不あがり

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愛しき時計

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アンティック・ロレックス ピンク文字盤 その別れが辛かった。
 
イメージ 1
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『人生別離足る』というがそれでも辛い。
その別れが多すぎる。
歳をとるとその回数が増える。
 
そして、さよならだけが人生だと
別れを告げる日がいずれは来る。
それでも辛い。
 
この時計との別れも辛かった。
人生別離足る。 
 
救いはこの時計を手に入れた方が
私の事情を聞いて『私があとを継ぎます』。
 
その言葉に救われた想いがした。
元気で無事でいるのだろうか。
きっと元気で無事でいる事だろう。
さよならだけが人生だ。
 
 
1940年代 口径28ミリ ラグ幅15ミリ。
オリジナル文字盤。フラットベゼル。
そして大好きなペンシル・ハンド。
全てが素晴らしかった。
有難う。
愛しきアンティック・ロレックス。去って行った時計。
 
私は一時期、時計にはまりにはまった。
狂ったと言っても良いと思う。
これほど夢中になったのは後にも先にも無いと思う。
 
アンティック・ロレックスの出会いは意外に古く。
1982年頃だった。
逆算して判ったのだが。
当時、ロレックスというとサブマリーナ、エクスプローラー1とか。
素晴らしい時計が巷を席巻していたが。とにかくデカイ。
私の腕には全く合わない。借り物の時計をしているようでいやだった。
 
そんな中。渋谷から近い代官山に洒落た店があった。
ロイド・クロージングという店だった。古びたアパートの1階にあった。洒落た服や小物を置いてあり。かなり通好みの店であった。
そこにはパーカーのビックレッドという
赤い軸の万年筆も置いてあった。
マッカーサーが確か日本が降伏の調印をした時に使った万年筆だ。
私は思わず買った。後に万年筆を使わない私は知り合いの
万年筆好きの男にそれをあげると
当分の間、食事を何度もご馳走になった。
それほど珍しい物だったらしい。
 
そこで初めて1940年代のロレックスを見た。
大きさが可愛い。口径28ミリの可愛い大きさだった。
しかし値段が可愛くない。良いなあと思ったのが。
9万円だった。後ろ髪を引かれる思いで帰った。
その後1ヶ月を必死で働いた。その給料日の日に
その足でロイド・クロージングへ向かった。
当時手取りが12万そこそこである。
店の閉め間際に何とか入り。その時計を指差した。
丁寧な若い店員の方は、もう一つの自動巻きを薦めた。11万。
今思うとバブルバックの良い物だった。11万は買いだった。
この店員さんは本当に良い人であった。
そしてその二つの時計を私の手に合わせると。
9万の時計、『この時計の方がお似合いですね』と言った。
その時計は丸型の全数字の手巻き時計だった。
それからしばらく私は幸せだった。残念な事にこの映像は無い。
 
それから10年後アンティック・ロレックス・ブームになる。
ビギンという雑誌にこの時計は載った。新年号だった。
 
ロレックス60年代製スピードキング
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ボーイズサイズ・ラグ幅17ミリ・口径28ミリ
 
カジュアル・ロレックスと称して。この黒文字盤の時計は
60年代製、スピードキング。枯れたフェイスがすでに詫び寂びの境地。148000円』と書かれていた。
この時計を見て居ても立っても居られなくなった。
もう狂っているのである。即電話をして手に入れた。
9万で高いと思っていた男が。
 
あとで判る事だが。文字盤はリダン・ダイヤルである。
つまり描き直したダイヤルでオリジナル重視の
時計オタクの間では相手にされない。
しかしその時はそんな事はどうでも良かった。
 
この文字盤はパティック・フィリップ96モデルのパクリである。
そして針はペンシル・ハンド(鉛筆の形をしている)で
40年代の針である。
そして時計のケースはおそらく60年代の恐ろしく使い込まれた物で。はっきり言えばゴチャ混ぜの時計だった。
 
でも私はそれを知ってからもこの時計が好きだった。
この時計を作ったであろう男のセンスが気に入っていた。
何より、このペンシル・ハンドがたまらなく好きなのだ。
 
最初は気づかなかったが後に手に入れているロレックスは
殆どがこのペンシル・ハンドの物になる。
それに気づくのは大分後になってからの事だった。
 
先の時計とこの時計を手に入れた私は本当に幸せだった。
その時計たちは今はもう居ない。非常に寂しい。
 
今回この記事を書くことが出来たのは
この時計の映像が見つかったからだった。
去年の暮れ、いつまでも昔の映像を未練がましく
持っていてもダメだと思いPCから消去した。
 
一昨日、デジカメを久しぶりに引っ張りだし。映像を確認すると。
デジカメの映像も消去していたのだが。薄く見えたので。
再読み込みをするとこの映像が出て来た。
悲しいけど。蘇った映像を見ると何とも嬉しいものだ。
その当時の事が昨日のように蘇って来る。
 
今はどなたかの腕を飾っている筈である。
元気であって欲しい。
 

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