|
SNS上でTM NETWORKの話をする機会もこれが最後になるだろうから、TM NETWORKの音楽性のツボと言える話をあれこれと書いておこうと思う。
まず初めに、音楽関係のまとめサイトを見ても 管理者があまり音楽を聴いていないようで、ミーハーなネタばかり扱った内容が多い。内容といってもまとめサイトの内容は管理者が書いた記事ではなく、匿名掲示板の書き込みを抽出しただけなので、掲示板に書き込んでいる連中があまり音楽を理解してないということになる。TM NETWORKのスレッドではネタ的な話ばかりになっていて、音楽の方向性のような玄人よりの本格的な話で語られているのを見たことがない。まとめサイト自体がここ10年に定着した流行なので、管理者も若く、TM NETWORKのことをほとんど知らずに書き込みを抽出している。
ここでは本格的な内容とまでは行かないが、TM NETWORK時代の小室哲哉が何をしていたかポイントになる話をする。2000年以降にファンになった若い人は1980年代のポップシーンの事も知らないだろうから、2000年代のポップシーンや2010年代のポップシーンとの違いを踏まえつつ読んでみて欲しい。、
音楽業界関係者を唸らせたTM NETWORKの伝説的なエピソードがある。TM NETWORKの関連資料を読むと、コカ・コーラ主催『フレッシュサウンズコンテスト』に出場してグランプリを受賞したことがデビューの切っ掛けとされている。実はその少し前に小室哲哉はレコード会社各社に自作のデモテープを送付していた。大手レコード会社による争奪戦の末に最大手のソニーレコードと契約することが決まっていた。コンテストに参加したのは「コンテストの箔付け」のためにレコード会社が要請したものだった。TM NETWORKの箔付けと言われることもあるが事実はコンテスト側の箔付けである。
1983年6-8月の時点で小室哲哉がソニーの担当者と交渉し、「レコード会社のイチオシにして欲しい」との要望を受けたソニーが、グループ系列のEPICソニーを受け皿にすることで「イチオシにする」ことを了承した。ソニーのスカウト担当者を唸らせたのは8トラック16チャンネルをフル活用して録音された『1974』のデモテープだった。テープを再生したレコード会社の名うてのスカウトたちは「音がいくつ鳴っているのか解らない」とこぼすほどで、20年以上が過ぎてからも、当時の担当者らがその話をインターネット上で語るなどしている。インターネット総明期の1996-1997年には個人で作成したファンサイトなどがあり、ファンサイトの掲示板には音楽業界関係者たちもアクセスしていた。
1982年の時点で既に小室哲哉は音楽プロデューサーとして活動を開始しており、セリカ with ドッグというバンドのフルアルバムを制作している。そのセリカ with ドッグの業界向けパイロット版レコードをCD-Rに焼いたものが1997年頃までネット上で2万5000円で取引されていた。小室ブーム(globe人気)の最中ということもあって音楽マニアは最初期のプロデュースにあたるセリカ with ドッグのCD-Rを喜んで買っていた。デモ音源なども売られていたが、伝説の『1974』のデモテープだけはインターネット上での取引に挙がってきたことは無い。
1982-1985年の小室哲哉は、プロのアーティストでもやらない多重録音を駆使した複雑なサウンドをプロデュースしている。BOOWY時代の布袋寅泰がラジオ番組で「ライブで演奏できない曲を作る意味ないでしょ」と暗にTM NETWORKと小室哲哉を批判したことがある。これは誤解があって、コンサートでのライブ演奏では多重演奏を実現している。単純に人海戦術を用いて、小室哲哉と木根尚登のダブルキーボードに、小泉洋がシーケンサーを操作してサポートした。正しく言い換えると、ライブでは演奏できるけれど、音楽プレーヤーでは再生できない。これは音楽業界関係者の誰もが気づかなかったことなのだが、複雑な多重演奏されたサウンドはレコーダーを用いた「盗み録り」ができない。TM NETWORKの初期のコンサートを盗み録りした音源テープをいくつも聴いてみたが、まともに録音できている音源は1つたりとも存在しなかった。小室サウンドはテープレコーダーごときの録音分解性能を余裕で超えている。
TM NETWORKがプロデビューしたあとに正式な商品としてリリースしたレコードでは音が間引かれている。シングルやアルバムに収録されている『1974』もスペックダウンしてある。8トラック16チャンネルでフルレコーディングされた『1974』はレコード会社に送付したデモテープの中にしか存在しない。マニアはそれをとても聴きたがっている。小室哲哉が作成したデモテープがいくつも流出しているが、コンサート会場に足を運んでくれたファンに小室哲哉が直接プレゼントしたものである。FANKSサミットなどのイベント会場でもデモ音源をプレゼントしていた。しかし、『1974』のフルバージョンと思われるデモテープだけは何処からも流出してこない。仮に、入手できたとしても、通常のラジカセでは音を再生できないので、その音源の価値を理解することは無いだろう。音楽を聴くときは、使用されている楽器の数(トラック数)やシンセサイザーのチャンネル数を聴き分ける。8トラック16チャンネルだと、少なくとも20以上の音を重ねていることになる。音を重ねれば重ねるほど、音と音がくっついてしまい、その1つ1つの音の聴き分けが困難になる。20以上の音を用いて構築された『1974』はどんな風に聴こえるものなのか音楽マニアはそこに注目する。DRAGON THE FESTIVAL TOUR (日本青年館)のブルーレイ・ディスクに収録されている『1974』が限りなくそれに近い。
DRAGON THE FESTIVAL TOUR (山口市民会館)で演奏された『1974』は、山口県のローカルテレビ局のスタッフがコンサート会場で撮影し、同局の『TVビデオマガジン・スペシャル』にてテレビ放送されている。テレビ局のマイクで録音してテレビ放送しても音が潰れていた。『TVビデオマガジン・スペシャル』の当時の番組をパソコンに取り込んで、音をブーストして確認してみたが、シンセサイザーのチャンネル数を聴き分けることができない。プロの録音機器を用いて録音しても、テレビ放送した時点で音が潰れてしまっている。さらには、ファンの間でダビングする内に劣化コピーになってしまって音声の原形も崩れてしまう。ここに至って、TM NETWORKのサウンドを正常な形で楽しむには「コンサート会場に足を運ぶしかない」と結論づけられた。しかし、そこは女子中高生に絶大な人気を誇るTM NETWORKだ。コンサートチケットはプラチナ化していた。1985年まではチケットの入手は比較的可能だった。1986年以降は入手困難になった。ファンクラブの会員にならないとほぼ入手できない。
TM NETWORKのDRAGON THE FESTIVAL TOUR の音源テープ(コンサート会場で録音されたもの)をパソコンに取り込んで、フリーソフトを用いて音を増幅させてみたが、テープレコーダーで録音した音は、音と音がくっついてモヤモヤしている。擬音で表現してみると、伴奏がバウンバウンしている。ドラムやベースの音とシンセの音がくっついてしまい聴き取れない。超高性能マイクを用いないとTMサウンドは録音できない。素人が録音したテープは「歌」としてなら聴くことができる。音として聴こうとすると全く録れていない。DRAGON THE FESTIVAL TOUR のブルーレイ・ディスクを購入しても、普通のブルーレイ・プレーヤーに乗せて液晶テレビで再生しただけでは音が出力しきれていない。ハイレゾ対応イヤホンを接続してボリュームをMAXにしてようやく音が聴こえる。ブルーレイ・プレーヤーと一体型の液晶テレビで再生してみたが音が聴こえてこなかった。そのレベルの音楽を作るのが小室哲哉である。オーディエンスを驚かせてやろうという企みは面白いが、並の音楽再生機器では再生できないのだから、誰にも音の凄みが伝わっていない。
ここまでの話を読んで、小室哲哉は凄いことをやっていたんだ、となんとなく思えるようになってきたのではないかな?女の子のファンはこのレベルの話についてこれない。レコード会社のプロデューサ・クラスの人材でようやく通用するレベルの話。
