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この物語は『墓参り』の続きとなっております。
お読み頂ければ幸いです。有難うございます。
骨を納める
奴は呼ばれたのか。
それから一週間も経たない内に死んだ。
死んだ場所は。
女の墓の前でカンチュウハイを握り
栓も開けずに。
それを握り締め拝むような格好で
蹲っていたのを発見された。
墓の上には
やはり一缶のカンチュウハイが
置かれていた。
これは警察の方から緊急連絡先である
私の所に連絡があり聞いた話である。
その顔は傷ひとつ無く眠るような顔であった。
これには警察の方が驚いていたのであるが。
虫や蚊に刺された傷痕一つ無かったそうである。
それに関してはもしかして他で亡くなられて
運ばれたのかとまで思ったそうである。
警察ではそこまで調べたが。
その形跡は全く無い。
誰かに守られているようだった。
こんな事があるのかと驚かれていた。
死因は熱中症で事件性は
一切無いとの事で私が遺体を引き取り。
奴の遺言通り。
葬式は行わなかった。
何事も無かったようにして欲しいと
いうのが奴の願いであり。
骨は私が撒く事になっていた。
それから数日後の事である。
家内が〜さんって方から電話という事で出ると。
『私は〜という者で。〜〜子の母親でございます』
『先日、貴方様のお知り会いである』
『〜様が亡くなられたとお聞きしまして』
『お電話を差し上げました』
それを聞いて私は。
『何でその事を』
『警察の方からも』
『一応私の〜子の墓の前で亡くなられたと』
『いう事でお調べが来ました』
『ああ、そういう事ですか』
『それは、それはご丁寧に』
『つきましては、大変恐縮な事をお尋ねしますが』
『納骨はどうなさるお積りですか』
『これは奴の遺言通り散骨するつもりでおります』
『ああ、そうでございますか』
『大変恐縮ですが』
『そのお骨を私どもの』
『〜子の墓にお納め頂けませんでしょうか』
『はい!?』
『無理なお願いと思いますが』
『何卒宜しくお願いします』
この母親はおそらく80歳を
越えておられる方であるが。
涙ながらの訴えであった。
『大変恐縮ですが』
『私の電話番号を何方からお知りになりました?』
『それがですね』
『信じて貰えるかどうか分かりませんが』
『〜子からです』
『正確には〜様からお教え頂きました』
『〜子が夢枕に立ちまして・・』と聞いた所で。
言葉が出なくなり。
『あの〜お母様、大変恐縮ですが』
『そちらにお訪ねして』
『詳しくお話をお聞きできませんか』という事になり。
数日後、家内を伴って訪ねる事となった。
電話を切る前にお願いされた事が。
奴の写真を持って行く事であった。
奴の家の駅からはタクシーで20分程の所であった。
車を降り道なりに細い道を抜けると
突き当たりの家であった。
ご家族はご主人は亡くなられ
お一人で住まわれていた。
玄関を開けると。
小柄で
遠く昔の事が蘇るような気がした。
奴が惚れた女の面影がある。
丁寧に挨拶をして上がる。
『初めまして』
『先日はお電話頂き有難うございます』
『こちらこそ突然のお電話で』
『本当に申し訳なく思っております』
『早速ですが。お嬢様が夢枕に立たれたとの事ですが』『そうなんですよ。信じられない事ですが』
『娘が夢に出て来る事はありますが』
『まさかと思いました』
『あの調子ですから』
『私とは馬が合わなかったのですが』
『先日は今までの娘とは思えないほど』
『憑き物が取れたというのでしょうか』
『素直に私に頭を下げて謝ったのです』
『一つお願いがありましてとなり』
『〜様の骨を私の墓に』
『一緒に納めてくれないか』
『と丁寧に頭を下げるのです』
『お前ね、散々好き勝手に生きて』
『あげくの果てに自殺して』
『今度はなんだい!その物言いは』
『とその時、現れたのが』
『〜様でして』
『実は私はこの方は電話でお話しているのです』
『声だけは知っております』
『ただお顔を拝見する事は無かったのです』
差し出した昔の奴の写真を見て。
『ああ!この方です!』と涙を流した。
『いえね。私はこの方は』
『電話でのやり取りを知っておりましたから』
『この人ならと思っていたのです』
『〜子が少しばかりいい気になっていたために』
『この方を袖にして』
『良いように。男に弄ばれて』
『最後は自殺でした』
『だから怒ったのですよ』
『お前、それは勝手過ぎやしないかと』
『すると〜様が割って入り』
『お母様、それはもう昔の事です』
『お嬢様も深く反省しております』
『どうか何卒お許し頂いて』
『〜様と私を一緒にして頂けないかと』
『丁寧に頭をお下げになり』
『もちろん、〜子も人が変わったように頭を下げました』
『そして貴方様のお名前と電話番号を・・』と
言って深々と頭を下げて泣き出した。
『どうぞ頭をお上げになってください』と
私は涙を抑えた。
『この男にとって』
『最高の幕引きとなったと思います』
『叶えて頂き感謝しております』
『どうか、何卒宜しくお願いします』
と頭を下げた。
それに続いて家内も頭を下げた。
すると
『〜子も長い寄り道をしておりましたが』
『これで成仏出来ると思います』
と深々と頭を下げて泣いた。
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大変申し訳ございません。不上がり様の仰せになることは、酔った自分の頭ではどうしても理解できません。然らば明日の早朝酔いが醒めてから、再びお邪魔して失礼のないコメントをしたい所存です。
本日も結構なお話を聞かせて頂きました。不上がり様、今週もいい週末となりますことを心からお祈りしています。ありがとうございます。
2018/7/20(金) 午後 8:23
横町利郎様へ
ご丁寧にご連絡有難うございます。とんでも無い事です。大した文章ではありません。思いつきで書いております。何卒お許しください。そして横町様も良い週末をお迎えください。いつも感謝しております。有難うございます。
2018/7/20(金) 午後 8:37
こんばんは
純愛を貫いたのを助けたのはお友達ですね。
こんなことあるかも知れないと思わせるところが
不あがりさんの文才ですね。
「この男」に対する 不あがりさんの目線が優しいですね。
2018/7/20(金) 午後 9:16 [ つや姫日記 ]
つや姫日記様へ
そう仰って頂くと凄く嬉しいです。この男がこの先生きて行く上でどうなるのかなと考えていたのです。やはりこういう形になるのかなと思いました。実はこの女とのやり取りも考えていたのですが。頭に浮かんだのがこの話となりました。いつも感謝しております。有難うございます。
2018/7/20(金) 午後 9:30
昨夜はコメント出来なくて大変失礼しました。ストーリーを拝し、この男には昔よくあった主君の墓の前で殉じた忠臣たる侍の生き方(仰ぐ対象が異なりますが)を重ねました。
御礼
不あがり様の作風と申しますか、人間の奥底に潜むもの(スピリチュアル)をさりげなく表した作品と察しております。
本日もいいお話を聞かせて頂きました。おはからいに感謝しております。ありがとうございます。
2018/7/21(土) 午前 4:37
横町利郎様へ
この話はこんな物語が成立するものかと思ったのですが。何とか纏まったようです。本当はこの男と女のやり取りを語りたかったのですが。こちらが先に出てきてこんな感じとなりました。いつも感謝しております。有難うございます。
2018/7/21(土) 午後 2:38