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この物語は
小説、『一夜を切り売りする女』の続きとなっております。
最初からお読み頂けると。この二人の経緯が判ります。
お時間がありましたらお読み頂けると幸いです。
有難うございます。
二人の味
明け日でスッカリ寝てしまっている私は雷の音に起される。
時計を見ると午後5時を回っていた。
そしてその雨音の凄さに驚いていた。
『朝、帰って来た時は晴れだったよな』と考える。
となるとウチのヤツは傘持って行っていないと
慌てて起きる。
軽くシャワーを浴びて目を覚ます。
天気予報を見ると。
夕方から雨となっている。
時間を逆算すると。
いつも6時30分に判で押したように帰ってくる。
まだ間に合う。
雨に降られながら駅に辿り着く。
15〜20分ほどした頃に
向こうから粋な格好をした女がこちらに向かってくる。
髪の毛を無造作に巻き上げてピンで留め。
シャツは白のボタンダウン。
シャツの袖を大きく袖まくり。
少し大きくないか。
それに少しタップリしたチノパンを穿いているが
裾はやはりダブルで巻くってラルフロールか。
ベルトは青のリボンベルト。
足元は素足にコンバース。
格好良い。
これ!上から下まで男物では無いかと思い。
誰だ!
この女はと見ると。
口は真一文字でニコリともしない。
セルのメガネをかけているがこれも様になっている。
その女がだんだんこちらに近づいて来る。
肩から襷がけで青の綿のバック。
これはラルフの物だ。
アレ!?とその女の顔を見ていると。
目が合った途端、
一瞬唇を尖らせたかと思うとニコリと笑った。
『ああ!』と嬉しそうにまた笑った。
『待っててくれたんだ』と抱きついて来た。
『いや、雨が凄く降っているから・・』
『アッ!傘持って来てくれたんだ』
『それより君、その服、俺のじゃない』
『だって使って良いって言ったでしょ』
『いやそれは良いけど』
『これじゃ、男がいるってバレバレだろう』
『そうよ。私はあなたの奥さんだから』
『一瞬、格好良い子が歩いてくるなと見とれていたよ(笑)』
『ああ、私の事に気がついたんじゃないんだ』
『他の女の事考えていたな』と唇を尖らせた。
『いや、あまりにも俺好みの格好だったんで』
『ナンパされなかった?』
『さあて。どうかな』と
いきなり手を私の首に回して唇を奪われた。
『人が見ているよ』
『そんな事は良いの』
『これでナンパは無くなるでしょ』
と笑った。
『所で今日は君の明け日だよな』
『今日は俺がご馳走するよ』
『トンカツ屋行かない?』
『大賛成』と私の腕を取った。
『俺も明け日だし』
『こんな日って珍しいよな』
『いつも擦れ違いだし』
女は男の腕を取ったまま直ぐ脇にある
エスカレーターと反対側へ引っ張った。
西口に抜ける通路を歩くと
東口に下りる階段に向った。
女はとにかく二人で歩く事を望んだ。
階段の踊り場で再び唇を合わせた。
今度はゆっくりと。
これは確認の唇である。
そして裏通りを歩いた。
傘が一本余った。
二人は同じ傘にピタリと一つと
なって雨の中を歩いた。
少し遠回りとなったが
トンカツ屋に入った。
『疲れただろう』
『今日はヒレカツの大にするか』
『一度食べてみたかった』
『あなたは?』
『もちろん小だけど』
『挑戦するわ』
とニコリと笑った。
余程ハードな仕事なのだろう。
いつもの通り美味しそうに食べた。
あと二切れとなった時に
『あなた一つ食べて』
『いやもう良いよ』
『ねえ』
『胃にもたれるから』
『大丈夫よ。今夜はハードだから』
と小声でこちらを見て笑った。
『判ったよ』
『有難う。じゃあ頂くね』
と一切れずつを箸に取り。
口に入れた。
頗る美味かった。
外へ出るともう雨は小降りになっていたが。
そんな事はどうでも良かった。
あらためてどちらとも無く唇を合わせた。
二人の味がした。
注・ラルフロールとは。
パンツ(ズボン)の裾を一巻き又は二巻き
無造作に巻き上げ足首から脛など丸見えになる。
所謂、昔で言えばミユキ族のパンツ丈のような
格好です。数年前ラルフ・ローレンが提唱した
格好ですが。これは日本人には似合いません。
この格好が様になっているという事はこの女の
スタイルがかなり良いという事になります。
コメント欄を開けましたが
まだかなり体が弱っております。
スミマセン。言い訳をしております(笑)。
リコメが遅れるかと思います。
何卒お許し下さい。
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小説。一夜を切り売りする女。
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この物語は
小説、『一夜を切り売りする女』の続きとなっております。
最初からお読み頂けると。この二人の経緯が判ります。
お時間がありましたらお読み頂けると幸いです。
有難うございます。
