成田好三のスポーツコラム・オフサイド

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 日本陸連の愚かさをわらう―日本選手権からの外国人選手排除―

 恐らく日本最古の競技団体である、日本陸連ほど愚かな競技団体はないでしょう。あるいは、これほど世間の物笑いのタネになることが好きな競技団体も、他にはないでしょう。

 アテネ五輪・女子マラソン選考では、曖昧な選考基準を設定したあげくに、結果としては落選した高橋尚子の選考をめぐって、社会的な大ニュースになるほどの混乱を引き起こしました。

 今年のヘルシンキ世界陸上・男子10000メートルの選考では、自ら設定した選定基準を自ら破るという大失態を演じ、世間の失笑を買ったばかりです。

 トラックの長距離レースやマラソンでのペースメーカーの存在についても、陸連は少なくとも10数年以上にわたって、新聞やTVなどメディアと結託して、その存在を否定し続けてきました。

 ペースメーカーの存在を公表した後も、世間をだまし続けた自らの行為について、釈明すらしませんでした。

 ペースメーカーについては、メディアも同罪、いや共犯者でした。男女の国内主要マラソンで陸連とともに主催者として、メディアは陸連の隠蔽工作に深くかかわってきました。陸連と同様に、メディアも公表にあたって釈明すらしませんでした。

 メディアの罪については、別のコラムで書くことにします。

 日本陸連は12月12日の理事会で、とんでもない決定をしました。今回は、このとんでもない決定について書くことにします。

 陸連はこの日の理事会で、来年、つまり2006年から日本選手権に限り、原則として外国人選手の出場を認めないことを決めました。

 以下は、この決定について書いた毎日新聞の記事のリード部分です。 

(見出し)「日本陸連:日本選手権に限り、原則外国人選手の出場認めず」

 日本陸上競技連盟は12日、東京都内で理事会を開き、来年から日本陸上選手権に限り、原則として外国人選手の出場を認めないことを決めた。男子長距離で外国人が急増し、日本人の出場機会が減ってきたことなどが理由。理事会では「国際化に反する」などの意見も出たため、強化対策に必要と判断した場合は受け入れることを付記する。日本で生まれ育った外国籍選手は、従来通り出場を認める。

 記事全文は下のアドレスからリンクしてお読みください。
 (http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20051213k0000m050017000c.html

 何と馬鹿げた決定でしょうか。スポーツは、今やプロ・アマを問わず、国内だけに限定しては隆盛を維持していくことはできません。どんな競技でも、その競技のトップ選手が「世界で闘える」「世界で勝てる」かどうかが、競技団体の命運を握っている時代です。

 だがしかしです。陸連は「世界で闘える」どころか、「日本国内にいる外国人選手と闘う」状況を、本来ならば、日本最高の競技会であるべき日本選手権で拒否したのです。なんという内向きな姿勢でしょうか。なんという島国根性でしょうか。

 日本陸上史どころか、日本スポーツ史に永遠に刻み込まれるべき、極めて愚かな決定というしかないでしょう。

 陸連の今回の決定に背景にある考えはこういうことでしょう。

 日本人選手と日本にいる外国人選手(ほとんどはケニアやエチオピアなどのアフリカ諸国の選手)との実力差は歴然としています。とてもまともに闘える相手ではない。ならば、彼らを日本選手権から排除してしまえばいい。

 日本選手権に選手を送り出す実業団の監督やコーチは、彼らが所属する会社から結果を求められています。五輪や世界陸上に出場して入賞、さらにはメダルを獲得できれば、会社への最高の結果を出したことになります。しかし、それは簡単なことではありません。

 ならば、国内の最高の大会である日本選手権で優勝できれば、結果を残せます。しかし、外国人選手が出場しては、長距離ではまず優勝の望みはかないません。

 それで2004年から外国人選手は、順位に関係ないオープン参加となりました。しかし、彼らはそれでは満足しませんでした。外国人選手から周回遅れになるほど遅れた優勝では、会社上層部の評価は大きくなりません。

 ならば最初から外国人選手を閉め出してしまえ。それが決定の唯一の理由です。

 しかし、外国人選手はなぜ日本にいるのでしょうか。彼らを助っ人として雇う高校、大学、実業団があるからです。高校ならば全国高校駅伝で優勝するために、大学ならば箱根駅伝で優勝するために、留学生をスカウトし、実業団ならば全国実業団駅伝で優勝するために留学生やアフリカ諸国から直接、選手をスカウトしています。

 彼らを駅伝で優勝するための助っ人として呼んでおいて、日本選手権には参加させないとうのでは、差別に他なりません。しかも、能力の高い彼らと本番で競わせないというのですから、日本選手の能力向上にもつながりません。

 先の記事に挙げられているマーティン・ムサシ(スズキ)やジュリアス・ギタヒ(日清食品)の走りは、彼らが日本人選手であるかどうかとは関係なく、見る人の心を動かします。日本人選手からみれば、はるか上の次元にいる2人ですが、世界チャンピオンではありません。世界にはもっと上のレベルの選手が数多くいます。

 外国人選手を日本選手権から排除しても、日本陸連には何の展望も、何の可能性も生まれてくることはないでしょう。

 繰り返しになりますが、日本国内にいる外国人選手と闘えない日本人選手が、世界で闘えるわけがありません。ましてや、世界で勝つことなどできるはずがありません。(2005年12月15日記)

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