シングルやアルバムでリリースした『1974』はスペックダウンしてある、と書いたが具体的に指摘するとシンセサイザーのチャンネル数を大幅に減らしてある。言うなれば、音を間引くことでラジカセでも再生できる音にしてある。1980年代はカセットテープをラジオカセットにセットして音楽を聴くのが主流だった。今の10代の子はカセットテープもラジオカセットも見たことが無いので想像しづらいかもしれない。音楽再生機器としては最低品質だったと言うしかない。テープの品質とスピーカーの品質によって音楽の質まで左右されてしまう。MP3などのデジタルデータで音楽を聴くようになってからは音楽の品質が左右されることは無くなっている。1980年代の音楽マニアたちは、少しでも高品質の音で聴こうと高額のPCMやDATを購入していた。音楽ソフト(レコードやCD、MP3などのデジタルデータ)を正常に楽しむには再生機器への投資を惜しんではならない。1980年代のTM NETWORKはラジカセで音楽を再生することを見越して音質をスペックダウンしてあるが故に、今になってTM NETWORKのアルバムをハイレゾ化しても、それほど際立って良化していない。ハイレゾ版の音源を購入しても素人には解らないと思う。誤解が無いように言っておくと、ハイレゾ版はCD音源よりも良化しているのだが、レコード音源と比較すると素人では解らない程度の良化しか感じられない。
1980年代のJ-POPはデジタル加工されたものが多く、ハイレゾ化には不向きな側面もある。AKB48のことをとやかく言う声があるが、君たちもそんなに言える立場ではないだろう。1980年代の世間一般的な認識では、BOOWYがギターバンドで、TM NETWORKはシンセバンドと認識されていた。しかし、レコードを聴くとBOOWYの方がテクノバンドっぽく仕上がっている。音の迫力を出そうと完成後に加工してあるのだ。TM NETWORKのレコードはあまり加工していない。そのため、レコードで比較するとTM NETWORKの音はおとなしく感じられる。安全地帯の『ワインレッドの心』はサウナ風呂の中でレコーディングしたのかと言いたくなるぐらい、加工し過ぎて変な音になっている。それをハイレゾ化してもハイレゾリューションサウンドに成らない。J-POPに見られる「音を増幅させる加工」については、前述のラジカセ対策(音が出難い)もあってのことなので、1980年以降で急激に増えている。AKB48とBOOWYでは音の加工の度合いに大差はない。他のバンドにしてもAKB48を笑える立場ではない。
TM NETWORKはコンサートになると音を何チャンネルも使用する。レコードに収録されている原曲がそのまま演奏されることは無く、すべてリミックスバージョンになっている。1984年当時のシーケンサー(自動演奏)では機材トラブルが起こりやすく、ソニーの指示でシーケンサーを使用せずに、事前にテープに録音しておいた音源を流してコンサートを行ったこともある。『ELECTRIC PROPHET』のタイトルで知られるファーストコンサートがそれである。小室哲哉が演奏するキーボード以外は全てテープ音源が流れていた。小室哲哉自身はサポートメンバーを加えて生演奏したいと主張したがソニーが許可しなかった。テープ音源を使用したというのに細かなトラブルが多発して同コンサートの映像と音源はお蔵入りした。『VISION FESTIVAL』に収録されてある同コンサートの映像は後日に録り直した音源に差し替えてある。『ELECTRIC PROPHET』のコンサート映像も、「完全な形で出してほしい」というファンの要望が絶えないが、無事に演奏している楽曲がたった2曲のみという散々なコンサートだった。半分以上は宇都宮隆が歌詞を間違えている。そのため、音源を差し替えて口パク映像になってしまった。
同コンサートの音源(パルコの実際の音源)を聴くと、テープを流しているだけの伴奏部分は音量が小さく、小室哲哉の演奏パートだけが浮いた感じになっている。差し替えた音源では全てのパートの音量を合わせてある。小室哲哉にとっては不本意なコンサートだったようで、追加公演として行われた1985年2月10日のELECTRIC PROPHET (広島郵便貯金会館)ではサポートメンバーを加えて構成を変えてある。ラジオライブとして収録されてあり、3回行われた同コンサートの中では唯一ライブ音源が放送されている。セットリストにはニューアルバム『CHILDHOOD'S END』の楽曲が入っているので先の2公演とは内容も変わっている。
1985年9月27日から始まったDRAGON THE FESTIVAL TOUR以降は、メンバーがソニーの意向に反対して、シーケンサーを使った生演奏のコンサートを行っている。『1974』は広島県民文化センターの公演からシンセサイザーの使用チャンネル数が増えている。伝説の8トラック16チャンネルの『1974』に近づいてきた。デビューコンサート(1984年6月18日)の『1974』はコンサート映像が公開されているものの、音源はレコード音源に差し替えられていた。ファーストコンサート(1984年12月5日)の『1974』もコンサート映像は公開されているものの、音源はスタジオで録り直した音源に差し替えられていた。そして、
音楽や音についての理解が進むにつれて、正確に音楽を再生することがとても難しいことに気づかされる。そのことを痛烈に感じさせてくれたのが小室サウンドだった。小室サウンドという言い方をすると、1990年代のダンスミュージックを思い出す人が多いかもしれない。1980年代と1990年代では小室サウンドの指し示す内容が違う。小室哲哉の仕事量はデビュー当初から膨大で、精神的なタフさは並大抵のものではない。オーディエンスを圧倒しようとするエネルギーに満ち溢れていた。あの不倫釈明記者会見においても、精神的に折れているようには見えなかった。まだ、第一線でやれるエネルギーを持っている。小室哲哉に関しては何も問題ない。宇都宮隆のボーカルがすっかり枯れてしまったことがTM NETWORKの終焉だった。TM NETWORKのファンに対しても、小室サウンドのファンに対しても、
1980年代には再生できなかった小室サウンドをようやく再生できる時代になった。音楽ソフトを正常な形(アーティストが意図した形)で再生するのが難しいので、音楽ソフトの評価自体も曖昧なものになりがちで、音楽専門雑誌の記事を読んでみても小室サウンドの真髄を解説した記事は無かった。デビュー当時の雑誌の記事はどれもアイドル扱いである。1980年代の小室サウンドは同時代の音楽プレーヤーでは再生できないオーパーツと言える。時代を超えて、2020年代に突入すると小室サウンドの完全再生が可能になった。それこそまさに、2025年の未来からやってきた音楽バンドだった。1984年のTM NETWORKデビュー当時のバンドコンセプトは、「2025年の未来の世界からタイムマシンに乗って現代に現れた音楽ユニット」というものである。2025年の音楽プレーヤーでなければ再生できないのだから、2025年の未来からやってきたというテクノロジーレベルの話はあながち誇張ではない。
|
おススメ動画
[ リスト | 詳細 ]
|
後編です。
チャプター9:『愛をそのままに』
木根バラタイムの始まり。男が聴いてもウツの声はカッコいいのだから、女の子が聴くとトロけるのが良く解る。コンサート会場で録音された音源を聴いていてバラードは特にそう思う。テレビでは『Seven Days War』以外のバラードを歌っていないので「バラードのTM」というイメージが世間には伝わっていない。TMネットワークは初期のアルバムからバラードの名曲のオンパレード。どのアルバムにも収録されている木根尚登作曲のオリジナルバラードは名曲ばかり。当時は女子中高生が熱狂していたが初期のバラードはどれも大人びた歌詞を綴っている。1stアルバム『1/2の助走』、2ndアルバム『愛をそのままに』、3rdアルバム『Confession』は木根バラ三部作と呼ばれていた。『愛をそのままに』だけはその後のコンサートで1度も歌われておらず、映像ソフトとしては今回が初出になる。バラードでは音楽のアレンジがあまりできないことからウツが若干歌い方を変えて変化を生んでいる。生歌だからこその良さで、同じコンサートに何度も足を運んでくれるファンへのサービス。ツアーの全公演を通じて聴くとボーカリストとしてのウツのパフォーマンスレベルの高さが解る。
チャプター10:『TIME』
