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小さな命が 降ってきてから、 季節は 97回 巡った。 うがいを しているみたいな 産声。 ふやけて 真っ白な 丸顔。 十九になったばかりの 少女が ひり出した 小さな小さな 生き物だった。 君のこと、 どうしていいか わからなくて、 時間ばかり過ぎて・・・・・・。 入学したばかりの 短大、 授業をさぼって、 図書館、本屋へ通った。 にわか知識を 詰め込んでは、 余計に 焦って。 おそるおそる・・・ 立ち寄ったベビー用品コーナー。 ウサギのワンポイントのついた 黄色い 7センチの靴下。 手のひら よりも 小さかった。 これを・・・・・・、人間が 履くんだ。 ” ヒト” が。 たった 10ヶ月、 この 体内に置くだけで、 100年近い 「人生」 をもつ 「ヒト」 になる。 いま、引きずり出してしまったら・・・・、 病院の処置の ”塊” だ。 その 比べようもない 違いを、 7センチの靴下から リアルに感じてしまった。 予定日ちょうど。 やってきた君を 一番初めに 見に来てくれたのは おばあちゃん。 昼前から 雪が 降り出してね。 寒い中、逢いに来てくれたんだよ。 君の事 知った時、 泣かせちゃったのにねぇ・・・。 産着 いっぱい用意して、おくるみ 編んで。 二人 元気で よかった って。 産むこと だけが 正しい選択 ではない ということも、今は わかる。 純粋で、無知で、甘かった少女。 けれど今・・・、 君は ちゃんと ”君”の 人生を 描きはじめた。 君が ”私” を ”母” に してくれた。 そんなに 急いで 大人になってしまってさ・・・。 まるで、 「三日見ぬ間の 桜」 のように。 けれども さぁ、 早く 早く ・・・、 ここから 巣立ちなさい。 どんよりとした 産室の窓の外。 雪と一緒に、ちらほら・・・・ 天使が、降って来た日。 この胸に 怖々と 抱いた記憶は とても遠い。。。。。 |
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