不あがり

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思わず声をかけた。

はじめに。
ご訪問に感謝しております。
もし時間がお許し頂けるのであれば。
短編5編です。一番下からお読み頂くと。
全てがリンクしている事に気づかれるかと思います。
何卒宜しくお願いします。有難うございます。
 
 
 
 
 
思わず声をかけた。
 
『お久しぶりです。』
その男は一瞬固まってこちらを見た。
サングラス越しにジッと。
 
そして
『おお!』と声を出した。
『俺に女の人が声をかける。青天の霹靂だな』と笑った。
 
『お久しぶりです。お元気でしたか』とまた微笑む。
『少し大人になったね。でも相変わらす綺麗だよ』と
昔とは違って饒舌だった。
 
『でも有難い。今帰り』と時計を見た。
『はい』
『俺、今から食事に行こうと思っているんだ。どうかな』
『はい。喜んで』
『お酒は』
『はい。いけます』
『今は堂々と飲めるね』と笑った。
 
『俺は肉が好きでね。トンカツは大丈夫かな』
『はい。大好きです。』
『じゃあ、私の馴染みの店に行こう。この先にある』
西口の通路を通り東口に出た。
 
コーヒーショップに顔を出し、その帰りに食事を取ろうと思ってね。
縁起を担いで一日一度は西口にでる。今日もそれが良かったようだ。
貴女と久しぶりに会えたのだから・・・』と
言っている内に銀行の裏にその洒落た店はあった。
 
『こことは40年以上の付き合いがあってね。
先代は怖い人だったが。今はようやく私を客として扱ってくれる』と
笑った。ヒレカツの小の定食を二つと酒を注文した。
 
店主は少し驚いていた。
それを見てニヤリと笑った。
 
『ところで今までどうしてた。』
『はい。お陰さまで。何とか生きてきました。』
『今はねえ。人が一人生きるだけで精一杯という時代だ。
生きているだけで十分だよ・・』
 
 
『私、子供が出来たんです。』
『おお!それは良い知らせだ。それは良い。
ああ!良い話を聞かせてくれた。これほど有難い事は無い。
この俺にそんな有難い話をしてくれる。本当に有難い』と
満面の笑顔となった。
 
 
『いやあ。有難い』と酒を注いだ。
この男の喜びようは本当に凄かった。
実はこの男下戸である。
 
寡黙な男がこれほど笑い。
これほど一方的に話をするのは本当に珍しい事であった。
おそらく一生分の喜びとなったようである。
 
少し冷静さを取り戻し。
『所でそんな体でトンカツ大丈夫?』
『もちろん。大好きですから』
『悪いね。私はそういう所は疎いんで』と
恐縮した顔になった。
 
 
そして食事を終えると
『今日は盆と正月が一緒に来たようだ』と勘定を済ませて。
『じゃあ元気でね』とおじさんは私と別れた。
 
 
おじさんにとって
私は10数年前の私である。
とてもこの10年の話は出来なかった。
 
子供が出来たと言って。
あれほど喜んでくれた。
 
今まで誰一人としてそんな人はいなかった。
 
私の彼はそれを言った途端別れ話を切り出した。
 
両親は呆れた顔をした。
 
私はビルから飛び降りようとした事もあった。
 
これで踏ん切りがついた。
私は子供を生む。
 
おじさんの前で私の生んだ子を見せるんだ。
それはいつになるか判らない。
 
今日もおじさんの名前を聞けなかった。
おじさんも私の事を詮索するような事は無かった。
何年先になるか判らない。
 
でも私は子供を育てて
たおじさんと会う事を楽しみにして生き残る。
 
 
 
 
 
 
 
追記。
これも前作『おじさんの事を思い出す』と微妙にリンクしております
お読み頂ければ幸いです。
その前の作『最高の死を迎える』となります
何卒宜しくお願いします。
その前の作『嘘も方便』となります。
何卒宜しくお願いします。
そして『初めての帰省』となります。
何卒宜しくお願いします。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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