肉布団
盆が明けようとしていた。
こんな時、私の同僚たちは帰る家も無い癖に
休みを取る。そんな訳で連勤が続いた。
8月16日の朝、明け日を迎え我が町の駅を降りると。
改札付近で青い綿のワンピースを着た女が手を振っている。
『お帰りなさい』と
大きな声を出している。
私は少し照れて赤い顔となったが。
それでも凄く嬉しかった。
彼女は幸いと言うかお盆休みとなっていた。
そして近づいてあらためて『お疲れ様』と抱きついて来た。
『おい、おい、人が見ている』
『良いじゃない。夫婦なんだから』
確かにそう言われればそうである。
しかし迎えに来てくれたのは初めてである。
『何でここに』
『あなたの事だから』
『どこも寄り道しないで帰って来ると思ったの』
『所でさ。今日、明け日でしょ』
『朝食、外で食べない』
『おお!何食べる』
『ビザトーストとカフェオレにしない』
『あなた最近食べていないでしょ』
『いつも直帰だから』
『じゃあ、それにしよう』と
二人で手を繋いで歩いた。
足元は素足に青のサンダル。
『似合っているね。その青』
『ああ、そう』と
恥ずかしそうなを顔をした。
私の家は東口であるので
通路を通って西口のその店に向かう。
店に入ると
『ああ!涼しい!』と言った。
『そうだな』
『ゴメンな甲斐性なしで』
『あ!ゴメン!』
『そんなつもりで言ったんじゃないのよ』
実は家のエアコンが壊れている。
女は嬉しそうに食べた。
実際二人で食べると美味かった。
外へ出るとやはり暑い。
帰りは表通りを避けて。
東口の階段を下り。
裏通りを歩いた。
そして二人の距離がより縮まった。
家に着くと
『一緒にシャワー浴びよ』と
ワンピースを脱いで風呂場へ向かった。
私もその後を追った。
その手際は良かった。
一通りお互いの汗を流すと。
『先に出て待ってて』と言って
あらためてシャワーの音がした。
少し時間がかかった。
寝床の周りにはここ数日バケツに
氷を入れて部屋は若干涼しくなっていた。
この女は何て気の利く女だと思った。
そのお陰で連勤も何とか凌いだ。
するといつもは着替えて来る筈である
その姿は私と同じバスタオルを巻いただけである。
『ねえ、そのまま寝て』と
言って私のバスタオルを外し。
自分のバスタオルも外した。
そして私の上に重なって来た。
思わず
『気持ち良い!』と叫んだ。
『これ!肉布団』と笑った。
『冷たいでしょ』
『ああ、どうして』
『今、水を浴びて体を冷やしてきたの』
『おい、風邪引くぞ』
『大丈夫、私の前の仕事知っているでしょ』
『あなたは水なんて浴びたらダメ』
『久しぶりだけど。あなたは特別ね』と
言って唇を合わせた。
私の中ではこの二人は生きております。
コメント欄を開けましたが
暑さ負けをしておりますのでリコメが遅れるかと
思います。お許し下さい。
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この物語は
小説、『一夜を切り売りする女』の続きとなっております。
最初からお読み頂けると。この二人の経緯が判ります。
お時間がありましたらお読み頂けると幸いです。
有難うございます。
くすぐったい
年末年始と連勤が続いた二人は
15日を過ぎるとあの忙しい仕事が
嘘のように無くなった。
死んだように二人は
重なって深夜まで寝て。
目覚めると一緒に
足をふらつかせながら
二人はお互いを支えるように歩き。
去年と全く同じように
牛丼を食べて。また帰って寝て。
ようやく疲れが取れて来た。
しかし男は疲れが取れて来ると。
また魘されるようになった。
そんな時、
女は男を起こし抱きしめ
子供をあやす様に背中を優しく撫でていた。
男は前より寝ている時間が増えた。
歳のせいもあるのかも知れない。
また眠りが浅い事もあるのかも知れない。
そんな男に女はいつもの儀式として
帰って来ると男の体にピタリと
体をつける習慣はずっと続いていたが。
その時間が前より長くなった。
男が
『寝てないか』
『寝てないわよ(笑)』
『いつもあなたから力を貰っていたでしょ』
『だから、私が』
『あなたに力をあげようと思って』
『そんなに弱ってないぜ』
『そうじゃなくてさ』
『いつも私の事を想って欲しくてさ』
『君のことしか考えていない』
『そうじゃない』
『あなたはお母様の事を想っている』
『思い出したくも無い』
『心の中で思っているの』
『いやそれは無い』
『思っている!』
『だから魘されるの』
『私はこうやってね』
『私の想いを入れているの』
『私の夢見て欲しいから』
『夢って』
『あなたの心が見るものでしょ』
『お母様の事が気になっているの』
『そんな事無い』
『いやある』
『!?』
『あなたはね』
『お母様が亡くなられた事を』
『自分のせいだと想っているの』
『だから、怖い夢を見るの』
『お母様が決して呪っている訳じゃない』
『夢は自分の心を映すの』
『だからさ。こうやって』
『私があなたに重なってさ』
