成田好三のスポーツコラム・オフサイド

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05年のコラム

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 四国リーグ無視は球界改革の放棄

 11月18日に行われたプロ野球のドラフト会議(社会人・大学生対象)に、少しだけ期待していました。結果次第では、わずかながらも球界改革の道が開かれると考えたからです。期待はあっさりと裏切られました。球界は、プロ野球に選手を供給する新たなルートの開拓を、自ら断ち切ったからです。

 期待とは、四国アイランドリーグの選手が、1人でも2人でもいいからドラフトで選択されることでした。事前には候補に挙がった選手もいましたが、プロ野球の12球団は、まるで申し合わせたかのように、四国リーグの選手を選択しませんでした。

 四国リーグは四国4県に限定された地域リーグですが、試合を開催することによって運営するプロリーグです。選手はプレーすることによって、ほんのわずかですが給料をもらうプロ選手です。

 その目的は、これまでプロ野球選手を供給してきた社会人野球が衰退する中で、プロ野球志望の選手をそこで育て、プロ野球に供給することです。

 MLBでいえば、MLB球団の支配下にはない独立リーグです。四国リーグという独立リーグから人材を供給する道が開ければ、プロ野球は新たな人材供給ルートを確保できることになります。

 プロ野球はこれまで、人材供給ルートはアマチュアからしかありませんでした。高校生、大学生、社会人(クラブ)からです。しかし、それに加え独立リーグからのルートができれば、プロからプロへの道が開かれることになります。

 プロからプロへのルートは、ドラフトされる側の選手にとっても、球団にとってもメリットがあります。選手にとっては、アマチュアでのチャンスに加えてもうひとつプロ野球入りするチャンスが増えることになります。

 球団にとってはもっと大きなメリットがあります。ドラフトする対象の選手が増えれば、それだけ優秀な、しかも埋もれていた才能をみいだすチャンスが増えることになります。

 メリットはもっとあります。独立リーグは、球団が自前で(資金面も含め)保有しなければならない「二軍機能」をもつからです。本来、自前で行わなければならない選手育成を独立リーグが行ってくれるからです。

 四国リーグから今年、1人でも2人でもドラフトされれば、四国リーグとそこに所属する選手のモチベーションは高まったでしょう。来年、四国リーグ入りする選手も当然そうなります。

 さらに、四国リーグの成功によって、新たなプロ野球選手の育成モデルが確立できれば、他の地域でも独立リーグ開設の動きが出てくる可能性があるからです。

 だがしかしです。プロ野球が今年、四国リーグの選手を意図的に(?)無視したことによって、こうしたプロ野球改革の道を、自ら断ち切ったように思えます。

 四国リーグは来年、さらに厳しい条件下でドラフトに臨むことになります。プロ野球は今年、四国リーグに所属する全選手をドラフト対象としました。しかし、これはあくまで例外でしかありません。

 プロ野球は来年以降、四国リーグに所属する選手をアマチュア扱いにすることを既に決めています。高校から四国リーグ入りした選手は3年間、大学・社会人からリーグ入りした選手は2年間、ドラフト対象になるまで待たなければなりません。

 プロ野球は、今年のドラフトで四国リーグとそこに所属する選手を無視したことで、球界改革の大きなチャンスを自ら放棄したといえるでしょう。(2005年11月21日記)

 新聞やぶにらみ寸評―高橋尚子の挑戦、無神経なNHKの顔写真映像―

□尚子ベスト体重45キロ、米合宿から帰国

 シドニー五輪女子マラソン金メダルの高橋尚子(33=ファイテン)が、2年ぶりのフルマラソンで「未知への挑戦」をする。20日の東京国際女子(国立競技場発着)に向けて10日、合宿地の米コロラド州ボルダーから帰国した。ベスト体重の45キロまで絞り込み、日焼けした顔は引き締まっていた。「チームQでやってきた練習メニューが合っているのか、分からない未知の世界。すべて自分の責任。今からワクワク、ドキドキします」と笑った。今日11日からレース直前まで、練習拠点の千葉で調整する。
 5月に恩師の小出氏から独立後、6月に結成したチームQのメンバーとボルダーで走り込んできた。9月には2度ハーフマラソンに出場も、走り込みとスピード練習の不足で自分のレース感覚通りに体が動かず苦戦した。5年分の練習日誌も見直したが結局、練習パートナーの藤井氏らチームメンバーと練習法や体調管理を徹底的に話し合い、1カ月前から本調子を取り戻した。
 03年の東京国際以来のフルマラソン。前回は体重43キロの絞りすぎも影響して終盤に失速して2位に終わり、アテネ五輪代表の座を逃した。雪辱への思いは強いが、レース展開をあえて口にせず「2年前の自分自身に勝てるように」と笑顔で話した。(日刊スポーツ)

