日加ショートアニメーション・エクスチェンジ

インディペンデント作家を支援する「ショートアニメーション・エクスチェンジ」を日本とカナダ間の開催に向けた情報サイトです。

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CJaxの作家を代表して、オタワ国際アニメーション・フェスティバルに参加した、久保亜美香さんが国際映画祭審査員デビューの様を生き生きとレポートしてくれました。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆

私は、2008年10月17日から21日までカナダの首都オタワで開催された、Ottawa International Animation Festival 08(オタワ国際アニメーション・フェスティバル)に国際審査員として参加してきました。このフェスティバルは世界4大アニメーション・フェスティバルのひとつで、北アメリカ大陸で最も大きなアニメーションのイベントでもあります。

フェスティバルのメーン会場はオタワのダウンダウンにあるByTowne Cinemaで、普段は映画館として多くの市民に利用され、フェスティバル期間中の5日間はAnimation Festivalの特別上映となるそうです。大きな会場ですが交通がとても便利な繁華街の中で、利用しやすい場所にあり、フェスティバルの期間中はどの上映も殆ど満席でした。
この他、フェスティバルが行われる会場にはThe National Gallery of Canada, Empire Theatres Rideau Centre、それから、オタワ川の対岸のケベック州側にあるThe Canadian Museum of Civilizationなどがあります。
また、協賛している企業が企画したイベントがいくつかあり、それらが行われる間は作品上映が休止になるので、来場者はスケジュールを危惧することなくイベントに参加することができるようになっています。日本ではあまり見られない配慮で、実際上映を観に来た多くの方がイベントにも参加しており、素晴らしいと思いました。
わたしも参加したCartoon Network主催のカボチャ彫りコンテストでは、フェスティバルが用意した専用のバスで野外の会場に移動し、振舞われるサンドウィッチを食べたり、カボチャを彫ってコンテストに参加したり、晴天のもと、多くの人が思い思いに楽しんでいました。

上映については、世界70カ国の国から2150作品もの応募があり、コンペティションではショートフィルム部門に101作品、長編部門に4作品、スクールフィルム部門に4つの学校がノミネートされ、26のフィルムショーケースが上映されました。
Empire Theatres Rideau Centreで18日、Museum of Civilizationで19日に、「The New Wave of Japanese Animation」というスクリーニングで日本の作品の上映があり、私は19日に観に行き、上映前に紹介していただきました。
メーン会場のByTowne Cinemaからは少し離れたケベック側での上映でしたが、たくさんの方が観に来てくださり、作品上映中は笑ったり驚きの声をあげたりと感じたままに反応してくださるのを嬉しく思いました。
特に、坂元友介さんの『焼き魚の唄』や、青木純さんの『コタツネコ』などは日本独自の文化・慣習の表現が含まれていましたが、日本人が面白いと感じるであろう部分では、やはり会場中で笑いが漏れ、アニメーションが伝えることのできる世界の幅広さや豊かさを実感しました。
また、上映会場のMuseum of Civilizationは外観、内観とも非常に美しく、貝を模した曲線の造形が優美で、あのような美しい会場で私自身の作品を含む日本の作品を上映する機会が得られたことをとても嬉しく思っています。

フェスティバルの開・閉会式ではArtistic DirectorのChris Robinson(クリス・ロビンソン)さんが司会を務め、ジョークを交えた進行で終始和やかなムードでした。ショートフィルムコンペティションでも、選出された作品にはコメディが多く、いつも会場が笑いに包まれていて、他のフェスティバルとは違ったアットホームな雰囲気でした。
この様な違いを演出することはとても重要で、それまで他の映画祭では目にしたことのない作品をたくさん観ることができたり、より多くの作品が受賞の機会を得ることができます。アニメーション界をより広い世界にするために、貢献している重要な映画祭のひとつであると感じました。

