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小説を書いてみました。もちろんフィクションです(笑)。
初めての帰省。
良く眠った。気持ちが良い朝である。その光が眩しい。
いつものように看護士さんが来る。
『おはようございます。如何ですか』
『おはよう。良く眠ったよ。気持ちが良い』
『それは良かったですね。本日は帰省ですので準備お願いしますね』と
言って出て行った。感じの良い女性であるが。
いつも事務的である。
まあ当たり前の事だなと。苦笑いしながら起き上がる。
事のほか、体が軽い。帰省か。ここに来て初めてとなる。
軽い食事を取り。一息入れてから服を引っ張り出す。
暑いからなと言いながら。
グレーがかったシアサッカーのジャケット。
それにオフホワイトのチノパン。
それに合わせてオフホワイトの靴下。
シャツはピンクといきたい所だが。
白のボタンダウンを選ぶ。
ネクタイは綿の赤と紺のレジメンタルストライプ。
グレーがかったブルーのリボンベルト。
靴は白のグローブレザーのコンバース。
それに白のサンド仕上げのサングラスをかける。
駅まで車で送ってもらい。電車に乗る。
冷房が効いていて気持ちが良い。
外の風景をぼんやり見ているうちに
見慣れた風景となる。懐かしい。
私の地元の駅に到着する。
何となく小さく感じるのは気のせいか。
少し変わった気がする。それはともかく地元は良い。
汚い町ではあるが。住めば都である。
心なしか人通りが少ない。
そしていよいよ我が家へ到着となる。
玄関の前に立ち。呆然とする。
表札が違っている。
俺の家だよなと辺りを見回す。
家並みは殆んど変わっていない。
ちょいと外を見てみる。
道路側の花壇から俺の家を見上げるが判らない。
事情を聞いてみようと元へ戻ろうとすると。
何かが足に当たった。足元がふらつく。
私が飼っていたニャン子の鈴坊である。
おお!お前、生きていたのか。探したんだぞ。
本物かと言うと。声の出ない鳴き声で
アーと鳴いた。鈴坊だ!虎縞の体に尻尾が曲がっている。
お前、俺を迎えに来てくれたのか。有難うな。
と頭を撫でる。そして抱き上げ花壇の縁に座り膝の上に乗せた。
ゴロゴロ言っているのが判る。凄く嬉しい。
コイツの元気な姿を見るだけでも有難い。
そう思いながら撫でていた。
ふと視線を感じて顔を上げるとそこに
男が立っていた。
紺地に帆船柄のアロハシャツを着て、
ジーパンを穿いていた。
それに麦わらの粋な帽子を被っていた。
そして。親しげに。
『アンタ、帰省だろう』
『どうして判る?』
『その格好見れば判るぜ』
『そんな酷いか』
『いや決まり過ぎている。初めてだろう』
『どこ?』
私は後ろを指差した。
『表札が違うって言うんだろう』
『何で?』
『顔に書いてある』
『!!?』
『アンタ家族は。』
『いない。』
『じゃあ、誰が住んでいるの?』
この男の言う通りである。
私は家族はおろか親類縁者がいない。
誰が俺の家に住んでいるのか。
『アンタよ。そこにはアンタの知らない人が住んでいるんだよ。
訪ねて行っても誰も返事をしてくれないぜ』
『何で?』
『アンタの姿が見えないからだよ』
『?』
『まだ気がつかないのか。アンタ死んでんだよ。
そのニャン子だって。いつまで生きていると思っているの』
確かに鈴坊がいなくなって20年は経つ。
『そうポカンとしてないで。
俺、帰ったら女房が新しい男と
楽しそうに暮らしていたよ。
このニャン子が待っていてくれただけでもマシだよ。
でもよ。このざわついた空気が良いと思わないか。
俺は毎年それを楽しんでいる。
そしてこうやって俺と同じ人に出会える事に。
この世界を見るのも面白い』
そう捲くし立てている間も
人が私たちの前を通ったが気がついた人はいないようだ。
車も何台も通過した。
『所でよ。ここにいつまで座っていても切り無いぜ。歩かないか』
『いや鈴坊がいるから』
『そのニャン子はアンタが思い出せばすぐ出てくる。大丈夫だ』と
立ち上がった。
私は鈴坊を下ろして立ち上がる。
