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荒川静香と加藤条治とはここが違った
トリノ冬季五輪開幕前に、JOCはメダル獲得5個を目標に掲げていました。日本のメディアのなかは10個、あるいはそれ以上獲得できると、勇ましい進軍ラッパを吹いていたところもありました。
結果は、フィギュアスケート女子シングルでの、荒川静香の金メダル1個だけとなりました。JOCには国際的な情報収集能力はありません。メディアも同様で、なおかつ、両者とも商売上五輪を盛り上げる必要がありましたから、臆面もなく大ぼらを吹いていたわけです。
五輪開幕前に、米国のスポーツ専門紙「スポーツ・イラストレイテッド」は日本のメダル獲得数を、荒川とスピードスケート男子500メートルの加藤条冶の銅メダル2個と予想していました。
加藤はメダルを逃し、荒川は予想以上の金メダルを獲得したわけですから、同紙の予想が結果に最も近かったのではないでしょうか。
この辺で本題に入ります。荒川は超一流のアスリートであることを、加藤はその域にはまだまだ達していないアスリートであることを、五輪で証明する結果となりました。
そのことを端的に示す、2つのTV映像が筆者の頭の中に残っています。
その1つは、日本選手初のメダル獲得を期待された加藤の500メートル1本目直前の出来事でした。
前走の組のひとりがコーナーで転倒し、コース上の氷をひどく削ってしまいました。競技は10分ほど中断しました。TV映像は、氷の削れと修復の具合を確かめるためにその場所までやってきて「現場」をのぞき込む加藤の姿を映し出しました。
筆者は、「これじゃだめだな」と直感的に思いました。あの行動は加藤と加藤のコーチのミスです。世界最高峰の舞台でその頂点に立とうとするアスリートの姿ではありません。
氷の削れと修復の具合の確認など、レース直前のアスリートのする「仕事」ではありません。あの行動はコーチに任せるべきものです。本人にとってはレースに集中する時間です。
あの場面は、世界記録保持者ではあっても、加藤がまだ世界の頂点に立てるアスリートではなかったことを示していました。
あの場面を見ていて、長野冬季五輪での清水宏保の姿を思い出しました。長野で清水はスピードスケート男子500メートルで金メダルを獲得したことは誰でも知っています。しかし、長野でも清水のレース前にアクシデントはありました。レースのスケジュールが転倒などのトラブルで変更されることはよくあることです。
その時、清水は加藤とはまったく違う行動を取りました。大観衆の見守るリンクの真ん中で、ジャンパーを羽織って大の字になっていました。スケート靴を脱いで寝てしまえば、見えるのはMウエーブの天井だけです。大観衆は視界から排除できます。
メダルを逃した加藤以上の重圧が、フリーの演技前の荒川にはかかっていました。女子フィギュア・シングルは冬季五輪で最も注目を集める種目です。世界中の目がこの種目に注がれます。しかも日本選手団は、事前の予想に反して依然メダルゼロの状況にありました。世界中の視線と日本中の期待が、ショートプログラムで3位につけた荒川に注がれていました。
荒川の直前の演技者は、ショートプログラムで首位に立ったサーシャ・コーエンでした。コーエンは金メダルの重圧に押しつぶされ、ミスを重ねました。
重要なのはコーエンの演技中の、荒川の行動でした。これが筆者が注目した2つ目の映像です。TV映像はリンクに背を向けて耳に遮音用のヘッドフォンを着けた荒川をちらっと映し出しました。その行動は、ライバルを見ない、ライバルの演技を伴奏する音楽も聴かない、会場の大観衆の反応も聴かないという、強い意思を示していました。自らの演技前に、それが自らに有利であろうとなかろうと、余計な情報は入れないという意思でした。
荒川の後に演技したイリーナ・スルツカヤもまさかまさかの失敗を重ねました。スルツカヤは荒川の演技を見ていたはずです。荒川の演技と大観衆のスタンディングオベーション、それに事前の予想を超えた高得点が、スルツカヤに影響を与えてしまいました。荒川を意識することによって、考えられないミスを犯したのでしょう。
スポーツは、至極当然のことですが、他者と競うことで成り立っています。しかし、極限的な状況で戦う超一流の競技者は、他者と争うという当然の設定を超えてしまう。あるいは、そうではないと、勝つことはできない状況にわが身を置くことになります。
加藤条治の失敗と荒川静香の成功の原因を映し出した、あの2つのTV映像ほど、そのことを端的に表した映像はないでしょう。(2006年2月28日記)
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あなたの論評は失笑ものです。加藤選手は、前の選手の転倒があろうがなかろうが、トリノで勝てる調子では全くありませんでした。あなたはスプリント選手権などを観てないのでしょうね。転倒現場を覗き込んだからダメだったとか、そういう状態ではなかったのです。あなたのような偉そうで知識の足りなさを露呈している論評が多かったことが、トリノオリンピックで最も不快だった点です。選手たちのためにも、もっと勉強して論評してください。
2006/2/28(火) 午後 7:23 [ madia_protect ]
・・・加藤のときの直前の転倒は氷面をガリっと削ってしまった派手なもので、長野の清水のときとは状況が全然違いますよ。だいたい加藤と清水では性格も全然違うのだし、どう対処したら最善の結果が出るかなんて一緒くたには語れないのではないですか?? そもそも、前走の転倒現場を覗きこむ選手は勝てないなんて、全く根拠不明ですし、賛同もできません!すいませんが!
2006/2/28(火) 午後 8:52 [ ベッキー ]