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6月2日、韓国で統一地方選挙が実施され、与党のハンナラ党が敗れた。韓国のマスメディアで「有権者革命」という表現が使われたことに象徴されるように、李政権への厳しい評価となった。
一方、北朝鮮では6月7日、最高人民会議12期第3回会議において大きな人事異動があった。その第1のポイントは、金正日総書記(国防委員長兼務)の妹の夫である張成沢氏が国防委員副委員長と成ったことである。また、金英逸首相をはじめ、郭範基、呉秀容、朴明善の3名の副首相が解任され、崔永林氏(平壌市党責任書記)が首相に任命された。
鳩山政権から菅政権への交替時期であり、日本では人々の関心が朝鮮半島情勢にあまり向いていないため、こうした変化についての分析、認識が十分なされていないのではと懸念される。
そこで、専門外ではあるが、アナリストとして私見を述べておく。
韓国の統一選挙については選挙前、首都機能移転問題や4大河川開発事業などハンナラ党に不利な争点はあったが、「哨戒艦の沈没事件」で、同党には有利な選挙環境になったとの評価がなされていた。
なぜハンナラ党が敗れたのだろうか。
6月7日付韓国日報は、韓国の一部の人々は、哨戒艦の沈没調査結果に対して不信感を持っていると指摘した上で、李政権の独善性に対する怒りが国民の中にあると指摘している。つまり、安全保障問題に関し、政府と国民の間には温度差があるということである。
このことは、私自身も韓国からの留学生との会話で感じた。
現在の経済的に豊かになっている韓国では、ことさら北朝鮮を刺激すべきでないとの慎重論が多数派なのかもしれない。
安全保障問題では、相手に対する疑惑を膨らませるよりも合理的思考を徹底的に続け、問題解決を図ることが重要である。
例えば、朝鮮半島で全面戦争が起きた場合を想定して、米国、韓国の軍がどう対応をするかについての軍事機密「作戦計画5027」の内容が北朝鮮に流出していると一部メディアで報じられている。
その可能性を念頭に置き、対北朝鮮戦略を新たに作りなおさなければ成らない状況も想定される。
今回の人事異動もそうであるが、仮に金正日体制が後継体制づくりにからめて哨戒艦を攻撃したと分析するならば、北朝鮮は韓国との戦闘拡大をもくろんではいないと考えられる。
その一方、北朝鮮では通貨改革の失敗から軍部や党の内部に不満分子が生まれており、その調整を図るために、金正日総書記周辺では軍部が名誉を回復するための行動をとることを黙認しているとも考えられる。その場合、軍部は今後も同じような行動をとる蓋然性がある。
菅政権は、このような状況にある朝鮮半島について、どのような政策がとれるのだろうか。
韓国との十分な対話を行ったうえで、早急に首脳会談のために訪米し、さらには訪中し、首脳会談を行い、4ヶ国首脳と対北朝鮮政策の共有性を高めておくべきではないだろうか。
菅首相がこうした首脳間対話による安全保障体制の確認に努めることは、李政権への支援にもなる。また、日・米・中の新たなパートナーシップを構築する一歩にもなるだろう。
それは6カ国首脳会議の再開や核拡散防止の好材料ともなる。
「ピンチはチャンス」と捉え、首相自らが行動し、朝鮮半島に関する予防外交を行うことが望まれる。
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安全保障問題
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6月6日、菅氏がオバマ米大統領と電話会談を行い、少々ギクシャクしていた日米関係修復に向けた動きが見られている。
政策は「理想と現実を結びつける手段」ともいわれる。新たな首脳間の個人的関係を構築するとともに、日米関係における「国家安全保障の理想」についての開かれた議論がなされる必要がある。
5月27日、オバマ政権が「国家安全保障戦略」を発表した。欧米のマスメディアでは、米国が国際協力重視や、米国の持つべき強み(源泉)として経済力、財政規律を上げている点などの特徴があることを紹介している。