いつの間にか鈴坊は消えた。
そして駅の方に向かった。
『この辺りを歩いているとよ。俺たちのご同類に会えるんだよ。
そしてお友達になる。楽しいぜ』そう言いながら駅に着く。
駅の前のベンチにその男と座り、この男が喋り捲っている間。
私は耳に入らない声を聞いていた。そして
『じゃあ、またな』と言って
その男はどこかへ消えた。
私が鈴坊の事を考えていると。
いつの間にか私の膝の上に乗っていた。
その頭を撫でて駅の前の雑踏を眺めていた。
人の行きかう息遣いは何とも言えず活気を感じる。
それに取り残された私は何となく寂しい。
鈴坊に
『お前も俺の所に来るか』と言うと
嬉しそうに頭を私の体に擦りつけた。
私は鈴坊を抱いて少し早いが帰る事にした。
ニャン子を抱いていても誰も咎める者はいなかった。
帰りの電車は長く感じたが。
孤独は感じなかった。
そこには安心しきった鈴坊が私の膝の上で寝ていた。
追記。
お読み頂き感謝しております。
次回作『嘘も方便』に微妙にリンクしております。
お読み頂ければ幸いです。
宜しくお願いします。
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kico様へ
ナイスを頂き感謝しております。
有難うございます。
2014/7/25(金) 午後 2:39
こんにちは・・・。
不あがりさんらしいですね・・・。
自分の服装の説明的な描写・・・私の 知らない服の色や
ベルトや靴まで・・小説家みたいです。この場面、
いきいきしています。
あの世とこの世は行き来してみたいものですね。
にゃんこにはいつでも会え、あの世に帰る時には孤独に
感じなかった・・・。 良かったですね。 ナイス!
2014/7/25(金) 午後 2:52
アアイアウ様へ
この服装を書かないと何となく私の感じが出ませんので書いてみました。ニャン子は私の家にいた子です。この子の事が気になって仕方が無い。頭の中で考えていた文と。いざ書いて見るとまるで違う方向になり参りました。ニャン子は冒頭だけの予定でしたが。これが不思議です。もっと切ない話になる筈だったのですが。やはり文章は難しいです。ナイス&コメント有難うございます。
2014/7/25(金) 午後 3:07
行雲流水様へ
ナイスを頂き感謝しております。
有難うございます。
2014/7/25(金) 午後 6:54
今晩は。
私も3匹のネコを飼っていたので、会えるものなら会いたいです。
自分が会いたいと思った時に会えるなんて、最高です!
2014/7/25(金) 午後 8:32 [ - ]
nii様へ
そう仰って頂くと凄く嬉しいです。これ不思議なのですが。この文を書く前はこんな終わり方では無かったのです。ニャン子は冒頭で出て来て他に繋がる筈でした。書いている内にこんな形となりました(笑)。文章を書くのは難しいとつくづく感じます。ナイス&コメント有難うございます。
2014/7/25(金) 午後 8:53
ことじ様へ
ナイスを頂き感謝しております。
有難うございます。
2014/7/25(金) 午後 9:31
へえ〜、びっくり下谷の高徳寺。
不あがりさんってチャレンジャーなんですね。こんなことがお出来になる。
そして拘るところはちゃんと‥‥綿密に。
2014/7/25(金) 午後 10:42 [ 海比古 ]
海比古様へ
恐縮です。そう仰って頂くと凄く嬉しいです。全てが初めてですから。でも話が纏まって良かったです。。面白いのは主人公より。男がやけに話し出しました。そしてニャン子は冒頭だけで次の話に移る筈でしたが。これが最後までいた。文章って生きているんだなと思った次第です。でもこの終わり方で良かったと思っております。有難うございます。
2014/7/25(金) 午後 11:15
こんばんは^^
不あがり様の服装に対する拘りをしかと受け止めました!
コンバースには思わずニヤリとしてしまいました(笑)
読んでいくうちに現実にあり得る事かもと・・・
深い愛情で結ばれるニャンコとの物語・・・今も抱いているのでは?
