成田好三のスポーツコラム・オフサイド

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03年のコラム

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 アドルフ・ヒトラーの生死が不明のまま、連合国はドイツ第三帝国の崩壊と欧州戦線での勝利を宣言できただろうか。答えは『否』である。独裁国家は独裁者によってのみ統治される。だから、独裁者がなお生きている可能性がある限り、彼の統治した国家体制は完全には崩壊しない。

 ドイツ第三帝国は、ヒトラーの死によって、いやヒトラーが愛人のエヴァ・ブラウンとともに、総統地下壕で自殺したことを、ナチスの親衛隊、突撃隊、ヒトラーユーゲントを含めたドイツ国民が納得したことによって完全に崩壊した。そしてヒトラーがその死に際して、国民ではなく自らについてのみ関心を示したことを理解したことで、国民は独裁者の呪縛から解放された。

 冷戦に勝ち残り唯一の超大国から『世界帝国』への道を歩みだした米国は、『9・11』以後、二つの戦争を行い、ともに勝利したと宣言した。アフガン戦争であり、イラク戦争である。

 本当に勝利したのだろうか。米国は圧倒的な軍事力でアフガンとイラクをたたいた。両国の国家体制は崩壊したかに見える。しかし、アフガンを独裁的に支配したタリバンの最高指導者、オマルも、タリバンを豊富な資金力で乗っ取った国際テロ組織・アルカイダの黒幕、オサマ・ビンラディンも、米国は拘束していない。二人とも生死は不明のままだ。オマルは沈黙したままだが、ビンラディンは音声テープやビデオで米国を挑発し続けている。

 イラクの独裁者、サダム・フセインも、米国が血眼になって捜してもいまだに行方不明のままだ。

 独裁国家は独裁者によってのみ統治される。だから、イラクはもちろんアフガンでも、国民が独裁者の死を納得し、彼の統治の在り様を理解するまで戦争は続く。
 イラク戦争で米国大統領、ジョージ・ブッシュは空母艦上で華々しく勝利宣言を行った。アフガン戦争ではそうした『儀式』が必要ないほど一方的にタリバンとアルカイダをやっつけた。しかし、両国の国民が独裁者やテロ組織の黒幕の呪縛から解放されない限り、米国の勝利宣言はまやかしにすぎない

 10月26日には、イラク戦争の理論的指導者とされるポール・ウォルフォウィッツ米国防副長官が宿泊していた、イラク占領行政の中枢であるバグダッドのラシッドホテルがロケット弾攻撃を受けた。米国は巨大な『迷路』の中にさまよいこんでしまった。(2003年11月3日)

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