■ぎりぎりまで絞り込んだ体はレースに耐えられるか

【やぶにらみ寸評】最近のマラソンランナーはぎりぎりまで絞り込んだ体でレースに臨むようです。

 マラソンは既に耐久レースではなくなっています。高速レース化したマラソンで勝つためには、そうする必要があるのでしょう。しかし、ぎりぎりまで体を絞り込むことは、それだけリスクを背負い込むことにもなります。気象条件やレース条件がレース前の想定と違ってくると、それだけ対応が難しくなってきます。

 ぎりぎりまで絞り込んだ体は、F1マシーンのようなものです。F1マシーンはコースや気象条件、ドライバーの運転特性などに合わせてチューニングされます。しかし、ぎりぎりまでチューニングされているため、逆にレース条件が当初の設定と違ってくると、マシーンをコントロールすることがより難しくなります。

 高橋尚子が高地合宿先の米国・ボルダーから10日、帰ってきました。20日の東京国際女子マラソンに出場するためです。TVニュースや新聞に載った写真で見る限りでは、高橋は2年前と同様に、ぎりぎりまで体を絞り込んでいるようです。

 2年前、アテネ五輪選考会を兼ねた同じ大会で、高橋は前半から独走態勢に入りましたが、後半に失速し、39キロ地点でエチオピアのエルフィネッシュ・アレムに抜かれて2位に終わりました。タイムも平凡で、アテネ五輪出場を逃すことになりました。

 2年前は予測に反する高温の気象条件になりました。高橋のぎりぎりまで絞り込んだ体は、高温の中の高速レースに耐えられなかったようでした。

 1998年、猛暑のバンコクで高速道路を一人駆け抜けたアジア大会、2000年のシドニー五輪では、高橋はもっとふっくらした体つきだったように思います。

 今回の東京国際女子マラソンでは、高橋はどんな走りを見せるのでしょうか。五輪出場を逃した同じ大会に再起をかけるのですから、本気中の本気の走りをするでしょう。

記事では「ベスト体重の45キロまで絞り込み、日焼けした顔は引き締まっていた」と記していますが、高橋のベスト体重は本当に45キロなのでしょうか。

 ぎりぎりまで絞った高橋の体は、レースに耐えられるのか。そんな不安は杞憂に終わればいいのですが―。いずれにしても結果は20日午後にでることになります。


 ■(番外編)「みなさまのNHK」の無神経な顔写真映像

 【やぶにらみ寸評】「みなさまのNHK」がこれほどまでに無神経なTV局だとは思ってもみませんでした。犯罪被害者、特に殺害された被害者の権利や肖像権は、NHKの眼中にはないようです。

 東京・町田で高校の女子生徒が同じ高校に通う男子生徒に刃物でめった刺しにされて殺される事件が起きました。社会の一般常識では到底理解できない事件ですから、新聞やTVは一報から続報へと連日大々的に報道しています。

 事件の特異性や重要性から見て、メディアが大きく報道すること自体は当然のことでしょう。しかし、TVの報道には問題があります。被害者の顔写真や被害者が映ったビデオ映像の扱い方です。

 NHKは定時のニュースやニュース番組でこの事件をトップ級で扱っています。ニュースの中で、アナウンサーが登場する場面では必ず、背景に被害者の顔写真を加えたコラージュ風のタイトルカットが入ります。それも1回だけでなく映像が切り替わってアナウンサーが登場する度にこのカットが背景になります。

 さらに、現座や学校などの映像が流れる際にも、被害者の顔写真が「スポット」のように挿入されます。

 事件を報道するのにこれほど頻繁に被害者の顔写真を流す必要があるのでしょうか。被害者と2人暮らしだった母親や肉親の心情を考えているのでしょうか。

 被害者の顔写真やビデオ映像の扱いはNHKだけの問題ではありません。11月14日夜、テレビ朝日の報道ステーションの冒頭部分では、被害者の小中学校時代のビデオ映像が何種類も流れていました。他の人物には「ぼかし」を入れて、被害者の姿だけが鮮明に映るように処理されていました。

