不あがり

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俺じゃない

この物語は『物の弾み』の続きとなります。
お読み頂ければ幸いです。
有難うございます。



俺じゃない

誘眠剤を飲むと眠れるのであるが。
仕事の嫌な癖で3〜4時間寝ると目が覚める。
これは仮眠の時間と全く同じである。
それでも意地で寝る。

そして起きると夕方となっていた。
まだ少し明るい。

まあ、俺の所には日差しは差し込まないので
どちらでも良い事である。

あとはボンヤリとその背を
柱に立てた枕によりかかり
目が覚めるまで待つ。

留守電は電話の音を消してあるので
何があろうと出ない。

とにかく人と話をしたくない。

テレビももう観る事が出来なくなり。
CDをかける。

目覚めの時、必ずかける曲がある。
リー・リトナーのモーニング・グローリー。

この曲は気だるい歌声と
それとは逆に切れるようなギターと
パーカッションが何とも俺にあっている。

気だるいのに切れる。
この矛盾が良い。
この曲を何回か聴いている内に
目が覚める。

少し腹が減った。
とにかく肉が食いたい。
それだけだ。

草食系と呼ばれる時代であるが。
俺は肉が無くてはダメだ。

肉を食うと瞬間的な力が出る。

俺にとっては
非常に大切なのである。

ある瞬間に力を発揮する。
俺の仕事には必要である。

瞬発力が
恐怖を取っ払ってくれる。

だから電車の前にも
飛び込む事が出来た

動物性蛋白脂肪は
野生の本能を呼び覚ます。


そして
俺はいつものトンカツ屋に顔を出す。
まだ朦朧としているが。
ヒレカツ定食の小を注文する。

ボンヤリしていると。

店の主人が
『あの〜。もしかして昨日・・』
電車の前に飛び込んで人を助けたのは・・』

『そんな事があったの』
『はい、今テレビで探しています。』

『ああ、そうなんだ』
『テレビが無いんで判らない』

『お客さんに似ているのですが・・』
『それ他人のそら似だよ』

『でも・・』
『俺じゃない』
と話を切った。


待望のヒレカツが到着する。
これさえあれば何も入らない。
黙々と食べる。

『ああ、美味かった。感謝しているよ』と
店を出る。

朝寄ったコーヒーショップを目指す。
西口へ出る。

良い事があるかも知れない。
ある訳は無いのだが。

そこでカフェオレを頼んでタバコを吸って
俺の一日の〆となる。

判で押したような休日の終わりである。

少しのイライラを残して。

これが明日の力となる。





物の弾み

この物語は
俺は俺の道を歩く』の続きです。
お読み頂ければ幸いです。



物の弾み

コーヒーショップを出て。
さて何処へ行こうかと考える。

俺の同僚ならおそらく競輪競馬かオート。
或いはパチンコだろう。

こんな人のために命を懸けるような仕事をして。
明け日に博打などやってられるか。
その気持ちが判らない。

物の弾みとは恐ろしい。

昨日助けた女の子だって。
俺の仕事の流れで助けただけだ。

今電車の前に飛び込めと言われたら
真っ平御免である。

勝手に死ねとなる。

あの子にしても
物の弾みで飛び込んだのだろう。

またやるのか。
まあそれはあの子の好きにするが良い。
俺にはかかわりの無い事だ。

大体俺自体物の弾みで生まれて来た。

お袋の話じゃ。
『お前なんか生むつもりは無かった。
あの時盲腸を医者が見逃して腹膜炎を起こした。
その時、お前が見つかった。
お前を堕すと私が死ぬ事になる・・』って事は
自分大事で俺が生まれた事になる。

万事が万事全て物の弾みである。

そんな事を考えながら歩いていると。
もう東口となる。

裏道を歩いて家に戻ろう。
この明るい日差しが俺には向いていない。
そして表通りが似合わない。

なるべく人の顔を見ずに歩きたい。
どうしても人の姿があると。

その習性で人の動きを追ってしまう。
こんな時だけでも人の事は忘れたい。

ひたすら裏道を歩く。
人と出会わない事を祈りながら・・
ようやく家の前に着いた。

玄関を開けるが誰もいる訳も無く。
逆にいたら怖い。
泥棒である。

本日も数日空けた部屋は無事である。
この場所は仕事仲間も知らない。
あんな奴等に知られたら盗みに入られる。

これで俺が死んだら。
会社から数度の留守電が入り。
その何度目かの後に
『お前は解雇だ』と入る筈である。

そんな仕事であり。
会社だ。
俺が死んでもおそらく誰も気づかない。

誘眠剤を口にする。
これで明るい内には目が覚めないであろう。
俺には明るい所は似合わない。

そして浮世のバカは起きて働くか(笑)。

  


