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手を繋いで
久しぶりに親友が入院している病院を訪ねる。
実は辛い。もう危ないのだ。
ベットに寝ているのか起きているのか
判らない状態でその男は横たわっていた。
人の気配を感じたらしく。
目を開けた。
『お、悪い、起こしたか』
『おお、久しぶり』
『いや、丁度目が覚めた所だ』
『悪いな。わざわざ来てくれて』
『嬉しいよ』
『いや。仕事が忙しくてな』
『おお、そうか』
『それは良い事じゃないか』
『所で具合はどうだ』
『おお、最近頗る良い』
『ホントか』
『ああ』
『お前よ』
『これから言う事を内緒に出来るか』
『ああ、もちろん』
『俺よ、彼女が出来た』
『ホントか!』
『ああ』
『それは良い事だ』
『俺も驚いているよ』
『この歳でこの状態だろう』
『どこで知り合った』
『ここでだよ』
『同じ病棟の患者だ』
『どうやって知り合った』
『訪ねて来てくれた』
『ホントかよ』
『ああ』
『内緒だぜ』
『絶対安静だからな』
『それで』
『夜中しか逢えない』
『え!大丈夫なのか』
『だから内緒だって言っているんだ』
『俺もよ。だから今必死で寝ている』
『今病気の振りをしている』
『元気だと判ると追い出されるからな』
『お前、勘弁してくれよ』
『いや俺は真剣だ』
『こんな事は生まれて初めてだ』
『それでどこで会っているんだ』
『その庭によ。ベンチがあるだろう』と
言って。目で合図した。
それを追って見ると。
窓の外にベンチが置いてある。
『お前、歩けるのか』
『ああ、内緒だぜ』
『ホント、大丈夫なのか』
『ああ、だから元気だと言ったろう』
『俺はもう大丈夫だ』
『あとはその女と時間を合わせて退院する』
『おお、その気なんだな』
『だから言ったろう』
『俺は本気だって』
『今の時間はひたすら眠る』
『それだけだ』
その言葉を聞いてホッとしたが。
本当の事なのか。
この男が言うのなら
本当だろうと思った。
その日の夜中。
『ねえ、待った?』
『ああ、待ってたよ』
『それじゃあ、行く?』
『ああ』
男は起き上がった。
それもスムーズに。
二人は手を繋いで
静かに辺りを気にしながら外へ出た。
それは若いカップルのようだった。
その翌日、男は息を引き取った。
そして同じ頃、同じ病棟の女性が息を引き取った。
個人情報があるので。
それ以上の事は判らない。
もしかしたらと考えた。
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小説。手を繋いで。
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つや姫日記様へ
面白い所に気づかれますね。どっちなのですかね。迷います。
ただこんな旅立ちも良いなあと思います。こんな旅立ちが出来たらと心から想います。ナイス&コメント有難うございます。
2014/9/17(水) 午後 4:21
kico様へ
ナイスを頂き感謝しております。
有難うございます。
2014/9/17(水) 午後 5:36
アアイアウ様へ
ナイスを頂き感謝しております。
有難うございます。
2014/9/17(水) 午後 6:43
シェーン様へ
ナイスを頂き感謝しております。
有難うございます。
2014/9/17(水) 午後 7:53
ことじ様へ
ナイスを頂き感謝しております。
有難うございます。
2014/9/17(水) 午後 8:58
大変恐縮ですが時間がないので週末にまとめ読みして感想を記したいと存じます。大変失礼しました。その節は宜しくお願い致します。
きょうもありがとうございます。MN
2014/9/18(木) 午前 4:31
ミック様へ
とんでもないことです。お忙しい中をわざわざお越し頂く。それだけで満足でございます。それに感謝しております。ナイス&コメント有難うございます。
2014/9/18(木) 午前 10:39
不あがり様
覗いてばかりで失礼していました。
読ませていただき、深く胸に響いてくるものがありました。
死を待つだけのベッドで横たわっている方の心の中には、
苦しみから遊離し、夢のような幸せの瞬間が訪れると思います。
そして心は消えていくのでしょうか。
先日、NHKで立花隆の臨死体験など人が死ぬ瞬間の
心模様を見て、死は怖くないと思えるようになりました。
2014/9/18(木) 午前 10:55 [ 万華鏡 ]
万華鏡様へ
お久しぶりです。お元気であられましたか。お越し頂き感謝しております。所でこの主人公の男はおそらく一生孤独であったと思います。その生死の境を彷徨いながら生きている。もしかしたら同じような女性もいたのでは。その彷徨える魂だけが。もしかしたら通じ合う事が出来たのでは。最後の最期その女性と時間を合わせて退院。即ち旅立ったのは。それを友人が或いはと考える。この微妙なやり取り。友人に心配かけまいとした男の気持ちも判る。果たしてどうなのかという終わり方となります。これ書いていて泣きました。非常に気に入っております。それにご感想を頂き凄く嬉しいです。ナイス&コメント有難うございます。
2014/9/18(木) 午前 11:16
最後に素敵な恋が出来て良かった❕❕
良い話をありがとうございます。(^^)d
2014/9/18(木) 午前 11:44 [ タカ ]
リイコとタカ様へ
そう思って頂けましたか。私もそう思いたい。凄く嬉しいです。
ナイス&コメント有難うございます。
2014/9/18(木) 午後 0:09
う〜〜ん 唸ってしまいました・・・
最後の一言・・・引きずりますね!
