛権の行使の承認、(4)安全保障基本法の立法化であった。以上の点では(4)を除き、多くの日本人が共通認識を持っていると言えるのではないだろうか。
同氏の論の特色としては、第一に、日米安全保障の再定義の必要性を指摘していることである。この問題について、1996年に橋本首相のもとで一度再定義がなされている。しかし前原氏は、反テロ戦争の中でブッシュ・ドクトリンが表明され、日米同盟の役割が拡大しつつあるのではないかと懸念を示し、これを改善するためには、日米安保をアジア太平洋地域の公共財として、その役割を限定化すべきだとの持論を述べている。第二に、集団的自衛権の行使は、日本の安全保障に関係する時(周辺有事)のみとするとして、ここでも歯止めをかけるべきとしている。そして第三に、国際貢献における自衛隊派遣については、憲法の前文の「国際社会における名誉ある地位を占めたい」との考えに基づいて、国連決議を必要条件として、自らの選択に基づいて派遣すべきであると述べた。ただし、武器使用の基準については改正すべきであるとした。
現在の日本では、マニフェスト選挙とは呼ばれているが、まだ政党が背後にある様々な利益団体との関係から政策をつくり、国民がそれを選択するという形で留まっている。そして、国民は上から与えられた選択肢に自分を合せるしかなく、政策形成の議論に自主的に参加する機会は乏しい。このため、政治に無関心となる人も増えている。このような中、前原氏が語った安全保障論は、単に自民党との政策対立にこだわるものではなく、広く国民が脅威とは何か、安全保障とは何かを議論する機会を提供したのではないだろうか。今日の日本には、民主主義とは、一部の政治エリートが国民の付帯を受けて最大多数の最大幸福を実現するものだと考える古い政治体質がある。現在までの議論なき国会の状態から、現実的な国民参加型の政策議論が何故できないのかを検証できれば、日本の代表民主制を少しでも深化させられるのだが。

☆「複眼で見る中東報道」(http://cigvi.exblog.jp)もお読みいただければ幸いです。

国際協力とPTSD

各国のイラク派遣隊の中で、帰国後PTSD(心的外傷後ストレス障害)となり、職場復帰ができない人や、その後、職場や生活環境の変化が加わり、過度のストレスから自殺にはしる人が見られていると報じられている。PTSDは神経学者シャルコー(フランス)のヒステリー研究により、外傷的な出来事と情動反応の関係が着目され、戦闘ショック、家庭内暴力、性的暴力などの分野で、精神障害としての治療が進められ、今日に至っている。日本でも、阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件によって広く知られるようになり、その後、事故・事件後にクラッシュ・マネジメントとして、トーク・セラピーによる治療体制がとられるようになりつつある。また今日、スマトラ沖津波やパキスタン大地震等の国際的な人道支援活動が自衛隊やNPOにより展開される中においても、軽度のPTSDが見られたとの報告があり、国際協力の場においても支援者の帰国後のケアー体制のあり方が検討されている。
このようにPTSDは、人間が大きな衝撃に対し、精神機能の一部を一時的に麻痺させることで現状に適応させるが、そのまま麻痺の回復が遅れ、精神統合性が失われる状態である。このような衝撃を体験するケースが多く見られるのが戦争である。これが戦闘神経症で、不眠、悪夢、不安、頭痛等を引き起こし、関心の減退や未来像の喪失にまで及び、治療を受ける兵士が多い。米軍では、訓練により危機対応能力を高めている他、派遣兵士の精神調査に加え、社会復帰に当たるストレス解消期間、さらに復員兵士を受け入れる社会に対し、PTSDをはじめ兵士が抱える諸問題の情報の共有と告知を行っている。それでも米陸軍では、10万人当り11.9人の自殺(イラク戦争経験者では15.6人)が出ていると報じられている。その実態は、映画「ジャーヘッド」でも垣間見られている。
近年、自衛隊は、1991年の雲仙普賢岳噴火災害派遣、92年カンボジアPKO派遣等、初期の国土防衛治安維持に加え、災害出動、国際緊急援助活動、国際平和維持活動等の役割を拡大している。その中で、PTSDに対する認識も高まり、昔の軍のように“臆病者”として処遇されることはない。今回のイラク派遣でも危機対応への訓練を重ね、定期的診療体制も整えられるまでになった。しかしそれでも、残念なことに、イラク派遣隊員の中に帰国後、自殺者(3人)がでている。日本人が国際社会で行動範囲を広げることで、事件や災害に巻き込まれたり、また組織的にも人道援助活動、平和構築等その活動を広げることで、海外で活動する人が増加している。こうした人々が、危機管理学や問題解決心理学を初めとする実践的な国際協力学を身に付けられるような体制を構築する必要がある。また、社会はPTSDに対する認識と治療への理解を深ことがクラッシュ・マネジメントの一つといえるだろう。