そんな気がしてきました・・・続編を楽しみにしております。
2014/7/25(金) 午後 11:27 [ 和奴 ]
和奴様へ
私は元々が服好きなのでどうしてもこういう書き方となります。実はニャン子は冒頭だけで次の話に移る筈でした。これが最後まで残った。そして男が主人公より話し出す。これに驚いております。続編ですか。それは無いと思います。もう一人駅で出会う人がいたのですが。纏まりそうも無いのと。私の思いからは離れて行こうとするので止めました。文章は生きているとつくづく感じた次第です。でもこの終わり方で良かったと思っています。ナイス&コメント有難うございます。
2014/7/25(金) 午後 11:55
自己を客観視するとそれまで見えなかったものがいろいろと見えて参ります。即ち「姿かたちは滅んでも精神は滅ばない。」というこのフィクションのメインテーマは我が国固有のこうした精神が込められたものと承ります。
同時に人と人との触れ合い、動物への愛護の気持ちがストーリーを守り立てるものと察しております。
発想が貧困なそれがしにとって、創作の一分野であるノンフィクションほど難しいものはないと踏んでおりますが、一方でこれは絵画でいうところの抽象画のようなものという概念を持って接しております。本作に於いては貴兄の多岐に渡る芸術への造詣と研ぎ澄まされた感性がこうしたノンフィクションの力作に及んだものと受け止めております。
きょうも大変充実した記事に触れさせて頂きました。ありがとうございます。MN
2014/7/26(土) 午前 4:27
ミック様へ
本当に有難いお言葉を頂き感謝しております。今回初めての挑戦です。高校の時書いた事があるのですが。親父にそれは小説ではないと言われて文集にも載ったのですが。捨てました。ですからこれが初めてとなります。人物を描くのはかなり難しい。その前日に書いていたのですが。今回は駅で終わりとなりますが。そこにもう一人の人物と会うことになります。するとこの人物が喋りすぎて話が私の思った事からどんどん離れて行き収拾がつかない状態となりました。保存して改めて書き直そうとしたのですが。それに失敗して今回の話となりました。朝起きて一発勝負で書きました。ですから最初に書いたものとは大分変わりました。でもこれの方が良かったと思います。この終わり方で良かったと私は思います。とにかく文章を書くというのは難しい。それを実感した次第です。ナイス&コメント有難うございます。
2014/7/26(土) 午後 0:45
Pada様へ
ナイスを頂き感謝しております。
有難うございます。
2014/7/26(土) 午後 0:54
Dr.K様へ
ナイスを頂き感謝しております。
有難うございます。
2014/7/26(土) 午後 0:55
こんばんは。
川柳だけでなく、小説も書かれるのですね。恐れいりました。
そんなことがあればいいですね。魂が生き続けていたらどんなに素敵でしょうか。
不あがり様は、洋服へのこだわりがあったことを、冒頭の文章で思いだしました。おしゃれですね。
2014/7/26(土) 午後 11:51 [ ひがにゃん ]
ひがにゃん様へ
私は小説は初めてとなります。書き出すと頭の中で描いていた文と大分変わってきます。これに驚いています。主人公より、男の方が喋りすぎる。そしてニャン子は冒頭だけと考えていたのですが。書き終わってみると。最後までいる。もっと切ない話にする筈だったのですが。今読み返すとこれの方が良いと思っています。やはり文章を書くのは難しいと痛感しています。所で服の話は味付けというか。私らしいと思って頂ければ嬉しいです。ナイス&コメント有難うございます。
2014/7/27(日) 午前 0:51
sir*k*machan様へ
ナイスを頂き感謝しております。
有難うございます。
2014/7/28(月) 午前 0:07
なんだかファンタジー小説のようですね〜
ニャンコの存在が、その世界を広げているような気がいたしました。
恒川光太郎氏の「秋の牢獄」というお話を、なぜか思い出してしまいました。同じ日を何回も何回も繰り返す人々の話です。
2014/7/31(木) 午後 3:14 [ 次郎長 ]
次郎長様へ
ファンタジーですか。そう仰って頂くと凄く嬉しいです。この男の自分の死に気づかなかった男は。『最高の死を迎える』でどうして死んだかが判る事になります。その時に一緒に食事をしていた若い女性が次回のビルから飛び込もうとした女の子になり。『おじさんを思い出す』で主人公となり。『思わず声をかけた』で出てくる女性となります。どういう訳かリンクした形となりました。作家とご比較頂いた事が最高の褒め言葉となります。感謝しております。ナイス&コメント有難うございます。
追伸。この作家の名前は初めて知りました。後で検索してみます。
有難うございます。
2014/7/31(木) 午後 4:04