俺は俺の道を歩く

昨日の『埃っぽい所が俺にあっている』の続きです。
お読み頂ければ幸いです。



俺は俺の道を歩く

とんだ明け日だったな
思いながら改札を抜ける。

俺の住んでいる所は東口だが。
西口へ出る。

何故か西口に出ると良い事がある。
これは俺の勝手な想いである。

そしていつものコーヒーショップで
カフェオレとピザトーストを頼む。

本日は本休である。
即寝ないで良い。

昨日はタップリと寝た。
こんな時、可愛い女が家で待っていれば
喜んで帰るが。

世の中、そんなに甘くは無い。
これが現実である。

いつもの通り孤独な一日の始まりである。

でも昨日の女の子のように。
電車に飛び込むまで追い込まれていない
それだけでも幸せと思わねばいけないのかも知れない。

そんな事を考えている内に
カフェオレとピザトーストが到着した。

これは明けの日しか食べられない。
このタバスコが鼻にツンと来る所が良い。

仕事中は胃に持たれて寝られない
それを食べられる。
俺はやはり幸せ者だと思う。

それにしても今の世の中はちょいとおかしい。
若い子が死を覚悟するまで追い込まれる。

弱いのか。いやそんな社会なんだろうな。

俺は自分で招いた人生だからまだ納得出きるが。
あの子が明るい顔して人生を渡って欲しい

そんな事を願っても。
残念な事に
俺には何も出来ない。
それが歯がゆい。

タバコに火を点ける。
これがあると俺は救われる。
一息吸い込む。

それにしてもタバコもいつの間にか
嫌われ物になってしまったな。

ついこの間まで
男の嗜みと言われたものだ。
不思議な世の中になったものだ。

この流れに乗れない者は
脱落者となるのかも知れない。

それを覚悟でやる者と
それに乗る事が出来なかった者
違いは大きい。

もちろん俺は前者である。
誰がなんと言おうと俺は俺の道を歩く。
それだけだ。

そしてもう一本タバコに
火を点ける。
そしてタップリと吸い込む。






埃っぽい所が俺にあっている

時計は朝の9時半を回っていた。
電車を乗りかえて次のホームで待っていた時である。
仕事明けである。あと一駅で家に帰る事が出来る。
そんな気持ちで立っていた。


その時である。
俺の肩をかすめた女がいる。
そして線路に飛び込んだ。

一瞬、呆気にとられたが。
思わず後を追った。

その女の手を取ったが暴れる。
しかし電車の姿は見える。

顎に一発食らわして
線路の外へ倒れこんだ。

その時、ブレーキの軋む音を聞いた。
そして俺の前を通って止まった。
轍が顔の前にある。
気持ちの良い物ではない。

『大丈夫ですか』と反対側から声がする。

『ああ、おそらく』
『悪い、担架を二つ持って来てくれ』
『それとそちら側の電車も止めてくれ』
と叫んだ。

何故担架を二つかというと。
俺の体がいう事を利かない。
足の震えが止まらないのである。

映画やテレビのようには行かない。
それに気がつかれないように平静を装った。

俺に抱かれている女は気を失っている。
担架は素早く運ばれた。

この女の頬を軽く叩くと目が覚めた。
顔色は真っ青である。
そして泣き出した。

俺はもう一つの担架に乗せられた。
救急車が到着する頃には俺の足の震えも収まった。
起き上がろうとすると。

駅員が
『そのままにしていて下さい』
と言った。

まさか足の震えで立てなかっただけだとは言えず。
従った。

同じ救急車に乗った。
病院に着く頃には俺は回復していた。

しかし女は興奮状態が続いていた。
いや救急車に乗ってからの方が興奮していた。

そして俺に食ってかかった。
『何で助けたのよ』
『それが俺の仕事だ』

『仕事?』
『用心棒さ』

『丁度明けの日だ』
『その気持ちが抜けていない』
と笑った。

『笑い事じゃないわよ』
『私はね・・私は・・』

『死ぬつもりだったと言いたいんだろ』
『だけどよ。死ぬなら』

『人の迷惑のかからない所でやるべきだろう』
『アレで轢いた運転手の気持ちを考えたか』

『まあそんな余裕は無いよな』
『何があったか判らない』

『だけどよ。死ぬには早いんじゃないか』
『生まれ変われないんだぜ』
『二度とな』

『一度きりの人生だ』
『まあ生きていても面白くは無い』

『だけどよ。良い事があるかも知れない』
『人生ってのは長いようで短い』
『短いようで長い』
『少し頭を冷やすと良いぜ』

『今、顔色は戻って来たけど』
『真っ青だったぜ』
『まあ焦るなよ』と
俺は話を切った。


病院に着くと。
それぞれ別の部屋へ運ばれた。

医者が
『二人とも擦り傷はありますが』
『大丈夫なようですね』
と言った。

『お陰様で』と返した。

『あの子は?』
『大分落ち着かれたようです』

『あの子の事を頼む』
と起き上がろうとすると。

『念のためにCTにかけたいと思います』
『有難いけど』

『俺は日雇いだ。金が無い』
