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おじさんの事を思い出す。
私とこのおじさんとの出会いは10数年前となる。
私がバーガーショップへバイトで入った高校2年の時である。
殆んど口をきく人では無かった。
ハンバーガーを注文して。
私が居た店で食べて帰る。
それだけであった。
ただ毎回、受け取る時に。
必ず『有難う』又は『有難うございます』と
言って受け取る。
それが頭に残る。
当たり前の事を言っているだけであるが。
それが気になる。
もう一人のお姉さんとその事を話したものだ。
いつも殆んど同じ場所に座り。
同じものを食べて。
ぼんやりと外を眺める。
それ以外は
実は目は鋭い。
直視するのは怖いと思う事もあった。
おじさんもあまり私たちの顔を
見ないようにしていた気がする。
注文する時と受け取る時にだけ目を合わせる。
あとはいつも同じであった。
お姉さんが掃除に行って声をかけた。
『今日は』というと。
一瞬驚きの顔をして。周りを見回して
『今日は。』と返してくれたという。
後はまた下に目を落とすか。外を見ている。
私も同じ事をしてみた。
すると同じように挨拶を返してくれたが。
それ以上は話す事は無かった。というか。
あまり話すことは好きではないのではとも感じた。
一ヶ月が過ぎ、二が月が過ぎ。
いつもと同じようにおじさんは同じものを食べ帰って行く。
私も少し仕事に慣れて来て。
帰りに『有難うございました』と言うと
『ご馳走様』とこちらを見ずに手を上げるか。
頭を少し下げて帰って行く。
それから暫くして
お姉さんが就活の話をすると。
神社で祈願したお守りを
渡してくれたという。
しかしそれ以上の話はしない。
ただ『頑張ってね』というだけだと言う。
そのお姉さんも無事就職が決まり。
挨拶をすると
『おめでとう。良かったね』と笑ったという。
おそらく
このおじさんが笑ったのは初めてだと思う。
そのお姉さんも新しい職場に行くために辞めて行った。
その時もおじさんはお姉さんに
『元気でね』と一言だけ言ったという。
そしてまた毎日のように通ってくる。
クリスマスには暇だった。
皆楽しそうにしているのに。
私は仕事であった。
そんな時にもおじさんは来た。
私は
『本日クリスマスですが。何事も無く』というと
驚いた顔をしてこちらをジッと見た。
『あ、そうだね』と言ってトレイを受け取った。
暫くすると
『悪い忘れてた』と言ってクリスマスの靴をくれた。
そして帰って行った。
それ以来少しずつ話すようになった。
しかし私から話さないと決して話す事は無かった。
あっという間の4年間が終わり。
短大を卒業する事になった。
そしておじさんに
『私、ここを辞めます』
『良く頑張ったね。アナタなら大丈夫だ』
と笑った。
そして
二十歳となった私に
『二十歳になった感想は?』
『お酒を堂々と飲める事ですかね(笑)』
『お酒が飲めるんだ(笑)。飲みすぎに注意だよ』
その言葉が最後となった。
ふと仕事に疲れた時
このおじさんの事を思い出す。
追記。
こちらも前作『最高の死を迎える』と微妙にリンクしております。
お読み頂ければ幸いです。
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ほのぼのとしています♪
やっぱりこのおじさんは 不あがりさんに見えてしまいます(笑)
口数は少なくても このバイトさんたちがいる
この空間に 癒されていたのですね。
そして バイトの女の子も このおじさんに癒されていたんですよ。
こんな短編がサラサラとできて 羨ましいです♪
2014/7/30(水) 午後 6:37 [ つや姫日記 ]
つや姫日記様へ
この話は昨日の話に出てくる女性に繋がって欲しいと願っています。
そしてこのバーガーショップのでの話は自伝に近いです。でもこの子達は可愛かった。今どうしているのか。それが気になります。とにかく幸せな人生を歩んでいて欲しい。ただそれだけです。それを切に願うものであります。そして少しでも私の事を思い出してくれていたらなと願って書きました。ナイス&コメント有難うございます。