『私の想いが入ってくれればさ』
『お母様の夢も見なくなると思うの』
『ね!だからさ』
『私の夢見てね』
と男の首筋と頬に口付けをした。
『くすぐったいよ』
と笑った。
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この物語は
小説、『一夜を切り売りする女』の続きとなっております。
最初からお読み頂けると。この二人の経緯が判ります。
お時間がありましたらお読み頂けると幸いです。
有難うございます。
朝帰り
二人は前回と全く同じように
ホテルをチェックアウトして一駅電車に乗り。
これも同じくマックにいた。
二階のカウンターの席に二人並んで
外のバスターミナルを見ていた。
『ねえ、昨日は楽しかったね』
『ああ』
『去年と全く同じだね』
『ああ』
『皆が仕事している時間に』
『こうやって外を眺めるって良いよね』
『アレ!?前にも同じ事言ってなかった』
『そうかも知れない』
『私ね。そう思うと』
『何か得した感じがするんだ』
『そうやって。外を見ていたのか』
『アナタは?』
『俺か。今日も仕事が終わったな』
『それだけだった』
『キミはいつも前向きだよな』
『そうかな』
『そうだよ』
『俺はホント』
『キミが来てくれて救われたよ』
『何で』
『今、こうやってキミと』
『同じ気持ちになっている』
『キミと一緒にいると』
『この時間、この世界が良いなあと思う』
『ホント!?』
『ああ、ホントだよ』
女はいきなり手を握った。
そして
『ホントはね』
『抱きしめてキスがしたいけど』
『ここでは出来ない』
『でも嬉しい』と強く握った。
思わず
握り返した。
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この物語は
小説、『一夜を切り売りする女』の続きとなっております。
最初からお読み頂けると。この二人の経緯が判ります。
お時間がありましたらお読み頂けると幸いです。
有難うございます。
イベント月
男が急に唸り出した。
隣りに寝ていた女は慌てて男の体を揺すった。
『アナタ、大丈夫』
その声に飛び起きた男は
『お前、大丈夫か』
『どこも怪我は無いか』
と女を見る。
『私は大丈夫よ』
『ああ、夢か』
『そう夢を見たの』と
興奮している男の頭を優しく抱く。
『どうしたの』
『今よ。何故か判らないのだけど』
『キミを連れて墓参りに行っていたんだ』
『墓の前に立った途端』
『墓の中からお袋が飛び出して』
『キミに襲い掛かった』
『慌ててキミを助けようと・・』
『死ぬ何ヶ月か前に』
『死んだら呪ってやると』
『良く独り事を言っていた・・』
『その通りに俺は色んな意味で落ちて行く』
『だから思い出したくも無い』
『何故か9月になると思い出す』
『どうして?』
『自殺した月だからだよ』
『悪いなこんな話をして』
『キミと一緒になるのが許せないのだろうな』
『俺の幸せな姿が許せないんだろうな』
『キミはそんな男の所に来ちまった』
『ゴメンな』
女は黙って男の背中を撫でていた。
『私はアナタのその苦しみが』
『少しでも私にと思って一緒になったの』
『悪いな。こんな事に巻き込んで』
『だからそれは良いの』
『ねえ、お線香ある』
『ああ、そこの棚の上に積んである』
女は椅子を台にしてそれを卸した。
『ずっと使ってないようね』
『ああ』
灰皿の上に線香を焚いた。
『祈りましょう』
『キミはクリスチャンだろう』
『そんな事はどうでも良いの』
『迷っている人に』
『成仏してもらうの』
『悪いな気を遣わせて』
『だからそれは良いの』
『とにかく手を合わせて』
『いや俺はいい』
『そんな事言わないの』
『ね!お願い』
『ああ、判った』と
二人手を合わせた。
そして
『もしかしたら水が欲しいのかも知れない』
とコップに水を入れてその隣りに置いた。
一通り終わると。
『寝られそう?』
と笑った。
『いや目が醒めた』
『じゃあ、コーヒーでも入れようか』
『ああ』
マグカップにコーヒーを入れて持って来た。
『悪いな』と受け取った。
『ねえ、厄月を良い月に変えない』
『!?』
『だからさ。何かのイベント月に変えるの』
『嫌な事を忘れるために』
『何も良い事無いぜ』
『だから良い事を作るの』
『連休まで時間があるからさ』
『二人っきりでどこか行かない』
『この間のお金が残っているでしょ』
『遠くへ行かなくて良いの』
『二人きりになれる所』
『じゃあ、俺たちが初めて行ったホテルに行くか』
『賛成、あのホテルだったらそれほどお金もかからない』
『私たちのイベントにもなるでしょう』
『広い部屋でさ。タップリ楽しもう』
『それでこの月を忘れよう』
『まだ数日休みがあるでしょ』
『こんな時にこそお金を使わなきゃ』
『ああ、そうだな』
男は線香を一本取り。それを上げた。
それを見て女も線香を上げた。
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