不あがり

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小説。久しぶり。

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ヒールの音が聞こえる。
 
家に戻りテレビを点ける。
ニュースが流れていた。
内容は耳に入って来ない。
 
変わってないな。
 
レポーターの
左後方に映っているビルに
その会社は在った。
 
 
 
 
 
毎日、毎日が売り上げの戦いであった。
上司から怒号が飛ぶ。
殴られている者もいた。
 
流石に私に殴りかかる奴はいなかった。
この世界は腕も強くなければ生きてはいけない。
幸いこの腕っ節だけが私の生命線だった。
 
しかし売り上げは思うように上がらない。
 
言い訳は通用しない。
 
そこにあるのは売り上げだけだった。
毎日が放心状態となる。
 
その放心した状態で歩いていると。
不覚にも人とぶつかりそうになる。
 
『あ!失礼!』
『アレ!?貴女は』。
 
それがこの女のとの出会いであった。
 
第二営業の華であった。
私の憧れでもあった。
 
もちろん、その時が初めて話す言葉であった。
 
その容貌とは違って意外と気さくであった。
付き合う事になる。
 
この戦いの中で夢のような出会いであった。
 
 
不思議な事に売り上げは伸び出した。
破竹の勢いであった。
 
一ヶ月、二ヶ月と連続トップとなる。
その勢いは止まらない。
 
この女とは毎日、一緒に食事を取る。
どんな疲れも取れる。
そして愛し合う。
 
公然の仲であった。
 
私はこの仕事に就いた事に
初めて喜びを感じたものである。
 
しかし激務は続く。
 
社長自ら
『有給休暇は無いものと思ってくれ』と
激を飛ばされている。
 
寝る時間が無い。
休む時間が無い。
 
仕舞いには何処でも良い
横にならせて欲しいとまで思った。
 
しかしこの女がいる。
それだけが力となった。
 
売り上げが良いと
次の月の事が読める。
そしてそれを実行すると。
その月を乗り切れる。
 
不思議な相乗効果により売り上げが落ちない。
このまま行けるとまで思った。
 
 
そんな中
突然
女から別れを告げられる。
寝耳に水である。
 
その理由が判らない。
 
『貴方とはもう付き合えない』
『この会社の人とは付き合えない』。
 
その意味が判らなかった。
 
その言葉が変わる事を祈るように仕事をした。
それ以外無い。
 
年末になり。
記録を更新して
次の年を迎える時である。
 
ハッキリと断りがあった。
 
『それなら会社を辞めれば良いのか』
『じゃあ、辞める』
 
辞表を出した。 
 
上司は慰留もしなかった。
 
 
 
ビルを出ると。
こんな時に限って雨が降り出した。
冷たい雨である。
 
 
ビルのすぐ前が駅である。
 
傘などいらない。
 
 
その時、
ヒールの音が聞こえる。
 
 振り返ると
その女が走って来た。
 
 
私の前を
見向きもしないで
小走りに駆け抜け
雨の中を走り去った。
 
私は呆然とそれを見送った。
 
 
ヒールの音だけが残る。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
本作は
前作『久しぶり』と微妙にリンクしております。
 
 
お読み頂ければ幸いです。
有難うございます。
 
 
 
 
 
 
 
