成田好三のスポーツコラム・オフサイド

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 名手はすり足走法―バーニー・ウイリアムス考(3)

 バーニー・ウイリアムスは、天が二物も三物も与えた、多彩な才能あふれる人物です。

 10代では、陸上競技の国際大会で金メダル(短距離)を複数獲得しています。プロのジャズギタリストでもあり、既にCDも発売しているということです。現役引退後はミュージシャンとして活躍することになるでしょう。

 B・ウイリアムスは走好攻守どれをとっても超一級の名手です。守備面では、最近は膝の故障と肩の衰えから守備範囲は狭くなり、返球の強さと正確さも以前ほどではなくなりました。しかし、打球への予測や打球への反応の速さなど並外れた能力をもっています。それだからこそ、10年以上もヤンキースのセンターの定位置を確保してきた訳です。

 ギターのことはともかく、B・ウイリアムスは元陸上・短距離選手らしくない走法を身につけています。いわゆる、すり足、なんば走りに近い走法です。陸上選手のような、体を大きく捻ったり、かかとから着地してつま先で蹴り出したりする走法ではありません。

 その逆です。体はほとんど捻りません。かかとからではなくつま先から着地するように見えます。実際は、足裏全体で着地する感じでしょう。

 この走法は、野球の守備では多くの優位性があります。外野手は打球(飛球)を追いかける際、空中を高速で移動する打球を見ながら走ります。ですから、捻ったり、蹴り出したりする動作が大きければ、重心の上下動と左右への傾きが大きくなります。それだけ「目線」が大きくぶれることになり、飛球の正確性が損なわれます。

 逆にすり足で重心の上下動と左右への傾きが少なければ、それだけ「目線」のぶれが少なくなり、捕球の正確性が増すことになります。
 僚友である松井秀喜の走法も、B・ウイリアムスに似てきました。やはりかかとではなく、つま先から着地するように見えます。

 クレバーな松井のことです。意図的にこの走法を取り入れているのかもしれません。もう3年近くも名手の守備をすぐ側で見てきたのですから。

 松井はこのところ、B・ウイリアムスの指定席だった四番に座ることが多くなってきました。今年5月途中からはやはりB・ウイリアムスの指定席だったセンターを守っています。

 野球選手としてタイプは違いますが、松井はB・ウイリアムスの後継者になったと言えるのかもしれません。(2005年06月16日記)

 空中での一瞬の「反転」―バーニー・ウイリアムス考(2)

 「お前はバーニーの悪口ばかり書いている」と、バーニー・ウイリアムスの熱烈なファンからお叱りを受けそうなので、今回はこの天才打者のすごさについて書くことにします。

 2003年の膝の故障以降は、打率3割、本塁打25本程度は黙っていても打ってしまうという、本来の打撃の輝きを失ってしまったB・ウイリアムスですが、いまでも時折、驚くべき打撃を披露することがあります。

 昨年のレギュラーシーズン。ある打席でのことでした。左投手が相手でした。B・ウイリアムスは外角への投球を予想し、踏み込んで打とうとしていました。しかし、投球は予想に反して内角にくい込んで入ってきました。腹部に当たるほど内角にえぐり込んできました。

 この形では、投球の軌道とバットの軌道は1点でしか合いませんから、空振りするかやっとファウルチップするか、あるいは空振りした後投球が体に当たるという、打者にとって最悪の結果が想定される場面でした。

 既にバットを振る体勢に入っていたB・ウイリアムスはその瞬間、信じられないような体のさばき方をしました。体を浮かすようにして、いや本当に体を浮かして、一瞬のうちに体の軸を三塁方向に変えたのです。そのまま振り切ったバットから放たれた打球は、三塁線を強烈なライナーで抜けていきました。

 その瞬間、既に打撃体勢に入っているのですから、体を捻ったり、左足の踏み出す方向を変えたりする時間的余裕はありません。

 空中での「反転」によって、B・ウイリアムスは体の向きを一瞬にして変えたのでした。(2006年11月14日記)

 「粘り膝」を失った天才打者―バーニー・ウイリアムス考(1)

 MLB・ヤンキース(ニューヨーク)の強打者、バーニー・ウイリアムスは「粘り膝」をもっていました。過去形で書いたのは、イチローも憧れたこの天才打者も、2003年の膝の故障以来、彼独特の膝の強靱さと柔軟さが失われてしまったからです。

 2002年まで8年連続で3割をマークしていたB・ウイリアムスですが、膝の故障以来、3割を打つことができません。かつてはヤンキースの不動の四番打者でしたが、今シーズンは八、九番など下位を打つことが多くなりました。

 膝の故障以前のB・ウイリアムスの空振りは圧巻でした。投球の圧力をバットで受けるファールの場合はともかく、空振りした場合は、どんな強打者、好打者でも体勢が崩れます。イチローでもそうなります。大きく前につんのめったり、前後に大きく体の軸がぶれたりします。

 しかし、故障以前のB・ウイリアムスに限っては、空振りしても体の軸がまったくぶれませんでした。スイッチヒッターのB・ウイリアムスは、左右両打席とも大きめのスタンスで膝を大きく曲げて打席に立ちます。下半身だけ見るとクラウチングスタイルのようですが、そうではありません。上体は腰(骨盤)の上にそっと乗せるように構えます。

 この構えから、空振りしても、スタンスも膝の曲がり具合も、そして上体も崩れることはありませんでした。

 膝の故障以来、空振りしても体の体勢が崩れない、独特の打撃スタイルは見られなくなりました。あの打撃スタイルに、故障後のB・ウイリアムスの膝が耐えられなくなってしまったのでしょう。

 膝の強靱さと柔軟さを併せもつことの重要性を、膝の故障後のB・ウイリアムスの打撃を見ていて、改めて認識しました。(2006年11月14日記)

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