不あがり

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不可思議な小説

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この物語をリチャード・マシスンに捧ぐ。


存在

家に戻り、ドアを開けようとすると
カギが合わない。

カチャカチャしていると警官を呼ばれた。
もちろん、それを呼ばれても何とも思わなかった。

連行される。
彼等は俺の事を疑っている。

『俺が俺の家と言って何がおかしい』
と強く出た。

『それならアナタを証明する物を出して下さい』
『ああ、もちろん』と免許証を出そうとすると。
それが見つからない。

服を脱いで調べたが何も無い。
俺を証明する物が。


警察が強く出る。

『俺の緊急連絡先に電話してくれ』

警察は素早かった。

『今、アンタの言った番号に電話したよ』
『アンタの事は知らないと言われたよ』
と冷たく言った。

『そんなバカな』
『ヤツとは高校時代の同級生だ』
『それを確認してくれ』


『アンタが在籍していた事すら確認出来なかったよ』

『そんな訳無いだろう』
『俺の連絡先の男がそんな事を言ったのか』

『ああ、そう言った』
『じゃあ、高校の方は』

『アンタがそもそも居なかったとよ』
『そんなバカな』

『俺に電話させてくれ』
上に聞いてくる』


暫くして
『お前さんよ。他に何か・・』
『アンタを証明出来る物無いのか』

『俺の知っているヤツに電話させてくれ』
『無理だな』

『テレビを観ていると』
『電話をさせてくれるシーンがあるだろう』

『テレビの観過ぎだ』


『俺の戸籍謄本を取ってくれ』
『それが俺の証明になる』

『確かにそうだな』
『俺の名前は』

『親父の名前とお袋の名前、一字ずつ取っている』
『判った調べてみる』

取り調べ室を出た。


刑事の一人が
『アイツ嘘ついているように見えないのですが』
お前もそう思うか』

『不自然さが無い』
『でもよ。それを証明する物が全く無い』



戸籍謄本が届く。
刑事は愕然とした。

この親と思われる夫婦は
確かに男を捕まえた所に居た。
20数年前に。

男の書いた生年月日が無い。

何故なら
この夫婦には
子供が存在していない。

その親族を追ったが。
今や生存者がいない。


この謄本を持って取調室に戻り。

『残念だったな・・』と
戸籍謄本を机の上に置くと。


男は呆然として
こちらを見た。

その瞬間、姿が消えた。

まるで存在しなかったように。




眠り


眠り

仕事をリタイアして暫く経つ。
独り身というのは本当に楽なもので。
好きな時に寝て。好きな時に起きる。

それを誰も咎める者もいない。
これほど楽な事は無い。

快適な日々を送っている。

暫くして不思議な事が起こる。

夢を良く見るのだが。
夢が非常に現実に近い。

登場人物も昔から知っている人間ばかりである。
その中で私が必死に仕事をこなしている。

そして疲れる。睡魔に襲われる。
不覚にも寝てしまう事がある。
それでも皆、私を怒るわけでもなく。
黙々と仕事をしている。

その朦朧とした中で私はというと
悪いと思いながら眠りに落ちる。

次に目が覚めた時が現実の朝となる。

この中で一つ違うのは
一緒に働いていた男たちは皆、
この世の人間では無いという事である。

私は現実には誰もいない部屋に独りでいる。
何となく夢の中の方が現実味がある。

これが不思議な感覚である。
今まで独りになりたいと心から願っていたのであるが。

独りの生活より。
夢の中で皆と働いている時の方が
何というか楽しいのである。

あの男たちは元気なのだろうかと考えるが。
考える方がおかしいのである。

あの男たちは私が見送った男たちなのである。
日を増すごとに。
夢の世界への憧れというか。
その世界への気持ちが募る。
寝る時間が楽しみになる。

どういう訳か。
寝るとその続きを見るのである。

そんな事があるのかと思いながら。
仕事を続ける。

そして疲れてまた寝てしまう。
そして朝、目が覚める。
その繰り返しである。

考えてみると
これは私が働いていた時。
つまり現役の時の繰り返しである。

これは私が働く事に喜びを
感じていた事なのかと考える。

実際私はそれが嫌で
ようやく仕事を辞める事が出来て
今の時間がある。

それにしても嫌なのは
夢の中で睡魔に襲われる事である。

何というか疲れが取れない。
その話を医者に話すと。

『それは珍しい夢ですね』
『そんな事があるのですね』
と相手にされない。

『先生、これ結構つらいし疲れます』
『何とかなりませんか』

『おそらく体が疲れていないのでしょうね』
