成田好三のスポーツコラム・オフサイド

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 ニューヨーク・ヤンキース生え抜きのスター選手で、強打者であるばかりでなく走攻守そろった名選手、バーニー・ウイリアムス(プエルトリコ出身)も36歳になりました。ヤンキースの黄金時代を外野守備の名手、不動の四番打者として支えてきたB・ウイリアムスも2003年の膝の故障以来、打撃、守備、走塁とも衰えが目立ち始めました。引退の時期が迫ってきたのかもしれません。イチローも憧れた名選手の体の扱い方について、一般のスポーツメディアとは別の視点から書いてみることにしました。


 ■「粘り膝」を失った天才打者

 MLB・ヤンキース(ニューヨーク)の強打者、B・ウイリアムスは「粘り膝」をもっていました。過去形で書いたのは、イチローも憧れたこの天才打者も、2003年の膝の故障以来、彼独特の膝の強靱さと柔軟さが失われてしまったからです。

 2002年まで8年連続で3割をマークしていたB・ウイリアムスですが、膝の故障以来、3割を打つことができません。かつてはヤンキースの不動の四番打者でしたが、今シーズンは八、九番など下位を打つことが多くなりました。

 膝の故障以前のB・ウイリアムスの空振りは圧巻でした。投球の圧力をバットで受けるファールの場合はともかく、空振りした場合は、どんな強打者、好打者でも体勢が崩れます。イチローでもそうなります。大きく前につんのめったり、前後に大きく体の軸がぶれたりします。

 しかし、故障以前のB・ウイリアムスに限っては、空振りしても体の軸がまったくぶれませんでした。スイッチヒッターのB・ウイリアムスは、左右両打席とも大きめのスタンスで膝を大きく曲げて打席に立ちます。下半身だけ見るとクラウチングスタイルのようですが、そうではありません。上体は腰(骨盤)の上にそっと乗せるように構えます。

 この構えから、空振りしても、スタンスも膝の曲がり具合も、そして上体も崩れることはありませんでした。

 膝の故障以来、空振りしても体の体勢が崩れない、独特の打撃スタイルは見られなくなりました。あの打撃スタイルに、故障後のB・ウイリアムスの膝が耐えられなくなってしまったのでしょう。

 膝の強靱さと柔軟さを併せもつことの重要性を、膝の故障後のB・ウイリアムスの打撃を見ていて、改めて認識しました。

 ■空中での一瞬の「反転」

 「お前はバーニーの悪口ばかり書いている」と、Bー・ウイリアムスの熱烈なファンからお叱りを受けそうなので、今回はこの天才打者のすごさについて書くことにします。

 2003年の膝の故障以降は、打率3割、本塁打25本程度は黙っていても打ってしまうという、本来の打撃の輝きを失ってしまったB・ウイリアムスですが、いまでも時折、驚くべき打撃を披露することがあります。

 昨年のレギュラーシーズン。ある打席でのことでした。左投手が相手でした。B・ウイリアムスは外角への投球を予想し、踏み込んで打とうとしていました。しかし、投球は予想に反して内角にくい込んで入ってきました。腹部に当たるほど内角にえぐり込んできました。

 この形では、投球の軌道とバットの軌道は1点でしか合いませんから、空振りするかやっとファウルチップするか、あるいは空振りした後投球が体に当たるという、打者にとって最悪の結果が想定される場面でした。

 既にバットを振る体勢に入っていたB・ウイリアムスはその瞬間、信じられないような体のさばき方をしました。体を浮かすようにして、いや本当に体を浮かして、一瞬のうちに体の軸を三塁方向に変えたのです。そのまま振り切ったバットから放たれた打球は、三塁線を強烈なライナーで抜けていきました。

 その瞬間、既に打撃体勢に入っているのですから、体を捻ったり、左足の踏み出す方向を変えたりする時間的余裕はありません。

 空中での「反転」によって、B・ウイリアムスは体の向きを一瞬にして変えたのでした。

 ■名手はすり足走法

 B・ウイリアムスは、天が二物も三物も与えた、多彩な才能あふれる人物です。

 10代では、陸上競技の国際大会で金メダル(短距離)を複数獲得しています。プロのジャズギタリストでもあり、既にCDも発売しているということです。現役引退後はミュージシャンとして活躍することになるでしょう。

