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道具屋さんの大黒様。
私がお世話になっている道具屋さんには、
黒い面立ちをした木彫りの大黒様が鎮座している。
この店の守り神でもある。
面立ちと書いたが全体が黒いのである。
煤のせいなのか。黒漆でも塗られているのか。
それは判らない。
先代の奥様にお聞きした事もあるが。『どうなんでしょう』と
微笑みになるだけであった。
大きな物で70〜80センチはあるだろうか。
測ったことは無い。
先代の頃からのもので。先代は『これは売り物ではない』と
頑として売る事はなかった。
それでも、この大黒様にご執心のお客様がおられて、
何度も売って欲しいと言ったそうだが。
先代は『売らない物は売らない』と言うと。
そのお客様が
『親父。判ったよ。
だったらこの大黒様に
お水とお花ぐらいお供えしろよ』
と言って帰って行ったそうだ。
その日以来この大黒様の前には
お水とお花をお供えすることになった。
そう先代の奥様が、微笑みながら話してくれた。
その奥様も鬼籍にお入りになられて大分経つ。
大黒様は相変わらず優しい笑みを浮かべて
私たちをご覧になっている。
不思議な事に何故かお鼻から頬にかけて
ポォと赤くなっておられる。その理由は判らない。
少しお酒を頂いて、お心が気持ち良くなられておられるのか。
それが余計に私の気持ちを温かくしてくれる。
そんな想いを感じながら店をあとにする。
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