|
睡眠薬 超短編小説です。
毎月行く心療内科であるが。
どうも最近誘眠剤だけでは寝られない。
いつも薬だけ貰っていた私であるが。
久しぶりに診察を受けて睡眠薬を貰おうと思った。
待合室の椅子に座る。
この雰囲気が好きでは無い。
周りを見ると皆病人に見える。
当然である。ここは病院である。
私の前の椅子に座っている
初老の女性が少し気になった。
その俯き加減、小柄な体形、
どこかで見た事がある。
そして私の視線を感じて
顔を上げた時確信した。
間違い無い。
少し立ち上がりながら
『あの〜、もしかして〜さん?』
『はい、旧姓ですが』
『どちら様で』
と私の顔を見た。
その声も間違い無い。
私の名前を言うが。反応が無い。
『憶えておられませんか』
『ゴメンナサイ』
『スッカリ物覚えが悪くなりまして』
『いや、私はアナタの同級の男です』
と誤魔化した。
そして隣の席に座った。
『ああ、そうですか。ゴメンナサイね』
『所でどうなさいました』
『お恥ずかしい話ですが』
『主人が亡くなりましてね』
『それ以来、どうも落ち込みが酷くて・・』
『ああ、それはお気の毒に・・』
そのあと堰を切ったようにご主人の事を話し出した。
まるで私が心療内科の医師であるかのように。
私はそれにひたすら相槌を打ち。
それは大変でしたね。と繰り返した。
一頻り話すと。
彼女の診察の番になり席を立った。
『有難うございます。少し気が楽になりました』
と言って診察室に入った。
暫くすると入れ替わりに私が呼ばれた。
私は医者にこれまでの事を話し。
眠れないので睡眠薬を頂きたいと話した。
一つだけ言うのを止めて。
診察室を出ると当然の事ながら彼女は消えていた。
私が長年この女性の事を
想い続けて独りでいた事を知る由も無く。
というより
彼女は私の事はスッカリ忘れていた。
記憶の片隅にも無かった事が解った。
今日から飲む睡眠薬が手放せなくなるなと感じた。
注・
只今、体調不良のためコメント欄を閉じさせて頂きます。
何かございましたら。ゲストブックにお願いします。
|
過去の投稿日別表示
[ リスト | 詳細 ]
2017年03月16日
全1ページ
[1]
|
老いたれば あっという間の 昨日今日
只今、体調不良のためコメント欄を閉じさせて頂きます。
何かございましたら。ゲストブックにお願いします。
|
全1ページ
[1]