こちらは小室哲哉によるオリジナルバラード。日本青年館ではいわゆるエアー・ギターで木根尚登は生演奏していない。ピックも持たずに指だけを弦の前でこちょこちょ動かしている。弦には一切触れていない。名古屋市芸術創造センターホールと日本青年館の2公演では事前にプロモーションビデオの撮影が告知されていた。同公演ではミスが許されないことから『TIME』の演奏時には生演奏を回避したと思われる。松本孝弘による黒子演奏と言われたりもするが、日本青年館の映像を見る限りではテープで収録したものを流したと思われる。木根尚登も自身で暴露しているように、ドラフェスツアーやFanks Dyna Mix Tour では松本孝弘が木根尚登の黒子演奏をしていた。でも、それは全てではない。木根尚登が自ら演奏して事故っている公演もある。木根尚登のパフォーマンスはそっとしておいて、宇都宮隆の歌に集中すれば良いんじゃないかな。
チャプター11:『Vampire Hunter D』
小室哲哉のシンセ・ソロステージ。ハイレゾ音源化されたことで迫力や音域が各段に良化している。テレビでも山口市民会館公演の同曲の映像が放送されてはいたがステージコンセプトを十分に伝える映像ではなかった。ライティングシステムと音楽が連動しているところを見せないと小室哲哉の意図するものが伝わらない。日本青年館公演の映像では下から舐めるアングルで撮影することで、天井に吊るされたライディングシステムと小室哲哉を一緒に映像に収めている。小室哲哉のシンセサイザーの演奏に合わせてライティングシステムが幻想的なステージを演出する。『未知との遭遇』を思わせるとはよく言われていたがまさにあのイメージでステージパフォーマンスしている。
チャプター12:『1974』 ※ウツ間違える
広島公演の際に小室哲哉が「MIDI音源を増設した」と公言していたように、ドラフェスツアーの前半と後半では新たに追加したMIDI音源によって音が異なっている。具体的に言えば、音の良化と共に、コンサートツアーの初回公演では演奏されていなかったパートが新たに追加演奏されている。良い面を言えば音の厚みが増している。悪い面を言えばごちゃごちゃしている。ハイレゾ音源で聴く分には伴奏も聴き分けることができる。昔の再生環境では日本青年館の伴奏の音は潰れていた。ハイレゾ音源が市場の主流になりつつある今は、音楽ソフトの再生アルゴリズムも進化していて、伴奏の再生に力を入れるソフトメーカーが増えている。データをPCの仮想メモリにダビングして演奏をパートごとに分けてエフェクトを掛けるアルゴリズムが開発された。10年以上前はエコーを掛けるにしても全体にエコーを掛けてしまうアルゴリズムなので、多重演奏や多重録音された音楽ソフトの再生には不向きだった。再生機の側で使われるアルゴリズムの問題は音楽家にとっても泣き所だっただろう。小室哲哉のように10トラック以上使う多重演奏では音の干渉が問題になる。人間の手によるドラムの演奏とシーケンサーを用いた電子ドラムの演奏ではスピードも違う。シーケンサーを用いて高速で音を連打すると、その空間では明確に音が鳴っていても、それを録音して再生するとなると問題が生じる。複雑な音楽になればなるほど、「音の再現性」の問題がクローズアップされる。一時期は自分の手で音楽再生アルゴリズムを作ってやろうかと思ったこともある。ドラフェス日本青年館の『1974』と『パノラマジック』はそれを突きつけて来る。プレーヤーに円盤のせりゃ、それで正常に再生できている、と思い込んでいる人には勿体ないレベルの音楽ソフト。
チャプター13:『金曜日のライオン』
ツアー序盤では『Electric Prophet』と共にコンサートのラストを飾る曲だった。MIDI音源の増設によって『Quatro』『パノラマジック』『ACCIDENT』がグレードアップされると、『金曜日のライオン』は演奏順序が前倒しされた。MIDI音源の増設後でも『金曜日のライオン』には何も手を加えられていない。むしろ、それが普通だろう。一ヶ月しかないツアー期間の最中に音を進化させていることの方が驚異的である。その瞬間に出来ることを全て投じるという小室哲哉の攻撃的かつ挑戦的な姿勢は高く評価できる。問題はそれを再生できる音楽プレーヤーをユーザーが持っていなかったということ。世の中のアイデアやテクノロジーがようやく追いついてきて、1985年当時のTMネットワークのコンサートのサウンドを再生できるようになった。『金曜日のライオン』も音の連続性の部分は1985年当時の環境では再生しきれていなかった。
チャプター14:『Quatro』
滅茶苦茶パワーアップしている。1985年のテレビのインタビューで小室哲哉が自慢げに言うだけのことはある。日本青年館の1か月後の山口市民会館のTVビデオマガジンでの放送に当たっては、小室哲哉の意向が汲み取られて『Vampire Hunter D』や『Quatro』が放送された。ウツの歌詞間違いを抹殺すると共に、自身の聴かせどころをちゃっかりアピールするも、ロカール放送局のため、全国区のファンの手元に来るまでに音も映像もかなり劣化していた。ツアーを通じて一番音が良くなっているはずが、劣化コピーのせいで一番音が悪くなるという始末。TMネットワークのファンは女性が多いので機材への拘りが無い。ファンの話を聞くからに、小室哲哉が見せつけている物事の半分ぐらいしか伝わっていない。改めて『Quatro』を聴いてあげて。
チャプター15:『パノラマジック』
解散時にリリースされた限定版のGroove Gear に収録されている。悪質な改訂版として『コロシアムⅠ Ⅱ』が批判されたことを受けて、Groove Gear のCDにはコンサートに近い状態のリミックスを収録してある。『パノラマジック』も音の構成はそのままで再生速度の変更も無い。唯一まともに聴くことができる日本青年館のコンサートの音源だった。それでもハイレゾ化されたブルーレイのサウンドには及ばない。松本孝弘のギター・パフォーマンスから始まるイントロが1分30秒もある。歌が始まるまでに2分掛かるというTMのお家芸。演奏開始前の松本孝弘を紹介するウツのMC部分は削除されている。イントロ演奏時の映像も小室哲哉よりのカメラ映像に固定されている。その間に衣装の着替えを済ませてウツが青ジャケになる。ロック調のリズムで演奏される『パノラマジック』がずば抜けてカッコよく、ウツのパワフルなボーカルもあって会場が大いに盛り上がる。カラオケで歌う時はこの当時のウツの歌い方を真似て歌っていた。CDとは全然違う歌い方なのでカラオケのテンポや音程を変えて調整しなければならない。1時間も歌うと喉がぶっ壊れそうになる。声を張ると声帯も傷みやすいのか、次第にウツの声は変ってしまう。だからこそ、日本青年館のコンサートを映像ソフトでリリースする価値が高い。
チャプター16:『ACCIDENT』 ※ウツ豪快に間違える
宇都宮隆がサビの歌詞を間違えるも勢いで歌い切っている。『ACCIDENT』の歌詞をあまり気にせずに聴いていると間違えていることに気づかないから不思議。新規編集されたBDではCサビの歌唱中に、頭の中で歌詞を思い出そうとするウツの表情がアップで映し出される。それでも結局は間違える。DECADEに収録されている映像(フィルムコンサート版の一部が収録されている)と比較すると、DECADEでは鳴っていなかった音が随所に存在することに唖然とするだろう。ミュージックというよりもサウンドになってしまい、歌として聴くときには少し邪魔になるような「音」をビデオソフト収録時に消している。従って、TMネットワークのコンサートの全体像は会場でライブ演奏を聴くことでしか知り得ない。実際にはシンセサイザーの音が好きな人にはたまらない音のオンパレードで歌という感じがしない。ミュージックであり、サウンドであり、ソングでもあるという不思議な印象がTMネットワークにはある。それがビデオソフトだと歌に寄せてしまう。そこはマーケティング論で、作家の作品性を蝕んでいる。作家性を貫くと『ACCIDENT』の評価はガラリと違っていただろう。日本青年館公演の映像を踏まえた上で、改めてファンにこそ、TMネットワークの評価を問いたくなる。
MC:メンバー紹介
チャプター17:『Electric Prophet』 ※ウツ間違える
