成田好三のスポーツコラム・オフサイド

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 ゆったりとした時間の流れはゲームだけでいい

 MLBの試合中、セブンス・イニング・ストレッチで観客が大合唱する「わたしを野球に連れてって」の歌詞にあるように、野球ほ本当に「オールド・ボール・ゲーム」です。

 試合の進行は、サッカーやバスケットボールなど他の球技に比べて、スピーディーではありません。試合の主役である投手、打者とも、せわしく走ったりして、自らのプレー位置に着くことはありません。

ゆったりとした時間の流れは野球独特の文化
 
 守備側の主役である投手は、ベンチから歩いてマウンドに向かいます。そして、3人の打者を打ち取った後は、これまた歩いてベンチに戻ります。何事にも例外はあります。昨シーズン、読売巨人軍に在籍したアメリカ人救援投手は全速力でベンチに帰ります。しかし、あの姿は美しいものではありませんでした。

 攻撃側の主役である打者もゆっくりとした動作で打席に向かいます。せわしない動きをして打席に入る打者もいますが、そんな打者は例外なく小物ばかりです。なかには極めて礼儀正しい打者もいて、打席に入る度に投手に目配せした上で、主審と捕手に「あいさつ」までします。他の球技ではありえない光景です。

 野球は、このゆったりした動作の繰り返しに、ほとんどの時間が費やされるゲームです。投手が打者に対して投球し、打者がその球を打ち返し、走者と打者走者が塁間を走り、相手内野手や外野手が打球を追い掛け、捕球し、返球する時間は、試合時間の何分の一程度しかないでしょう。

 ゆったりとした時間の流れの中でゲームが進行することこそ、野球独特の文化といえるでしょう。

 そうした、ゆったりとした時間の流れを体現している選手に、レッドソックスの主砲、マニー・ラミレスがいます。M・ラミレスはMLBの中でも際だった独特のスタイルをもった選手です。ユニホームをびしっと着こなした姿など見たことはありません。まるで「だぼシャツ」を無造作に羽織ったように、あるいは寝起きのままのパジャマ姿のように、ユニホームを着ています。彼の着こなしは、MLBの品格を落とすものだと批判するファンもいると思いますが。

 ■マミー・ラミレスがもつ独特の「時間」

 話が脱線してしまいました。筆者の言いたいのは着こなしではありません。彼がもつつ独特の「時間」のことです。M・ラミレスはある一瞬を除いて、じつにゆったりとした時間の中に身を置いています。ベンチ前から打席に入る動作、打席をはずす動作は、まるでスローモーション・ビデオを見ているようです。

 しかし、打席で足下を決めた後、投手に目をやり、フォームを固めた瞬間から彼の時間は突如として変化っします。激しいまでに凝縮された時間が彼を包み込みます。

 彼はまるで深海に棲むチョーチンアンコウのように思えます。普段は省エネに徹していて、最低限の動作しかしませんが、獲物を見つけ、獲物を捕獲する瞬間だけは実に素早い、目にもとまらぬ動きをします。

 野球はまた、大相撲とよく似たスポーツだといえます。大相撲はたった何秒間、長くて何十秒間の勝負のために、何分間もかけて何回も仕切りを繰り返します。相撲嫌いの人には、あの仕切りの時間の意味が分かりませんが、あの仕切りの時間ほど、大相撲にとっては大切なものはありません。

 ゆったりとした時間の流れの中で、次第に高まっていく緊張感とエネルギーが立ち合いの瞬間に解き放たれる訳です。大相撲もまた、時間の流れの一瞬の変化を楽しむものだといえます。

 ゆったりとした時間の流れはゲームとしての野球にとっては大切なものです。しかし、野球という競技のシステムまでゆったりとしたままでいいという訳ではありません。

 ■「改革」はその後どうなったのか

 一昨年の球界再編騒動と選手会によるストを受けて、プロ野球改革が叫ばれました。しかし、「改革」その後どうなったのでしょうか。改革が曲がりなりにも実現したものといえば、交流試合の実施と、実数に近い球場入場者数の発表くらいです。新たに育成ドラフトを導入するなどしたドラフト改革は、改革と呼べるような代物ではありません。

 プロ野球選手が母校の高校に限って認められた高校生との練習も、互いの言葉を交わすことも遠慮するような始末です。会話が「技術指導」と取られる恐れがあるからです。何とも情けない、プロ選手と高校生の交流のスタートになりました。

 先日、こんなプロ野球関係の記事を読んで、あきれはててしまいました。短い記事なので、全文をここに書き写します。

 □コミッショナー 野球機構とプロ野球組織一本化の改正案(見出し)

 プロ野球協約改定委員会の作業部会が(1月)2日、東京都内のコミッショナー事務局で開かれ、委員長の根来泰周コミッショナーが「日本野球機構の中に日本プロ野球組織を埋め込んだほうがいい」と述べ、機構に組織を吸収合併させる考えを示した。両団体は実質的に同じだが、運営面などで使い分けをされている。(毎日新聞)

 ■彼らに任せていいると野球は「骨董品」になってしまう

 いったい、彼らはこれまで何をしてきたのでしょう。パ・リーグ機構とセ・リーグ機構の一体化ならば話は分かりますが、いまごろ何を協議しているのでしょう。記事にあるように、「機構」と「組織」は実態的に同一のものです。こんな一体化など、やる気があれば一昨年のうちにもできたものです。

 彼らは、本当のところ、プロ野球を改革しようなどとは考えていないのです。世間の目があるので、改革のふりだけはしているというのが実態です。このまま彼らに任せておけば、プロ野球は実に緩慢な時間の流れの中で「骨董品」となっていくだけでしょう。(2006年2月7日記)  


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