不あがり

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小説。初めての帰省。

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また小説を書いてみました。もちろん、フィクションです(笑)。
 
 
嘘も方便。
 
 
 
10階の屋上から眺める道路は本当に高く感じる。
落ちるのにどれだけの時間がかかるのか。
 
そんな事より今、
下を覗き込んでいる女の子はどうしようとしているのか。
 
その時、
『何回やっても同じだぜ。そこから落ちれば確実に死ぬ』
『ほっといてよ。煩い』
『いや止めていないよ。好きなようにするが良いさ』
『何よ。それ』
『何回やっても同じだと言っているだけだよ。それ快感か?』
『何その言い方。私はこの世とおさらばしようと思っているだけ』
『でもさ。毎回そんな気持ちで落ちてまた繰り返すのか』
『それどういう意味』
『アンタはもう既に飛び降りているんだよ。
その繰り返しをしているんだ。飽きないか。』と笑う。
 
『何笑っているのよ』
『そりゃ、可笑しいさ。何度もここからアンタは飛び込んでいる』
『だから何度もって何。』
『アンタはもう死んでいるんだよ。
それに気がつかずに毎回同じ事を繰り返している。
今飛び込んでも誰も来ないし助けようともしない。その姿が見えないから』
 
『そ、それってどういう事』
『自ら死を選ぶ奴の最大の欠点は自分の死を自覚しない。
だから何度でも同じ事をやる』
 
『それって私がもう死んでいるって事?』
『ああ、俺の姿、声が聞こえている時点でこの世界の人間じゃない』
『!?』
『生きているなら。下に人が集まってくるだろう。下を見ろ!
誰も気づいちゃいない。気づいているのは俺みたいな奴しかいない。
死にたい気持ちは判る。しかし、人間一度しか死ねないんだよ。
ご両親か親族いるの?』
『はい、両親が故郷に』
『だったら一度。故郷に帰ってみる事だ。
おそらくアンタの墓もあるだろうし。戒名もある。』
 
いきなり
女の子は泣き出した。嗚咽が止まらない。
『泣きたいだけ泣きな』と言って。
その子を抱きかかえた。
しばらく泣いている内に意識が無くなった。
 
 
『おい!聞こえるか』
『ここは何処?』
『どうやら意識はあるようだな』
『私生きてるの?』
『良かった。思い留まって。これから病院に行って少し検査をしよう。
取り合えず怪我らしい怪我は無い。良かった』
 
 
『オジサンは何処?』
『誰、オジサンって』
『そんな人いないぞ』
『最初に駆けつけたのが。通報を受けた警官だ。
そして俺たち。しかしもう大丈夫だ』と
ストレッチャーに乗せた。
 
 
 
 
 
追記。
書き終わって気づいたのですが。
これ前作『初めての帰省』と微妙にリンクしております。
お読み頂ければ幸いです。
 
 
 
 
小説を書いてみました。もちろんフィクションです(笑)。
 
初めての帰省。
 
良く眠った。気持ちが良い朝である。その光が眩しい。
いつものように看護士さんが来る。
『おはようございます。如何ですか』
『おはよう。良く眠ったよ。気持ちが良い』
『それは良かったですね。本日は帰省ですので準備お願いしますね』と
言って出て行った。感じの良い女性であるが。
いつも事務的である。
 
まあ当たり前の事だなと。苦笑いしながら起き上がる。
事のほか、体が軽い。帰省か。ここに来て初めてとなる。
 
軽い食事を取り。一息入れてから服を引っ張り出す。
暑いからなと言いながら。
グレーがかったシアサッカーのジャケット。
それにオフホワイトのチノパン。
それに合わせてオフホワイトの靴下。
シャツはピンクといきたい所だが。
白のボタンダウンを選ぶ。
 
ネクタイは綿の赤と紺のレジメンタルストライプ。
グレーがかったブルーのリボンベルト。
靴は白のグローブレザーのコンバース。
 
それに白のサンド仕上げのサングラスをかける。
 
駅まで車で送ってもらい。電車に乗る。
冷房が効いていて気持ちが良い。
外の風景をぼんやり見ているうちに
見慣れた風景となる。懐かしい。
私の地元の駅に到着する。
 
何となく小さく感じるのは気のせいか。
少し変わった気がする。それはともかく地元は良い。
汚い町ではあるが。住めば都である。
心なしか人通りが少ない。
そしていよいよ我が家へ到着となる。
 