この点は、経済成長戦略を打ち出し、財政赤字削減に取り組む意向を示している菅晋政権と政策方針で共通しているといえる。
オバマ政権の同戦略で注目すべき点は、国際協力を強調し、米国だけが重荷を負担するわけには行かないとの意識を打ち出していることである。これは換言すれば、東アジアの問題、核拡散阻止、武闘派過激主義者対策(対テロ対策)などにおいて、「フリーライダー」(ただ乗り)は許されないということだろう。
一方、同戦略に対し、多くのマスメディアが批判したのは、現在のアフガニスタンへの国際介入の目的が不明確だという点である。アフガニスタン政策でオバマ政権はアルカイダの解体を理想としているが、それが如何に現実と程遠いかの表れといえるだろう。
日米関係を考えた場合、このオバマ政権にとっての難問について、国際的レベルで見れば、日本の協力が不十分であると評価されている点が気になる。
日本の新政権の外交政策は、5月28日の日米安全保障協議委員会の共同発表はもとより、このような米国が示した安全保障政策や、米中戦略・経済対話の内容、さらに日中韓3カ国首脳会談で採択された「ビジョン2020」の新認識をもとにしたフレームワークの変更が必要となる。
その際、地域の政治権力の変動や、合理性があまり高くない東アジアの社会現象や集団行動の要因に十分配慮せねばならない。
何より、仮に東アジアでの危機が生じた場合、どのように対応するかについてのシミュレーションをしておかねばならないことは言うまでもないだろう。
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5月26日、約1ヶ月にわたってニューヨークで開催されていた核拡散防止条約(NPT)再検討会議が閉幕した。10年ぶりに採択された会議の最終文書では、核軍縮について「付加逆性、検証可能性、透明性」の3原則が謳われた。今回の会議は世界の核不拡散体制にとって小さな一歩ではあるが、「核なき世界」に向けて国際社会が動き始めたことは確かである。
報道でも、今後の課題として①米国とロシアの核軍縮の行程を早めること、②中国をはじめフランス、イギリスの核兵器管理に関する情報公開性を高めること、③核兵器保有国である北朝鮮、インド、パキスタン、イスラエルのNPT加盟があると指摘されている。
なお、イギリスは26日、会議の最終文書が公表される前にヘイグ外相が、同国保有の核弾頭数は225発であることを明らかにした(これまで配備数は160発であることのみを公表)。すでに米国は弾頭数(5113発)を公表しており、今後も核保有国の情報公開が進み、信頼関係が醸成されることが期待されている。
一方、イランの核開発およびイスラエルの核兵器保有の実態という、中東地域の2つの不透明な問題に関しては、あまり進展が見られなかった。
これらの問題に関し、1ヶ月の会議期間中にいくつかの動きが見られた。
例えば、5月24日付ガーディアン紙が、1975年にイスラエルが南アフリカに核兵器を売却しようとした外交機密文書を入手、公表した。イスラエルは約200発の核弾頭を保有していると分析されているが、同国がこのような核兵器取引を行っていたことについて明らかにされたのは初めてであった。
イスラエルの核兵器保有に関しては、アラブ諸国側から、NPTへの加盟を含め国際社会に対し究明するよう求めているが、イスラエル側は地政学的観点から、NPT加盟や2012年開催予定の「中東非核地帯構想」に関する国際会議への参加に否定的立場を変えていない。
また、注目されるイラン核開発問題については、5月27日にブラジルとトルコがブラジリアで首脳会談を持ち、両国とイランの合意に基づくイランの核開発問題への対応(低濃縮ウランの国外移送計画)をベースとして、国連安保理による対イラン制裁を回避させることを確認した。さらに、トルコは6月にカナダで開催予定のG20首脳会議でイラン問題を取り上げるよう働きかける意向を示している。
こうした動きは、米国にとって、これまで核兵器の拡散防止問題として取り扱われてきたイラン核開発問題を、核兵器保有国が核管理をする現行の体制への挑戦手段として使おうとする試みだと思えるのだろう。5月27日、クリントン米国務長官は「米国とブラジルの間に深刻な意見の相違がある」と述べている。
