不あがり

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小説。一夜を切り売りする女。

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現実


この物語は
小説、『一夜を切り売りする女』の続きとなっております。
最初からお読み頂けると。この二人の経緯が判ります。
お時間がありましたらお読み頂けると幸いです。
有難うございます。
 


現実

女がいつものように寝ている男に重なると。
男が唸り出した。慌てて起こす。

『ああ、夢だったのか』
『どうしたの。魘されてたよ』

『また怖い夢見た?』
『ああ、今までで一番怖かった』

『どんな夢』
『君がいなくなった夢だよ』

『時たま帰って来て思っていたんだけど』
『これは現実かと考える事があってさ』

『何で?』
『だってさ。君がここにいるんだぜ』

『夢みたいじゃないか』
『何を言っているの。これが現実よ』

『そうなら良いんだけど』
『現実よ』と
女は唇を合わせた。

『ね!』
『ああ、有難う』


『ああ、ゴメン、お帰り』

『悪いな寝てて』
『そんな事無いよ』

『今日は明け日でしょ』
『ゆっくり寝てて』と
改めて体を重ねて来た。


暫くすると。
女はシャワーを浴びに行った。

『何か食べに行くか』
『うん』

『何か食べたい物あるか』
『またトンカツが食べたい』

『ああ、判った』


二人はトンカツ屋に向かった。
ヒレカツ定食の小と中を注文した。

この女の食べっぷりが良い。
そんな事を考えながら男はトンカツを食べた。

『いつも美味しそうに食べるね』
『だって美味しいんだもん』

『これなら大でも食べられる』

『ホントか』
『ホント』

『じゃあ、次回は大にするか』と
笑った。


店を出ると
『コーヒーでも。飲む?』
『賛成』

『じゃあ、俺のいつも行っている所に行こう』
『西口になるけど良い』

『もちろん』
『楽しみだな。あなたが行っている店』

二人は駅に着くと西口に出る通路を歩いた。

『マックの方?』
『いやその手前、駅の続きになる』

『そんな所に店あった?』
『ああ』

ファーストフード店の横に
エスカレーターがある。

そこを上るとその店はあった。

奥の4人かけの席に
向かい合わず女は並んで座ってきた。

『おい、おい』
『良いじゃない。私たちいつも離れているんだから』

そして
『これが現実よ』と
笑った。

カフェオレを二つ注文した。
これまた美味しそうに飲んだ。

店を出て
下りのエスカレーターに乗ると。

『あ!プリクラがある』
『ねえ、寄ってこ』

『何!?それ?』
『あ、知らないんだ』

『これで写真撮るの』
『いや写真は苦手だ』

『そんな事言わないの』
『ねえ』と
腕を引っ張った。



『顔が硬い』
『元々そんな顔だよ』

『いやダメ』
『まだ硬い』と
頬に口付けをした。

『そう!その顔』と
また口付けをした。

仕舞いには唇に口付けをした。
緩みっぱなしの顔となった。


『頼む。これ絶対に人に見せないでくれよ』
『良いじゃん』

『私の大切な物に貼るんだ』
『頼む。見える所に貼らないでくれな』

女は出来上がったプリクラを嬉しそうに見た。

『また来ようね』
『良いとこ見つけた』と
笑った。

そして
『これが現実よ』と
また笑った。






バレンタイン

バレンタイン


二人は休みが重なり
一緒に布団の上で横になっていた。

『バレンタインだけど用意してる』
『何で?』

『男なら欲しいぜ』
『アナタ、あんな物が欲しいの?』

『そりゃあ貰った事が無いから』
『私、送った事が無い』

『ホント!』
『だってチョコで釣るなんて嫌だもん』

『そんなもんか』
『チョコなんて渡さなくても結ばれる者は結ばれる』

『でも不思議なのよね』
『あの日になるとごった返している』

『あの内どれだけ成功しているのか』
『送ったつもりで自分で食べているんじゃない』

『そうかな』
『そうだと思う』

『私の周りでチョコが縁で一緒になった』
なんて話は聞いた事が無い』

『聞いた事ある?』
『確かに無いな』

『でしょう』
『乗せられているだけよ』


『そんな事より今日何食べる』
『トンカツ好きか』

『私好きよ』
『じゃあ、トンカツの美味い所に行こう』

『何?そんな店知ってたの』
『ああ』

『何で今まで教えてくれないの』
『だって行く機会がなかったろ』

『俺も君と一緒になってから行っていない』
『じゃあ行くとするか』と
立ち上がった。

『近いの?』と
着替えながら言った。

