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森口博子の新作アルバム『GUNDAM SONGS COVERS』 がオリコンチャート週間ランキングで3位にランクインした。先週のデイリーランキングでは2位にランクインして複数のメディアで取り上げられていた。NHKが行った人気投票で上位にランクインした人気主題歌ばかりカバーしているのでファンの需要は十分見込める。好きな曲が入っていたので配信サイトでサンプルを聴いてみたが印象は「勿体ないな」と思った。
森口博子に限らず、昔の歌手の方が歌は上手い。声からして今の歌手とは違う。当時は演歌歌手以外は蔑ろに扱われる傾向にあってアイドル歌手となると正当な評価を受けられなかった。森口博子を歌手としてまともに評価している論評は見たことが無い。山口百恵や松田聖子の時代には公正に評価された記事も見受けられるが次第に宣伝記事に偏ってきて歌の上手さを論じるような記事は見られなくなっていく。小室哲哉がプロデューサーとして売れっ子になった時代も小室哲哉ばかりになっていて個々の歌手の実力を問う記事は見た記憶が無い。ブームが去ってから何年も過ぎた後に安室奈美恵の実力を評価する記事は出てきた。全盛時には何も評価していなかった。
森口博子は2001年のAAA(アクト・アゲインスト・エイズ)のステージで『Beyond The Time』を一緒に歌っている。その一部はWOWOWで放送されたので映像で見ることができる。森口博子はコーラスを担当した。声が良いのでコーラスも様になっていた。メインで『Beyond The Time』を歌ってもいけるんじゃないかという印象があった。今回のアルバムで初めて公に『Beyond The Time』を歌うことになって、配信サイトでサンプルを聴いてみたのだが歌唱部分を聴くことができない。イントロの長い曲のサンプルをイントロから始めるなよと言いたい。肝心の歌を聴かせないと聴かせる意味が無い。同アルバムに収録されている他の曲を聴く分には声は悪くない。ただ、アレンジはイマイチ。『めぐりあい』は普通の楽器のメロディーで聴いてみたかった。
『GUNDAM SONGS COVERS』のコンセプトは悪くない。51歳になる森口博子の声が良いのは驚異的で、今回のアルバムの楽曲をメインとするコンサート・ツアーが始まるとファンが駆け付けるだろう。リリースするタイミングがもう10年早ければ、ステージもパワフルなものになって波及効果も絶大になった。40代以降の10年区切りは高齢化から来る体力と気力の衰えが顕著で、歌手は声帯の緩みで声量を失ってしまう。若ければ若いほど声に張りがあってパワフルに歌える。楽器は老化しないが、人間の声は老化するので、その価値を早い段階で評価しなければならない。森口博子が30代の内に『Beyond The Time』や『めぐりあい』を歌わせておくと価値の高い音源になった。51歳という年齢を突きつけられると現実感があり過ぎて、エンターテイメントとしてはギリギリのタイミングというしかない。(森口博子が50代でも僕らの世代は気にしない。若い世代は気にする。)
TMネットワークでもメンバーが60代に突入して覇気がない。今の10代の子が今のTMネットワークを見ても圧倒されることは無い。今の中学生が「TMネットワークを聴いている」と同級生と話したときに、60代のTMネットワークの姿を同級生に見せても変な目で見られるだろう。メンバーと一緒に同じように年を重ねてきた世代は老化を受け入れることができる。10代は老化を受け入れない。だからこそ、TMネットワークの何か新商品を出すのなら初期の頃の映像や音源を出してあげた方が良い。新しくファンになった世代が悲惨すぎる。若さから醸し出されるキレは歳をとると醸し出せない。エンターテイメントは良い時期に見ておかないと感動できない。新しくデビューする音楽グループや歌手をできるだけ早い段階で公正に評価して、消費者に良い時期に見てもらえるように雑誌記事も書かないといけない。歌手に関しては、デビューしたその瞬間が絶頂期になる。声の状態が一番良いから。できるだけ、デビュー当時に音源を録りためたり、映像に残しておいた方が良い。時代を超えて、新しいファンを獲得した時に、デビュー当時の素材は宝物になっている。
YouTubeで昔のベストテンやトップテンの映像を見ているとお宝だらけ。声の状態が良いだけで歌は断然よくなる。声の若さは普遍的な価値感に成りつつある。その理屈からすると、何か新しい音楽や歌を聴いてみようとトライするときは新人を漁ってみるのが良いのかもしれない。全盛期の森口博子の映像が残っていることはファインプレー。生の声で歌っているからこそ価値がある。最近の歌手のように、歌っているのか歌っていないのか解らない映像は価値も解らない。昔の映像でもアテフリや口パクはある。それらは価値が無い。生の演奏で、生の歌声で収録されている映像は価値が何倍も上がっている。森口博子もデビュー1年目の声が圧倒的に良い。しかし、本人も、周囲も、その価値を解っていなかった。音楽マニアが秘蔵コレクションを解放する度にため息が出る。「この時代のコンサートに行きたかった」という感想は後になって出て来る。
森口博子は50代にしてはまだ聴ける方。竹内まりあは60代でも聴ける。松任谷由実は50代で厳しくなった。40代以降の5年や10年はプレッシャーが重い。喉を酷使しすぎないように周囲が気を使わないと歌手生命は50歳で終わりを迎える。
TMネットワークのファンでも、ブルーレイボックスが出る前は「1994年の解散コンサートは思い出深い」などの声が大多数だった。その中で「1985年のドラフェスツアーの方が圧倒的」と発言する人間は私以外はほとんどいなかった。私の同世代のTMネットワークのファンはヴォーカルのコンディションの差が物をいうことを知らない。ヒット曲を主体として聴いてしまう。そうじゃなくて、声も楽器もコンディションが命。『Get Wild』や『Beyond The Time』の認知度で映像ソフトを選んでしまうと思わぬ落とし穴にはまってしまう。あの東京ドームのコンサートはTMネットワークの全盛期ではない。ファンの間で議論すると、思い入れの強さから公正な議論にならない。新しいファン層には公正な評価を伝えるようにしないと、個人的な思い出や思い入れは他人の知るところではない。公正に言ってTMネットワークの全盛期は1984年。10年後の1994年は一番コンディションが悪い。
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