1987年末にテレビ放送された『HUMAN SYSTEM スペシャル』の中でもコンサートの映像がノーカットで放送されている。今回は映像も新規編集されているので部分的には違うアングルで楽しめる。音に関してもハイレゾ化されたことで繊細な部分を聴き取ることができる。演奏時間が8分弱もあり、TMネットワークの楽曲の中では最長になる。これを超える演奏時間10分超の未発表曲『2025』が存在する。『2025』はビデオソフト『VISION FESTIVAL』 のオープニングで流れる曲。タイトルは『Theme』とだけクレジットされている。Electric Prophet コンサートのオープニングでのみ完全な形で披露されている。エレプロでは演奏する曲が少ないので、コンサート開始から冒頭の10分間はインストを流すという強硬策に及んだ。『2025』のタイトルはTMネットワークが2025年の未来の宇宙からやってきたことを意味する。日本青年館公演が行われた1985年10月31日の時点では『Electric Prophet』もレコードではリリースされておらず、『VISION FESTIVAL』 にElectric Prophet コンサートの映像が収録されているのみである。ファンの根強い要望に応えてミニアルバムに収録されるも「アレンジが違う」と不評を買うことになる。ミニアルバムの『Electric Prophet』には若干『2025』が組み込まれている。コンサートで楽曲のプロトタイプを演奏するのも当時の小室哲哉の斬新な手法だった。『Electric Prophet』は『Get Wild』『Rainbow Rainbow』 に続き、コンサートでの演奏頻度が3番目に高い曲であり、それだけファンの間でも根強い人気を誇っている。『金曜日のライオン』でもなく、『1974』でもなく、『Electric Prophet』の映像が事あるごとに公開されるのだからマニアック過ぎる。
チャプター18:『Ending (VampireHunter D)』
コンサートを終えたメンバーが宇宙船に帰還する。天井に浮上していたライティングシステムがステージ上に降下してくる。あれだけ巨大な物体が上下動するとインパクトが絶大にある。相当な重量が在って「もしも落下してくると僕たち死んでしまう」とは当時のインタビューで小室哲哉が答えている。重量の危険も然ることながら、熱量も相当なものがあったのではと思わせる。着替えを済ませた直後にも関わらず、宇都宮隆の額からは汗が流れ落ちている。ライティングシステムを駆動させる油圧ジャッキの安全管理者のスケジュールが折り合わず、コンサートの回数を減らすことになり、公演できなかった地域のファンのためにフィルムコンサートという形で日本青年館の映像が公開されている。全国にあったTMネットワークのオフィシャルショップでも、店内のモニターで映像の一部を流していた。大阪の心斎橋パルコにあったオフィシャルショップには店内にモニターが3つあって、それぞれ異なるコンサートの映像を流していた。日本青年館以外には、渋谷LIVE INNで行なったデビューコンサートの映像が流れていた。デビューコンサートの映像はテレビ未放送の上に映像ソフトにも収録しておらず、ほとんどのファンは未見の部類だろう。デビューコンサートの映像はオフィシャルショップでのみ上映されていた。『1974』と『金曜日のライオン』は映像として残っている。2曲だけ収録したとは考えにくく、すべて収録してあると思う。オフィシャルショップに行くと店内モニターの前で50分は釘付けになっていた。グッズを買って、店員さんに断り入れて、モニターを眺める。ビデオが終わると店員さんに巻き戻してもらう。映像は随時かわって、CAROLの制作記者会見やリニューアル宣言のノーカット版を流していた。今回のBD-BOXにボーナスディスクとして付いてきたSTAR CAMP の地上波版もオフィシャルショップで流していた。店内モニターとはいえ無断では流せないはずだから映像権利をソニー側も持っているんだろう。ボーナスディスクの1枚がSTAR CAMPはガッカリした。デビューコンサートの映像や他にいくらでもあるだろ。単純にソニーの社員が把握していないだけだと思う。 EXPO やリズレの映像を流すようになったけれども、店員さんに言えば古いビデオに取り換えてくれる。そういうの知ってるか知らないかで損してると思う。
DRAGON THE FESTIVAL TOUR の映像に関しては音楽ファンの方にもお薦めできる。しかし、これを入手するにはブルーレイBOXを買わないといけない。そのブルーレイBOXの中身は大半が名ばかりだけのハイレゾ音源と名ばかりだけのHDリマスター。中身を知ったファンの間では怒りが爆発している。また、こんな中途半端なことをして金を巻き上げるのか!って声が大勢を占めていた。その前から「未公開映像をふんだんに使った」と題して上映した映画が公開済みの映像ばかりでファンの怒りを買っていた。再び騙し討ちのようなことをしたために不買運動まで起きている。ブルーレイBOXを販売するに当たって、メインリソースは解散コンサートの映像のHDリマスター化だった。これは原盤の撮影フィルムから映像を取り込んだ正真正銘のHDリマスター化だった。しかし、元となる撮影フィルムの状態が悪く、さらに音質もあまり良くないので不評を買うことになる。ボーナスディスクとしてDRAGON THE FESTIVAL TOUR が付属していなければBOXごと焼かれていたと思う。ファンの怒りは相当なのでTMネットワーク関連の商品のレビューは荒れている。
セクシービデオ会社でも、まともなリマスター商品を出すというのに、世界のソニーがこんな中途半端なリマスター商品を出すとは・・・・・会社の恥と思わないのか?ソニーの倉庫に飛び込みたい。ブルーレイBOXが最後とは思いたくもない。当時を知る関係者が監修しているというのが信じられない。みんな、記憶が風化している。小室哲哉がデビュー当時のことを記憶していないのは解る。作家は次のこと、次のこと、先の事を考える性質なので自分がやってきたことも忘れてしまう。マネージャーの小泉洋や付き人の久保こーじを交えて情報を収集していれば資料も見つけやすいだろうに。薄々感じるのはファンの情報を頼りにしていることだ。「BEEがある」と言っていたら20周年記念BOXにBEEが付属してきた。CAROLの「CAMP FANKS の映像がある」といえばDVDでリリースされた。今回も「日本青年館のフィルムはある」と言っていたら付属した。次があるかどうかわからないが存在確認してあるものだけ連呼しておく。
1984年6月18日のデビューコンサートの映像がある。これはオフィシャルショップでビデオテープで流していたので原盤が何処かに眠っているはず。それからDRAGON THE FESTIVAL TOUR の名古屋公演の映像もフルであるはず。同コンサート会場にいた女の子らがプロモ撮影していたと話していた。このときの映像はBEEに編集されて使われている。それからFANKS DYNA MIX TOUR の中野サンプラザ。これもフィルムコンサートで上映されている。誰かが持ち出していなければ原盤はソニーが保有しているはず。リマスター化するならアップグレードではなく、原盤のフィルムをスキャニングしてリマスター化して欲しい。音声はリニアPCMの192KHz/24bit スケールにして欲しい。TMネットワークは音を10チャンネル使うことがあるので96KHz/24bit でも聴き分けづらい。オーケストラに近い状態と思って扱わないといけない。オーケストラのハイレゾ音源が全て192KHz/24bit スケールになっている。並のバンドならそこまで言わないが小室哲哉の音は特殊過ぎる。音楽ファンは研究者並に音をチェックするので192KHz/24bit スケールでないとハイレゾでも納得しない。中途半端なことをすると会社が舐められるぞ。ソニーほどの会社が一般消費者に舐められるようなことをしてはならない。ステージ上の小室哲哉はオーディエンスを叩きのめそうとしていた。その音は普通の音楽プレーヤーでは再生できない。ハイレゾ音源にして、ハイレゾ機器を用いて、初めて小室サウンドはまともに再生できるようになる。誰が物事をややこしくしているかといえばソニーだ。デビューコンサートの時点ではさすがにそこまでの音には到達していないが、DRAGON THE FESTIVAL TOUR 以降では通常の音楽プレーヤーでは再生できない音になっている。音楽はCDをプレーヤーに載せたぐらいでは再生できない。そのことを世界のソニーが知らずにいるんじゃないのかな?
