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ここ数日、噂になっていた堂安律のPSVへの移籍が正式に発表された。フローニンゲンが要求していた16億円の移籍金にPSVが懸念を示していたことから「撤退」と報じられたのが1週間前の出来事だった。PSVが国内の他のクラブから選手を獲得する場合の相場は8億円である。移籍が決定するのであれば、おそらく、その辺りの金額で合意しているだろう。
PSVといえば京都サンガから移籍した朴智星がアジアでは知られている。朴智星がPSV時代の3年間で残した記録はリーグ戦13Gとカップ戦2G。CLの2G。オランダ国内のリーグ戦とカップ戦のトータルだけ見ると既に堂安律の方が勝っている。当時のエールディビジのレベルを考えると今のエールディビジの方がレベルは上がっているので、堂安律のリーグ戦16Gとカップ戦1Gは及第点以上と言える。PSVに移籍することによって優勝争いが必至になり、その中でインパクトを残すことができたならオランダへの移籍は「成功した」と見なされる。
日本のサッカーファンにとっては今夏の移籍市場は天変地異に見えるだろう。レアル・マドリード、FCバルセロナ、マンチェスター・シティ、FCポルト、そしてPSVといったビッグネームの名前を見ない日が無い。しかし、中田英寿がローマへ移籍した当時と違い、「やれるのか?」と不安視する声の方が多い。特にレアルやバルサのようなメガクラブに移籍した選手たちに対しては出場機会が得られるチームに移籍した方が堅実だと言われている。
クラブの創設時期は古いが新興勢力と見なされるマンチェスター・シティを除くと名門ばかり。試合に出場しても結果を残せなければ失敗と見なされてしまう。
中島翔哉が移籍したFCポルトはトヨタカップで2回優勝(1986年と2004年)している。目の肥えたサポーターが多く、そのチームで10番のユニフォームを要求した以上は相当なインパクトを残さないと失格の烙印を押されてしまう。日本ではポルトガルリーグの知名度が低いので、オランダのPSVの方がFCポルトよりも格上のように思われがちだが、国際タイトルホルダーとしてはFCポルトの方が格上である。空席と化した10番を要求することが自分を追い詰める行為だと中島翔哉が理解していたなら良いが、軽い気持ちで選んだのであれば本田圭佑のように、ありとあらゆる侮蔑の言葉を浴びることになる。
ビッグクラブや名門クラブでなくてもトラブルは起きている。ベルギーのシント・トロイデンというクラブが朝鮮企業に買収されて、有能な選手を放出すると共に平凡なアジア人を獲得したことで、現地のサポーターが紛糾している。そのシント・トロイデンに韓国代表10番イ・スンウがステップダウンしてきた。イ・スンウは久保建英と同じバルセロナのカンテラ出身者である。FCバルセロナの名前が必ず枕詞として付いて回るため、イ・スンウのプレーにはサポーターが注目する。そして、すぐに失望に変わる。久保建英も事あるごとにFCバルセロナの名前が用いられていた。それがレアル・マドリードに変わってメディアも枕詞の選択に難儀している。バルサのカンテラ出身でレアルに所属するというややこしい枕詞は次第に見なくなった。今ではその枕詞に見合う選手なのかどうか誰もが不安視する。「見合う選手になってくれ」と悲壮な願いに成りつつある。イ・スンウは箔をつけるために、わざわざ韓国代表10番が与えられて、2018年のロシアワールドカップに出場した。しかし、チームが負けて、個人としても振るわずに終わり、今ではシント・トロイデンに落ちてきている。朝鮮企業がスポンサーでなければシント・トロイデンも拾っていない。
東京五輪世代の主力選手が海外に移籍ラッシュしたことでチームに呼び戻せるのかという不安まである。すでに冨安健洋はボローニャの主力と化しているので、もしかすると東京五輪には出場できないかもしれない。A代表に招集することさえも難しい。クラブでの評価が上がると代表チームの試合に呼びづらくなる。弱小チームばかりと対戦することになったワールドカップ・アジア二次予選にどのような戦力で挑むかも解らない。出場機会に恵まれていない選手を呼ぶのか、バリバリの主力として活躍している選手を呼ぶのか、Jリーグで実績を残している選手を呼ぶのか、未だかつてない選択肢を迫られている。蓋を開けるまで誰にも予想が付かないことから8月30日の発表にはメディアも注目している。肩書だけ見れば凄い面子だ。その内、何人を招集できるのやら。
海外リーグの放映権をめぐる争いもし烈を極めている。ニーズが分散化したことで放映権を取得する方も決められないでいる。DAZNが4大リーグを独占するも、ポルトガルリーグ、ベルギーリーグ、オランダリーグの放映権の行方は不透明。NHK-BSはクラブ単位で放映権を取得するなど交渉が難航している。日本代表の試合の放映権料も急激に上がっている。こちらも世界中で放送されている。日本代表が強くなれば強くなるほど、放映権のニーズが高まる。その内に、日本国内で行なわれる親善試合を日本のテレビ局が放送できなくなるかもしれない。ここ1年の親善試合のラインナップでは日本対南米の試合が一番視聴されている。EUでネーションズリーグが開催されたことで強豪同士の戦いが減っている。その中で注目されるのが日本代表だ。南米対決はコパアメリカがあるので飽きられていて、南米のサポーターまで日本との対戦を望んでいる。
このような状況に変わったのもロシア・ワールドカップでインパクトを残すことに成功したからだ。ベルギーと死闘を繰り広げた結果、ベルギーのクラブチームが日本の選手を獲得している。それまでにも移籍していた選手がいるので戦力と見なされるようになった。あくまでも助っ人として獲得されているのでステップアップなどと寝惚けたことばかり話している場合ではない。FCポルトの10番を背負う精神性に到達しているとは言い難い中島翔哉にはクラブの恥さらしに成らないよう忠告しておく。そろそろ、ミーハー気分から卒業しなければならない。世界では日本代表がブランドに成りつつある。それに応じて求められることも変わっている。
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