『ああ、牛丼屋より近い』
『じゃあ駅まで行かないの』

『ああ』
『そんな所にあったかなあ』

『まあついてくれば判る』と
笑った。

家から大通りに出て駅の方に向かった。
その駅の手前の銀行の裏にその店はあった。

『アレ!?ここ!』
『ああ』

『ここはヒレカツが美味い』

洒落たこじんまりした店だった。

二人を見て。
店主が驚いた顔をした。

男は苦笑いをしながら。
二本指を立てて
『二人です』と
言った。

『腹減っているか』
『腹ペコ』

『だったら中ヒレが良いだろう』
『俺は小ヒレにする』

『アナタに任せる』

ヒレカツ定食の小と中を注文した。


『お待たせしました』
との声と共に
『こんなに大きいんだ』と
女は喜び驚いた。

『キャベツとご飯はお代わり自由だからね』
『ホント嬉しい』

『これ美味しい』と
夢中で食べる姿を見て男は笑った。

男は二人で一緒に食事をする事だけで満足した。



そして数日後の朝。
事から帰って来ると。

テーブルの上に
綺麗なリボンの掛かった
チョコレートがのっていた。





この物語は
小説、『一夜を切り売りする女』の続きとなっております。
最初からお読み頂けると。この二人の経緯が判ります。
お時間がありましたらお読み頂けると幸いです。
有難うございます。

正月休み

正月休み
 
 
1月12日が終わる。
この二人には正月休みなどは無かった。
年末から働き続けた。
 
一年で一番忙しい数週間となった。
労基法も無い。
 
出て来なければクビである。
尚且つボーナスなど無い。
日雇いである。
 
しかし彼らは頑張った。
 
一緒になってから初めての年越しであった。
 
この二人は同じ家に住んで居ながら。
すれ違いの毎日である。
 
テーブルの上にあるメモに
お互いの想いを書き繋がっていた。
 
それが唯一の二人の会話であった。
 
そして今二人は泥のように寝ていた。
とにかく睡眠不足との戦いであった。
 
二人とも折り重なるように寝ていた。
ビクともしない。
するのは寝息である。
 
それでも辛いとは思わなかった。
 
女はいつも帰って来ると
この男にピタリと重なりそれで力を貰い。
それからシャワーを浴びていたが。
 
その力も無く。
男の上にピタリと折り重なった途端眠りについていた。
寒さも関係無かった。
お互いの体温で温まっていた。
 
この時間が最も幸福であった。
 
 
気がつくと日が変わっていた。
男がそーっと静かに起き上がる。
その動きに女が気づく。
 
『悪い、起こしたか。ゴメン』
『ううん、良いの、気持ちよかった』
 
『久しぶりね』と
腫れぼったい顔で笑った。
 
『おお、久しぶり』
『どうやら日付が変わったようだぜ』
 
『まだ寝てて良いぜ』
『ううん、起きる』
 
『でも夜中だぜ』と笑う。
 
 
『一日中寝たようね』
『ああ』
 
『夢を見た?』
『流石に見なかったよ』
 
『でも気持ちよかったぜ』
『あたしも』
 
『寝ていても隣にアナタがいる』
『それだけで良い』
 
『俺もだよ』
『お互い良く持ったな』
 
『コーヒーでも飲むか』
うん、飲みたい』
 
『判った。俺が入れる』と
立ち上がった。
 
 
まだふらついている。
 
お揃いのマグカップにコーヒーを入れた。
 
『有難う』と
受け取り飲む。
 
起き上がるとやはり寒い。
慌ててエアコンを入れる。
 
そして二人くっつきながらコーヒーを飲む。
 
 
『何か腹減ったな』
『うん』
 
『落ち着いたら何か食べに行くか』
『そうしよう。何か作る気になれない』
 
『駅まで行けば牛丼屋がやっている』
 
真夜中に二人は外へ出た。
ダウンを着て。
首にはマフラーを巻き。
頭にはウォッチキャップを被った。
頭が滅茶苦茶になっているからだ。
 
朦朧としながら歩く二人であるが。
何とかお互いを支えあって歩いた。
近くである。
 
牛丼屋に着くと
威勢の良い声がして少し目が覚める。
 
そこで牛丼の大盛りを二つ注文した。
貪るように食べた。
そしてお茶を貰い。
外へ出た。
 
ようやく目が覚めて来た。
寒さも手伝ってであるが。
 
燃料が入ると体が動く。
女は男の腕に摑まり行きとは
違う足取りで歩いた。
 
普通ならこの後、
国道沿いのファミレスに入って
コーヒーでも飲みたい所だが。
 
二人はそのまま家に向かった。
そして遅い正月休みとなる。
 
 
 
 
 
 
 
この物語は
小説、『一夜を切り売りする女』の続きとなっております。
最初からお読み頂けると。この二人の経緯が判ります。
お時間がありましたらお読み頂けると幸いです。
有難うございます。
 
 
 
 
 
 