 B・ウイリアムスは走好攻守どれをとっても超一級の名手です。守備面では、最近は膝の故障と肩の衰えから守備範囲は狭くなり、返球の強さと正確さも以前ほどではなくなりました。しかし、打球への予測や打球への反応の速さなど並外れた能力をもっています。それだからこそ、10年以上もヤンキースのセンターの定位置を確保してきた訳です。

 ギターのことはともかく、B・ウイリアムスは元陸上・短距離選手らしくない走法を身につけています。いわゆる、すり足、なんば走りに近い走法です。陸上選手のような、体を大きく捻ったり、かかとから着地してつま先で蹴り出したりする走法ではありません。

 その逆です。体はほとんど捻りません。かかとからではなくつま先から着地するように見えます。実際は、足裏全体で着地する感じでしょう。

 この走法は、野球の守備では多くの優位性があります。外野手は打球(飛球)を追いかける際、空中を高速で移動する打球を見ながら走ります。ですから、捻ったり、蹴り出したりする動作が大きければ、重心の上下動と左右への傾きが大きくなります。それだけ「目線」が大きくぶれることになり、飛球の正確性が損なわれます。

 逆にすり足で重心の上下動と左右への傾きが少なければ、それだけ「目線」のぶれが少なくなり、捕球の正確性が増すことになります。
 僚友である松井秀喜の走法も、B・ウイリアムスに似てきました。やはりかかとではなく、つま先から着地するように見えます。

 クレバーな松井のことです。意図的にこの走法を取り入れているのかもしれません。もう3年近くも名手の守備をすぐ側で見てきたのですから。

 松井はこのところ、B・ウイリアムスの指定席だった四番に座ることが多くなってきました。今年5月途中からはやはりB・ウイリアムスの指定席だったセンターを守っています。

 野球選手としてタイプは違いますが、松井はB・ウイリアムスの後継者になったと言えるのかもしれません。

 プロ野球は「人気商売」です。芸能界と同様の「娯楽産業」ですから、それは当然のことです。

 人気商売がその人気を保ち、さらに拡大するためには、2つのことが必要になります。1つは次々と新しく「スター」を生みだし続けることです。もう1つは業界全体のブランド力を維持しさらに高めていくことです。

 ■一世を風びした演歌業界の惨状とジャニーズ事務所の隆盛

 芸能界のことはよく分かりません。しかし、かつては一世を風びした歌謡曲・演歌業界は、新しくスターを生み出す力をなくし、時代から取り残されようとしています。「酒」「女」「涙」「義理人情」の世界にしがみついてきた結果です。

 いまでは氷川きよし人気でかろうじて業界を維持しているのが現状です。昔の言葉で言う「大御所」の森進一・昌子夫妻の離婚によって、ブランド力はさらに低下していくでしょう。

 同じ芸能界でも、ジャニーズ事務所の隆盛が長く続いています。1960年代のジャニーズから最近のSMAP、NHK大河ドラマで主役を演じる滝沢秀明まで次々と時代に合った、あるいは時代を少しだけ先取りしたスター(男の子)を生みだしてきた結果です。

 もう1つ、隆盛の理由があります。それは徹底したブランド力を維持し、高める戦略です。

 ジャニーズ事務所所属のスターたちのスキャンダルは、TVなど芸能メディアで報じられることはほとんどありません。TV局はスターに出演してもらえなければ、視聴率を稼げません。当然、多くのスターを抱えるジャニーズ事務所系のスキャンダル報道は自粛することになります。事務所側も、自らの影響力を行使してスキャンダル報道を抑え込むことができます。

 メディア側の自粛と事務所側の影響力は、TV局に限ったことではありません。雑誌や新聞など活字メディアでも同様です。

 ■国民的大スターを生み出す力をうしなった球界

 プロ野球界も昔はジャニーズ事務所と同様の、いやそれ以上のスターを生み出す力をもち、メディアへの強大な影響力を持っていました。しかし、今では演歌業界のような存在になってしまいました。

 かつては長嶋茂雄、王貞治という国民的大スターが存在していました。敵役も豊富で、村山実、江夏豊といった個性派スターが、国民的大スターと球場で「大立ち回り」を演じてくれました。

