成田好三のスポーツコラム・オフサイド

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 【はしやすめコラム・その6】希代の格闘家・朝青龍の「すごみ」

 若貴兄弟の引退以降、大相撲人気の長期低迷が続いています。マニアだけでなく素人をひき付ける「スター」不在のスポーツ競技(「大相撲=スポーツ」には異論もあるでしょう)は、大相撲に限らず人気が高まることはありません。

 いまの大相撲の場合にはそれに加えて、本来なら人気を牽引する立場にある横綱にまったく人気がありません。プロレスでいう「ヒール」役を1人横綱である朝青龍が務めている有り様では、人気回復はさらに難しくなります。

 ところで、古くからの大相撲ファンにとっては憎まれ役の朝青龍ですが、本物の大相撲ファン、格闘技ファンならば、この希代の横綱の強さ、魅力を理解できるのではないでしょうか。

 今場所(大阪場所)の朝青龍の強さには、鬼気迫るものがあります。研ぎ澄まされた刃物のようなするどい切れ味があります。前半戦は、誰が朝青龍に土をつけるかではなく、誰が最初に朝青龍のまわしに触るかが話題になっていました。

 筆者は、今場所の朝青龍に新たな2つの「すごみ」を発見しました。

 1つ目は、6日目の土佐ノ海との一番です。もっと正確に言うと立ち合い後の一瞬です。土佐ノ海は体重180キロを超える巨漢力士です。朝青龍は立ち合いの瞬間、右手(腕)を相手の左肩に当てただけで、この巨漢力士の出足を封じてしまいました。

 これは、絶妙なタイミングでしか成立しない技です。立ち合いの一瞬、ほんの100分の何秒ほどタイミングが早ければ、右手は相手の左肩に届きません。逆にほんの100分の何秒ほどタイミングが遅れれば、土佐ノ海の出足のパワーが右手どころか、朝青龍の体全体を突き飛ばしてしたでしょう。

 その一瞬でしか土佐ノ海の出足を止められない。その一瞬をコンピューターで計ったかのように、朝青龍は土佐ノ海の左肩に右手をあてがっていました。

 2つ目は、10日目の栃乃洋戦でした。朝青龍は立ち合い後の一瞬、前に出る体重移動を止めたのです。一瞬止め相手の出方を確認したうえで、腰(体)を沈み込むように落としこんで、栃乃洋の出足を正面から受け止めました。

 こんな立ち合いはそれまで見たことはありません。立ち合い後の一瞬、体の移動を止めてしまえば、体(腰)が浮き上がってしまい、相手に弾き飛ばされてしまいます。朝青龍は体を止めても、その直後に体を沈め込めことによって相手の立ち合いのパワーを難なく受け止めていました。

 朝青龍は立ち合い前の一瞬、相手の変化の兆しを察知していたのではないでしょうか。それで一瞬体を止める。その一瞬に相手は変化を封じられたのではないでしょうか。

 朝青龍は相撲だけではなく格闘技の天才ではないでしょうか。宮本武蔵やその時代の兵法者が、負ければ命を失うという、まさに命懸けの状況で身につけた能力と同様の能力を身につけている。そう考えるしか、朝青龍の動きは理解できないのではないでしょうか。(2005年03月23日記)


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