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■自立するツタ
ツタは寄生植物である。幹の構造が柔軟すぎるため、自らの力だけでは、自立して高みまで達することができない。太陽の光を思う存分に浴びることができない。
そこで、ツタは別の能力を身につけた。自分より頑丈で大きく育ち、背の高くなる樹木に取り付き絡みついて、取り付かれ絡みつかれた樹木よりも、もっと高みまで駆け上って、太陽の光をいっぱいに浴びる能力である。
ツタは、極めて「知能」の高い植物である。しかし、彼の能力には致命的な欠点がある。取り付き絡みついた樹木と自らの成長によって、樹木を締め付け、最後には樹木を絞め殺してしまうことである。
絞め殺した樹木がやがて腐り、崩れ落ちてしまうと、自らを支える足場そのものを失ってしまう。彼の成長は、彼の自殺行為でもあるのだ。
しかし、何ごとにも例外がある。そのいい例がこの写真である。
写真のツタは、生れ落ちたときから大きなハンディを背負うことになった。取り付いた樹木が大きく、高く成長する樹木ではなかったからである。
彼は、この低木に取り付き絡みついた。だが、樹木は大きく高く背を伸ばすことはなかった。そこで、彼は生き延びるために高みを諦めて、樹木に複雑に幾十にも絡みつく道を選んだ。
彼に幸いしたのは、樹木が生えた場所だった。南向きの急斜面であったことから、樹木と彼は、大きく背を伸ばすことなしでも、十分に太陽の光を浴びることができた。
そして彼は、最後には樹木を絞め殺した。ここでも彼は十分に幸運だった。地面近くで複雑に絡み合った彼の体は、取り付いた樹木なしでも十分に自立できる「構造」を備えていたのである。
自ら複雑に絡み合う。そのことによって彼は自立している。その造形は、例えようもなく美しい。葉っぱがすべて落ちてしまう冬でしか見られない造形美である。
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