 ジャニーズ事務所と同様だというもう一つの理由は、メディアへの影響力です。長嶋、王に関するスキャンダル報道を見たり聞いたり読んだりした記憶はありません。メディアは知っていても書かなかった、いや、書けなかったのです。メディアも長嶋、王を頂点とするプロ野球界と盛衰をともにする「運命共同体」だったからです。

 プロ野球界の国民的大スターは松井秀喜、イチロー(日本にいたころそうだったのかは疑問がありますが)を最後に途絶えています。

 城島健司、松坂大輔、清原和博といったスターは存在しますが、幼稚園児から野球を知らないおばあさんまで、その名前も顔も覚えている国民的大スターは球界からいなくなりました。プロ野球界は、球界全体として大スターを育ようとする意志も、エネルギーもなくしてしまったようです。

 ■自らブランド力を自ら失墜させた再編騒動

 もうひとつ、ブランド力ですが、これは昨年の球界再編騒動で、球界自らの手で徹底的に失墜させてしまいました。近鉄のオリックスへの吸収合併問題から、1リーグ化の流れ、選手会によるスト、ライブドアと争った末の楽天の新規参入、ソフトバンクの球界参入――というめまぐるしく動いた中で、球界はそれまで隠してきた「膿(うみ)」をさらけ出しました。

 親会社の赤字補填に依存する前近代的で不透明な経営スタイル、ドラフトの名に値しないドラフト制度、ドラフトをめぐる裏金問題、球団入場者数の大幅なサバ読み――等々です。こうした球界に内在する問題を、メディアはとうの昔から知っていました。それでも、球界と運命共同体である道を選択したメディアこうした問題を書かなかった、いや書けなかったのです。しかし、球界自らがつくりだした再編騒動の中で、球界とメディアとの暗黙の「不文律」は崩壊することになりました。

 昨年の球界再編騒動後になって、球界は改革を叫んではいますが、オフシーズンに行った具体的な改革はたった2つだけでした。球場入場者数の「実数に近い数字」の発表と交流試合の実施です。それ以外の改革はすべて先送りにしました。球場入場者数の「実数に近い数字」にしても、球団により算定基準が違います。球界の統一ルールによって行うものではありません。この改革への評価も、何十年もだまされ続けてきたという、否定的に受け止めたファンが多かったのではないでしょうか。

 球場入場者数の大幅なサバ読みを続けてきた理由について、プロ野球中継の中でNHKの看板アナウンサーが「スポンサーに対する配慮があった」という趣旨の見解を開陳していました。とんでもない見解です。プロ野球を含むすべての娯楽産業の価値を計る最大、最良の基準は会場への入場者数です。会場にどれだけの数の観客を集められるか。それによってその娯楽産業の価値は判断されます。正確な入場者数の発表こそ、スポンサーへの最大、最良の配慮でなければならないはずです。

 抜本改革は出来なくともやれることは、他にも多くあったはずです。しかし球界は楽天には近鉄とオリックスの2軍選手と各球団から戦力外通告を受けた選手を押し付け、楽天が求める拡張(エクスパンション)ドラフトを拒否しました。楽天の連戦連敗は当然の結果です。今年は交流試合がありますから、あまりに弱すぎる楽天の存在は、他の11球団すべてに影響します。プロ野球が、東大が加盟する東京六大学リーグ化するということです。

 ■日本ハムの札幌移転、楽天の仙台進出にも無反応

 昨年は日本ハムが札幌に移転しました。今年は楽天が仙台に本拠地を構えました。しかし、球界はこうした新しい展開に対して何の対応も取りませんでした。

 今年のMLB開幕戦は、レッドソックス―ヤンキース戦1試合だけが他の試合に先行して行われました。これはMLBがこのカードを今年の目玉にすると位置付けたからでしょう。MLBはこのカードを切り札に、さらに世界進出の戦略を取るに違いありません。

 プロ野球はどうでしょうか。昨年の日本ハムの札幌開幕戦も、今年の楽天の仙台開幕戦も、普段通りに行われました。

 例えば、日本ハムや楽天の開幕戦だけ先行させたり、開幕試合の権利をもつ球団がその権利を日本ハムや楽天に譲ったりすることができなかったのでしょうか。

 しかし、残念ながら自ら失墜させたブランド力を再び向上させる戦略も、国民的大スターを生み出そうとする意図も、球界からはまったく感じられません。このままでは、古い時代にしがみついてきた演歌業界と同じく、プロ野球は衰退の道をたどることになるのではないでしょうか。(2005年5月7日記) 

