不あがり

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小説。一夜を切り売りする女。

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遅い盆休み

この物語は
小説、『一夜を切り売りする女』の続きとなっております。
最初からお読み頂けると。この二人の経緯が判ります。
お時間がありましたらお読み頂けると幸いです。
有難うございます。



遅い盆休み

『目が覚めた?』
その声にようやく反応した。

『ああ、疲れたよ』
『久しぶり』

『盆も暮も無いというのはこの事だな』
と笑った。

『流石に10連勤を超えると参るわ』
『一日16時間だからね』
『今日から今月いっぱい仕事無しだ』

『平均して仕事があると良いんだけど』
『そうは問屋が卸さないか』

『もう少し寝てる?』
『いや起きる』

『じゃあ、コーヒーでも入れようか』
『おお、有難う』


『でも魘される事も無く寝られたようね』
『ああ、お陰様で』
マグカップを受け取りながらそう言った。

『キミがいてくれるお陰だよ』
『感謝している』

『でもキミだってずっと仕事だったろう』
『うん、まあね』

『まあねって。大丈夫なのか』
『私はアタナがいるから頑張れる』

『ホントか?』
『ホント!』

『何か照れるよ』
『キミにそんな事言われると』
と頭を掻いた。

『キミの方の仕事は?』
『アタシの所も殆んど終わった』

『盆休みから帰って来ると』
『その分、皆取り返さないといけないから』

『そうなんだよな』
『俺たちには盆は関係無いから駆り出される』

『考えてみれば罰当たりだよな』
『俺たちは』
と苦笑いした。

『俺たちきっと地獄へ落ちるぜ』
『良いわよ。アナタと一緒なら』

『ホントか?』
『ホント!』
と言って手を握った。
男は握り返した。

『アナタやはり疲れてる』
『握りが弱い』
そう言って唇を合わせた。
それに応じた。

『そうで無くちゃ・・』
と女は笑った。





七月七日

この物語は
小説、『一夜を切り売りする女』の続きとなっております。
最初からお読み頂けると。この二人の経緯が判ります。
お時間がありましたらお読み頂けると幸いです。
有難うございます。


