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久しぶりに小説を書いてみました。
フィクションです。お読み頂ければ幸いです。
メリー・クリスマス そしてクラッカー
男が入院して数ヶ月になる。
脳梗塞であった。
数日間の昏睡状態から目覚めた男は
どこも悪くないように思われた。
『あなた、気分はどう?』
『大分、寝ちゃったね』
と女が笑った。
『あなたは誰ですか』
『どこかで見た事があるが』
そばにいた医者が
『奥様ですよ』
『いや私は結婚しておりません』
『何を仰るのですか』
『いや本当です』
『判りました。少し寝ましょうね』
と言って。
その妻を連れて病室を出た。
『奥さん、ご主人は意識障害を起しているようです』
『と言いますと』
『脳に少なからずダメージを起した訳です』
『記憶が途切れる』
『或は忘れ去る事があります』
『私の事を思い出せないという事ですか』
『考えられます』
『ただこれが一時的な事』
『或は永久的な事になるかは判りません』
『ただ、希望を捨てないで下さいね』
『心療内科医を呼んで聞いてみましょう』
それから一週間が経った。
相変わらず男は妻に対して余所余所しい。
そして
『どこかであなたを見たと思うのだが・・』
『もしかして〜さん』
と女の旧姓を呼んだ。
『はい!でも今はあなたの妻ですよ』
『いや、それは無い』
『あなたは俺を捨てたじゃないですか』
『思い出したよ』
『上司と二股かけて』
『アイツを取った』
『それが今、どうしてここにいる!』
『あなた、それは誤解よ』
『確かに私は〜さんともお付き合いがありました』
『でも私はあなたを選んだの』
『それは無いぜ』
『この通り私は独り者だ』
『いや、私はあなたの妻です』
押し問答である。
『帰ってくれ』
『同情はゴメンだ』
と男は強く女に言った。
心療内科医に相談する。
『奥さん、立ち入った事をお聞きしますが』
『そのご主人が言った方とはどういうご関係ですか』
『お話出来る限りで結構ですが』
『実はですね。私はとんでも無い女でして』
『上司と不倫関係にありました』
『その時に今の主人と出会います』
『一度は主人と別れたのです』
『私がバカだったもので・・』
『初めての男でしたので別れられなかった・・』
『上司は不倫関係がバレると私を捨てました』
『そして勝手な私は主人の元へ縋ったのです』
『主人は私を許してくれて』
『二人でその会社を辞めて』
『新しく出直して今の生活があります』
『私はそれ以来・・』
『主人以外の人とはお付合いありません』
『今思うと凄く恥ずかしい事で』
『どうしてあんな事になったのか』
『それを後悔しております』
と泣き出した。
『奥さん、ご主人はおそらくですが』
『あなたに捨てられた時の記憶だけが』
『蘇っているのだと思います』
『ご主人はこの数十年』
『胸の内に仕舞ってあった記憶が』
『強く出てしまったと思います』
『今のご主人はその当時の記憶しかない』
『それって回復するものなのですか』
『いや、それは判りません』
『何かのきっかけがあれば』
と医者は考え込んだ。
『ただですね。あなたを本気で嫌っている訳では無い』
『嫌だったら。私たちにあなたを追い出して欲しいと言う筈です』
『どうでしょう。新たなあなたのアプローチがあればと思うのですが』
『と言いますと』
『いやですからですね』
『ご主人はあなたに捨てられた所で』
『記憶が途絶えている』
『奥様がその途絶えた先を繋げればと思うのですが』
『如何でしょう』
『・・・』
『ですからね。昔のあなたに戻れば良いのですよ』
『あなたが不倫相手に捨てられた時』
『どう行動を取ったかです』
『ご主人はあなたに捨てられたままとなっているからです』
『あなたの愛情次第で記憶が戻る気が私はするのですが』
女はそれ以来、夫に付かず離れず
一緒に話をしたり病院の庭を歩いていたりした。
男は相変わらずよその女性と話をしている風ではあるが。
少しずつ打ち解けて来た。
しかし呼び名は以前として旧姓〜さんであった。
数ヶ月が経った。
もうその年が終わりを告げようとしている12月。
女が病室内にクリスマスの飾りをつけようとした。
男は
『ここは病院ですよ』
『だってクリスマスツリーだって飾られているじゃないですか』
『まあそうだけど。良い歳をして恥ずかしい』
『私はあまり好きでは無い』
『良い事なんか無い』
『でも良いじゃないですか』
『楽しみましょう』
『はい!これクリスマスプレゼント!』
『私に!?照れるな』
と嬉しそうに受け取った。
その箱を男が開けずに何だろうという顔をしていると。
『メリー・クリスマス!!』
と女が言って。
クラッカーを鳴らした。
一瞬驚いた顔をした男は
『あんたはいつもそうだな』
『ここは病院ですよ。ホント大人げ無いんだから・・』
『君の悪い癖だ』
と怒った。
それを聞いた女は。
ハッとした顔をして涙を流した。
『ゴメン!泣かないでくれよ』
『俺は嬉しいよ。でもねここは病院だからね』
『他の人の迷惑になるだろう』
『有難うね。泣くなよ』
『頼む、俺が悪かった』
そこへ音で駆けつけた看護婦と医者が
『困りますよ。ここは病院ですよ』
『いや、妻がおっちょこちょいなものでして・・』
『ホント申し訳ない・・』
と男が謝った。
女は顔を崩して泣いた。
コメント欄を開けましたが
まだかなり体が弱っております。
スミマセン。言い訳をしております(笑)。
リコメが遅れるかと思います。
何卒お許し下さい。
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2016年12月25日
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