『いやアタナは人の命を助けた人ですよ』
『そんな事を心配する事は無い』
と笑った。

まさか足が震えて立てなかったとは言えなくなった。
一通りの検査が終わり。

『一晩検査入院して頂くと助かります』と言われ。
『もう大丈夫だよ』
と笑った。

『くどいようだけど・・』
『検査費を払えない』

『先ほどの先生にも言ったけど・・』
『大丈夫ですよ』と返され。

『悪いな。もう何十時間も寝ていない』
『明け日だから寝ている時間なので・・』
とそのまま横になった。

久しぶりの柔らかいベットに
思わず睡魔に襲われた。

翌日、検査らしい検査も無く。
おそらくであるが俺の体の様子を見ていたようだ。
退院の許可が下りた。もちろん何でも無いからだ。

最初の医者が
『あの、報道の方がお話を伺いたいと言っているのですが』
『悪い断ってくれ』

『警察の方に申し上げた通りだと』
『あと出来れば俺の名前などは伏せて欲しい』

『個人情報という事で』
『ところで女の子は大丈夫か』

『はい、今の所落ち着いております』
あの子の事を頼むよ』
『これからがある』


この医者が気の利いた男で
裏口を案内してくれた。

『悪い。これで失礼させて貰う』

俺はサングラスが無事であった事に感謝して。
この医者に礼を言って外へ出た。

ああ!良い空気だ。
埃っぽい所が俺にあっている。






久しぶりの電話

久しぶりの電話
 
 
音を消している電話が点滅しているのに
気づき受話器を手に取る。
 
『お久しぶりです。お元気ですか。〜です』と
快活な声がした。女の声である。
 
一瞬でその声を思い出した。
『おお、お久しぶり。どうしてた?』
『何十年ぶり?』
『お元気でした?』と
立て続けに質問した。
 
『はい。お陰様で』
『相変わらず声が変わらないね』
 
『そうですか』
『いや全く変わらない。その喋り方が』
 
『あはは。もうかなりの年になりましたよ』
 
『いや、そんな感じがしない』
『所で俺の所にどうして今頃電話しているの』
 
『いやあ、ずっと頭にあったのですけど』
中々連絡する機会が無くて』
 
『まあ、良いや、どうした』
『あのですね。ちょいと謝りたいと思いまして』
 
『何!?』
『昔ですね。〜さんが』
 
『人なんか信用できない』
『自分でさえ信用できないからって言ってましたよね』
 
『ああ、今でも変わらない』
『それに怒って私は〜さんと口を聞かなくなったのを覚えています』
 
『ああ、そりゃあ、覚えているよ』
『この人は幸せな人生を送っているなと思ったから』
 
『それがね。あの言葉があっていると気づいたのですよ』
『結婚してから』
 
『というと』
『今思うと私はネンネだったのだと』
 
『気づくという事はご苦労があったようだね』
『こんな事気づかない方が本当は良いんだよ』
 
『あの時余計な事を言ったと後悔してた』
嫌われたからね(笑)』
 
『いや私こそ悪いと思っている』
『それでね。お詫びをしたくて』
 
『そんな事を今頃言われても』
『何かあったの』
 
『はい、私はあれから離婚しまして』
『それはそれは』
 
『でもそれも経験だよ』
『〜さんは結婚されたのですか』
 
『俺が結婚?するわけが無いだろう』
『そうなんですか。』
 
『世の中を悟ったような男は魅力が無い』
『その前に男としてダメだったようだ』
 
『俺を袖にした〜さんは正解だったよ』
『それにしても意外だよ』
 
『あなたが離婚したなんて』
『お子さんは』
 
『もちろんいませんよ』
『この言葉が俺がかけた最後の言葉だったの覚えている』
 
『いえ』
『これ言った時、フンと横向いたのが最後の別れだったよ』
 
『ああ、そうでしたか』
『覚えてないの』
 
『はい』
 
『面白いものだな』
『全く覚えておりません』
 
『あの時の顔が俺には頭に叩き込まれている』
『そんな怖い顔していました』
 
『二度と口聞くかという顔してた(笑)』
『ゴメンナサイ』
 
『いや俺の心無い言葉を許して欲しい』
 
『所で今どうしているの』
『離婚してから実家に戻ったのですが』
 
『即またこちらへ出てきて働いているんです』
『今。〜さんと同じ市に住んでいます』
 
『本当?同じ場所に住んでいても遇わないものだね(笑)』
 
『所で久しぶりにお会いしませんか』
『いや悪いけど』
 
『何故です』
『俺も年とった。人との付き合いを絶っている』
 
『老いぼれた姿を見られたくない』
『私だって年を取りましたよ』
 
『そりゃそうだ』
『ただね。終わった事だ』
 
『いや、まだ私たち生きているじゃないですか』
『いや、終わった過去を思い出したくないだけさ』
 
『残念だけど。そう言われたら仕方が無いですね』
『お元気で・・』と言って電話を切った。
 
 
 
 
 
 
 
 

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