成田好三のスポーツコラム・オフサイド

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 国民が拠出した年金資金を食いものにしてきた社会保険庁が解体されることになりそうである。内閣官房長官の私的諮問機関である「社会保険庁の在り方に関する有識者会議」が1月末、「現行組織の存続を前提にしない」ことで合意したからである。こんなやくざな官庁は一刻も早く解体してもらいたい。独立行政法人化など看板の掛け替えで「焼け肥り」に終わらせてはならない。狡猾な官僚や利権に群がる厚生族議員の動きを厳しく監視すべきである。

 ■社会保険庁以上に解体すべき官庁がある

 ところで、厚生労働省の外局程度の官庁ではなく、日本と日本人の将来を決めるほどの巨大な権限をもつ官庁で、社会保険庁以上に解体すべき官庁がある。文部科学省である。

 昨年暮れに公表された経済協力機構(OECD)の「学習到達度調査」や国際教育到達度評価学会(IEA)の調査で、日本の小中学生の学力低下が明らかになったことで、「ゆとり教育」を掲げる現行の学習指導要領を改正すべきであるという声が急速に強まってきた。

 こうした流れを受けて、中山成彬文部科学相は2月15日、学習指導要領の全面的な見直しを文部科学相の諮問機関である中央教育審議会(中教審)に要請した。中教審はこの秋までに見直しの基本的方向をまとめる。

 しかし、文部科学省やその御用機関になり下がった現在の中教審が指導要領を改定しても、まともな改定にはなるはずはない。国民の理解も得られないだろう。文部科学省と中教審はそれほど遠くない過去に、重大な政策・判断ミスを2度も犯した。このことだけに限っても、文部科学省には解体されるべき十分な理由がある。

 「ゆとり教育」の最終章とされる現行の学習指導要領は、小中学校では2002年4月から本格導入された。併せて学校の完全週5日制も始まった。高校では翌2004年4月から導入された。

 筆者は「ゆとり教育」に反対する立場ではない。戦後の「詰め込み教育」と、この国を金太郎飴のようにしてしまった「悪平等・均一化教育」は、とうの昔にその役割を終えている。個人が自分で考え、自分で考えたことに従って行動する社会に変えなければ、この国に未来はないと考えている。

 学校完全週5日制と併せて2004年4月から小中学校で本格導入された現行の指導要領は、「総合的学習」を創設する一方で、授業時間、学習内容(範囲)の大幅な削減を行った。授業時間を年間70時間、学習内容を3割削減した。賛否両論はあるが、こうした政策は理屈に合ったものである。ある一定量の「枡」には、それ以上の「量」は入らないからである。何か新たなものをつくるためには、他の何かを削らなければならない。

 ■禁じ手「歯止め規定」とごまかし改正

 文部科学省は、学習内容や取り扱いの範囲を制限した規定を設けた。それが「歯止め規定」である。本格導入当初、現行の指導要領は総則の中で、学習内容や取り扱いの範囲についてこう規定していた。

「学校において特に必要がある場合には、第2章以下に示していない内容を加えて指導することができるが、その場合には、第2章以下に示す各教科、道徳、特別活動及び各学年の目標や趣旨を逸脱したり、児童(生徒)の負担過重となったりすることがないようにしなければならない」

 誰が読んでも改正前の文言は、文部科学省が指定した範囲を越えて教えてはならないという規定である。「特に必要な場合」は、役人の文章によく見られる「逃げ」であり、「よほど特別な例外的な場合」としか読めない。だから、全国の学校現場は、この文言通りに教育内容を制限したのである。

 しかし、学力低下への懸念が高まったことから、文部科学省は中教審・作業部会の提言を受けて、翌2003年12月に、同じ項目を以下のように改正した。官僚の悪文の典型的な例で、極めて読みにくい文章だが、読んでみていただきたい。彼らはこの改正で、「歯止め規定」を「最低基準」と言い換えてしまった。

「学校において特に必要がある場合には、第2章以下に示していない内容を加えて指導することができる。また、第2章以下に示す内容の取り扱いのうち内容の範囲や程度等を示す事項は、すべての児童(生徒)に対して指導するものとする内容の範囲や程度等を示したものであり、学校において特に必要がある場合には、この事項にかかわらず指導することができる。ただし、これらの場合には、第2章以下に示す各教科、道徳、特別活動及び各学年の目標や内容の趣旨を逸脱したり、児童(生徒)の負担過重となったりすることがないようにしなければならない」

 「歯止め規定」はこの改正によって「最低基準」に変容してしまった。両者は共存する概念ではない。対立する概念である。指導要領の本質的部分が2年も立たないうちに変質してしまった。「詭弁」「言い逃れ」「ごまかし」の典型的な例である。