 教育には、国家による国民に対する「宣伝」という機能がある。冷戦時代、東西両陣営は、互いに相手陣営を理解するのではなく、相手陣営を批判(非難)する教育を行っていた。その結果、教育を受ければ受けるほど、両陣営の国民は相手陣営の国民に対し、嫌悪感と悪感情を抱くようになる。教育はまた、残念ながら「洗脳」という機能ももっている。

 週末ごとに中国の各都市で頻発する反日デモ(暴動)のTV映像を見ていて、NHK・BSで4月に放送された海外ドキュメンタリー番組の一場面を思い出した。中国のある幼稚園に1年以上もカメラを据え付けて、園児を観察し続けた番組だ。

 この番組では、園児の日常生活を切り取る本筋とは別に、時折、子どもたちへのインタビューの場面を挿入していた。その中で、中国人の日本人に対する感情を浮かび上がらせたものがあった。

 インタビュアーの、「日本人は嫌いなの?」「何故きらいなの?」といった質問に、園児は「嫌い」「日本人は中国人を殴るから」「日本人は中国人に悪いことをしたから」などと答えていた。「日本人を見たことはある?」「日本人に殴られた場面を見たことはある?」などの質問への答えは、いずれも「ない」だった。

 NHKのホームページで確認したところ、このドキュメンタリー番組は、「中国 幼稚園の子どもたち」(2003年、中国制作)だった。広州国際ドキュメンタリーフェスティバルでグランプリを受賞した秀作だ。

 中国人の反日感情の背景には、中国共産党が体制維持のために行ってきた愛国教育がある。中国の愛国教育は、まだ公式な教育を受けていない幼稚園児にも刷り込まれている現実を、この番組は如実に示していた。まだ3、4歳の子どもたちは、家庭や隣近所との交流の中で、まるで空気のように反日感情を育んでいる。

 日本でもいま、文部科学省と自民党の文教族議員が中心となって、日本流の愛国教育を推し進めようとしている。互いに偏狭なナショナリズムを鼓舞する中国と日本の愛国教育がぶつかり合う。韓国でも、「竹島(独島)問題」を契機に反日感情が急激に高まってきている。

 現代文明の中心軸は、欧州から米国へ、そして東アジア(インドなど南アジアも)へ移行しようとしている。そうした潮流の中で、愛国教育によって日本、中国、韓国の国民が反目し合う。そうなれば、利益を得るのは米国と欧州だ。彼らは植民地主義時代から一貫して、その国の国民を「分断統治」することによって、アジアやアフリカの国々を支配してきた。

 最も成功したとされるイギリスのインド統治もそうだった。イラクの混乱も、根本原因はイギリスとフランスが多数派であるシーア派ではなく少数派であるスンニ派をイラクの支配階級に仕立て上げたことにある。

 21世紀文明の中心軸になるはずの東アジアを構成する主要3カ国がそれぞれの愛国教育によって互いに反目し合うことは、大きな危険性をはらんでいる。米国や欧州が、自らの手を汚さずに巨大な可能性をもつこの地域を分断統治できることにつながるからだ。(2004年4月19日記)

 ロジャー・クレメンス(アストロズ)、ランディー・ジョンソン(ヤンキース)、カート・シリング(レッドソックス)、ペドロ・マルティネス(メッツ)、マリアーノ・リベラ(ヤンキース)――。いずれもメジャーリーグを代表する大投手です。

 彼らはそれぞれ独特の投球フォームを身につけています。ですから、彼らが放つ「オーラ」とも相まって、TVカメラが遠景でとらえた映像でも、誰が投げているのかすぐ分かります。

 それぞれ自ら編み出した独自のフォームをもつ彼らですが、フォームに1つだけ共通点があります。彼らは全員、「粘り膝」をもつということです。

 右投げの投手であれば、右足(軸足)でプレートを踏んで、左足を前方に踏み出し、投球後は全身の体重と重心の移動に伴う加速度を左足一本で支えます。左投げの投手ならば、当然左右は逆になります。