そして始まり

そして始まり
 
 
翌日。カレーを作って待っていると。
6時半ジャストで女は帰って来た。
 
『あ!カレー!良い匂い』
『アナタ準備良い?』と
玄関で声がした。
 
この家は廊下が長い鰻の寝床のような家である。
 
『ああ、さっき電話連絡してある』
『とりあえず4軒の家は今居てくれている』
 
『ああ、そう、有難う』
じゃあ、行きましょう』
 
いつもの甘えた顔ではない。
営業の顔である。
 
お隣は留守である事が判っていたので。
メモと品物をポストに入れた。
 
そして2階に上がる。
ドアホーンを押すと扉が開く。
 
『ご無沙汰しております』
『先ほども申し上げましたが』
 
『私の所に来てくれた人間が居ます』
『そのご紹介とご挨拶に伺いました』
 
『あら、お久しぶりね』
『どんな方?』
 
『申し遅れまして・・』
『私、〜と申しまして』
 
『今度こちらに嫁いで来ました』
『お忙しい所大変恐縮です』
 
『不束と思いますが』
『何卒宜しくお願いします』
 
『あら、お兄ちゃん』
『しっかりした方なのね』
 
『こちらこそ宜しく』と
タオルと蕎麦を受け取った。
 
その繰り返しで4軒の家を回った。
 
女は4階、5階と上り
メモを付けたタオルとそばをドアポストに投函した。
 
次の階段、次の階段と
計30所帯の家を回った。
 
有難く歓待してくれる家もあった。
不在を含めて全て配った。
 
 
家へ戻る。
 
 
『一応、これで終わったわね』
『アナタ有難う』
 
『こちらこそ感謝しているよ』
『有難う』
 
『じゃあ、ご飯を食べるか』
『ちょっと待って』
 
女は男に抱きついた。
 
『ああ、嬉しい』
『これで終わった。そして始まりね』と
言って泣いた。
 
『おい、泣くなよ』
『泣く場面じゃないぞ』
 
『そうだけど。嬉しくて』
『ああ、そうか』
 
『有難う』と
抱きしめた。
 
『嬉しい』と
女はより体を密着させた。
 
一頻り泣くと女は
『有難う』と
言ってシャワーを浴びに行った。
 
 
その日のカレーは
頗る美味しいカレーとなった。
 
 
 
 
 
 
 
 

門出

門出
 
 
ふと重みを感じて目が覚める。
 
『あ、目が覚めた?』
『ああ、ゴメン』
 
『良く寝てたよ』
女はピタリと男の体に重なり
そう言った。
 
『良かったね』
『ああ、今ニャン子の夢を見ていた』
 
『ああ、あのニャン子ね』
『うん、いつも俺のお腹の上で寝ていた』
 
『こんな風に?』
『ああ』
 
『アナタって。温かいのよ』
『そうか?』
 
『俺も今、キミの体が温かいと思っている』
『そうじゃなくて。心が』
 
『ホントか?』
『ホント』
 
『私はこれで救われる』と
優しく口付けをした。
 
『嬉しいなあ』
『そんな事を言ってくれて』
 
『今帰って来たのか』
『ゴメンな。寝てばかりで』
 
『いや可愛い寝顔を見れたから良いの』
『可愛いか』
 
『良い歳をしたオッサンだぜ』
『そんな事無い』
 
『私には大事な人』
 
『ホントか?』
『ホント』
 
『お腹空かないか』
『俺、晩に何にしようか・・』
 
『カレーと思ったんだけど』
 
『キミが何か買ってくると思ってさ』
『トン汁にした』
 
『ウワー!トン汁』
『私大好き!』
 
『ホントか?』
『ホント』
 
『今日さ。サンマ買って来たんだ』
『おお!サンマか』
 
『そりゃあ、美味しそうだな』
『魚嫌いじゃなかった?』
 
『いやキミが買ってくれば何でも好きだ』
『有難う』
 
『ただもう焼いてあってさ』
『温めるだけ』
 
『そんな事は構わない』
『じゃあ、ご飯にするか』
 
『うん!』と
女はシャワーを浴びに行った。
 
 
美味い食事であった。
その余韻を楽しんでいると。
 
 
 
『あのさ』
『明日で良いんだけど』
 
『付き合ってくれない』
『どこへ』
 
『ご近所に挨拶にさ。行こうと思って』
『俺、村八分だぜ』
 
『だから行くの』
『どうして』
 
『私とアナタの存在を示すの』
『存在?』
 
『いつの間にか転がりこんで来た』
『野良猫みたいに思われるのが嫌なの』
 
『アナタの事は色々言われたと思うけど』
『私はそれを知らない』
 
『だけど私たちがいる事を認めさせたいの』
『キミらしいな』
 
『判ったよ。付き合う』
 
『それでさ。タオルとお蕎麦を用意した』
『流石だな』
 
『留守の人にはメモをつけて入れれば良いかなと・・』
『キミは俺より上だよ』
 
『恐れ入りました』
『そんな事無いけど』
 
『でもさ』
『これから二人で生きて行く門出でしょ』
 
『有難う』
 
『そこまで考えてくれたのか』
 
『感謝する』
 
男は頭を下げた。
 
 
 
 
 
 
 
 

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