玄関の前に立ち。呆然とする。
表札が違っている。
俺の家だよなと辺りを見回す。
家並みは殆んど変わっていない。
ちょいと外を見てみる。
 
道路側の花壇から俺の家を見上げるが判らない。
事情を聞いてみようと元へ戻ろうとすると。
何かが足に当たった。足元がふらつく。
私が飼っていたニャン子の鈴坊である。
おお!お前、生きていたのか。探したんだぞ。
本物かと言うと。声の出ない鳴き声で
アーと鳴いた。鈴坊だ!虎縞の体に尻尾が曲がっている。
お前、俺を迎えに来てくれたのか。有難うな。
と頭を撫でる。そして抱き上げ花壇の縁に座り膝の上に乗せた。
ゴロゴロ言っているのが判る。凄く嬉しい。
コイツの元気な姿を見るだけでも有難い。
そう思いながら撫でていた。
 
ふと視線を感じて顔を上げるとそこに
男が立っていた。
紺地に帆船柄のアロハシャツを着て、
ジーパンを穿いていた。
 それに麦わらの粋な帽子を被っていた。
 
そして。親しげに。
『アンタ、帰省だろう』
『どうして判る?』
『その格好見れば判るぜ』
『そんな酷いか』
『いや決まり過ぎている。初めてだろう』
『どこ?』
私は後ろを指差した。
『表札が違うって言うんだろう』
『何で?』
『顔に書いてある』
『!!?』
『アンタ家族は。』
『いない。』
『じゃあ、誰が住んでいるの?』
 
この男の言う通りである。
私は家族はおろか親類縁者がいない。
誰が俺の家に住んでいるのか。
 
『アンタよ。そこにはアンタの知らない人が住んでいるんだよ。
訪ねて行っても誰も返事をしてくれないぜ』
『何で?』
『アンタの姿が見えないからだよ』
『?』
『まだ気がつかないのか。アンタ死んでんだよ。
そのニャン子だって。いつまで生きていると思っているの』
確かに鈴坊がいなくなって20年は経つ。
 
『そうポカンとしてないで。
俺、帰ったら女房が新しい男と
楽しそうに暮らしていたよ。
このニャン子が待っていてくれただけでもマシだよ。 
でもよ。このざわついた空気が良いと思わないか。
俺は毎年それを楽しんでいる。
そしてこうやって俺と同じ人に出会える事に。
この世界を見るのも面白い』
 
そう捲くし立てている間も
人が私たちの前を通ったが気がついた人はいないようだ。
車も何台も通過した。
 
『所でよ。ここにいつまで座っていても切り無いぜ。歩かないか』
『いや鈴坊がいるから』
『そのニャン子はアンタが思い出せばすぐ出てくる。大丈夫だ』と
立ち上がった。
私は鈴坊を下ろして立ち上がる。
いつの間にか鈴坊は消えた。
 
そして駅の方に向かった。
『この辺りを歩いているとよ。俺たちのご同類に会えるんだよ。
そしてお友達になる。楽しいぜ』そう言いながら駅に着く。
 
駅の前のベンチにその男と座り、この男が喋り捲っている間。
私は耳に入らない声を聞いていた。そして
『じゃあ、またな』と言って
その男はどこかへ消えた。
 
私が鈴坊の事を考えていると。
いつの間にか私の膝の上に乗っていた。
 
その頭を撫でて駅の前の雑踏を眺めていた。
人の行きかう息遣いは何とも言えず活気を感じる。
 
それに取り残された私は何となく寂しい。
 
鈴坊に
『お前も俺の所に来るか』と言うと
嬉しそうに頭を私の体に擦りつけた。
 
私は鈴坊を抱いて少し早いが帰る事にした。
 
ニャン子を抱いていても誰も咎める者はいなかった。
 
帰りの電車は長く感じたが。
孤独は感じなかった。
 
そこには安心しきった鈴坊が私の膝の上で寝ていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
追記。
お読み頂き感謝しております。
次回作『嘘も方便』に微妙にリンクしております。
お読み頂ければ幸いです。
宜しくお願いします。
 
 
 
 
 
 

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