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9月25日、アフリカ東部ソマリア沖でウクライナの貨物船が海賊にあった。24日には米海軍艦船に2隻の小型船が接近し、警告発砲が行われていた。さらに、26日にはアデン湾でギリシャのタンカー(化学薬品を輸送)が海賊に乗っ取られている。
この海域はマラッカ海峡と並んで海賊多発海域であり、2007年では紅海およびアデン湾で13件、ソマリア沖で31件の事件が発生している。 25日の事件で、特に問題とされている点は、エハヌロフ・ウクライナ国防相の発表によると、貨物船の積荷は同国からケニアに輸出していた武器(T72型戦車33両と大量の弾薬、迫撃砲)であったことである。9月27日、海賊側が積荷と乗組員(ウクライナ人17人、ロシア人3人、ラトビア人1人)の引渡しを条件に、37億円の身代金を要求、現在、交渉中であると報じられている。 イスラム世界に関係した海賊については、歴史的に見るとバルバリア海賊(英語名バーバリー海賊)やアラブ海賊が知られているが、今日、ソマリア沖で活動している海賊の中には、同国で勢力を増しているイスラム過激派「イスラム法廷」(アルカイダとの関係があるとの分析もある)が関与している者もいるとの分析もある。このところ、同地域で海賊行為を受けた船は、ソマリア北東部プントランド地方のエイル港に停泊させられており、身代金支払い後に解放されているようだ。その身代金は、「海員援助計画」(SAP、民間組織)によると、最低でも200万ドル(2億2000万円)が相場となっているという。 海賊行為に対する取締りや処罰に関しては、公海条約第19条、国連海洋法条約105条によって、全ての国が公海上の警察権や裁判権を行使できるようになっている。その一方、いずれかの国の管轄権に服する場所では、拿捕できないことになっている。 このため、「国際介入」という方法が用いられることになる。特にソマリアの場合、以前このブログでも書いたが、現在、内戦状態にあり法の統治が国内全域には及んでいない。このため、国際社会は2008年6月に国連安保理決議1816号を採択し、ソマリア暫定連邦(TFG)に領内への追跡の承認を要請している。また、この決議は、海賊掃討のために、加盟国の軍艦による武力行使を含む必要なあらゆる措置をとる権限を認めている。このように国際社会は、国際犯罪である海賊行為を阻止する目的で協力し行動しているのである。そして、これも以前に書いたが、海上自衛隊のインド洋での艦船への補給活動はこのような国際協力の一環でもある。 この海域での海賊についても、理想を言えば、マラッカ海峡でのような地域関係国による警察行動の強化によって対処すべきとの意見もある。しかし、海賊行為への国際テロ組織の関与の度合いや、この地域における武器の拡散状況などに鑑みて、現実的な対応として、国連憲章7章に基づく武力行使の容認という判断を国際社会が行った事実を否定するわけには行かないだろう。 日本が貿易に依存した国家であり、シーレーンを利用せざるを得ない以上、応分の負担をし、自国および他国の船舶を海賊行為から防衛する責務を如何に果たすべきか、真剣に考えねばならない。 |
国際関係・国際協力
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カタールで立ち寄ったショッピング・モールに電気製品の専門店が入っていた。のぞいて見ると並んでいる家電品は韓国のメーカーが多く、日本メーカーはあまりない。また日本のメーカーのものであっても、製造はほとんどが日本以外の国である。「メイド・イン・ジャパン」であることはあまり重要ではないのだろうか。現地で日本製品は壊れにくくて良いが、価格が高いとの声も聞いた。確かに、展示されていたメイド・イン・ジャパンの薄型テレビは倍の値段がついていた。