私は長編部門とスクール部門の審査をしたのですが、決められた審査会議の時間は設けられておらず、他の審査員と自由に話し合いをしました
長編部門はByTowne Cinemaで1日1作品ずつの上映を観ました。私は長編作品を観るのが苦手なので少し不安な気持ちで鑑賞に臨むことになったのですが、どれも面白い作品で、楽しみながら集中して観ることができました。
Empire Theatres Rideau Centreで1日2校ずつ鑑賞したスクール部門の作品群もまた、とても興味深いものでした。
スクール部門は特に、学校ごとに与えられる賞なので、どの学校にもそれぞれ良い作品があり、審査をするのは大変でした。
賞を与えることは「良い作品でしたよ!」と間接的に作者に伝えることでもあるので、とても素晴らしい作品だったのに賞をあげられないことはとても残念に思いました。
でも、初めて審査員という立場で「評価できる部分」「もう少し改善できると思われる部分」を考えながら作品を鑑賞したことは、わたしにとってとても良い経験になりました。
作家である自分が他の作家の方々が制作した作品について批評をする、という行為は、最初とてもためらわれ、どうしても主観や自分の好みの判断になってしまうことに不安を覚えていたのですが、いざ審査に臨んでみると鑑賞者のひとりとして堂々と意見を持てば良いのだということに気付かされ、審査員同士の話し合いでは自然に意見を言うことができました。
これは私にとって新しく、新鮮な経験でした。また、アニメーション作品に於けるバックグラウンドミュージックや効果音についても、自分が審査に臨んで改めてその重要性に気付かされることとなり、今後の自身の作品制作に大きく活かすことのできる経験をさせていただきました。
フェスティバル期間中、フェスティバルオフィスで上映作品のDVDを自由に鑑賞できるようにしてくださっていたことは、実際の上映を観るときのプレッシャーを和らげてくれるように感じました。
私はスクールフィルムのいくつかをDVDで観直し、それは結果公平な判断につながったと思います。
閉会式で私は長編部門各作品についてのコメントと受賞作品発表をさせていただき、それも貴重な経験でした

そしてフェスティバルの期間中、英語を十分に話すことのできない私に、関係者の皆さんがとても親切に接してくださり、特に審査員コーディネーターのNasimさんが常に私の様子を気遣っていてくれたので、本当に快適に、心配事を持たずに過ごすことができました。とても感謝しています。
審査員という立場であったために知り合うことのできた方々が多く居り、カナダ、それから他のたくさんの国のアニメーション作家や関係者の方々と話をしたことはとても刺激的で、創作意欲を掻き立てるものでした。
そして、オタワが安全な街であり、「夜中に女性が一人で歩いても安全だ」と地元の方が言っていたことに驚きました。
街のつくりにゆとりがあり、建物は大きく、道路は広く、覚えやすく歩きやすい道で、その点でも快適に過ごすことができました。

フェスティバル終了後には、カナダ国立映画制作庁(NFB)のオープンハウスに参加させていただきました。
NFBの施設については一アニメーション作家として以前から興味がありましたし、内部の様子などについてはよく耳にしていましたが、想像していたよりも大きな施設で、設備の整った試写室やミキシングルームなど、とても魅力的でした。
施設内を一通り案内していただいた後、英語組とフランス語組に分かれて作品集の試写を観ました。
施設内で英語とフランス語の2ヶ国語が自由に飛び交っていたことも新鮮で、アニメーション制作に携わる多くの人々に広く開かれた場所であるということを感じました。
私は語学に関しては「一般的な」教育を受けてきただけの「一般的な」日本人であり、日本語は日本唯一の独特な言語で国外では全く使うことができないし、多くのアルファベットを持つ言語とはかなり差異があるので、日本での幼年期からの外国語(英語)教育については本当に見直し、改めていかなければ今後の日本や日本人にとって発展への大きな妨げとなると強く感じました。
また、NFBのような施設・団体ももちろん日本にはなく、アニメーション作家だけではなく多くの芸術家がそれだけを職業として生きていくことが困難な状態である日本の国にとって参考にすべき仕組みであると思いました。

今回、Ottawa International Animation Festival 08に国際審査員として参加させていただいたことは、アニメーション作家としての自分自身へだけではなく、日本人として、ひいてはこれから世界に生き、日本や世界をどのようなものへしていくか考える若い立場の人間として、本当に多くの経験をし、学ぶことができました。
自分がこれからすべきことや目標なども明確になり、より確かな意欲も増大しました。
また、航空券の手配、宿泊先や食事など、旅行中必要なことは全て準備していただいて、私は何不自由なく安心して渡航し、無事に帰国することができました。このような素晴らしい機会を与えてくださったことに、とても感謝すると同時に、今後の私自身の活動へ必ず活かしていくことをお約束します。どうもありがとうございました。

2008年11月16日 久保 亜美香

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