TMネットワークファンにもう一つ教えてあげよう。
DRAGON THE FESTIVAL TOUR の音がすこぶる良いのは秋口にコンサートを行ったからだ。秋口になると日本全国の湿度が低下する。湿度が低下して気圧が下がると音が響くようになる。アメリカやイギリスと違って日本の場合は気圧の問題で音楽の収録が困難になる。気圧が高いということは空気の壁が存在するということ。それが音波を遮るので日本で収録したレコードは総じて音がこもってしまう。気圧コントロールした上で収録してあるレコードもある。音楽ではなくて、音そのものの性質を理解して音楽ソフト制作に取り組んでいるアーティストの作品は問題ない。あまり深く考えずにレコーディングしているアーティストは全滅している。音がこもるのでJ-POPはデジタル処理して音を増幅させる。1980年以降のJ-POPは加工したものが多い。加工した後の音源をハイレゾ化しても音の深度は上がらない。コンサートの映像ソフトを見るときに、コンサートの日付に注目するだけでも、良質な音楽ソフトを選択できる。西日本よりも東日本の方が気圧は低い。なおかつ、夏と冬では雲泥の差がある。そのレベルで逆算してDRAGON THE FESTIVAL TOUR の名古屋公演1985年9月27日の映像はハイレゾ化すると良い音になることが予想できる。よみうりランドイーストで行なった FANKS FANTASY DYNA MIXは屋外のコンサートで1986年8月23日の公演日だったことを考えると音質は悪いはず。コンサート会場のスタンド席で録音した音源を聴いた分には音が全然録音できていない。湿度が高く、気圧が上がっているからだと思う。日本の自然環境は屋外コンサートには向いていない。逆に音がめちゃくちゃ良いと評判なのが1987年3月20日の大阪厚生年金会館大ホールで行ったTOUR'87 FANKS BANG THE GONG。同公演はファンが録音した音源しか存在しないので映像ソフト化は無理として、気圧の低下する冬場のコンサートツアーの映像はハイレゾ化する価値が高い。アメリカやヨーロッパだとそこまで意識しなくても構わないがアジア圏では気圧が音楽コンサートのネックになる。この問題に気づいた上で音楽ファンを名乗れ。それまでは音楽ファンではない。ただのミーハーや。
|

- >
- エンターテインメント
- >
- サブカルチャー
- >
- その他サブカルチャー
|
1999年6月12日のシドニー五輪アジア1次予選香港ラウンド第一節、日本とフィリピンの試合。ワールドユースで準優勝した黄金世代を組み込み、U-22日本代表が躍動する。勝つことは当然として、話題は何点取れるのかだった。五輪予選の過去最高ゴール数は15得点。フィリピンを相手にメキシコ五輪代表が樹立した記録。同試合では釜本邦茂がトリプルハットトリックを達成している。
シドニー五輪代表は鹿島の若手コンビ、柳沢と平瀬が2トップでスタメン出場するとこのコンビで先制ゴールを決める。平瀬はチーム最多の4ゴールを決めて一躍注目を集めることになった。期待された小野伸二と中村俊輔によるダブルファンタジスタ・システムもフル稼働した。小野は縦横無尽に走り回り、ゴールとアシストでフィリピンを圧倒した。次から次にスルーパスを通してシュートチャンスを量産する。中村俊輔も得意のフリーキックでゴールを決めた。合計13ゴールの大量得点は史上2番目の記録だった。
香港、マレーシア、フィリピン、ネパールを相手に無傷の8連勝を飾るも、日本ラウンドのフィリピン戦で小野伸二が後方からの悪質なスライディングを受けて人体断裂の重傷を負う。五輪のアジア一次予選の突破が決定していたにも関わらず、フィリピン戦に小野伸二を出場させたことは日本サッカー界が悔やむ最大の過ちだった。フィリピンのプレーは非常に荒い。香港ラウンドの試合を見ても危ないスライディングを随所で見せている。正面からスライディングされても小野伸二はひょいっと避けている。日本ラウンドのフィリピン戦では背後から来たスライディングで蟹ばさみのような形で左足を持っていかれて膝から下が嫌な形で曲がっていた。
翌年に怪我から復帰すると、小野伸二はアジアカップのサウジアラビアとの開幕戦でゴールを決める。重傷を負う前と後のプレーを比較すると、ケガから復帰した後では小野伸二のプレーエリアが狭くなっている。改めてフィリピン戦の小野伸二のプレーエリアに注目してみると、サイドの深い位置にまで顔を出すなどパス&ゴーがしっかりできている。フィリピン戦に限らず、シドニー五輪アジア一次予選を通じて小野伸二はシュートを打ちまくっている。これには中村俊輔との連携も効いていて、キーパスを出せる中村俊輔が後ろにいることで小野伸二は自らゴールを狙う意識を強く持てている。ワールドユースの時よりも五輪予選の時の方がアグレッシブな印象を受ける。
小野伸二はユーティリティ性にも優れていて、DFラインを除くすべてのポジションでプレーできる。小野伸二はチームに欠けている部分を補完しようとする考えでプレーするので、フェイエノールトや浦和ではパサー役に比重を置いている。ダブルファンタジスタ・システムを採用したシドニー五輪代表では平瀬の後ろでシャドーストライカーとしての動きを強めている。柳沢がサイドに流れてスペースメイキングに徹するので、平瀬の周囲にスペースが空いている。そこに小野伸二が飛び込んでくる。その動きのキレが故障後は落ちている。後々のプレーエリアの変化にそれが如実に感じられる。
全盛期の小野伸二のプレーは今の若い選手には良い刺激になる。ボールの持ち方、運び方、パスの散らし方、パスを出してからのリトライ、どのプレーを見ても一級品であることが解る。小野伸二と久保建英のどちらが上なのかと問われるとこの動画に答えがある。
単純比較できない部分もあって、当時のこの世代のサッカーは組織全体で引き締める(絞る)動きが乏しい。フィリピンの選手たちはゴール前を固めているとはいえ、プレス戦術を使っていない。押し込まれて下がっているだけで守備のポイントも見られない。緩い部分があるのでボールを運びやすい。キープ力と突破力なら久保建英の方が上になる。リトライに関しては己小野伸二の方が上になる。
中島翔哉と三好康二はリトライを意識してプレーすると今よりも「怖さ」を醸し出せる。リトライがどういうことを指すのかは小野伸二のプレーから学び取れ。言葉で説明を受けるよりもプレーイメージを見ておいた方が良い。いざという時には頭の中でイメージが浮かぶもの。ピッチ上でサッカーをしている時は言葉よりもイメージが大事。映像を見ることもレベルアップに繋がる。
|
|
前回の全体レビューの続きで、今回は Dragon The Festival Tour 日本青年館のBlu-ray に収録されている各楽曲を順番にレビューしていく。
前もって言っておきたいことがある。
Dragon The Festival Tour 日本青年館の楽曲の内、2曲目の『Dragon The Festival』から順番に3目『カリビアーナ・ハイ』と4曲目『Rainbow Rainbow』までの連続する3曲は、2008年に販売されたCDアルバム『THE SINGLES 1 初回限定版』のボーナスディスクに収録されている。このCDバージョンは演奏スピードを1.5%ほど速度アップしてあり、音も声も全体的にキーが若干上がっている。TMネットワークのCDに収録されている"ライブバージョン"は速度が調整されていたりするので基本的には別物として聴かなくてはならない。あくまでも"ライブバージョン"であってライブ音源ではない。同CDのエレプロライブの曲も再生速度が変更されている。ライブバージョンは色々と弄り倒しているので原盤を聴いていないと何を聴いているのか解らなくなる。再生速度が1.5%も変わると体感で解る。3%も変わると別の曲と化してしまう。
小室哲哉のスキルやセンスを読み解いて、あれはここをいじくっているだろ、とツッコんで小室哲哉をドキっとさせた人間は私ぐらいしかいない。ファン同士で会話しても音楽レベルの話になると噛み合わない。一般的なファンは製品版を正規版と考えがちで、正規版(演奏時の音楽)から改訂されていると思っていない。TMネットワークに限らず、J-POPは色々と加工してある。生の楽器の音を憶えるとJ-POPに加工は一発で見破れる。TMネットワークのCDに収録されている各種ライブバージョンのように演奏スピード(再生速度)が変えられていると、それ自体の音は本来の演奏時の音とは異質なものになっている。"あれは違う"と言ったところで、そう思っていない人にはまったく通じない。解散時にリリースされた Groove Gear だけがライブ演奏時に近いリミックスでリリースされている。Dragon The Festival Tour 日本青年館が正規の形でライブ音源をそのまま出してくれたので、CDのライブバージョンと比較してみると加工の痕跡が解ると思う。そういう意味ではとても貴重な音楽ソフトと言える。
