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彼らの「帰還」の場所には、川口順子外務大臣はいた。しかし、小泉純一郎首相の姿はなかった。そればかりか、小泉首相は彼らの「帰還」がTVで生中継されたことも知らなかった。産経新聞(12月5日付3面)の記事によると、「(テレビ)中継は知りませんでした。ニュースで拝見した」と4日夜、記者団に語った。
奥、井ノ上両氏は、米軍の占領統治が機能していない実質的には無政府状態の中で、イラク復興と日本の国益のために駆け回り、テロリストの凶弾に倒れた。日本政府は、彼らの警備のために何一つとして、有効な対応を取らなかった。そうでなければ、彼らは荒海のようなバグダット―ティクリット間の街道を、トヨタのランドクルーザー1台で走り抜けようとは考えなかったはずだ。
新聞各紙によれば、小泉首相は外務省の記帳所に出向いていない。6日の葬儀には出席した。しかしそこでは短い「哀悼の意」を読んだだけだ。
イラクでの外交官殺害を受けて外務省は、在外公館やそこで勤務する外交官の警備を自衛隊が担当できるよう関係法改正の検討作業に入った。在外公館と外交官をその国の軍隊が警備するとことは、日本以外の国では当たり前のことである。しかし小泉首相は、外務省の動きを即座に封じ込めてしまった。
12月2日に共同通信が配信した、外務省の在外公館と外交官の警備に関する記事を読んで、驚きそしてあきれてしまった。小泉首相は、記事の中でこうコメントしている。「実際はなかなか難しい。自国の警備についてそれぞれの国が責任を持っている。よその国の人に任せようとする国は少ない」
一読して意味が分からなかった。再読して理解した。「意訳」するとこう言っていた。イラクにある日本の大使館や外交官はイラク政府に守ってもらう。日本が守る必要はない。
しかしイラクは今、米英軍の占領下にある。占領政策は有効に機能せず、テロが横行する。日本の外交官はテロリストに殺害された。小泉首相は、日本の在外公館とそこで日本の国益のために活動する外交官は、無防備のまま活動せよと言っているのに等しい。
在外公館と外交官の警備問題はその後、自衛隊のイラク派遣に関する「基本計画」閣議決定の陰に隠されてしまった。自衛隊のイラク派遣と外交官殺害は同一の問題である。その一方をあっけなく削除してしまう政府の姿勢こそ、厳しく問われるべきである。(2003年12月13日)
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