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Jリーグを無視する民放TVキー局の危うさ
東京の高層ビルの天辺にふんぞり返っている、民放TVキー局のお偉いさん方は、サッカーはまだマイナー競技だと考えているようです。あるいは、日本のプロサッカーには、絶大な人気を誇る日本代表のサッカーと、TVで全国放送するに値しない、人気薄のJリーグのサッカーがあると考えているようです。
お偉いさん方が本当にそう考えているならば、TVキー局の社員や関係者がお偉いさん方の見当違いの考え方を正すことができないならば、お偉いさん方と民放キー局は近い将来、手ひどいしっぺ返しをくらうことになるでしょう。
■河川敷のサッカー場に集まる小学生たち
子どもたちのサッカー人気はすっかり定着しました。筆者の住む地方都市では、夜間照明付きの軟式野球場は幾つもありますが、サッカー場は唯一の例外を除いて存在しません。
唯一の例外というのは、台風や大雨の度に水没する河川敷のサッカー場です。夜間照明どころか用具置き場もありません。トイレは移動式のものがひとつあるだけです。
河川敷だけにスペースは広く、5、6面のコートで一度に試合ができます。芝生は、いや芝生と雑草の割合は7対3ぐらいの割合で雑草の方が多いサッカー場です。
こんなひどい環境のサッカー場ですが、日曜日には毎週のように小学生の大会が開かれています。親が子どもを車に乗せてやって来るため、堤防の上や周囲の河川敷は車でいっぱいになります。
ここで開かれるサッカー大会は、参加する子どもたちやチームが増えているだけではありません。子どもたちのテクニックが年々、いや季節ごとに上手になってきています。
一方、夜間照明までついた豪華な軟式野球場には、河川敷のサッカー場のような、小学生の熱気はまるでありません。
ミニサッカーともいえるフットサルの人気も高まっています。こちらは20歳代の若者が中心です。筆者の住む地方都市にも、数カ所のフットサル場があります。そのほとんどが民間施設です。フットサル場の運営が民間の経営として成り立っているのです。
■中継はNHK任せ、でも夜の番組では大騒ぎ
12月3日、Jリーグ(J1)―J2も同じ日に最終節―- の最終節が行われました。年1シーズン制を初めて採用した今シーズンのJリーグは、終盤戦になってまれにみる大接戦になりました。前節終了時点で首位のセレッソ大阪からガンバ大阪、浦和レッズ、鹿島アントラーズ、ジェフ千葉まで5チームが勝ち点2以内につけており、この5チームすべてが最終節の結果次第では優勝の可能性があるという、スリリングな展開になりました。
結果は、自力優勝が可能なセレッソ大阪がロスタイム直前に同点とされ、そこまで手が届いていた優勝のチャンスを逃し、ガンバ大阪が川崎フロンターレに快勝し、Jリーグ初優勝を飾りました。
Jリーグの最終節はNHKが地上波とBSで全国生中継しました。地上波はセレッソ大阪を、BSはガンバ大阪を中心に、それぞれ他の優勝の可能性を残すチームの試合も盛り込んで放送しました。
筆者は地上波で見ていたのですが、試合の終盤ではセレッソ大阪の画面が、ガンバ大阪も小さな画面で映る二重画面になり、そのうち二重画面の大きさが逆転し、さらにはガンバ大阪の画面が大写しになるという展開は、試合の展開と同様になかなかスリリングでした。
民放キー局は何故この最終節に手を出さなかったのでしょうか。生中継はNHK任せにし、夜のスポーツ番組でだけ、ガンバ大阪の中心選手を呼んで大騒ぎをするという姿勢に疑問を感じました。
民放キー局は、サッカー日本代表には極めてご執心です。ドイツW杯予選の独占放送権を手にしたテレビ朝日は、日本代表の試合の度に高視聴率をたたき出しています。テレビ朝日は9月中間決算で増収増益となりましたが、これには日本代表の放送権を独占できた効果が表れています。
民放キー局はJ1リーグの試合はほとんど全国中継をしません。高視聴率を稼げるのは日本代表だけで、J1リーグの試合など全国中継する価値はないと考えているようです。
しかし、それでいいのでしょうか。日本代表は、日本代表チームとそのスタッフだけでは存在できません。河川敷でプレーする小学生はじめ、民間のフットサル場でプレーする若者たちなど、巨大な底辺に支えられて、三角形の頂点として存在するのです。
そして、頂点のすぐ下の層で日本代表に選手を「供出」し続けているのがJリーグです。巨大な底辺や頂点のすぐ下で支えるJリーグを無視する民放キー局の姿勢は、いつか歯車が大きく狂うことになるでしょう。
■プロ野球中継モデルの崩壊と同じ危うさ
プロ野球中継で民放キー局は長い間「我が世の春」を謳歌してきました。我が世の春はたったひとつのビジネスモデルに支えられていました。巨人戦だけ中継すれば視聴率は稼げる、他のカードなど中継する必要はないという単純なモデルでした。
しかし、長い間の成功体験をもたらしたこのビジネスモデルは、あっけなく崩壊ました。そして、民放キー局は新たなビジネスモデルを見つけることができずにもがいています。今に至っても来シーズンのプロ野球中継の日程を決められないという悲惨な状況にあります。
日本代表ばかりにスポットライトを当て、その他は無視するというやり方は、サッカー中継のビジネスモデルとしては極めて危ういものがあります。(2005年12月7日記)
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