成田好三のスポーツコラム・オフサイド

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ゴムボートに難民満載の何故−新聞寸評

新聞やTVなど主要メディアが何度も大きく取り上げるニュースや話題でも、肝心なその中身が読者や視聴者の誰もが抱くような素朴な疑問に、全くと言っていいほど答えていない、そんなケースがよくあります。中東やアフリカからヨーロッパを目指して地中海を渡る難民のニュースは、その典型と言っていいでしよう。

地中海は、太平洋や大西洋と比べれば小さいかもしれませんが、それでも大海です。TVのニュース映像を見ると、小さな古ぼけた漁船や何とゴムボートに、船やボートからあふれるほどの難民が乗っています。あんなボロ船やボートでは地中海を渡ってイタリアのシチリア島やその周辺の島々まで無事に行き着けるはずはありません。

では何故、そんな船やボートに、アフリカや中東から来た難民は、なけなしの大金を悪徳仲介業者に支払ってまで乗り込むのでしょうか。死ぬと分かっていて、大金を払う人などいるはずはありません。どうにも合点がいきません。

以下は、NHKが6月10日に放送した地中海を渡る難民に関する記事です。

 地中海渡る難民や移民 10万人超える(見出し)

中東やアフリカからヨーロッパを目指して地中海を渡る難民や移民が、ことしに入って10万人を超えたことが明らかになり、受け入れ態勢をいかに確保するかが緊急の課題になっています。

地中海では、今月7日までの2日間だけでおよそ6000人がイタリアの沿岸警備隊やヨーロッパ各国の海軍の船に救助されるなど、紛争や貧困から逃れるため、シリアやアフリカのエリトリア、それにサハラ砂漠以南の地域から地中海を渡る人の数が増えています。

UNHCR=国連難民高等弁務官事務所は9日、こうした難民や移民たちの数がことしに入ってすでに10万人を超えたことを明らかにし、このうち半数以上の5万4000人がイタリアに、4万8000人がギリシャに到着しているということです。

地中海ではことし4月に起きた船の転覆事故でおよそ800人が死亡してから、ヨーロッパ各国が救助活動を強化しています。しかし、連日のように到着する難民や移民たちをどのように受け入れるのかについては各国の利害が対立していて、受け入れ態勢をいかに確保するかが緊急の課題になっています。

ギリシャでも、急増する難民などの支援態勢が十分に整っておらず、国連ではギリシャ政府や市民団体などに対応を強化するよう呼びかけています。

   BBCもZDFも答えてくれない

記事は以上です。新聞社やTY局の記事は、1週間もするとそれぞれのホーページから削除されてしまうので、記事の全文を掲載しました。

この記事も、シチリア島やその周辺の島々までたどり着けるはずもないボロ船やボートにあふれるほどの難民が何故乗っているのかという疑問に答えてはくれません。この記事ばかりではありません。日本の新聞やTVのニュースでも、ヨーロッパのイギリス・BBC、 フランスのフランス2などでも同様です。ヨーロッパにとっては地中海を渡る大量の難民のは極めて深刻な問題ですから、日本のメディアとは扱い方が大きく違っています。しかし、先の疑問に答えてくれないということでは、日本のメディアと変わりはありません。

   答えは塩野七生さんの「SOS発信」

文芸春秋6月号にイタリア在住の作家、塩野七生さんのエッセイ「日本人へ・145 地中海が大変なことになっている」が載っています。ここにその一部を引用します。

「−難民を満載した漁船でもゴムボートでも、シチリアまでたどり着くことなど考えていない。いまだリビア領海内にいるというのに、スマホでSOSを発する。これを聴き流すことは許されないイタリアの海上保安庁や海軍が、自国の領海外であろうと救助に向かい、救助し、自国内に連れ帰るというわけだ。自国の領海内で起ころうものなら、絶対に救助する義務がある。−」(4月23日記)

地中海を渡る難民が何故、対岸のイタリアまでたどり着けるはずもないボロ船やボートにのっているという疑問には、新聞やTVのニュースではなく、イタリア在住の日本人作家のエッセイが答えてくれました。

想像するに、悪徳仲介業者も、当初はシチリア島まで渡るためにそれなりの船を調達し、難民もその船の具合を見て、これなら行けると判断して船に乗ったのでしょう。しかし、塩野さんの書いたように、SOSさえ発信すれば、イタリアの海上保安庁か海軍の船が救助に来てくれると判断すれば、話は別です。大きな頑丈な船などいりません。ゴムボートでも大丈夫ということになります。

しかしかし、もう一つの疑問が湧き出てきました。何故、メディアはこうした当たり前の素朴な疑問に答えようとしないのでしょうか。  そこには「人権」問題に触れることへの及び腰の姿勢が見て取れます。

ところで、量は質を変えるといいますが、量はメディアの言い方も変えるようです。単独、あるいは少数の集団が国境を越えれば密入国者、つまり犯罪者扱いになりますが、あまりに大量な場合は、難民、あるいはNHKの記事のように移民という表記になります。(2015年6月12日記)

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