耳を慣らしておくと、ドラムの音を聴いた瞬間に再生速度が変えられていることが解るようになる。BOOWYの音楽が本物とかほざいている連中はド素人。BOOWYのアルバムはTMネットワークよりも加工しまくっている。本当に、最近になって、ようやく本物の音楽ソフトを入手できるようになってきた。技術の進化に感謝しなければならない。『新世紀エヴァンゲリオン』のサントラの方がよっぽど本物の音楽といえる。新劇場版になってからは庵野も鷲巣も本物の音に拘らなくなってしまったのは残念。
音楽ソフトは、それが音楽としてリリースされているのか、歌としてリリースされているのか、純粋に音に拘ってリリースされているのか、大きく分けて3つの観点からアプローチされている。小室哲哉はコンサートでは音に拘っているのに、製品をリリースするときは歌に寄せてしまう。宮崎駿と似たところがあってマーケティングの影響を受けている。TMネットワークの圧倒的大多数のファンは女性であり、音ではなく歌を好んで聞いているので、セ品版のライブバージョンは「歌」になっている。音楽としても、歌としても、音としても、音楽ソフトを堪能するタイプの私としては、歌に特化させてしまったライブバージョンは味気なく感じる。だからこそ、本来の演奏時の音をそのままリリースした Dragon The Festival Tour 日本青年館のBlu-rayは大満足。音楽ファンの方にも超おススメの音楽ソフトとして太鼓判を押したくなる。
個人的な戯言はこれぐらいにして、ここからはTMネットワークのDragon The Festival Tourをレビューする。
チャプター1:『OPENING (Childhood's End)』
初期のTMネットワークのコンサートは小室哲哉による幻想的なインストゥルメンタルのオープニングテーマから始まる。TMネットワークは「2025年の宇宙から来た異星人が現代の地球で活動している」というコンセプトに基づいてコンサートの演出も企画されている。第二弾のオープニングである『Childhood's End』は古代遺跡に接触するというイメージで作られている。当初は4分の尺で流されていたものがコンサートツアーが進むにつれて 4分 → 2分 → 1分45秒 → 1分30秒 と短縮(カット)されていく。日本青年館バージョンは1分35秒流れる。同名のアルバムには35秒しか収録されておらず、『Childhood's End』の全貌はDragon The Festival Tourの序盤の公演に足を運んだ者しか知らないというレアな曲。製品リリースされてはいるものの未発表曲と言って差し支えない。
チャプター2:『Dragon The Festival』
オープニングテーマにつづいて古代遺跡の謎を追う冒険活劇を歌っている。初期のコンセプトに基づくハリウッド映画をイメージした曲である。イントロの開始と同時にステージ上のライティングシステムが浮上する。未知との遭遇の母船をイメージしたライティングシステムを持ち上げるために、日本国内に3台しかない油圧ジャッキの内の2台を借りてきている。その油圧ジャッキの安全管理を担当する人物が国内に1人しかおらず、油圧ジャッキ担当者のスケジュールに合わせてツアー・スケジュールも決められた。ステージパフォーマンスだけでなく、ライティングシステムに拘るのもTMネットワークのコンサートスタイルだった。映像がHDリマスター化されたことで天井に吊るされているライティングシステムの存在感も格段に増している。1985年のライブながら古さを感じさせないのはライティングシステムの功績かもしれない。贅沢を言えば映像は 4K ウルトラHDにして欲しかった。
チャプター3:『カリビアーナ・ハイ』 ※ウツ若干間違えそうになる
このライブのカリビアーナ・ハイのアウトロでフェードアウトしていくときのシンセサイザーの音の響きが個人的にツボになっている。ギュゥウオォォォーーーンみたいな感じの音。さすがハイレゾ。音という音のすべてがフィルム版やCD版とは比べ物にならないぐらいメリハリがある。ウツの声にも張りがあってかっこいい。全てにおいてカッコいいカリビアーナ・ハイだ。解散コンサートでの哀しいまでに枯れた声と違って、宇都宮隆のボーカルに若さとエネルギーが満ち溢れている。この当時を知らないファンには衝撃的だろう。マイナーな曲でありながらファンのハートを鷲掴みにできるパワーを備えている。なぜ、これを出さないんだ、と再三再四リクエストしてようやくソニーが動いてくれた。BOXセットに合わせた映画館での上映で、ドラフェスを上映していたならファンの興奮は断然違っていた。チャプター4:『Rainbow Rainbow』
『Get Wild』 に匹敵するほどコンサートで重宝されていたのがこの曲。シンセサイザーの進化と共にコンサートでは毎回異なるリミックスバージョンで演奏されている。CDに収録されている原曲は解散コンサートで1回演奏されたのみというのも面白い。ウツのダンスパフォーマンスがあまり激しくなく、ディスコスタイルに留めていることもあって歌唱力が安定している。この次のコンサートツアーである Dyna-Mix 以降でウツのダンスパフォーマンスが激しさを増すと、本来の魅力である声質が次第に発揮されなくなっていく。ヴォーカリストとしての宇都宮隆は指折り数えて屈指の声を持っていて、後に誰がカバーしてもこの当時のウツの声には遠く及ばない。『Get Wild』や『Rainbow Rainbow』は宇都宮隆が歌うからカッコよく聴こえるのであって、他の誰かに歌わせても全然カッコよく聴こえない。
MC:宇都宮隆
会場ごとで少しアレンジを加えながら、金色の夜を一緒に過ごそう、と呼び掛ける。
チャプター5:『8月の長い夜』 ※ウツ2回間違える
当時のファンの間で有名な話があって、『8月の長い夜』の歌詞の「愛し続けてるさ、君を」を歌うときにウツが会場の女性を指さす。ツアー中に「ウツが指さすのは赤い服を着た女の子だ!」と気づいた女子たちがいて、ツアー後半の会場には赤い服を着てくる女の子が増えた。ツアー終盤の日本青年館のオーディエンスの中にも赤い服を着た女の子がチラホラ見えるのはそのため。日本武道館の『Self Control』の映像に赤い服を着た女の子が映っているのも同じ理由。Fanks Cry-Max でも『8月の長い夜』が歌われると予想して赤い服を着てきた女の子が大勢いた。ドラフェスから広まったFANKSあるあるだった。大半の曲に言えることで、初期の曲は初期のコンサートのパフォーマンスが一番優れている。『8月の長い夜』もTM史上これが一番素晴らしい。
チャプター6:『永遠のパスポート』 ※ウツ間違える
全曲のアウトロからそのままイントロが始まる。初期のTMネットワークの屈指の名曲であり、同ライブのパフォーマンスはTMネットワーク屈指のパフォーマンスと言える。意外と当時は女性に人気が無く、『8月の長い夜』と違って後のコンサートからはセットリストから外されてしまう。個人的には、TMネットワークの都会的なお洒落なイメージを形作った名曲と思っている。ドラフェスの『永遠のパスポート』を今回初めて見るという人は脳汁がブシャーっと溢れているだろう。ここでもウツの声が素晴らしい。前曲と合わせて立て続けに歌詞を間違え、小室哲哉がウンザリした表情を浮かべている。ウツが歌詞を間違えてショックを受けるのは小室哲哉だけではない。フィルムがお蔵入りするのでファンにとっても強烈なダメージになる。歌詞を間違えていても全然かまわないから、そのまま出してくれと言い続けなくてはならない。ウツは初期のコンサートほど歌詞間違いが多いので余計に性質が悪い。映像ソフトでは「出せる物だけを出す」という形になってしまって、TMネットワークの本来の姿が一般的な音楽ファンには伝わらなかった。木根尚登ギター・ソロ・パフォーマンス