☆「複眼で見る中東報道」(http://cigvi.exblog.jp)の最新テーマは「トルコはイランと国際社会の仲人になれるか」です。ご興味があればお読みいただければ幸いです。

国際獣疫事務局(OIC)がナイジェリアでアフリカにおける初のH5N1型鳥インフルエンザの感染を確認と報じられた(2月8日付ロイター)。13日に国連の専門家たちがナイジェリアに入ったが、同国政府の対応の遅れもあって、急激な拡大の恐れが高まっているという。アフリカでの鳥インフルエンザ問題は同地域での資源争奪競争等とも絡んで、今後、世界的なインパクトを与えることが懸念される。
鳥インフルエンザは(1)予知困難、(2)阻止困難、(3)侵入不可避等から、危機管理の上で”大変な難問”だといわれている。アフリカ地域は既に、エイズや他の感染症の広がりという難題を抱えており、世界保健機構(WHO)は同地域でのH5N1型の確認とその拡大阻止の難しさに危機感を強めている。感染症対策としては、公衆衛生的な観点からの患畜等の処分、発生周辺での移動制限(社会活動の制限)、基本的な感染予防(うがい、手洗い、マスク等)の徹底等、また患者の隔離、接触者調査等を迅速に行うことが重要となる。東南アジア等では、これらの対応計画作成、封じ込め、医療情報提供が発生国を中心に国際協力の下で推進されている。
今回発生が確認されたナイジェリアでは、1987年にも感染症で年間推定5000人の死者が出ている。1億3300万以上の人口を有する同国は、約250部族で構成されているといわれており、オバサンジョ大統領(2003年4月再選)が国土全体を掌握するのはきわめて難しい環境にある。また、抗ウィルス剤の備蓄も乏しい。
OPEC加盟国であり250万B/Dの生産能力をもつ同国の国内問題は、これまでも、米国の先物市場に影響を与えてきた(米国の原油8.9%を供給)。近年、中国がナイジェリアの石油産業に進出しており(油田開発、精製施設の権利取得)、鳥インフルエンザ対策を進めている同国がアフリカへの協力を推進すると思われる。しかし、特にアフリカでの鳥インフルエンザ問題は、感染爆発の恐れはもちろんのこと、エネルギー等多分野への深刻な影響も考慮して、早急な危機管理の国際協力体制構築が求められている。危機管理においては初動の遅れが取り返しのつかない状況を生むことが多いのである。
それにしても、ニューヨークの観測史上初の大雪といい、大自然を相手の危機管理は殊に難しいと痛感している人は多いに違いない。

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大量破壊兵器拡散問題

本日、ロバートJ・アインホーン氏(米国の戦略・国際問題研究所上級顧問、元不拡散問題担当国務次官補)他から、大量破壊兵器(WMD)問題についての話を聞いた。
この問題では、2005年4月安保理において全ての国がWMDの拡散を犯罪として、輸出規制、核物質保護強化を行うよう義務付けた決議1540号が採択されている(史上2度目の国連憲章第7章にもとづくもの)。また、WMDの運搬阻止、資金支援の停止等からも「拡散に関する安全保障構想」(PST)が発表され、70カ国以上の支持を得て国際協調下でこの問題に取組んでいる現状が報告された。今後の課題としては、科学・技術の進歩や科学者・技術者の移動等WMDに関わる環境変化は速く、既存の国際法や制度では抜け道ができてしまうこと、特に、非国家(組織や個人)の活動の拡大で、新たな規範作りが必要な状況にあるとの報告もあった。そして、その対応は現状の法や制度を踏まえ、今日的テーマを鑑みた上で国際社会の枠組みを生成する方向で検討すべきとの意見があった。この意見は、国際社会学的観点でウィリッヒ・ベックが唱える再帰主義を想起させるものである。
さて、「今日的テーマ」といえば、やはりイランと北朝鮮の核開発の野心であり、これにいかに対応するかである。ロバート氏は、イラン問題において、ハタミ政権時より脅威度は高まっているものの米国の対イラン武力行使の蓋然性は低いと言及した。その上で、イランに対し米国は、「アメとムチ」の政策をとる。その際、イラン関係正常化といった政権存続の保証や、核兵器開発停止の何らかのメリットを示すことも米国の政策として考慮に入れるべきと述べた。また、北朝鮮問題でも現政権の米国との共存を明確に伝えるべきであるとの意見もあった。
両国の核開発問題の進展によっては、国際社会での拡散の転換点となる恐れがある。国際社会は協調の下でこの二カ国への対応をしていかねばならないことを改めて確認した。

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