そうしたこの夏の現地調査時の一幕を思い出したのは、世界経済の減速と資源高により、日本の貿易収支は3240億円の赤字となった、との記事を目にしたからである。そこで以下に、「貿易立国」としての日本について少し考えてみる。 9月25日に財務省が発表した8月の貿易統計速報(通関ベース)では、輸出額7兆559億円、輸入額7兆3799億円で、3240億円の出超である。注目される点は、まず、米国への一月当たりの輸出が前年同期比で21.8%の減となっており、12ヶ月連続で前年を下回っていることである。2つ目の注目点は、原油輸入量が減少する中で、原油価格上昇によって輸入額が増大しており、中東地域からの輸入は1兆9405億円と前年同期比62.4%増となっていることである。中東地域への輸出額は2942億円であり、1兆6463億円の出超である。 米国の経済後退がこのまま続くと、日本の輸出収入は一層低下する。しかし、問題はそれだけではない。中国をはじめとするアジアの対米輸出品には日本の部品が組み込まれている物も多い。つまり、日本以外のアジア諸国の製品の対米輸出の低下は、日本の対アジア輸出の低下にもつながるのである。 また、原油に目を転じると、現在、OPECには日量100万バーレル程度の余剰生産力しかないといわれており、原油価格は1バーレル80〜100ドルの価格帯で今後も推移するとの分析がある。この点でも日本の貿易収支が好転することは難しいと見られる。 米国の経済回復は今後4年近くかかるとの見方が多い中、アジア頼みの日本経済もかなり厳しくなることは予想に難くない。こうした時こそ、海外に物を売るだけでなく、例えば開発途上国の国づくりに積極的にかかわっていくことが重要になるのではないだろうか。もちろん、そこでもグローバルな競争にさらされるだろう。そして、日本人の創造性の豊かさと真に相手の国の利益を考える誠実さが試されることになるだろう。 |
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9月19日、政府は海上自衛隊のインド洋での補給活動に関し、新テロ対策特別措置法を閣議決定し、活動の延長の方向を示した。しかし、同法案は、臨時国会での衆議院の解散状況次第では、審議さえされないことになる。そこで、この状況下において日本人として考えるべき事は何かについて述べてみたい。 今後の日本の政治動向はマスメディアの報道などから見て、臨時国会に絡み次のようなシナリオが考えられる。(1)冒頭解散、(2)首相の所信表明演説、代表質問後に解散、(3)補正予算を通した後に解散、(4)補正予算を通し、新テロ対策特別措置法の審議入り後に解散、(5)臨時国会終了後に解散。また解散時期は、新内閣の支持率次第であり、高ければ早く、低ければ遅いとも言われている。 こうしたことに鑑みれば、新テロ対策特別措置法が成立する蓋然性はかなり低く、再び、インド洋での補給活動が停止することになる可能性が高い。 この補給活動は2001年1月12日から本年8月末まで(2007年11月〜本年2月の間、一時中断)、11カ国の船に49万キロリットルの給油を行い、国際的に高い評価を受けている「テロとの戦い」における海上阻止活動への支援活動である。しかし、日本社会では、「テロとの戦い」という言葉から、集団自衛権論争やイラク戦争論争とイメージを重ねた議論がなされ、実施目的、体制、計画、効果などの本質を十分議論できないでいる。 さらに、今年8月に私がバハレーンを訪問した際、日本の国会議員やジャーナリストが同国を訪問し、海上自衛隊の活動状況を見聞しているとの話を耳にした。これまで、こうした現地で得た情報で、日本国民が抱いている疑問に答える努力がどれだけなされたのだろうか。 例えば、昨年国会で話題となった米艦船が日本からの給油を受けた後にイラク作戦に参加した「転用問題」について、米政府は軍事的な問題でありながら使用明細や資料を日本の国会に提出している点、また、日本の補給活動再開後、米艦船への給油が低下している現状は、これまでに十分伝えられてきただろうか。 国会議員やジャーナリストの多くは、バハレーンなどの現地視察を通し、補給活動継続の意味を理解して帰国したといわれているが、そのことを日本国民に伝えることにはあまり熱心ではなかったようである。それは何故だろうか。 また、日本が補給活動により支援しているインド洋上での多国籍軍の活動は、国際テロ・グループのソマリア、イエメン、アフガニスタンなどの活動拠点間の移動や物流を海上で阻止するという本来の監視活動に加え、この海域での海賊行為対策ともなっている。