 いまやビデオカメラは一家に一台はある時代です。同級生などをあたれば、ビデオテープの入手はそう難しいことではないのでしょう。しかし、NHKと同様ですが、こうしたビデオオ映像を繰り返し流す理由が、報道番組としてどこにあるのでしょうか。

「9.11」の映像を思い出しました。ニューヨークにあったツインタワービルがハイジャックされた2機の旅客機に突入されて炎上、倒壊した映像です。あの映像は世界中で流されました。しかし、当事国であるアメリカでさえ、あの映像を繰り返し流すことによる悪影響を配慮して、映像の「たれ流し」をやめたあとも、日本のTV局はあの映像を延々と流し続けていました。

 【注】新聞寸評のコラムですが、今回は「番外編」としてTVニュースでの犯罪被害者の顔写真やビデオ映像の扱い方について触れてみました。TV局の扱い方があまりに無神経で被害者やその周囲にいる人たちの心情に配慮していないと感じたからです。(2005年11月15日記)

 新聞やぶにらみ寸評―FA宣言、大学駅伝、オープンウオータースイミング―

  □城島ら5人がFA宣言 9日から契約交渉解禁

 プロ野球のフリーエージェント(FA)宣言選手が8日、コミッショナーから公示され、FA有資格者69人のうち、米大リーグ挑戦の意思を表明した城島健司捕手(ソフトバンク)のほか、移籍を視野に入れている豊田清投手(西武)と野口茂樹投手(中日)ら計5選手がFA権を行使した。谷繁元信捕手(中日)矢野輝弘捕手(阪神)の2選手はFA権を行使して残留することが内定している。
 9日からは旧所属球団を含めて国内外すべてのチームと契約交渉が可能となる。メジャー挑戦か残留かで注目される城島は、米球界移籍に備えて家族同伴で渡米中。豊田と野口には巨人が獲得に乗り出す方針で、9日は中日と巨人が野口と交渉する予定。(共同通信)

 ■機能していないプロ野球のFA制度

 【やぶにらみ寸評】この記事で重要なのは 「69―5―3―2」という4つの数字です。

 FA有資格者は69人もいますが、FA権を行使したのは5人だけです。しかも5人のうち2人は現在所属している球団に残留します。ですから、実質的にFA権を行使して他球団に移籍する意思がある選手は城島、野口、豊田の3人だけということになります。
 
 ちなみに、MLBでは今年、183人がFA宣言したとAP通信は伝えています。MLBにはプロ野球の倍以上の30球団がありますが、それにしてもプロ野球ではFA宣言する選手が少なすぎます。

 プロ野球ではFA制度は機能していません。城島ら実力と人気を兼ね備えた一握りのスター選手しか、実際には行使できない制度なのです。

 現在のFA制度では、移籍元の球団が移籍先の球団に対して、人的補償を求めない場合は、年棒の1・5倍の補償金を支払わなければなりません。

 しかも現在のFA制度では最低でも9シーズンを経なければ資格を得られません。22、23歳で入団した選手は30歳を超えてしまいます。

 既に旬の時期を過ぎてしまったかもしれない高額年棒の選手を、移籍補償金まで支払ってまで獲得できる球団は、読売巨人軍や阪神タイガースなど一部の人気球団に限られることになります。

 逆に、親会社をもたない、つまり赤字補填先のない広島カープはFA宣言した選手とは交渉しません。広島の選手はFA宣言した後は、広島から出ていくしかないのです。

 FA制度は元々、ドラフト制度により球団の選択権のない選手に対して一定期間働いた実績を残せば、移籍の自由を認めるという趣旨で始まったものです。

 しかし、現実はまったくと言っていいほど、そうなってはいません。しかも欠陥だらけです。先の移籍補償金の他にも問題はたくさんあります。

 大学や社会人から自由獲得枠で入団した選手も、通常のドラフトで入団した高校生や大学、社会人選手も、FA権獲得で条件に差はありません。入団時に入団先の選択権をもっていた選手も、そうではない選手もFA権獲得で条件の違いはないのです。こんな不平等な話が他にあるでしょうか。