TMのビデオを見るたびに木根尚登や小室哲哉が気の毒になる。諸事情で木根のギターと小室のシンセの音がトラックことごっそりカットされている。そのため、市販の映像ソフトを見た人からエアー・ギターやエアー・キーボードと揶揄されてしまう。コンサート会場で録音されたテープで聴くと両名ともにガンガンパフォーマンスしている。ギターの音に神経を集中させて聴いてると割と木根尚登のギターも聴こえてくる。そういう聴き方をしない人にはたぶん何も聴こえてこない。しかし、ドラフェスに限れば・・・・・うーーん・・・・黒子がいるのかな?と思える部分がある。じっくりと指の動きと音の動きを確かめ見ると良いだろう。
チャプター7:『Fantastic Vision』
再びアップテンポの曲でステージを盛り上げる。1984年に九州の西日本放送の早朝5:30分のテレビ放送開始時のオープニングテーマに採用されたことで知られる曲。九州に馴染みの深い曲ということでEXPOアリーナツアーでは九州地方のコンサート会場だけフォークパビリオンで演奏されている。コンサートツアーの各地で演奏している曲やアレンジが若干違うというのもTMネットワークのらしさだった。ドラフェスツアーでは間奏で木根尚登のパントマイムが披露される。小室哲哉の思い付きに振り回されてしまい、このツアーでは本職であるキーボードを演奏させてもらえない。アウトロでは白田朗のシンセブースや小泉洋のシンセブースが大きく映る。コンピューター・マニピュレーターやコンピュータープログラマーとしてクレジットされる小泉洋も何やら演奏しているような仕草をしている。福岡公演でシーケンサーが暴走したことから、シーケンサーの比率を下げてトリプルキーボードでカバーしたのでは?と思わせる。コンサートツアーの最中にも、TMは楽器編成が変わったり、演奏する曲を変えたりしていることがあって、当時の筋金入りのTMマニアはコンサートツアーの全公演の音源をコレクションしていた。改めて鮮明な音源で聴くと、間奏明けからのキーボードの1音1音の歯切れがよくて心地良い。TMぐらい音を重ねているとハイレゾ音源で聴かないと音の鮮明さを欠いてしまう。『Fantastic Vision』のアウトロはリニアPCM 96KHz 24bit でも物足りないと思わせる。チャプター8:『Faire La Vise』
前曲に続いてアップテンポな曲で会場のボルテージを最高潮に高める。イントロからして胸が高鳴る曲の1つ。Fanks Dyna Mix 以降のアレンジよりも原曲に近いアップテンポのドラフェス版の方が好き。各パートで小刻みに連打するドラムの音が気持ちいい。力強い演奏、力強いボーカル、コーラスワークで会場の興奮を一気に高める。途中で映る会場のデジタル時計の7:27の表示が印象に残る。フィルム版からあのアングルの映像が使われている。コンサート全編を通じてキレを感じさせるウツだが、この曲では特に。CAROL以降のウツからは感じられないキレを感じさせる。これといって目立ったミスも無いというのにフィルムコンサート以外では公開しなかったのが不思議。この曲の映像を初めて見る人はウツの印象がまた変わるんじゃないかな。タイトルがTMにしては珍しいフランス語。その意味は調べてみましょう。慣用句なので直訳すると意味がおかしくなる。1986年に出版したパーソナルブックに解説が載っている。
後編につづく
|

- >
- エンターテインメント
- >
- 音楽
- >
- 音楽レビュー
|
TM Network についてSNS上で書くことも無くなってくるだろうから、直近で発売されたDragon The Festival Tour のBlu-rayについて詳しくレビューを書くことにする。哀しいことにTMに詳しい層があまり情報を発信しなくなったのでコアな話が聞けなくなっている。ブログにレビューは無いかと探してみたけれど、本格的にレビューしている記事が何処にも見当たらない。度重なるトラブルもあって、すっかり冷めたファンも多い。
TMネットワークは1980年代当時、新聞や一般雑誌ではTMネットワーク表記が多かった。新聞のテレビ欄でもTMネットワーク表記が使われていた。なぜ、TM Network ではなくて TMネットワークだったのか詳しいことは解らないが、TMネットワークの方が文字列として目立つのでテレビ欄を見て番組を見つけやすかった。当時からTMネットワークの方が馴染みがあるので、ここでもTMネットワーク表記にしておく。
Dragon The Festival Tour はTMネットワークの3回目のコンサートツアーになる。1984年のデビューコンサート、1984-1985年のElectric Prophetに続く、1985年に行われたコンサートツアーがDragon The Festival Tour だった。前2つのコンサートツアーと違う点は、Dragon The Festival TourからMIDI音源を使うようになって シンセ周りの音質が格段に良くなっていること。1985年当時の日本国内のバンドでMIDI音源をフルに使ってライブしていたのはTMネットワークぐらいではないかと思われる。その意味では非常に貴重なでは音源で現代では再現できない。BOOWYやレベッカが使っている楽器は再現しやすいけれど、TMネットワークが使っていた楽器はシンセ周りの扱いが難しい。トラブルが起こりやすいので現代のミュージシャンは使いたがらない。Dragon The Festival Tourの最中にもシーケンサーが暴走するなどのトラブルは起きている。
1984年のデビューコンサートからしてシーケンサーの暴走が起きていて音源化されていない。コンサートの模様を収録したビデオが存在するものの、その映像に充てられている音源はレコード音源であり、実際のコンサートの音源はライブ会場で録音したものでしか聴くことができない。3回行ったデビューコンサートすべてでトラブルが発生しているのでファンは流出させたがらず音源の入手は難しい。1984-1985年のElectric Prophetはシーケンサーのトラブルを恐れたソニー側の指示で、事前に録音しておいたテープ音源を流している当て振りである。そのテープ音源をも途中で停止させてしまうというミスが起きるのだから信じがたい。ボーカル宇都宮隆の歌唱ミスも併発して小室哲哉は激怒した。Electric Prophetの模様を収録したビデオソフトが発売されたが、映像も音源も別撮りしたものをあてている。
諸々の事情があって、TMネットワークの1984-1994年の活動時期のコンサートを完全収録したビデオソフトは存在しない。他のバンドも似たようなことになっていて、コンサートを完全収録したビデオソフト自体が非常に少ない。近年になってようやくBOOWYがGIGSの完全収録版をリリースしてファンを狂喜させた。TMネットワークも完全収録したビデオソフトの発売が期待され、Blu-ray HDリマスター化に伴い解散コンサートのLast Groove 5.17と5.18が完全収録の形でBOXセットとしてリリースされることが発表された。Dragon The Festival はBOXセットのボーナスディスクとして発表された。
Last Groove 5.17/5.18に対するファンの反応はイマイチだった。思っていた以上に映像の質が悪く、HDリマスター化したことで返って映像の質の悪さが引き立っている。使用した一部の撮影機材が悪く、アングルが切り替わる度に画質の荒い映像が紛れ込んでくる。全国の映画館で限定上映された際にも視聴したファンから画質が悪いと指摘されていた。32インチの液晶画面で視聴しても画質が荒いのだからファンが怒るのも無理はない。宣伝のための映画館上映でBOXセットの予約を解除するファンが続出した。さらにはアップコンバートしただけの似非HDだらけの内容だったためにBOXセットの売れ行きに暗雲が立ち込めた。これまでついてきてくれたファンに止めを刺したと言っても過言ではない。これまでも酷い商売をしてきたためにファンが怒りを爆発させている。
それを救済したのがボーナスディスクとして付いていた Dragon The Festival Tour だった。1985年の収録にも関わらず、こちらは画質も音質も格段に良い。ハイレゾ音源の見本とも言える仕様になっている。マイナーな曲ばかりなので一般層には見向きもされないが、画質と音質の事を考えると現行の音楽ソフトとしてはハイクオリティーと言える。何と言っても貴重なのはシンセサイザーの音。1985年当時のハイスペック・シンセサウンドは現代のシンセサイザーとは音質が違っている。その意味において音楽ファンにもお薦めしたくなる音楽ソフトだ。ただし、BOXセットの中の1枚なので単品では購入できない。
これまでの粗筋はここまでにして、 Dragon The Festival Tour のレビューを綴っていく。