『散歩とかなさっておられますか』

『いや全然』
『では先ず散歩をお薦めします』

『それで体を少し疲れさせて寝る』
『そうすればそんな夢は見なくなると思います』

『あくまで私の見解ですが』

確かにそうだ。
夢の中で眠りに落ちるなど普通は考えられない。
医者でも見当がつかないらしい。

今度は散歩に励んだ。
何日も何日も繰り返し散歩をしていると。
体が疲れて来るのが判る。

しかし夢の中では相変わらず仕事が続いている。
そしてその中の一人が
『おう、大分慣れて来たね』
と声をかける。

この男も既に死んだ男である。
夢の中でも判る。

それにしてもコイツは元気だなと
思いながら仕事をする。

そして疲れきって家に着いた所で目が覚める。

何のことは無い。
少しの進歩はしたが。

それは夢の中での
仕事に慣れて来ただけの話だった。


また医者に行く。
今までの事を話すと。

『う〜ん』
それでは誘眠剤ではなく』

『少し強めの睡眠薬でも飲みますか』

『おそらく。これを飲んで頂ければ』
『グッスリと寝られると思います』

『ああ、そうですか』
『助かります』と
その薬を飲んだ。



それから暫くして。
一人の男が死体で発見された。

部屋の中での孤独死である。
かなり発見も遅れた。

遺体を見る限り自然死である。
おそらく眠るように死んだと思われる。

しかし
この男が願っていた眠りで
あったかは疑問である。

それはこの男にしか判らない。



夢の中


夢の中

久しぶりに友人を訪ねる。
訪ねると言っても病院である。
もうあまり時間が無い。

それでも時間を作って訪ねていた。
その顔はやせ細り起きているのか寝ているのか
判らない状態となっていた。

そのベットの脇に座っていると。
声をかけられた。

『おい、来てくれたのか』
『ああ、悪い、逆だなあ』と
笑った。

『所でどうだ』
『ああ、最近良く夢を見る』

『どんな夢だ』
『それがよ』

『どちらが現実か判らなくなる』
『俺、今まで寝ていたろ』

『ああ』
『その夢の中にお前もいる』

『俺が?』
『ああ、それがよ』

『殆んど同じなんだよ』
『ただ今と違うのはよ』

『俺がこんな寝込んでいなくてよ』
『元気に働いている』

『それでよ』
『俺、独り者だろ』

『ああ』

『それがよ。俺を捨てた女がよ』
『俺の女房になっている』

『お前も覚えているだろう』

『あの女だ』
『おお』

『良い女だったからな』
『そうなんだよ』

『気立ても良いんだ』

『俺はあの女に愛されてよ』

『子供まで出来たんだ』
『お前、それ、夢見過ぎだろう』

『だからよ。夢の中の方が遥かに良い』
『あの女とソックリな可愛い女の子が生まれてよ』

『その子のために働いている』

『夢の中の方が良さそうだな』
『そうなんだよ』

俺の人生はホント順風満帆だ』
『女に恵まれ』

『子宝に恵まれ』
『おまけに仕事まで上手くいっている』

『夢の中の方がずっと幸せだ』
『そんな夢、見たいな』

『だろう』
『これほど幸せを感じた事が無い』

『現実と何一つ変わりないが』
『違うのは俺の人生が良いって事だよ』

『お前とはさっきまで酒を飲んでいた』
『下戸なのにな』と笑う


『今、お前がいたので驚いたぜ』

『お前は夢の中でも』

『現実でも同じだな』

『有難うな』


『悪い、また夢の中に戻る・・』

ヤツは深い眠りについた。
目を覚ますこと無く。









人生は判らない

人生は判らない


町の地回りが辺りをまわっていた。

ホームレスの前に立ち。
『新顔さんか』
『はい。宜しく・・』

『あれ!?』
『見た事がある顔だな』

『もしかして〜さんか』

男は押し黙った。

それを見て

『間違いないようだな』
『思わぬ所で会うもんだ』

『だから人生は判らない』
『久しぶりだな』

『返事なしか』
『まあ良いや』

『話したくもないか』
『だけどよ』

この町は俺の町でもある』
『その事を良く考えてくれよな』


『笑わせるな。何が俺の町だ』
『俺に使われていたヤツが』

『偉そうな口を利きやがって・・』

『ああ、やっぱりアンタか』
『まあよ。アンタの言い分も判る』

しかしよ』
『生きて行く上で決まり事ってのがある』

『判るか』

『それを良く頭に入れておく事だな』
『ふん』

『俺に女を寝取られた男が』
『偉そうな口を利くな』

『それも昔の事だ』
『その女はどうした』

『今のお前さんを』
『助けてくれないのか』

『それよりよ』
『今日をどう生き残るかを考えろ』

『この寒空だ。厳しいぞ』
『明日があったら喜ぶんだな』

『うるせえ!』

男は振り返りもせずに歩いて行った。


翌日の朝、
身元不明の
ホームレスの男が倒れていた。