□日大が14年ぶりの優勝 全日本大学駅伝
 
 第37回全日本大学駅伝は6日、25校が参加して名古屋市の熱田神宮から伊勢市の伊勢神宮までの8区間106・8キロで行われ、日大が5時間18分34秒で14年ぶり2度目の優勝を果たした。
 日大は56秒差の6位でたすきを受けた2区のサイモンが、区間新記録の37分46秒の快走で一気にトップに立った。その後は一度も首位を譲らずゴールした。
 2位は中大で5時間20分48秒、昨年の覇者で箱根駅伝4連覇中の駒大は5時間21分24秒で3位に終わった。以下、山梨学院大、日体大、大東大までの上位6校が来年の出場シード権を獲得した。(共同通信)

 ■箱根駅伝の「前哨戦」と化した全日本大学駅伝

 【やぶにらみ寸評】全日本大学駅伝は、大学日本一を競う大会ですが、毎年関東勢が上位をほぼ独占しています。

 今年の大会も、10位に第一工業大(九州)が入った以外は、1位の日本大から9位の中央学院大まで関東勢が占めました。

 何故こうも関東勢が圧倒的に強いのか。理由は簡単です。関東勢しか出場できない箱根駅伝があるからです。

 箱根駅伝は、関東学生陸上競技連盟が主催するローカル大会ですが、大々的に事前キャンペーンを展開する読売新聞、大会を全国に生中継する日本テレビという、ふたつのメディアの力によって、全国大会をはるかにしのぐ怪物大会になりました。

 そのため陸上長距離を目指す高校生はほとんど例外なく関東の大学を目指すことになります。大学側も箱根駅伝の巨大なアピール、宣伝効果に着目し、高額な強化費を投入しています。箱根駅伝は、関東の大学にとっては最も効率的に大学をPRする場になっています。近年では大学陸上部を「駅伝部」と改名する大学まで現れてきました。

 全日本大学駅伝は、実質的には「箱根駅伝の前哨戦」として扱われています。

 怪物化した箱根駅伝の問題点については

東京一極集中を加速させる「怪物」スポーツイベント―箱根駅伝批判(1)
http://blogs.yahoo.co.jp/columnoffside/399697.html?p=2&pm=l
大学の経営戦略が過度の重圧に―箱根駅伝批判(2)
http://blogs.yahoo.co.jp/columnoffside/399656.html?p=2&pm=l
「箱根から世界へ」つながるのか―箱根駅伝批判(3)
http://blogs.yahoo.co.jp/columnoffside/399616.html?p=2&pm=l

に書いています。興味ある読者はお読みください。

□北京五輪は302種目 IOC理事会が決定 

 国際オリンピック委員会(IOC)理事会は27日、スイスのローザンヌで開かれ、08年北京夏季五輪では04年アテネ大会よりも1種目多い計302種目を行うことを決めた。ライフル射撃の男女各1種目が外れ、水泳のオープンウオータースイミング(遠泳)男女10キロ、陸上の女子3000メートル障害が加わった。卓球では男女ダブルスに代わり、男女団体が入る。ボクシング女子などの採用も検討したが、見送った。

また、00年シドニー大会陸上男子1600メートルリレーで金メダルを獲得した米国チームについて、ドーピング(禁止薬物使用)違反が認定されたジェローム・ヤングのメダルを剥奪(はくだつ)する一方、マイケル・ジョンソンらほかのメンバーの記録、メダルは認めることを決めた。ヤングは決勝には出場していない。 (朝日新聞)

 ■五輪種目・オープンウオータースイミング(遠泳)を無視できるのか

 【やぶにらみ寸評】上の記事では一言で済ませているものを取り上げてみます。競泳でオープンウオータースイミング(遠泳)が、2008年北京五輪の正式種目に決定しました。

 この記事では触れていませんが、欧米ではかなり人気があるそうで、既に世界水泳では正式種目に採用されています。男女とも5キロ、10キロ、25キロレースが行われています。以前、福岡で開かれた世界水泳でも行われましたが、日本人選手がエントリーしないため、メディアは無視したようです。

 陸上競技にもトラックアンドフィールドとロードレースがあり、駅伝やマラソンはトラックアンドフィールドの種目を超える人気をもっています。

 ですから、競泳でもプールでの種目と遠泳があるのが当たり前と言えます。

 ところで、日本水連は何故、世界水泳の遠泳をこれまで無視してきたのでしょうか。日本の水泳選手はほとんどすべて、スイミングクラブ出身です。小学生のころからクラブのプールで泳ぎ、そこから頭角を現してきたエリートたちです。彼らは、オ遠泳、つまり海や湖や川で泳いだ経験がないからなのでしょうか。

