成田好三のスポーツコラム・オフサイド

スポーツ全般をテーマに新たな視点からスポーツの面白さや様々な課題に焦点を当てたコラムサイト。無料メルマガも配信中です。

01年のコラム

[ リスト ]

 今季、2001年のシーズンを最後にプロ野球、読売巨人軍(ジャイアンツ)の監督を退任した長嶋茂雄氏は、戦後の日本スポーツ界が生んだ最大のスーパーヒーローだ。東京六大学リーグ(立教大)時代からスターだった長嶋氏は、読売入団後にスーパーヒーロー、つまり「特別な選手」になった。プロ野球選手としての戦績は、ハンク・アーロンの755本塁打を超えた僚友の王貞治氏に及ばない。400勝投手の金田正一氏も、3000本安打を放った張本勲氏も記録の上では長嶋氏を上回る戦績を残している。しかし、長嶋氏は彼らをはるかに上回る特別な選手だった。このことに異論をはさむ人はほとんどいないだろう。

 長嶋氏が特別な選手だった理由は、よく言われるように「記録」よりも「記憶」に残る選手だったからだ。この場合の「記憶」とは何だろう。戦後の日本人は大人であれ子どもであれ、長嶋氏により、野球という米国生まれのスポーツに新たな「価値」を発見した。長嶋氏が球場内で放つ独特の雰囲気、独創的なプレーと走攻守にわたって見せる派手なパフォーマンスによって、野球は創造性の高いスポーツであることに気付いたのだ。

 長嶋氏は野球人として三度、「引退」した。一度目は現役引退で、すぐ巨人軍の監督に就任した。二度目はあの「監督解任劇」だ。そして今回が三度目の引退となった。もう二度と、公式戦での長嶋氏のユニホーム姿は見られないだろう。
 読売グループから巨人軍監督を解任され、「浪人」生活を送っていた時代に、長嶋氏はゲートボール協会、トライアスロン協会など数え切れないほどの団体の長を務めていた。いずれも実権はない「名誉職」だったはずだ。そして、不思議な「現象」が起きた。いわゆる、長嶋氏の「文化人宣言」だ。たぶん、長嶋氏本人が言い出したことではないだろう。数多い取り巻きたちが使い出し、マスコミを利用して広めた言葉だろう。

 この「文化人」という言葉は気にくわなかった。野球人が、選手としての立場を離れ、さらに指導者としての立場を離れてから文化人になる。そんな言葉の使い方は、どう考えてもおかしい。絵を描けなくなった画家が文化人になる。小説を書けなくなった作家が文化人になる。そう表現するのは間違いであるように、現役を退いた野球人(選手)が文化人になる―長嶋氏の場合はまつりあげられたのだろう―ことはおかしい。文化的価値をいま創造している人たちが文化人なのであり、過去に創造した人たちは、かつての文化人なのだ。あるいは、長嶋氏を文化人にまつりあげた人たちは、野球、もっと広く言ってスポーツを文化の一形態だとはみなしていなかったのだろうか。

 NBA(米プロバスケットボール)のスーパースター、マイケル・ジョーダンが現役復帰した。シカゴ・ブルズ時代に二度引退(一度目の引退後は大リーグに挑戦)したジョーダンにとっては、二度目の現役復帰だ。ジョーダンの復帰会見は同時多発テロの影響で中止になり、メディアにFAXを流すことでその代わりとした。結果的に会見中止は、ジョーダンにとっては幸いだったはずだ。会見をすれば、米国ばかりでなく世界中のメディアからの質問攻めに遭っただろう。現役復帰に否定的な記者の辛らつな質問に、ジョーダンはどう答えただろうか。

 突然、ジョーダンの復帰会見のシナリオを書きたくなった。彼にこんなことを言わせたくなったからだ。

―スポーツは人類共通の文化である。世界中どこにいっても、スポーツをしない子どもたちはいない。もし子どもたちがスポーツをしないとしたら、その社会のあり方が間違っているのだ。また、スポーツは一義的に云えば競技者のためにある。プロスポーツの場合は、競技者と彼のプレーを」「共有」する観客のためにある。指導者やチームの経営者のためにあるのではない。彼らは競技者と観客の仲立ちをする「サポーター」だ。そして、スポーツが文化ならば―スポーツが文化ではないなら、あらゆる文化の領域も文化ではないことになる―、その創造者は間違いなく競技者である。だから、私は、競技者として、バスケットボールという文化に新たな価値を加える創造者としていまコートに還って来た―

 ジャーダンはもちろん、こんなことは口にしないだろう。だが、耳に心地よいことを言っても心の底ではスポーツを文化とみなさない日本の現状をみていると、ジョーダンにこんなことを言わせてみたくなってしまう。引退後の長嶋氏を文化人にまつりあげてしまう取り巻きとマスコミ。テロリストの脅しに屈して海外派遣を簡単に取りやめてしまう競技団体。いつまでたってもスポーツを学校と企業の枠から抜け出させようとしない権力者たち―。彼らにとっては、スポーツは彼らのために何かの役に立つ「道具」にすぎないのだろう。(2001年11月13日)

「01年のコラム」書庫の記事一覧


よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

ふるさと納税サイト『さとふる』
11/30まで5周年記念キャンペーン中!
Amazonギフト券1000円分当たる!
いまならもらえる!ウィスパーWガード
薄いしモレを防ぐパンティライナー
話題の新製品を10,000名様にプレゼント
いまならもらえる!ウィスパーうすさら
薄いしモレを防ぐ尿ケアパッド
話題の新製品を10,000名様にプレゼント

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事