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きみはまだこれからなんだ
あなたはそう言って
わたしを突き放そうとした
好きな人が出来たら
言うんだよ
そう言っていながら
そうなったら
戸惑うくせに
ほら
ウイスキーのグラスが
ぎこちなく揺れている
ウイスキーの香るキスは
いつになく饒舌で
いつになく激しかった
さっきまでの
うら寂しさを
打ち消してくれるだけの
キスだった
夜が始まる
この時間が
一番幸せだった
あなたの胸の
ぬくもりを
一番近くに感じられるから
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ものがたり
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詳細
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坂道を登るあなた 舗装した道を外れて歩くわたし 手は繋いでいるけれど ふたりの距離は どんどんと離れてゆく やっと繋いでる手を 必死でつかむ
あなたは 空に向かって笑っている わたしは おぼつかない足元に怯えてる
こんな時 どうしたらいいのだろう わたしが舗装した道に上がるか あなたが舗装した道を外れるか どう考えても 舗装した道を歩いた方が良さそうだ
わたしは少しジャンプして 舗装した道に上がった
でも足首を痛めたようで なかなか思うように歩けない
そこで わたしたちは 東屋で休憩することにした 笑顔を取り戻したわたしに あなたが微笑む
ずっと こうしていたいな そうわたしが言うと あなたは困ったように 頂上はまだ先だと言う
山登りは 制覇した時の喜びも大きいけれど どう登るか その道中にも 喜びは散りばめられている
見渡すと 中腹からの眺めも そこそこいいもの 雲海が足元に広がっている どこまでも歩いて行けそう
勢いを削がれたあなたも 束の間の休憩に安堵するわたしも 山の中腹で 雲海の上の太陽の光を浴びていた
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それは 深く深く愛しあった 夜だった
あなたと向き合って 抱きあうようにして 座り その余韻にひたっていた
恥じらうわたしを あなたは 真面目な顔で まっすぐに覗きこむ
あなたの腕が わたしの腰を一周し 安定感を与える
あなたの顔が近づき また 深い深いキスをした
あなたはわたしの頭を 抱きしめると つむじに柔らかいキスをした
そうしているうちに 外がうっすら 明るくなってきた
とても冷える朝だった カーテンを開けると 外は雪だった
ふたりで窓辺に並び うっすら積もった雪を眺めた 吐く息が白く凍る
手のひらを差し出すと 雪の結晶が 空から舞い降りた
恋の天使が 空で微笑んでいた
静かな夜明けだった
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