なんだか凄い世界ですね・・・
ときめき・思いやり・悲しみ?何もかも一緒に連れて行ったような
あぁなんだかとてもグッときちゃいました。
2014/9/18(木) 午後 10:54 [ 和奴 ]
和奴様へ
凄く有難いお言葉を頂き感謝しております。文章って不思議で。今読み返すとどうしてこんなものが書けたのだろうと思います。これ自分で書いていながら自分で無い。そんな気がします。書かされている。ただ書いていて実は泣きました。ナイス&コメント有難うございます。
2014/9/18(木) 午後 11:13
読後感想が遅れてしまいまことに申し訳ございません。
本作品は登場人物の空想真理を貴兄は見事な考察で書き表しておられます。即ち人間は死期が迫ってくれば誰しもこのような妄想、幻覚に陥るのではないでしょうか?
死の恐怖から少しでも逃れたい。気を紛らわしたい。こうした普遍的真理を巧みに現した秀作とお見受けしました。
貴兄の深い洞察力に哲学を感じた次第です。
きょうも有意義な記事に触れさせて頂きました。ありがとうございます。MN
2014/9/19(金) 午前 4:50
ミック様へ
本日大幅に寝坊しました。でも久しぶりに良い夢を見ていました。こんな事は何十年も生きて来て初めてです。もしかしたらこの主人公と同じ感覚なのかも知れません。それはともかく。この物語。私が書いているのですが。今読み返しえも泣けて来るのです。そして何でこんな話が浮かんだのか。それが判らない。やはり書かされていたのだなと思います。文章って面白いのはその日、その時に浮かんだ物を書かないとそれはどこかへ無くなって行く。そんな感じがします。その思いついた時に書く。或いは書かされる。何の先入観も無く。余計な事は考えずに書く。すると意外と自分の思った物が書けるような気がします。それも寝起きで朦朧としている時が一番自分の考えている事を素直に書ける。そんな気がします。目が完全に覚めてしまうと。どうしても作ろうとする。それが無い。それが良いのかも知れません。この主人公の死の境を彷徨っている心の動きが少しでお判り頂ければ私は大喜びとなります。この男は最後の最期は幸せに逝ったと私は思います。有難うございます。
2014/9/19(金) 午後 0:25
彩楓様へ
これを読んで頂けたのですか。凄く嬉しいです。
そしてナイスを頂き本当に有難いです。
感謝しております。有難うございます。
2015/11/15(日) 午前 4:03
午前4時35分様へ
私はこの物語が一番好きかも知れません。仰るようにこんな最期を迎えられたら。これほど幸せな事は無いと思います。書いて良かったなと思っております。そしてこんな事がもしからしたらあるのかも知れない。そんな想いになって頂ければ幸いです。お読み頂き感謝しております。有難うございます。
2015/11/15(日) 午前 6:14
ともたん様へ
こちらにナイスを頂き凄く嬉しいです。
感謝しております。有難うございます。
2016/9/20(火) 午後 5:42
私もこのような最期をむかえたいですね
きっとあの世は良い所と思っています
私の妹は7年前に亡くなったが・・・
夢にも出て来てくれないです
この世では色々と有ったので・・・
若くして苦労の連続で〜かわいそうと思っていたが・・・
きっとあの世の方がいいのではと思うようになりました。
幸せはとは自分の心に有るのでは?
つまらない事で済みませんでした。
2016/9/20(火) 午後 5:53
ともたん様へ
先ず、妹様のご冥福を心からお祈りします。
所でこれ自分で書いていながら今読み返すと何でこんな物語が書けたのか不思議で仕方がありません。いつもこの世とあの世のその境界線というか。その狭間というか。どちらともつかない話が書いてみたいと思っております。おそらく私の心の中でこんな逝きかたがしたいという願望から生まれたものと思います。この男の最期の妄想なのか。或いはこの生死の境を彷徨っている魂がどこか通じてこの女性と巡り会う事が出来たのか。それは判りません。でもそんな事があって欲しいと心から願うものであります。この物語、非常に気に入っております。それにコメント頂き感謝しております。有難うございます。
2016/9/20(火) 午後 6:20