 彼らはみな、投球後もしばらくの間、踏み出した足一本で体重と加速度を支える際に、膝を曲げたままにしています。膝の関節をまっすぐに伸ばすことはありません。踏み出した足の膝の関節を柔らかく使って全身の体重と加速度を支えています。

 彼らはみな、驚くほど強じんでかつしなやかな膝をもっています。彼らの膝が彼らの投球術を支えていると言っても過言ではないでしょう。

 P・マルティネスだけは、気合いが入りすぎて全力投球をする際は、膝の関節がまっすぐになって、右足(軸足)を大きく跳ね上げる、いわゆる「ペドロダンス」を踊ります。しかし、昨年のWシリーズのような重要な試合では、ペドロダンスはけして踊りません。膝の関節を柔らかく使って投球します。

 投球後に踏み出した足の膝の関節が伸びきってしまう投手でも、好投手は多くいます。しかし、膝の関節を柔らかく使うR・クレメンスらに比べると、投球が安定しないようです。膝がまっすぐに伸びてしまう投手は、試合中の失投や試合ごとの好不調の波が激しいようです。

 相撲では、うっちゃりを得意とする力士や、土俵際に追い詰められても、なかなか土俵を割らない力士のことを、「粘り腰」があるといいます。ならば、R・クレメンスら膝を柔らかく使う大投手は、「粘り膝」をもつと言ってもいいのではないでしょうか。

 垂直二足歩行を選択した人間にとっては、肩から腕、手を除いて、体を支える際に最も柔軟に大きく動く関節は膝ということになります。ですから、膝の使い方が上手か下手かということは、野球以外のスポーツでもキーポイントになります。日常生活でも同じことが言えるのではないでしょうか。(2005年4月15日記))
 

 イチローと松井秀喜がメジャーリーグに去った後、日本のプロ野球には、スーパースターと呼べる選手は1人しかいません。日本ハムファイターズの新庄剛志(SHINJO)だけです。

 新庄以上の実績、記録をもつスター選手は大勢います。日本ハムでも、小笠原道大の実績、記録は、新庄をはるかにしのいでいます。しかし、小笠原はスター選手であっても、スーパースターではありません。
 
 スーパースターを筆者は勝手にこう定義しています。かつての長嶋茂雄、王貞治がそうであったように、野球に興味のない、野球のルールなど何一つ知らない、そんな人たちを球場に足を運ばせ、TV中継のチャンネルを合わせさせることができる選手のことです。
 
 そんな選手は、いまのプロ野球では新庄以外には存在しません。札幌ドームを埋める観客のうち、どのくらいの人たちが、新庄目当てにやってくのか考えてみれば分かります。北海道に本拠地を移した日本ハムの経営は、「新庄人気」に支えられていると言っても、言い過ぎにはならないでしょう。
 
 新庄は昨シーズン、「マスクマン」のパフォーマンスで子どもたちの人気をさらいました。新庄のパフォーマンスは本業のプレー中にも発揮されます。

 ■ジャンピング・キャッチは「うけ狙い」?

 そのひとつが守備で見せる「ジャンピング・キャッチ」です。野球の専門家たちは、このパフォーマンスを「うけ狙い」と切って捨てていますが、はたしてそうでしょうか。

 「うけ狙い」なら、うけそうなプレーに限ってすればいいのすが、新庄はそうではありません。平凡なフライでも打球にぎりぎりのタイミングで飛びつくプレーでも、常にジャンピング・キャッチをしています。
 
 新庄はイチローと並ぶ外野守備の名手です。並外れた身体能力、走力、肩の強さ、返球のコントロールとも超一級です。さらに打球を予測する能力にも長けています。

 日本人外野手を代表する名手である新庄はなぜ、ジャンピング・キャッチをしているのでしょうか。

 新庄は高校(西日本短大付属)から阪神タイガースに入団しました。アマの指導者、プロのコーチともあんな捕球スタイルを教える人はいないはずです。ですから新庄の捕球スタイルは独創ということになるでしょう。

 では、新庄の独創である捕球スタイルにはどんな意味があるのでしょうか。メリットがなければやるはずはありません。新庄にとって、あの捕球スタイルこそ最良のものであるはずです。 