七月七日

前日の朝、男は帰って来た。
約束どおり。
明日の七日と八日は
女のために仕事を休む事になった。

有給ではない。そんなものは無い。
一日一日が生き残りの生活であるが。
それを二日。犠牲にする事になる。

しかしそれに後悔は無い。
それをしてでもこの日を大切にしたかった。

ドアを開けると。
『お帰りなさい』と嬉しそうに女が迎えた。

この言葉をどれほど聞きたいと思った事か。
『ああ、只今』と照れくさそうに笑う。

『何食べる』
『うん、ハムトーストとカフェオレ』

『それとも用意してある?』
『ううん。アナタの好きな物を食べて』

『ああ、これで少し寝て』
『体を休めたら。キミの誕生日の前夜祭だな』
と笑った。

いつもは自分で焼くトーストも女が焼いてくれた。
そしてカフェオレも。
おまけに特製の野菜サラダも。

『アナタ、一人で食べている時、サラダ食べないでしょ』
『ああ、ゴメン』

『ダメよ。健康のために食べなきゃ』
『うん、判っているんだど』

『ゴメン』
『お願いね』

『はい』
『所で前夜祭だけど何か考えている』

『ううん』
『ビザでも食べに行くか』

『知っている所?』
『ああ、大昔よく食べに行った』

『何処?』
『ちょいと遠いけど。銀座にある』

『それ昔の彼女か何かと行った所?』
『うん、まあそうだけど』

『ゴメン、悪いけど行かない』
『気分壊した?』

『じゃ無くて』
『アナタに昔の事を思い出して欲しくないの』

『ゴメンナサイ』
『お店に行って・・』

『昔の人の事を思い出して欲しくない』
『だってさ。今は私とアナタだけ』

『一瞬でも他の人の事が頭に浮かんで欲しくない』
『ああ!ゴメン!』

『気が利かなくて』
『ゴメンな。気分悪くしただろ』

『私こそゴメン』

『今日から三日間は私たちの時間』
『ああ、そうだな』
と思わず顔を合わせて笑った。

『そのために休んだんだもんな』
『じゃあ、宅配ピザでも頼もうか』

『うん、それが良い』
二人っきりで過ごしましょ』

『キミは随分と安上がりに出来ているな(笑)』
『いえ、贅沢です』

『大事な仕事を休んで貰ったんだから(笑)』
『有難うな』

二人は一緒にハムトーストを食べカフェオレを飲んだ。


そして
『これに何か書いて』
『ああ、短冊か』

『ああ、懐かしいなあ』
『お互いの気持ちを書きましょ』

そしてサインペンを差し出した。
男はスラスラッと書いた。

『早いわね』
『ああ、だって書く事は決まっている』

『何?見せて』と
言って覗き込んだ。

「キミと末永く幸せに暮せますように」

『キミは?』
『私?同じかな』
と照れくさそうに出した。

「アナタと今世だけでなく。来世でも一緒になれますように」

『ああ、キミが書いた方が良いなあ』
『もちろん来世でも一緒さ』

『ホント』
『ああ、ホントさ』と
笑った。


『悪い、少し寝るな』
『私も』

『キミは昨日寝ているだろう』
『いえ、アナタに合わせて寝てない』

『ホントか』
『ホント』

『じゃあ、前夜祭まで少し寝るか』
『うん』
二人一緒に横になった。

最初は男に合わせている言葉かと思ったが。
本当に寝ずに待っていたようである。
二人はそのまま眠りに落ちた。







タデ食う虫

この物語は
小説、『一夜を切り売りする女』の続きとなっております。
最初からお読み頂けると。この二人の経緯が判ります。
お時間がありましたらお読み頂けると幸いです。
有難うございます。



タデ食う虫


数日、正確には五日後に
二人は一緒に食事を取っていた。

それは質素なものだった。
よほどの事が無いと外食はしなかった。

残り物を二人で一緒に綺麗に片付ける。
そんな感じである。


『ねえ、アナタさあ、お酒飲まないの?』
『ああ、飲まない訳では無いけど』

飲みたいとは思わない』
『何で?』

『酒飲みが良くいう言葉で』
『覚えていないって言うじゃん』

『アレが嫌でさ』
『自分のやった事を覚えていないって』

『最悪じゃないか』
『そう思わないか』

女はポカンと口を開けて。
『ああ、確かに』

『俺さ、こんなだけど』
『ボクシングを少しやっている』

『酔ってさ。我を忘れて・・』
『人を殴った事も忘れていると思うと』

『恐ろしくてさ』

『アナタ、ボクシング出来るの』
『ああ、少しだけ』

『格好良い!』
『格好良いか(笑)』

『女の人ってボクシングの話をすると』
『たいていの人が人を殴るなんて・・』

『信じられないって言うけど』
『私ね、強い人好きなんだ』

『あっ!そうか!』
『そう言ってくれると有難い』

『でもそんなに強くないよ(笑)』
『そんな訳で飲むのが嫌なのさ』

『親父お袋が飲兵衛だったって事もある』
『キミも飲まないよな』

『私は全くダメ』
『ビールなんて。あんな苦いの』

『どこか美味しいの』
『それが判らない』

『ああ、そうか』
『ビールをそう感じるか(笑)』

『良かったよ』
『飲みたいのを我慢していなくて・・』

『ああ、良かったあ』
『家に帰って来て酒の匂いがしないのが良い』

『嫌なもんだぜ』
『玄関を開けた時に

『アルコールの匂いがするのは・・』
『確かに。母さんと男が飲んでいたから判る』

『今はさ。帰って来ると君の匂いがする』
『これは有難いぜ』

『俺の臭いではない』
『まあ俺の匂いは』

『自分では良く判らないけど』
『アナタの匂いはちゃんと私は判るよ』

『悪いな。ゴメン』
『いや、そうじゃなくて』

『私もアナタの匂いが好きなの』
『ホントか』

『だって帰って来ると』
『アナタの匂いがするもん』

『ああ、そうなんだ』
『お互いの匂いがするのか』

『多分ね』
『前に言ったと思うけど』

『私たち。同じ匂いがするのよ』
『そうなのか』

『となると』
『タデ食う虫となる訳かな』
と笑った。


『じゃあ、飯も食い終わった事だし』
『コーヒーでも飲むか』
と立ち上がった。

『あっ!俺がいれる』
と女を制止した。


『アナタって優しいのね』
『優しくなければ男じゃない』

『マーローみたいだな(笑)』
『何、それ!』

『フィリップ・マーローのセリフさ』
『強くなければだったかな』

『だってボクシングやっているから強いんでしょ』
『いやそんなに強くはない』と笑った。

『その笑い方。素敵よ』
『ホントか』

『ホント!』
『有難う』

マグカップにコーヒーをいれた。
二人でそれを美味しそうに飲んだ。
もちろんインスタントである。






喧嘩

この物語は
小説、『一夜を切り売りする女』の続きとなっております。
最初からお読み頂けると。この二人の経緯が判ります。
お時間がありましたらお読み頂けると幸いです。
有難うございます。