 学校教育を所管する官庁が義務教育の学習内容を制限して、これ以上教えてはならないと決定して、その決定を全国の学校に強制した。彼らは、やってはならない「禁じ手」を使ったのである。義務教育を所管する官庁がやるべきことは、本来その逆である。最低限、教えなければならない内容を定めて、その実現のためのハード、ソフト両面の政策を策定し、そのための予算措置を取ることである。

 逆に言えば、最低限の教育水準の維持とそのための財源は国が保証する。それ以上の教育を行うかどうかは地方がそれぞれ判断し、そのための財源措置を取ればいいのである。
 
 国民から批判を浴びると、「歯止め規定」を教える内容の「最低基準」と子どもでも分かる言い逃れをして、あとは頬かむりを決め込んだ。こんないいかげんで無責任な官庁は、世界中を探しても、他にはみつからないだろう。

 今回の指導要領の改正(見直し)に当たっては、「歯止め規定」とそのごまかし改正である「最低基準」への言い換えについて、文部科学省と中教審は、国民にその理由を明確に説明するべきである。そうしないまま、あるいはそうできないまま改正を進めることは、ほとんど詐欺的行為に等しいものである。また、国民の信頼をさらに失墜させることになる。

 中教審はいまだに地方枠の委員が選出されていない。知事会など地方団体と文部科学省、族議員の意見対立から地方枠委員を2にするか3にするか結論がでていないためである。いまや地方を抜きにして教育を論じること、指導要領を改正することなど論外の話である。

 文部科学省の教育政策の目標は、教育水準の維持、あるいは向上である。ならば政策の目標達成度を計る物差しがいる。しかし、彼らは物差しをもたない。定期的な学力調査をしていないからである。これでは政策を評価しようがない。昨年末、2つの国際機関の調査が公開されたことで、彼らがうろたえた背景には、国内に物差しをもたなかったことも大きな要因になった。

 ■地方を「泥棒」呼ばわりした文部科学省と族議員

 昨年秋、小泉内閣の「三位一体改革」で焦点になった義務教育費の財源移譲問題では、既得権を守るために文部科学省は自民党の文教族議員と一体となって、地方を「泥棒」呼ばわりした。義務教育費の財源を保持するために、教育財源を地方に渡せば地方はそれを他の事業に流用してしまうという奇妙な論理を展開した。地方が独自の教育を行おうとした際、いつもそれを拒否してきたのは彼らである。

 亜寒帯から亜熱帯にまで属する、この国の地方の特性を無視して、全国一律の、しかも時代に合わなくなった、「金太郎飴」のような教育を、地方に押し付けてきたのは彼らである。地方の独自性を発揮しようとした動きを阻止してきたのも彼らである。

 教育を文部科学省の官僚や御用学者、自民党の文教族議員の手から解放しない限りは、この国の教育は低下するばかりである。

 この国の最高指導者であり文部科学相を任命した小泉純一郎首相は現行の教育指導要領についてどう考えているのか。1月の国会・施政方針演説で彼はこう語った。「我が国の学力が低下傾向にあることを深刻に受け止め、学習指導要領全体を見直すなど学力の向上を図ります」。これだけである。たった1行の「官僚の作文」で片付けてしまった。こうした現状に「寒さ」を感じるのは、筆者だけだろうか。(2005年2月25日記)

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初めまして。安恒平(やす こうへい)と申します。1977年生で、助川(俗称「日立市」)の出身です。

小泉純一郎政権で市町村潰しと地名破壊運動を推進した総無大臣・片山虎之助は、米軍基地を巡る岩国の住民投票を「地域エゴだ!」と罵倒しました。文部科学省が地方を「泥棒」呼ばわりしたのも、この片山虎之助と同じ発想です。

小泉や片山に限らず、地方や「それぞれ一人一人」を塵屑のように扱う永田町政治家が後を絶ちませんね。安倍晋三が言う所の「地方創生」も、高が知れています。寧ろ、小泉に「抵抗勢力」呼ばわりされた亀井静香の方が、遙に個性的ですよ。亀井は、地方に利益を与えた方が国全体が豊になる、って発想の持ち主ですから。

上は永田町政治家から、下は勤労庶民に至るまで、想像力や世界観を持たない奴らを大量に製造した根源は、他ならぬ文部省です。『北名古屋市』や『南相馬市』といった「頭や足に方角」の反則ネーミングをする低脳市長も、想像力や世界観を育てない文部省方式の副産物でしょう。『師勝市』や『原町(はらのまち)市』というネーミングから土地色を想像する、というのが真の地理教育じゃないのか?

2014/12/28(日) 午後 8:14 [ 安 恒平 ]


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