中東地域の非核化問題は世界全体の安全保障に関わる問題である。しかし、石化エネルギーから原子力や新エネルギーへのエネルギー・シフトが進められる中で、本音と建前を使い分け、同問題を利用して自国の経済発展という国益を追求しようとする国家も現れはじめている。
G8がG20に拡大される際、多様な意見が議論されるようになると、「国際公共善」に関する意見集約は一層難しくなるだろうと懸念されていた。
その中、少なくとも日本は唯一の被爆国として、また原子力や新エネルギーに関する技術大国の1つとして、核の平和利用や核軍縮問題でより積極的な役割が果たせたはずである。しかし、7月の参議院選挙を前にした現政権は、6月末に発表予定の経済成長戦略や政策レヴューといった国内向けの政策の方がより重要と判断したように見えることが残念である。
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5月20日、韓国政府は、3月27日に沈没した韓国海軍の哨戒艦に関する調査報告を行った。
同報告では、沈没の原因は北朝鮮製魚雷による外部水中爆発と結論づけている。
今後、韓国は国連安保理での対北朝鮮非難決議や制裁決議をまとめる外交政策をとる蓋然性が高い。
韓国の政策選択において、現在の国内経済事情や戦争を望まない社会環境が軍事力行使の制約となっており、国連外交に対する意識が高まっている。
しかし、韓国が外交解決を選択するにしてもいくつかの障害がある。
まず、同20日、北朝鮮側は韓国政府が対北朝鮮報復措置や制裁に踏み切れば、即時に全面戦争を含む強硬措置で対応すると、朝鮮中央放送が報じたことが挙げられる。
しかし、この北朝鮮側の強気の姿勢は、同国が経済問題や金正日総書記の後継者問題を抱えているため、そうせざるを得ないという事情によるとも考えられる。
また、外交で成果を挙げるためには、中国の意志の影響の大きさを考慮しなければならない。
4月15日の韓中外相会談で、中国は科学的、客観的調査が重要との見解を示している。こうした対応に鑑みれば、韓国が中国の全面的協力を取り付けることは難しいと考えられる。
むしろ、韓国が主張を通す際、反対に回らない状況をつくることができればよしとしなければならないだろう。
そのためにも、今回の調査団に対する信頼や、韓米の協調行動が重要となっている。
このような朝鮮半島を巡る緊張が高まる中、日本は沖縄の普天間基地問題を抱え、米国とどのように協働することができるのだろうか。
せめて、有事の際、適切に日本人を朝鮮半島から救出できる体制を米国と詰めておく必要がある。
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5月15日、韓国の慶州市で日中韓外相会談が持たれた。同月24・25日には北京で米中戦略・経済対話(クリントン長官が21日に日本に途中立ち寄る予定)、月末には韓国の済州で日中韓首脳会談が予定されている。
北東アジア地域の外交活動が活発になっていることは、北朝鮮の脅威が着実に高まっていることと関係している。
北朝鮮は、金正日総書記の4年4ヶ月ぶりに中国を訪問した。
また、北朝鮮の労働党機関誌5月号(5月12日発刊)に、北朝鮮が核融合反応に成功したと報じている。
本当に北朝鮮が国内の技術で核融合反応をコントロールできたかについては疑問が残る。
しかし、前期のような外交日程を前に、このような発表をしたのは、核融合によって爆発力を得る水素爆弾の製造を行えることを示したかったからだろう。
また、北朝鮮が中国に説得され、6カ国協議に復帰するための環境整備のためとも考えられる。
それにしても、中国は先の北朝鮮との首脳会談で、食糧や物資援助をカードに北朝鮮の非核化の糸口を見つけられなかったのだろうか。
北東アジア情勢は今月末に一つの山場を迎えそうである。
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