不あがり

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小説。一夜を切り売りする女。

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色を抜く

色を抜く
 
 
午後7時を回った頃。
食事を取りに行こうと外へ出た時だった。
 
向かいの
ビルの前にいた女が男の方へ歩み寄った。
 
『お久しぶりです』
『!?』
 
『〜さんですよね』
『はい』
 
『覚えておられませんか』
 
男はその姿を見る。
 
グレーと思われるスーツに白のブラウスを着て。
セルのメガネをかけた女性であった。
 
『どちら様で』
『気がつかないかな』と
セルのメガネを外した。
 
『ああ!ナナさん』
『判ったあ』
 
『ウワー』
『何年ぶり・・』
 
『驚いたよ』
『俺の家にと言いたい所だけど』
 
『女性の入るような所ではない』
『ううん、それは良いの』
 
『でも歩かない』
『あまり人のいない所が良いな』
 
『判った』
 
この通りを出た所が国道となる。
 
二人はその道を並んで歩いた
 
『どうしてた』
『元気だった』
 
『うん、元気といえば元気だった』
『あれからさ』
 
『色々あってさ』
 
『国には帰ったけど』
『田舎でしょ』
 
『私を女として見るの』
『それが嫌でトンボ返り』
 
『じゃあ、こっちに居た訳』
 
『うん、だけどね』
『アナタの所に来る事は出来なかった』
 
『私はね。男の色に染まっていたの』
『数え切れない男の色に』
 
『その色を抜かなければ』
『アナタに会えない』
 
『それでね』
『必死に働いた』
 
『都会の会社はね』
『女男。全てがライバル』
 
『そのお陰で私を女と見ない』
『これだと思ったわ』
 
『お陰でその色が少しずつ抜けてきた』
『でも辛かった』
 
『男の味を知っているから』
『でもアナタがここにいる』
 
『この場所を毎日見ながら過ごした』
『毎日来てたのか』
 
『ううん。グーグルって知ってる』
『ああ』
 
『アナタが教えてくれた』
『住所をね。検索したの』
 
『このビルが映るのよ』
『それを毎日辛くなると見ていた』
 
『いつかは男の色が抜けると信じて』
『私、男のように働いた』
 
『今働いている人たちは』
『私が男に興味が無い女と見ていると思う』
 
『そうなるまで待った』
『それは男の色が抜けたという事でしょ』
 
『ようやくそんな女になった』
『それでね』
 
『一週間に一度』
『ここに来ていたの』
 
『アナタに会える日が来ると信じて』
 
『何でドアを叩かない』
 
『それはね』
 
『私の所に会いにきていた』
『アナタの事を考えていたから』
 
『アナタが出てくるまで待った』
『どれくらい待った』
 
『それは判らない』
『でも待てばアナタに会えると思った』
 
『それが今日』
 
 
『会いたかったあ』
『とうとう会えたのね』
 
『長かったあ』
『こうやって二人で外を歩くの初めてよね』
 
『こうやって歩くのが夢だった』
 
『ねえ、ところで今独り』
 
『当たり前だよ』
『俺と付き合うような女はいない』
 
『ああ、良かった』
『私と付き合ってくれない』
 
『本当か』
『もちろん、本気』
 
『判っているでしょ』
『それは構わないけど』
 
『俺で良いのか』
『何を言っているの』
 
『だからここに私がいるの』
『ねえ』
 
『ねえ、お願い』
『ああ、喜んで』
 
『ホント』
『嬉しい』
 
 
『ねえ、ねえ、チョットこっち来て』
『このビルの中、どうなっているのかな』と
急に言い出した。
 
それにつられて。
閉まっている玄関の入り口を覗き込んだ。
 
その時、女が首に手を回した。
 
『人が見ている』
『いや見えないわ』と
言って強引に唇を合わせた。
 
ほんの一瞬だった。
 
『これでアナタの色に染まれる』
 
 
 
 
 
 
 
 
 

名刺

名刺
 
 
 
女は男を待ち焦がれるようになる。
男が来ると恋人のように愛した。
 
 
そんな日々が暫く続いたある日。
 
『あのさ。私ね』
『この仕事を辞めようと思う』
 
『・・・』
『驚いた?』
 
『前に言ったけど』
『いつまでもやる仕事じゃない』
 
『私ね』
『アナタと出会ってホント変わった』
 
『初めて女の喜びを感じたの』
『・・・』
 
『本当よ』
『アナタには判らないかも知れないけど』
 
『この仕事でね』
『唇を許すって事をあんまりしないの』
 
『でもね。アナタなら許せた』
『いやアナタだから』
 
『その唇が欲しかった』
『ホントよ』
 
『毎回会うたびに実は考えていた』
『そしてそれが今日』
 
『アナタを最後のお客として取るの』
『これで辞める』
 
『ごめんね』と
強く抱きしめた。
 
男は抱き返す事が出来なかった。
 
 
『残念だけど』
『それが良いのかも知れないな』
 
『こちらこそ有難う』
『これからどうする』
 
『国に帰って仕事を探す』
『っていうか。実はもう探した』
 
『母親のつてを辿って』
『それは良かった』
 
『言う事なしだよ』
『でも寂しいな』
 
『アタシも』
『でも判ってね』
 
 
『じゃあ俺の連絡先を書いておくよ』と
メモに書いた。
 
その間に女も名刺のようなものに何か書いた。
それは名刺と同じ大きさの黒い紙だった
 
女は男のメモを受け取り。
 
『これは後で読んでね』と
手渡した。
 
そしてもう一度強く抱きしめた。
 
 
 