この点の説明が政治的思惑からか、おろそかにされる傾向にある。それは何故だろうか。 この海域は、世界最悪の海賊事件多発海域と言われており、9月19日にもギリシア貨物船が乗っ取られた。今年55件目の事件である。国際海事局によると、海賊はアデン湾からソマリア沖に活動範囲を拡大している。このアデン湾を通行する船は年間2万隻を数えている。そして、2008年6月、国連安保理事会は海賊対策を強化する決議を全会一致で採択した。その決議内容は、(1)ソマリア政府による海賊船への追跡補足のための領海侵入の承認、(2)ソマリア政府への海賊掃討のための技術支援、(3)アデン湾での米海軍の監視作戦の強化である。 この海域での海賊は単なる物取り行為を行っているだけではなく、イスラム過激派武装グループが関与しているとも言われている。このような海賊やテロリストに日本船が出会った際、監視船によって守られ危機を逃れることができたケースは数度にわたっている。つまり、日本船の安全は、国際協調行動によって保たれているのである。 9月18日、米議会調査局(CRS)は、日本が政策決定の混乱期に入る可能性が高いとの分析をまとめ、インド洋の補給活動は少なくとも中断が避けられない、と指摘している。国際社会は、日本の補給活動について概ね同様の見方をしているだろう。さらに最悪のシナリオとして、日本の活動が終わることも考慮に入れているだろう。 日本社会では、警察や自衛隊が存在することで、国内の「安全」や「平和」が保たれていることは理解されていると見てよいだろう。しかし、国際社会の安全や平和は、誰がどのような努力を行うことで構築されているのかについての考察、認識は、深められていないのかもしれない。 ブッシュ政権が終わりに近づき、9.11米同時多発テロから7年が過ぎ、米国内でも「テロとの戦い」のあり方が問われ始めている。私は、日本においても、今こそ、「テロとの戦いとは何か」「国際協調とは何か」について国民レベルで再度、問い直すべきではないかと考える。 ※なお、新テロ特措法延長問題について、9月19日付「読売新聞」の論点に寄稿いたしました。
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米国では、この半年で3月にはベア・スターンズ、9月にはリーマン・ブラザーズとメリルリンチが市場から姿を消した。その要因は、危機を回避するためにつくられた金融商品が、逆に危機を拡散させたことだと指摘できるだろう。そして、この危機の根底には、規制緩和により証券業務と銀行業務の垣根を取り外してしまったところに問題があるのではないかとの分析もある。それというのも、証券業務は金融ビジネスではあるが、顧客の預かり資産と自己勘定とを分別管理しており、銀行とは比較にならないほど資本基盤が弱い。したがって、証券企業がメガバンクとの競争の中で勝ち残るために無理な経営をすることもあると指摘されている。
さて、このような世界的な金融分野での激変は、短期的には原油価格の下落や湾岸アラブ産油国の株式市場の急落という影響を中東社会に与えている。では、中期的には同地域にどのような影響を与えるのだろうか。以下に湾岸アラブ産油国を例にとって見てみる。 昨年来、米国の金融制度が揺らぐ中で、米ドルへの不信感が高まった。このことで商品先物市場に投資資金が流れて原油価格が高騰、今年7月11日には1バーレル147ドルという市場最高値をつけた(WTIでの10月物の9月16日の終値は91.15ドルにまで下がっている)。これにより中東産油国の石油収入が拡大し、湾岸アラブ産油国では建設ブームが起きている。 その一方、ドル安により湾岸アラブ産油国が抱えるドル資産の価値が下がっている。また、自国通貨を米ドルと連動させるドルペッグ制をとっているため、ドル安は自国通貨の価値も下げることになる。このため、輸入品を中心に物価が上昇している。例えばアラブ首長国連邦の2007年のインフレ率は11.1%に上っている。このインフレは庶民(特に外国人で稼ぎ労働者など)の生活を直撃している。その反面、インフレ下での投資により蓄財する人々も出ている。 イスラム世界では、こうした投資により利益を得ている人々はグローバル化における格差社会を助長していると捉え、イスラムの公正に反すると主張する者もいるという。