成田好三のスポーツコラム・オフサイド

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 「宮里藍首位!」はうそ−民放スポーツ中継の自殺行為

 長々とした「前ふり」はいらないでしょう。読者の皆さん、まずは下記の2つの文章を読んでください。1つ目は、女子プロゴルフの民放TV中継番組で「事実と異なる内容」が放送されたとする、12月9日付の毎日新聞の短い記事です。もう1つは、記事の元になった、総務省近畿総合通信局が配布した「報道資料」です。

 □<MBS>ゴルフ番組で事実と異なる内容 総務省が厳重注意(見出し)

 総務省近畿総合通信局は(12月)8日、毎日放送(MBS、大阪市北区)が11月4日に放送した女子プロゴルフ「2006ミズノクラシック」で、事実とは違う内容の放送をしたとして、放送法に基づき厳重注意した。

 同通信局によると、同日午後2時からの放送中、宮里藍選手が16番ホールでバーディーを取ってスコアを8アンダーにした。その時点で首位の上田桃子選手らは9アンダーで既にホールアウトしており、実際には同スコアではないにもかかわらず、首位タイに並んだとの内容の放送をし、テロップも流した。

 MBSは「真摯(しんし)に反省し、再発防止につとめる」とのコメントを発表した。(毎日新聞)

 □番組問題への対応(報道資料)

 近畿総合通信局(局長 武内信博)は、本日、株式会社毎日放送が平成18年11月4日に放送した同社の番組「2006ミズノクラシック」において、録画映像の時間と生中継映像の時間が近接しているように番組を編集し、実際にはなかった順位表を放送したことは、放送法(昭和25年法律第132号)第3条の2第1項第3号「報道は事実をまげないですること」に抵触したものと認められ、放送の公共性と言論報道機関としての社会的責任にかんがみ、誠に遺憾であることから、同社に対し、今後このようなことがないよう厳重に注意するとともに、放送法及び番組基準等の尊守・徹底等再発防止に向けた体制の確立を要請しました。(平成18年12月8日、総務省近畿総合通信局)

■横行するゲームの切り刻みと詐欺的な「擬似生中継」

 民放TV局は、視聴者を愚ろうしたスポーツ中継番組を製作・放送しています。視聴率さえ稼げれば、犯罪行為以外は何をやっても構わないという姿勢は、いまさら改めて指摘するまでもないほどひどくなってきています。

 世界陸上や世界水泳を独占放送する民放TV局は、ゲームやプレーを細切れになるほど切り刻んでしまいます。陸上100メートルの決勝直前まで、東京のスタジオでのおしゃべりを放送し、スタート数秒前になって現場中継に切り替えられたのでは、視聴者は競技に入り込むことはできないし、競技者に感情移入することなど、できるはずもありません。

 民放TV局が放送する国内ゴルフ中継やバレーボールの国際大会のほとんどすべては、録画中継を生中継風に放送する「擬似生中継」です。ゴルフ中継では、番組終了までに必ず冠スポンサーが優勝者に賞金・商品を手渡す表彰式が放送されます。生中継ではあんな芸当はできるはずもありません。

 国内で開催されるバレーボールの世界大会は、いまや民放TV局の有力なコンテンツになっていますが、これらのバレーボール大会のすべては、1時間程度のタイムラグをつけて放送されています。極端なことを言えば、会場近くに住む視聴者は、会場で見てきたばかりのゲームをもう一度、生中継風に見ることもできるのです。

 録画中継はいけないとは言いません。番組の時間枠やスポンサーとの関係から、一定の時間内に放送を終了させる必要があることは理解できます。筆者が問題にするのは、録画中継を生中継風に放送する、いわば「詐欺的行為」です。アナウンサーや解説者は放送が生中継だとも、録画中継だともけして言いません。しかし、大会の開催時間帯を知らない、ほとんどすべての視聴者に対しては、生中継と思わせる「演出」をしています。これらの大会を撮影するカメラマンにとつては、会場内の時計を大写しにすることは、最大の「禁じ手」といえるでしょう。

 コラムの本題からははずれますが、最近では、人気タレントを会場に配置したり、番組宣伝に使う「やらせ応援」も常態化しています。スポーツ中継に関する民法TV局の「演出」は、どこまでエスカレートするのでしょう。

 ■あからさまなうそに「厳重注意」と「真摯に反省」だけ

 そう危惧していたとき、先の女子ゴルフ中継に関する、「事実と異なる内容」、つまりうそを放送していたというニュースが飛び込んできました。

 毎日新聞の短い記事では、近畿総合通信局から「実際になかった順位表を放送した」ことを指摘されたとしていますが、同局はもう1つの「うそ」も指摘しています。「録画映像の時間帯と生中継の時間帯が近接しているように番組を編集」したことです。同局の判断によれば、MBS、毎日放送は順位表だけではなく、放送の時間帯についても、放送法に抵触するとされたのです。

 近畿総合通信局は順位表のうそだけでなく、時間帯のうそも放送法に抵触すると指摘しています。ならば、国内ゴルフ中継やバレーボール中継における、視聴者に録画中継だと知らせない、「擬似生中継」も放送法に抵触するのではないでしょうか。

 事実に反する報道をすることは、スポーツ中継だけではなく、すべての番組において行ってはならない最低限のルールです。毎日放送が行ったのは、TVスポーツ中継の自殺行為と言っていいものです。近畿総合通信局、総務省は「厳重注意」で済ますことができる問題なのでしょうか。MBS、毎日放送は「真摯に反省し、再発防止に努める」のコメントで済ませることができる問題なのでしょうか。

 ■メディアの無視と無反応

 この問題では、もう1つ不可解なことがあります。この方がより重要でしょう。メディアの無視、あるいは無反応です。この問題を、新聞はベタ記事程度にしか扱いませんでした。NHKを除いて民放TV局は事実関係を知らせるニュースさえ流していないのではないでしょうか。「身内」をかばう姿勢なのでしょうか。問題意識さえないのでしょうか。それとも、問題意識はあっても、問題のさらなる拡大、つまり「延焼」を防ぐためなのでしょうか。

 それらのどちらにしても、ゴルフ中継のうそをほおっかむりする姿勢は、メディア全体にとつても自殺行為に等しいものでしょう。(2006年12月11日記)

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