流石に男は肩を落として外へ出た。
 
 
 
名刺には。
白いインクで。
 
表には可愛い文字で
 
ナナ。
 
裏には。
 
ナナですよ。
 
辛い事があったら笑い飛ばして。
 
いつかきっと会える日がある筈。
 
それまで笑顔を忘れないで。
 
 
 
 
 
  
 
 
 
 
 

ナナという名と誕生日

ナナという名と誕生日
 
 
 
一頻り終わると狭いベッドに二人で横になる。
 
『所でさ。今日俺の誕生日だ』
『!?』
 
『驚いた?』
『ええ、七日でしょ』
 
『私は七という数字が好きなの』
『チョット待って』
と言って
バスタオルに体を包んで部屋を出た。
 
 
『ごめんね』
『私も七日生まれ』
 
『ああ、そうなんだ』
『面白いな』
 
『偶然だな』
『月は違うけどね』
 
『私の秘密教えてあげる』
『私の名前ナナだけど』
 
『判る?』
『七月七日という事?』
 
『そう』
『そこから取っているの』
 
『だから七っていう数字が大好き』
『嬉しいなあ』
 
暫くするとドアをノックする音がする。
すかさずそれに反応して
 
『有難う』と受け取る。
 
それは白い箱だった。
 
『ねえ、誕生日のお祝いしよう』
 
『俺の』
『そう』
 
『まだ食べる時間はある』
『一緒に祝おう』
 
『有難う』
『こんな嬉しい事は無い』
 
『誕生日祝いなんて初めてだ』
『だから食べよう』
 
『これは美味い』
『でしょ』
 
『これはホント嬉しい』
『ホント有難うな』
 
ピッピッと電子音が鳴った。
 
 
『ごめんね』
『忙しない誕生祝いになっちゃって』
と優しく唇を合わせた。
 
ケーキの香りがした。
 
 
 
 
 
 
  
 
 

うるさい

うるさい
 
 
狭いベットの上で二人揃って横になっていた。
 
『あのね』
 
『私ね。父親の顔しらないんだ』
『え、そうなの』
 
『気がついた時はいなかった』
『じゃあ、顔を覚えていない?』
 
『うん、全く浮かばない』
『写真も無い』
 
『それは辛いな』
『ううん、でも何か守ってくれている気がする』
 
『色々あったけどさ』
『でもさ。命だけはある』
 
『たとえばさ』
 
『いつも乗る電車に乗り遅れたんだ』
『そしたらさ』
 
『そのお陰で大事故に遭わずに済んだ』
 
『行っていた会社は潰れたけど』
『今はこれで稼ぐ事が出来た』
 
『そしてアナタと逢う事が出来た』
『ホントか』
 
『だってアナタの事好きなんだもん』
『ホントか』
 
『うん。ホント』
『だからさ。元気出してよ』
 
『ねえ』
『ああ』
 
『あ、ゴメン体は元気だよね』
『私を抱いているんだから』
 
『・・・』
 
『ハートの方だね』
 
『ねえ。笑って』と
唇を合わせた。
 
『この仕事もそんなに続ける仕事じゃない』
『キリの良い所で辞めないと』
 
『辞める』
『まだ先よ』
 
『心配しないで』
『その時。教える』
 
『ああ』
『寂しい顔しないの』
 
『ね』と
また唇を合わせた。
 
その時ピッピッと電子音が鳴った。
 
『うるさい』と
思わず女が言った。
 
『ごめんね』と
また唇を合わせた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

まともになれる時

まともになれる時
 
 
一頻りお互い獣になり果てると
二人は壁を背にベットに並んで膝を抱えて座った。
 
『ねえ、何を考えているの』
『考えて見えるか』
 
『うん、いつも思いつめている感じ』
『鋭いな』
 
『俺はいつも憎しみの中で生きている』
『どんな』
 
『親父お袋の事さ』
『もう死んじまったけどな』
 
『勝手に自殺した』
『寝ると出てくる』
 
『その戦いさ』
『ここに来た時だけ忘れられる』
 
『辛いわね』
『相手がもう死んでいるからな』
 
『どうしたものか』
『だからあまり笑わないのね』
 
『ああ、そういえば笑う事を忘れた』
 
『でもアナタの事好きよ』と
不意に頬に口付けをした。
 
『ああ、笑った』
『そりゃそうさ』
 
『そんな事言われたのは』
『初めてだからな』
 
『その笑顔素敵よ』
 
『アンタといる時だけが』
 
『まともになれるのかな』
 
『この一時間に満たない時だけが』
 
『嬉しいわ』
『私といる時だけでも』
 
『嫌な事忘れて』
『ね、お願い』
 
『ああ』
 
『ねえ、笑って』
 
『ああ』
 
『笑ってない』と
頬にまた口付けをした。
 
『ああ、笑った』
『面白い事するな』
 
 
『笑ってくれるなら』
『何でもするわ』と
今度は唇にした。
 
その時。
ピッピッと電子音が鳴った。
 
 
『もう時間だな』
『ゴメンね』
 
『いや有難う』
『また来て』
 
『ああ』
 
 
 
 
 
 
 

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