喧嘩

事の始まりは。
いつもの時間に女が帰って来て。
寝ている男の体に重なり。
ジッとした時間が終わり。

シャワーを浴びに行って体を拭いて
女が再び男に甘えようとした時である。

男が
『来月は誕生日だろう』
『7月7日』
『何か欲しい物ある?』

『少し高い物でも大丈夫だ』と
札の入った封筒を出した時である。

『アナタ、何、それ!』
『!?』

『アタシを金で買うつもり』
『穏やかじゃないな。その言い方』

だってそうでしょ』
『どうしたのよ』
『こんな金』

『ああ、俺のロレックス売った』
『あんなに大切にしていたのを売ったの』

『ああ』
『どうしてよ』

『キミが喜ぶと思ったから』
『喜ぶわけ無いじゃない』

『返して来てよ』
『それは出来ないよ』

『間に入ったヤツに金渡している』
『何でそんなに怒る』

『私の前の仕事知っているでしょ』
『もちろんだよ』

『キミの喜ぶ顔が見たくてさ』
『参ったなあ』

『怒らせるために売ったんじゃないぜ』
『頼むよ』


『おい、おい、泣くなよ』
『だって涙が出て来ちゃうんだもの』

『判った。俺が悪かった』
『キミが喜ぶと思っての事だよ』

『アナタ私が言った事、覚えている』
『ああ、金で買えるのは一時の時だけだろう』

『だけどよ。俺にとっては時計なんかより』
『キミが大事だ』

『キミが喜ぶ顔が見たかった。それだけだよ』
『贈り物するって言って怒られたのは初めてだよ』
と笑った。

『ゴメンな』
『俺が悪かった。この通りだ』
と頭を下げた。

『俺にとってキミは何よりの宝だ』
『これに勝る物無しだ』

『判ってくれよ』
『なあ、機嫌直してくれよ』

『なあ』と肩を抱き寄せた。

すると余計に泣き出した。
『ああ、俺が悪かった』
と背中を叩いた。

『ゴメン』
『今のはうれし涙』

『ああ、良かった』
『それを聞いてホッとしたよ』

『所で誕生日どうする』
『あのさ、お願いして良い』
と泣き顔でこちらを見た。

『ああ、何だ』
『誕生日の日と翌日休み取ってくれる』

『ああ、今からならローテを少し直せるな』
『頼んでみる』

『それでどこか行くのか』
『ううん。二人で一緒にいたいだけ』

『ああ、そういう事か』

泣き顔が笑った。

『ゴメンな泣かせちゃって』
と抱き寄せた。

『ううん。私こそゴメン』
体を寄せた。


  



プリクラ

 

この物語は
小説、『一夜を切り売りする女』の続きとなっております。
最初からお読み頂けると。この二人の経緯が判ります。
お時間がありましたらお読み頂けると幸いです。
有難うございます。




プリクラ

あれから女とプリクラに何度とも無く行く事になる。
その度に女はキャッキャ、キャッキャと笑って喜んだ。

そして家に帰って来てそれをテーブルの上に並べて
嬉しそうに笑っていた。それを見て男は笑う。

『アナタさあ。顔変わったね』
『ウン!?そうか?』

『変わったよ』
『これ見てよ』と
プリクラを指差した。

そこにはピースサインを
こちらに向けて笑っている二人の顔があった。

『アナタさあ、自分でいけてないと思っているでしょう』
『そりゃそうだ』

『そうじゃない』

『この笑顔を見れば皆落ちるよ』
『何を今更(笑)』

『ホントだよ』

『私と初めて逢った時覚えている』
『ゴルゴ13かと思ったよ』

『何それ?』
『だってさ。ニコリともしなかったんだよ』

『そうだったかなあ』
『私とアナタは人と違って』

『体の付き合いから始まったでしょ』

『だからその時。この人だと思ったんだ』
『大当たりだった』

『あの吹き溜まりの中で私は玉を見つけたんだ』

『いや本当だよ』
『どこで運が回ってくるか判らない』

『オーバーだよ。それは』
『いや。そんな事ないよ』

『だからさ。幸せになろうね』
『ああ、そうだな』

『でも悪いな。こんな暮らしで』
『幸せはお金では買えないの』

『そんなもんか』
『絶対買えない』

『お金で買えるのはその時の満足だけ』
『長くは続かない』

『だからさ。私はこの暮らしに大満足だよ』
『そりゃ、俺もだよ。キミがここに居るんだから』

『だからそれは私も同じなの』

『このままで良いの』
『私はこのままの生活で良い』

『多くを望んだら罰が当たる』

『私はアナタがいるだけで良い』

それを聞いて
思わず抱き寄せ唇を合わせた

そして
『その笑顔を取り戻してくれたのはキミなんだぜ』
『ホント感謝している』

『こちらこそあの世界から引きずり出してくれて・・』

『有難う』
と女はあらためで唇を合わせた。

  



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