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夢の中
ある日、
これは夢であると気付く。
私の前を女が素知らぬ顔をして通り過ぎる。
いつもは私も気付かぬ振りをしていた。
今日は追った。
そして追いつき手を握った。
すると女がいきなり唇を合わせて来た。
それに夢中で応じたが。
これは夢だとやはり気付いて目を覚ました。
すると周りがやけに騒がしい。
アレッ!?
と周りを見回そうとすると。
私の唇を放した女が。
『続き!』と言って。
唇を合わせた。
すると元いた場所に戻った。
そして『夢だけど、現実よ』
と女が唇を離して言った。
エッ!?という間も無く、
また女は唇を合わせた。
お互い夢中である。
これが現実か。
いやそんな事はどうでも良い。
周りの事もどうでも良い。
一頻り貪るように唇を合わせていた女が。
『あなた!』
『やっと私を追いかけてくれたわね』
『今まで何よ!私を無視し続けて』
と怒るように言った。
そして
『あなたは私の事好きじゃ無かったの?』
『いや、もちろん好きだよ』
『嘘!』
『だったら何でもっと早く追って来なかったの』
と私の事を責めた。
『あなたはいつもそう』
『周りばかり気にして』
『いや、だけどね』
『だけどじゃない』
『その気持ちがあなたには欠けている』
『だって君は社長の女だろう』
『だから何よ』
『社長の女だから遠慮したの』
『何で私を奪おうとしなかったの』
と泣きじゃくった。
『悪かった。俺が悪かった』と体を強く抱きしめた。
すると
『何であの時』
『こうして抱いてくれなかったの』
とまた泣いた。
『悪い、あの時は手が出せなかった』
『意気地なし』となじった。
『もっと強く抱いて』と言って
また激しく唇を合わせて来た。
それに応じると。
もう周りの事は気になら無くなった。
そして愛し合う。
夢の中である。
これが何処なのか。
いったいどういう状況なのかも分からない。
そして、
女が
『このまま一緒にならない?』
『もちろんだよ』と笑った。
すると先ほどから
鳴り続けた心肺停止の
警報ボタンのスゥイッチを看護師が切った。
男の顔は最初は苦しそうであったが。
今は微笑んで見える。
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