1985年10月31日に日本青年館で行なわれたコンサートの模様を完全収録してある。曲と曲の合間を若干省いた以外、演奏部分に関しては完全収録されている。マニアックな話をすると、消されていた音が復活している。このコンサートの映像と音源の一部は過去にもリリースされている。まず、フィルムコンサートとして上映されたものがあり、その中から4曲はテレビで放送されている。また、解散時にリリースしたCDにも1曲収録されている。これまでに製品として18曲中の7曲がリリースされた。その7曲全てに共通していることがあって、キーボードで演奏されていたはずの音が一部消されている。「音」に成り過ぎていて「歌」になっていない部分が消されている。TMネットワークの従来の製品にはこれが毎回ある。コンサートの原版を聴いたことのある人でないと知らないレベルの話だが、実はコンサートのときとCDでは鳴っている音が違うのだ。今回、コンサートでの演奏時の全ての音が収録されたことで印象が様変わりしている。同コンサートは小室哲哉と白田朗のツインキーボードで演奏されていて、ある曲では小室哲哉が演奏した音が完全に消されている。『Accident』の編集マジックを知ればファンもビックリする。テレビ放送時の『Accident』は明確に鳴っていたはずの音が完全に消えている。Blu-ray版では小室哲哉の演奏部分の音が全て復活している。ライトなファンは「ビデオ未収録の曲をリリースしてくれよ」と要求する。コアなファンは「消した音を復活させてくれよ。コンサートではもっと小室てっちゃん弾いてただろ。」と要求する。
全ての音が収録された Dragon The Festival を視聴した後で初めて知った人もいるだろう。Fanks Dyna Mix も、 Fanks Cry-Max も、音が部分的に消されている。曲が収録されていないだけでなく、収録されている曲についても音が消されている。コンサート会場で当日に演奏を聴いた人だけがそのことを知っている。
コンサートの音源を製品リリースした際は歌の邪魔になっている音を消す。トラッキングの調整を行ってベースやドラムのボリュームを下げる。ボーカルはマイクからのライン録音のため迫力や臨場感を欠くので電子エコーを全体に掛ける。電子エコーを掛けるので宇都宮隆の声のキーが若干高くなっている。そうして出てきた『Accident』を聴くと、伴奏は潰れているわ、メイン・キーボードの音は鳴っていないわ、宇都宮隆の声は活舌が悪くなっているわ、悪い事ずくめ。ビデオテープの経年劣化によっても音や声のキーが上がってしまう。レストアとHDリマスターを経て、伴奏の楽器は個別に聴こえるわ、メイン・キーボードの音は復活するわ、宇都宮隆の声にエコーが掛かっていないわ、で全体の印象が様変わりしている。Blu-rayの『Accident』を聴くだけでも本来のTMネットワークの音の凄さが解るだろう。テレビで放送されたコンサートの映像は全て頭から消して欲しい。かなり加工されている。テレビやラジオで放送されたFanks Cry-Max の『Get Wild』 からして加工済み。本来の音とは印象が違う。TMネットワークのコンサートの音を聴く方法は会場に行くしかない。コンサート会場でファンが録音したテープだと伴奏が完全につぶれているのでこれも話にならない。自分でコンサート会場に足を運ばないとTMネットワークの本来の音を聴くことはできない。Dragon The Festival Tour が本来の形でリリースされたことによってファンが受けるTMネットワークの印象も変ってくるだろう。TMネットワークの本来の音を知り、Last Groove よりも Dragon The Festival Tour の方が良いという感想はチラホラ見受けられる。
個人的にTMネットワークの全盛期は1984年と思っている。宇都宮隆のボーカルがずば抜けて良い。コンサートを重ねる内に声帯が緩んでしまって解散コンサートの1994年には完全に声が変わっている。歌手の声帯が緩んでしまうのは避けられない運命なのでやむを得ない。例外なく、どのアーティストにしてもデビュー当時が一番、声の状態が良い。Dragon The Festival Tour は1985年のコンサートなので1987年以降に比べて断然良い。断然良いので、どの曲も聴き込んでしまう。プロ・アマ問わず、『Get Wild』は誰がカバーしても宇都宮隆の歌唱力に勝てないように、宇都宮隆は声も良く、歌唱力も良い。1985年は『Get Wild』がヒットした1987年よりも声が安定しているので、どの曲を聴いてもかっこいい。音が良く、声はかっこいいので、Dragon The Festival Tour をプレイヤーで再生すると2時間以上聴き込んでしまう。楽器の1つ1つの音まで個別に聴きながら、CD版とは全然違う本来の音を堪能している。BOOWYにしてもライブCDを聴いた瞬間に加工してあるのが解る。音の細部のエッジがなまっていることまで解る。楽器の音のエッジがなまっているということは、ボーカルの声のエッジもなまっている。そこまで聴き分け出来ている。
例えば『Rainbow Rainbow 』のアウトロで小室哲哉が高速でキーボードを演奏すると、Blu-rayの音源では1つ1つの音が区切られているのに、CD版ではスラーのように1つ1つの音がくっついてしまっている。電子エコーの影響やサンプリングレートの影響で音がなまり、潰れると同時に他の音と一体化している。サンプリングレートをハイレゾ化することで全ての音が個別になって聴き分けできる。メイン・キーボード単独の演奏部分だけでも音がくっついてしまっているのに、ツイン・キーボードで演奏している部分になると2台のキーボードの音が溶けて合っている。白田朗の音がどれで、小室哲哉の音はどれなんだ、といった聴き分けがCDレベルの音ではできない。ハイレゾ化されたことでようやく聴き分けできた部分がある。木根尚登のギターの音にしても演奏していないのではない。コンサートでは普通に演奏している。CDに収録するときに消してある。電子エコーで音がくっつくことを想定して、あまり存在感の無い音を間引いていたのだろう。CDでは木根尚登のギターの音は全然聴こえてこない。『Accident』のテレビ放送版(フィルムコンサート版)では小室哲哉が演奏するメイン・キーボードの音を完全に消してあるのだから、ビデオやCDはあちこちで音を弄りまわしているであろうことを想定しながら聴き込まないといけない。ハイレゾ音源だからこそ、同時に幾つもの音を鳴らしても音がくっつかないので、各人が演奏した音を復活収録してある。音楽を製品化する際の加工の仕組みが解ってくるとハイレゾ化しなければならない意味も見えて来る。
Dragon The Festival Tour 全体のレビューとしては音質の良さに尽きる。ファンならば絶対に押さえておきたいマスト・アイテムだ。買って損はしない。BOXセットのため25,000円もするが、Dragon The Festival Tour に25,000円払ったと思えるぐらい聴き込んでいる。願わくば、Fanks Dyna Mix Tour も同じようにレストアとハイレゾ化してBOXセットに加えて欲しかった。この時代のTMネットワークの音はとにかく貴重で、同じような音を演奏しているバンドが今現在では存在しないので、シンセサイザーの尖った音を聴くには当時のバンドを漁るしかない。しかし、シンセを使いこなしているバンドが少なく、TMネットワーク頼みになる。冨田勲の音楽を再現できないように、TMネットワークの音楽も次第に再現できなくなっている。従って、ソニーや北海道文化放送が保有している映像が貴重になっている。北海道文化放送はElectric Prophet や Dragon The Festival Tour のコンサート会場にロケ班を出していた。他にも全国のテレビ局がロケ班を出していて、大阪の読売テレビは協賛していた Kiss Japan Dancing Dyna Mix Tour にロケ班を出している。当時、コンサートツアー中に『歌のトップテン』で放送された映像は読売テレビの映像である。ソニーが駄目ならテレビ局にお願いするしかない。NHKの『STAR CAMP』がもう1枚のボーナスディスクとしてついていたが東京ドームのコンサートは音が聴こえない。
今回は全体の印象ということで、次回はコンサートの中身についてレビューする。
|

- >
- エンターテインメント
- >
- 音楽
- >
- 音楽レビュー