外傷なし。
おそらく凍死である。






出会い

出会い
 
 
久しぶりに暖かい日である。
そんな時は決まって近くの公園のベンチに座る。
すると母子が楽しそうに遊んでいる。
 
それを見て良いなあと思う。
 
『(俺も結婚していれば。あんな娘や孫がいただろうな)』
『(そうですね。いたかも知れませんよ)』と
声がする。
 
驚いて横を見ると。
その母子を見ている女がいる。
 
 
『(幻聴か)』
『(いえ。私の声です)』
 
しかし女は
依然として前を向いていて口など動いていない。
どこから声がするのかあたりを見回す。
 
すると
(隣にいるでしょ)』と
声が返って来た。
 
『俺に話しかけているのは。アンタか?』
『はい』と
初めてこちらを向く。
 
見た事も無い女である。
俺と同じくらいの年の女に見えるが。
 
『私の声が聞こえました?』
『ああ』
 
『良かった。聞こえて』
『俺の事を知っているのか』
 
『はい。存じ上げております』
『お久しぶりですね』
 
『!?』
呆然としてその女を見ていると。
 
『驚かないで下さいね』
『ずっと昔にお会いしております』
 
『悪い、全然覚えが無い』
 
しかしどこかで見た事がある。
何となく懐かしい感じすらする。
 
初めて声をかけて来た女に
それほど違和感を感じない。
 
『覚えておられませんか』
『考えてみれば。遠い昔ですから』と
笑った。
 
しかし孤独な男としては暇つぶしには
良い相手であった。
 
どこかおかしい感じもしたが。
それはどうでも良い。
 
今の時代でまともなヤツを見つける方が難しい。
そんなヤツ等との仕事に明け暮れて来たから。
 
しかしどういう訳か。
女のとの出会いが無かったので少し戸惑った。
 
相手が出会った事があるというのなら。
会っているのだろう。
 
そう思いながら話を聞いていた。
何となく気が合うのである。
 
これが不思議であった。
その日は女の話を聞いて別れた。
 
 
それから
数日後またその女がどこからとも無く現れた。
同じ場所ではない。
 
歩いていると。
『お出かけですか』
『はい、ちょっとこの辺をウロウロして・・』
 
の出会いというのは不思議である。
何十年も生きて来たが
女とこんな出会いは初めてである。
 
ただの散歩であるが。
一緒に歩いていた。
 
『この近くにお住まいですか』
『はい、近くです』
 
『最近?』
『いえ、昔からです』
 
『不思議だな。俺もこの土地から離れた事が無い』
『そうですか』
 
『不思議ですね』
『人の出会いというのは』
 
『確かに』
 
そんな話をしている内にまた別れた。
どこかで会っている。
 
しかし思い出せない。
俺は人の顔だけは覚えている。
 
しかしどうしても思い出せない。
 
女の名前やどこに住んでいるかも
聞きはしなかった。
 
俺にどうして声をかけて来るのか。
それが不思議でならなかった。
 
普通であれば。
 
俺のような男は道で会っても避けて通られたものだ。
 
偶然はそんなに続くものではない。
 
 
数日経って
今度はいつもの公園のベンチに座っていると。
 
その女が現れた。
『お邪魔します』
『いえいえ、どうぞ』
 
『アナタ様とは気が合いますね』
『そうですか』
 
『良く、とっつきが悪いと言われたもんだが』
『いえ、そんな事はありませんよ』
 
『そう、なら良いけど』
『所でさ。ちょっと聞いて良い』
 
『はい。何でございましょう』
『これで三度目だけど』
 
『偶然とは思えない』
『はい、偶然ではありません』
 
『えっ!?』
『私とアナタ様とは出会う事になっておりました』
 
『??』
『言っている意味が判らない』
 
『そうでしょうね』
『どういう事?』
 
私とアナタ様とは前世で一緒だったのです』
『前世!』
 
『はい。思い出しませんか』
『いや全く』
 
『でもどこかで会った事がある感じはしていたが』
『そうでしょう』
 
『だから私と最初に出会った時も驚かなかった』
『!!!』
 
私はアナタ様の事をずーっと見てきた』
そして声をお掛けしていたのですが』
 
『その声が届かなかった』
『じゃあ、何で今こうやって口を聞いている?』
 
『おそらくですが。アナタ様の寿命が近いのでは』
『俺の?今元気だぜ』
 
『私は今まで話しかけ続けました』
『初めてです。アナタ様が』
 
『呼びかけに応えて下さったのは』
『まあ、良いや。いつ死んでも』
 
『話相手が出来た』
『それだけで俺は良い・・』と
自嘲気味に笑った。
 
 
 
男はベンチを立ち上がる事は無かった。
 
 
 
 
 
 
 

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