 日本のスポーツメディアは新庄の捕球スタイルにはまったく興味はないようです。そのことの意味、理由について触れた記事を読んだ記憶がありません。筆者は新庄本人に直接疑問をぶつけることができる立場ではありません。

 そこで、新庄のジャンピング・キャッチの意味と理由について、ある「仮説」を立ててみました。

 ■宇宙では誰でもスーパーマンになる

 「仮説」について語る前に、重力と自由落下について説明させてください。地球上の動物はすべて、重力の負荷を受けています。なかでも、直立2足歩行を選択した人間は、4つ足の他の動物より、より大きな重力の負荷を受けることになりました。動物の中で人間だけが腰痛という病気があるという説があります。腰痛も、直立2足歩行を選択した結果が原因となっているのでしょう。

 ところで、人間が重力の負荷から解放されるのはどんな状況下でしょうか。浮力が重力を打ち消す水中と、無重力の状況下です。地球を周回するスペースシャトルの船内では、誰でもスーパーマンに「変身」できます。シャトルの中では、エリート宇宙飛行士やエリート科学者が子どものようにはしゃぎ回って「スーパーマンごっこ」をすると聞きます。

 重力の負荷から逃れて、自らの体を自由に操ることができる感覚は、何ものにも替えがたい魅力であることは、重力から解放されることのない地球上の人間にも容易に理解できます。

 水中でも魚やアシカなどの海獣は、地上では考えられないほど自由に体を動かしています。そのことは、水族館に行ってみれば誰でも分かることです。

 ■「無重力=自由落下」の体験

 水中はさておいて、ここでは無重力について考えてみます。物理学によると、無重力とは自由落下と同じことです。宇宙飛行士は宇宙に出る前に、ジェット機で弾道飛行の訓練をします。高度1万メートル以上の空間から数十秒間の「自由落下=無重力」を体験します。

 宇宙以外で無重力に近い状態を体験できるのは、スカイダイバーでしょう。スカイダイバーは、飛行機から飛び降りた後、パラシュートが開くまでの間、「自由落下=無重力」の状態に身をおきます。ただ、宇宙空間と違うのは、大きな空気抵抗を受け続けるということです。しかし、スカイダイバーは空気抵抗を体の移動に利用しています。自由落下と空気抵抗を巧みに利用して、地上では考えられないほど自由に体を操っています。

 トランポリンや水泳の飛び込み競技を見ていて、気付いたことがあります。この2つの競技とも、競技者はジャンプしてから最高到達点に達するまでは演技はしません。体を伸ばしているだけです。演技するのは、最高到達点に達した後、落下(自由落下)している間です。

 ■重力の負荷から解放されるとき

 自由落下している状態は、重力の負荷から解放されているわけです。ですから、この状態こそが、最も体を自由に操作できることになります。

 古武術家の甲野善紀さんは、ジャンプせずに体を浮かせることができるといいます。ひざを一瞬抜くことによって、100分の何秒単位のほんのわずかな時間ですが、体を宙に浮かせることができるといいます。そしてこのわずかな時間に体を180度、あるいはそれ以上に回転させることができるといいます。NHK・TVの古武術講座で実際にこの技をやってみせていました。

 この技も、ほんの一瞬ですが、体を浮かせて自由落下の状態にすることで、体を自由に動かせることから可能になると言えるでしょう。

 江戸時代初期の剣豪としてあまりにも有名な宮本武蔵は、著書「五輪書」「兵法三十五箇条」の中で、繰り返し、体を自由に操る方法を様々な状況を設定して語っています。

 その中で「自由」という言葉を使っています。意味は現代語とほとんど同じです。ただし、読み方は違います。自由を「やわらか」と読ませています。当時は武蔵だけでなく、一般的にもそう読んでいたのでしょう。自由とは心や体が何物にもとらわれないやわらかい状態にあることです。

 ■新庄は自由落下の状態で捕球する

 最後に、新庄のジャンピング・キャッチに話を戻すことにします。筆者の「仮説」はこうです。新庄はジャンプして最高到達点に達した後で、ほんの10分の何秒間かの、の自由落下の状態で捕球しているということです。その状態こそ、人間の体が自由に、「やわらかく」動かせることを、新庄は発見したのです。それこそ新庄にとっての「最高の企業秘密」といえるのではないでしょうか。(2005年4月6日)

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