その一方で、ハイリスク・ハイリターンの商業行為として認め、イスラムでは、それにより得た富をどのように配分するかが重要なのだと見る者もいる。前者の中には、イスラム過激派武装グループに加わる者もいる。また、後者の中にも分配の公平性を求めようと政治運動を行う人々も出てきているという。 こうして見ていくと、湾岸アラブ産油国ではテロやクーデタの可能性が少しずつ高まっていると言えるのかもしれない。また、女性を含めた政治参加への要求、さらに民主化、自由化を求める動きへという現在の政治体制に影響を与える出来事が起こる可能性も出てきている。そして、こうした市民の政治・社会参加を十分意識しつつ、湾岸アラブ産油国の指導者たちも、各国の未来像を描きはじめているようだ。 米国での金融規制緩和は現在の経済危機を招いたのだが、その中で、個人の規範認識のあり方も変化させている。グローバル化の中、生活規範としてのイスラムがどのような影響を受けるのかにも注目したい。 |
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7年前に起きた9.11米国同時多発テロ事件はどのような組織による犯行か、と問われたら、何と答えるだろうか。多くの日本人は、国際テロ組織アルカイダの犯行だったのではないかと回答するのではないだろうか。 同事件については、後日、米政府は犯行計画を知っており実行させたとの話や、ユダヤ人の陰謀などさまざまな説が流布し、そうした内容の書籍も多数出版された。そのことで、アルカイダの犯行説を疑問視する人々も世界には多くいる。9月10日に発表された米国メリーランド大学が関係する国際世論調査ネットワーク「ワールドパブリックオピニオン・ドット・オルグ」の世論調査の結果がまさにそれを証明している(※)。 同調査は17カ国(米国、日本は含まれていない)で1万6063人を対象に実施された。その結果、アルカイダの犯行との回答が46%、米国政府が15%、イスラエルが7%、4人に1人は分からないと答えた。 1つの現象でも、情報資料の量と質の差から人々は多様な認識を持ち、国際社会のコンセンサスを得ることが如何に難しいかを端的に示した調査結果である。 中東専門家は、エジプトやアルジェリアでのイスラム過激派武装グループのテロ行為を視野に入れていたこともあり、1993年のニューヨークの世界貿易センタービル爆破事件や、98年のケニア・タンザニアの米大使館爆破事件、2000年のイエメン沖米軍艦コール襲撃事件など、米国を対象とするテロ事件はイスラム過激派の犯行だろうと見ていた。また、その捜査資料や関連情報から、反米闘争を呼びかけていたアルカイダの存在や、同組織の事件への関与の可能性の高さが認識されていた。 9.11テロ事件とアルカイダの関係については、米国議会調査や欧米メディアの取材などから、アタをはじめとする実行犯たちの事件までの動向や計画の全容が示されており、犯行声明が出てはいないもののアルカイダの犯行であることが検証されつつある。 ここで、世論調査の結果に再び触れておくと、イスラエルの犯行との回答が一番多かったのは、エジプトで43%、次いでヨルダン31%である。米国政府の犯行との回答は、トルコ36%、メキシコ30%、パレスチナ27%の順であった。そして、アルカイダによるとの回答は、ケニアが77%と最も多く、ナイジェリア71%、ドイツ64%と続いている。イスラエルの犯行や米国政府の犯行との回答の多さと、対象国に好意的ではない人々が多いことには相関性が見られている。そこから、「偏見」や「初期情報」と認識との関係が見えてくる。 「一度認識したもの」ということでは、9.11事件に関し、心的外傷ストレス障害(PTSD)が現在でも問題になっている。ニューヨーク市健康局の試算では、その被害者は3万5000人〜7万人に上っている。9.11テロ事件は、まだ約3000人の被害者の遺族や友人にとって信じられない出来事であり、目撃や体験をした人々にとっては精神的に癒されることのない事件なのである。 7年目の今日、テレビ映像を通し事件を目撃した者の1人として、「テロの計画・実行犯たちが何を考えていたのか」について、再考しようと思っている。 |




