|
この物語は『久しぶりに会う』の続きとなります。
お読み頂ければ幸いです。
墓参り
7月の雨が上がった頃、
私は奴の家を訪ねた。
何の連絡もせず。
やはり、居ないかと。
来た道を遡って歩いていると。
奴が向こうから歩いて来る。
夕日を背に浴びて。
『おお!お前何してる!』と奴が言った。
『今お前の所を訪ねた所だ』
『お前こそ、このクソ暑い中、どこへ行っていた』
『墓参り』と赤い顔をして言った。
『おお!親父さんとお袋さん、喜んでいたろう』
『バカ言ってんじゃねえ』
『あんな所誰が行く』
『女の所さ』と笑った。
『誰だ!?それ!?』
『お前、それは無いだろう』
『お前が遭った女だよ』
『何だ!それ!』
『お前は冷たい男だな』
『!?』
『覚えてないのか』
『数年前の事を』
『恐ろしい事、言うな!』
『何が恐ろしい』
『まあ、良いや』
『俺んちで少し休んで行けよ』
『折角来たんだから』と
来た道を折り返した。
『お前、酒飲んでんのか』
『顔が赤いぞ』
『バカ言え。俺は下戸だ』
『日焼けしたようだ』と笑った。
奴の家に戻る前にコンビニにより。
酒とツマミを買ったというより。
奴が買ってくれた。
家のドアを開けると。
ムッとするような暑さと空気である。
その顔を見て。
『悪い、独り者なんでな』と笑い。
エアコンを入れた。
そして空気を入れ換えるために窓を開けた。
ようやく人の空気が吸える環境になった。
『所でよ』
『俺が遭ったって女』
『あの女か?』
『ああ、あの女だ』
『〜子っていう名だ』
『お前にとっては』
『ただの俺の知り合いの女かも知れないが』
『俺にとっては掛け替えのない女だ』
『お前のお陰でよ』
『居場所が分かった』
『有難うな』と笑った。
『でもよ。もう死んだ女だぞ』
『そんな事は構わない』
『人を愛するってのは』
『生きた死んだは関係無いだろう』
『死んだから次の女に乗り換える』
『それは失礼な話だろう』
『まあ、そうだけどよ』
『それはともかく、まあ飲めよ』と酒を出した。
『氷いるか』
『いや冷えているからいらない』
『まあ、あの女にとって』
『俺は忘れられた男だけどよ』
『でもよ、今はいつでも会いに行ける』
『それも近くだぜ』
『こんな有難い事は無い』
『生きていれば』
『俺はストーカーだよな』と笑い。
『今日はよ』
『体を洗ってやった』
『俺を思い出して来てくれれば良いんだが』
『お前が来た時、俺の家に現れたのに』
『未だに俺の所には現れない』
『理不尽だよな』
『でもよ。お前に会うために』
『出て来たという事は』
『俺の居場所も知っていた事になるよな』
『心の片隅に俺の事があったからだと思ってる』
『それだけでも有難い』
『まあ、それでよ』
『墓石を洗って』
『線香を上げて』
『酒も置いて来た』
『俺と違って酒飲みだったからな』
『俺も付き合って』
『少し、カンチュウハイとかいうものを飲んだ』
『だから顔が赤いのかも知れない』
『あの女は幸せな女だな』と言うと。
『まあ、俺は一生独りだと思っていたが』
『お前のお陰で独りでは無くなった』
『有難うな』と
奴は少し涙を流した。
この物語の続きが
『骨を納める』となります。
お読み頂ければ幸いです。
有難うございます。
|
過去の投稿日別表示
[ リスト | 詳細 ]
2018年07月11日
全1ページ
[1]
全1ページ
[1]