2014/7/30(水) 午後 6:51
ほのぼのと、そして和やかに、話の進め方が上手く文章も素敵です。
2014/7/30(水) 午後 9:07 [ 行雲流水 ]
行雲流水様へ
そのお言葉が凄く嬉しいです。そして有難い。
ナイス&コメント有難うございます。
2014/7/30(水) 午後 9:42
ことじ様へ
ナイスを頂き感謝しております。
有難うございます。
2014/7/30(水) 午後 9:43
シェーン様へ
ナイスを頂き感謝しております。
有難うございます。
2014/7/30(水) 午後 10:18
10代の頃の・・・
アルバイト先のおばあちゃんを思い出しました^^
すいとんをつくってくれたっけ☆
家族ぐるみで私を優しく包んでくれた東京物語
ほのぼのと若き日を思い出させてもらいました・・・
読後感がとても爽やかです♪
2014/7/30(水) 午後 10:35 [ 和奴 ]
和奴様へ
そう仰って頂くと凄く嬉しいです。人の出会いは面白い。どこでどう展開して行くか判らない。どこかで出会い。いつの間にか疎遠になり。そのままとなるかも知れないし。ある日またどこかで会うかも知れない。ほんの少しだけで思い出して欲しい。そんな願いがあります。ナイス&コメント有難うございます。
2014/7/30(水) 午後 10:41
そのおじさん、我っちが代役できそうだな♪
2014/7/30(水) 午後 11:18 [ 海比古 ]
海比古様へ
海比古様だったらもっと話が弾み。楽しいおじさんとなったと思いますよ(笑)。有難うございます。
2014/7/30(水) 午後 11:31
アアイアウ様へ
ナイスを頂き感謝しております。
有難うございます。
2014/7/30(水) 午後 11:32
貴兄には以前から武士の嗜みである寡黙の心(美徳に繋がる意味合いでの)を感じておりましたが本作はこれを改めて感じさせる作品と承りました。
現代の男の多くはしゃべりすぎにより、己が軽くなることに気づかない。ここに時勢を感じるわけですが、その根底には儒教精神の崩壊の危機を感じる昨今のそれがしであります。
武士にとって心の拠りどころは儒教の心であります。本作はそれを十分に彷彿させる力作と受け止めております。
きょうもいいお話を聞かせて頂きました。ありがとうございます。MN
2014/7/31(木) 午前 5:05
ミック様へ
有難いお言葉を頂き本当に嬉しいです。私はやはり古い人間に入るのかも知れません。でもこれしか出来ない。いつも時代遅れとなります。でもこんな男でも覚えていていてくればと願ってやまないものであります。ナイス&コメント有難うございます。
2014/7/31(木) 午前 5:21
Pada様へ
ナイスを頂き感謝しております。
有難うございます。
2014/7/31(木) 午前 9:52
不あがりさんの素敵な思い出。
楽しく読ませていただきました。
また、小説楽しみにしてます。(^_^)
2014/7/31(木) 午前 11:30 [ タカ ]
リイコとタカ様へ
作品の中の女の子は実在しますが。私の事は思い出しているかどうかは不明です。これ以来顔も見ていません(笑)。ナイス&コメント有難うございます。
2014/7/31(木) 午後 3:26
次郎長様へ
ナイスを頂き感謝しております。
有難うございます。
2014/7/31(木) 午後 3:43
これは実話のエッセイですね。面白く拝読させていただきました。ちょっと中学校の国語の教科書に出ていそうだなー、とふと思いました。
2014/7/31(木) 午後 11:03 [ noki ]
noki様へ
登場人物は私の周りの人間ですが。殆んどフィクションです。あくまで物語です。その点だけは誤解の無いようにお願いします(笑)。有難うございます。
2014/7/31(木) 午後 11:23
ひがにゃん様へ
ナイスを頂き感謝しております。
有難うございます。
2014/7/31(木) 午後 11:33