『久しぶり』のあとがき。そしてこの男と女のプロフィール。
そして少しご解説を。
 
これ読み返すと少し端折り過ぎたようです。
この辺りが未熟となります(笑)。
 
この男と女プロフィールを書きます。
 
男は『昼の住人では無くなった』。
その時点で彼は世間でいう所の堅気の男ではありません。
そして人とあまり接触したくない。
 
だから『ビルの隙間を通って・・』となります。
人が通らない。ビルとビルの間を通って
弁当屋に行きます。
 
そこでドアが開くと辺りを見回す仕草は。
いつも警戒しながら生きている。
あるいはそうせざるを得ない。
 
 
女のプロフィールです。
『似つかわしく無い女』。
これ裏を返すと恐ろしく良い女となります。
 
何故ここにいるのかは不明ですが。
この女もそれなりに苦労して
この吹き溜まりのような町に流れて来た訳です。
 
じゃあ何故、
この男が良い女を無視し続けたのか。
 
これ過去に女で苦労している。
女にはほとほと懲りている。
 
そしてこんな男に誰も話しかける女はいなかった。
そこまで落ちている。
 
だから不思議でならないのです。
『うん』としか応えられない。
 
しかし
この話し方はどこかで聞いている。
それが思い出せない。
 
あまりにもその歳月が長過ぎた。
それに尽きる。
 
女は
出会った瞬間に気づいています。
この辺りは流石なのです。
 
だから声をかける。
しかし相手は無視しているのか。
それとも忘れられているのか。
それが判らない。
 
何かの理由で
この二人は別れる事になった。
しかしお互い惚れているのです。
 
男はその昔の女に想いがある。
しかしそれをも忘れるほど辛い別れであり。
その後の転落の人生を考えるとどうしても忘れたい。
或いは無意識に遠い過去は忘れている。
そして心を閉ざす。
 
良い女とは判っていても。
その苦い経験からそれ以上突っ込まない。
もう火傷はこりごりである。
その意識が働いている。
 
女は何故だろうと思いながら
数ヶ月を過ごして。気づくのです。
その昔この男を誘った出会いを
もう一度試す事になる。
 
そして歩道橋の上での出会いとなります。
 
若い頃の男は先がまるで見えていなかった。
 
しかし今は生き残るために行き交う人の
動きには敏感に反応する。
 
ですから歩道橋を上りきった所で
女を含めて全ての人の動きを把握している。
 
そして女は
昔のように男の前に素知らぬ顔で
その道を塞ぐ事になる。
 
しかし男は
そのまさに劇的な出会いで
去の記憶が一気に蘇る。
 
男は瞬時に反応してその女をかわす。
そして何事も無かったように歩いて行く。
 
女は肩透かしを食わされた事に。
ここで気がつく。
 
普通であれば
これほどの女が目の前に現れれば。
声をかける。或いは立ち止まって顔を見る筈である。
 
それを男はしなかった。
 
ここでこの女は諦める事になる。
 
お互い惚れあっている。
それが数十年ぶりの再会である。
 
それを懐かしむ或いは喜ぶ。
と思われるが。
 
現実はそんなに甘くは無い。
 
全てがもう遅い。手遅れである。
男はそれに気づいている。
 
遅ればせながら
そこに辿り着いた女も
ここで気づく事になる。
 
そして去る。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
本編となります。
あとがきよりずっと短い短編となります。
お読み頂ければ幸いです。
有難うございます。
 
 
 
 

久しぶり。

久しぶり。
 
暑いと思わず叫んで目が覚めた。
時計を見る。
 
昼の12時をとっくに回っていた。
一瞬焦る。
 
しかし本日は
明け日である事に気づく。
少し伸びをして起き上がる。
 
弁当を買いに行く。
眩しい。
 
いつの間にか昼の住人では無くなった。
 
前のビルの隙間を抜けると左にその店はあった。
 
自動ドアが開く。
その周りを見る。
 
嫌な癖である。
 
 
似つかわしく無い女がレジに立っている。
初めて見る顔である。
 
弁当を注文して空いている椅子に座る。
そして外の動きを追う。
 
暫くすると出来上がったと
その女に言われて受け取る。
 
休みに入ると
この店とマックと牛丼屋のお世話になる。
その繰り返しである。
 
生きていれば何かを食わねばならない。
弁当屋にいつものように通っていると。
 
その女が何故か親しげに話をする。
私はただ、『うん』とだけ応えて
『有難う』と受け取る。
 
受け取る物さえ
受け取ればそれで良い。
後は何もいらない。
 
聞き覚えのある話し方である。
 
その繰り返しで数ヶ月が過ぎる。
 
 
 
その日はマックで食事を取り。
機嫌よく外へ出て長い歩道橋を上ると。
 
その女がこちらの方に向かって
歩いて来るのが判る。
サングラス越しに。
 
人は疎らであったが。
その動きは全て把握している。
 
その時。
不意にその女が私の前を素知らぬ顔で塞ぐようにする。
その瞬間である。
 
思わず
『(その手は食わないぜ。何十年ぶりだな。
お互い歳を取ったぜ)』と
その身をかわしてすり抜けた。
 
その歩幅は変わる事なく歩いた。
  
 
翌日、いつもの通り弁当屋に行く。
その女の姿は無かった。
 
二度とその姿を見る事も無かった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
次回作
ヒールの音が聞こえるは本作と微妙にリンクしております。
 
 
お読み頂ければ幸いです。
有難うございます。
 
 
 
 

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