 しかし、五輪の正式種目となれば話は別です。日本人の多くは、いわば「五輪病患者」です。普段はスポーツに興味のない人たちでも、五輪となれば熱くなります。ルールさえ知らないマイナー競技でさえ、大きな声援が起きます。日本水練は今後、遠泳強化にどう取り組むのでしょうか。

 今年の世界水泳の800メートル、1500メートルで圧倒的な力で優勝したグラント・パケット(豪州)の泳ぎを見ていると、水泳の長距離は既に耐久レースではなくなっています。陸上長距離と同様のスピードレースに変わってきています。本当の耐久レースを見るのならば、競泳しかないとも言えるでしょう。

 観客席はどうするのか。TV中継はヘリコプターを使うのか、など競技外の興味もあります。メディアはこうした疑問にも答えるべきではないでしょうか。(2005年11月14日記)

 新聞の自殺行為(3)―オーナー会議の重要テーマを無視した産経と毎日―

 10月4日に札幌で開かれたプロ野球オーナー会議では、楽天のTBS株大量取得による楽天イーグルスと横浜ベイスターズの二重支配問題と、阪神電鉄株を大量取得した村上ファンドが求めている阪神タイガースの球団株上場問題のほか、もうひとつの二重支配問題が議題にのぼりました。

 フジテレビ・グループによる横浜球団とヤクルトスワローズ株の保有問題です。フジテレビはヤクルト球団株を20%、横浜球団株をニッポン放送を通して30%保有しています。オーナー会議では、根来泰周コミッショナーがフジテレビに是正を求める要望書を出すことになりました。

 フジテレビはこの春、ライブドアとのニッポン放送株争奪戦の末、ニッポン放送を完全子会社化しました。ですから、フジテレビとニッポン放送の経営は一体ということになります。

 翌5日付の新聞各紙は、オーナー会議を大きく取り扱いました。多くの新聞は楽天の二重支配問題、阪神球団株上場問題の他、フジテレビの二重支配問題を独立した記事として扱いました。

 朝日はスポーツ面の左肩、3段扱いで「ヤクルト、横浜の株保有 善処求め勧告へ 根来氏」の見出しを立てています。読売はスポーツ面の中央4段格で、見出しは「株保有、文書で要請」「フジ・ニッポン放送株問題」です。日経はスポーツ面トップ記事で扱い、見出しは「『二重支配』フジに飛び火」「『ヤクルト』『横浜』株を保有」「オーナー会議で問題再燃」でした。

 楽天の二重支配だけを問題視し、フジテレビの二重支配は無視するというのでは片手落ちになりますから、当然の扱いでしょう。

 しかし、例外がありました。産経と毎日です。産経は1面本記に中で、楽天の三木谷浩史氏が反論するという形で記事の中に盛り込みました。スポーツ面の記事でも中ごろに目立たない形で記載しています。1面、スポーツ面とも見出しには取っていません。

 毎日は産経以下の扱いでした。スポーツ面本記(リード)の中に、他の議題とともに触れただけです。もちろん、見出しにはしていません。

 新聞で、あるテーマについて見出しも立てず、独立した記事もない場合は、そのテーマを無視したのも同然です。筆者も1度目に産経と毎日の記事を読んだ際は、フジテレビの二重支配には触れていないと思いました。二度目に読んでやっと気付きました。そして、よくよく目立たぬように工夫して書いた記事だなと、妙なところで感心しました。

 新聞の記事を二度も三度も読む人は当事者か関係者以外にはまずいません。産経と毎日の読者の多くは、フジテレビの二重支配問題には気付かずに記事を読んだのではないでしょうか。産経の毎日にとってはそれが狙いだったのかもしれません。仮に「重要なテーマを無視した」というクレームがあっても、「記事には書いてある」と答えることができます。

 しかし、読者からすれば、ちらりと触れているだけでは問題に気付かないし、気付いたとしてもあの書き方では問題の重要性は理解できません。

 産経が、フジテレビの二重支配問題を無視したい気持ちは簡単に推察できます。産経はフジテレビ・グループの一員です。新聞は、TV局もそうですが都合の悪い身内の話はできるだけ隠そう、そできない場合はできるだけ小さく扱おうという、本能的な体質があるからです。産経の扱いは、メディアとしてはほめられたものではありませんが、その意図は理解できます。

 不思議なのは毎日の扱いです。産経とは違って身内の問題ではありません。オーナー会議は1面やスポーツ面で大きく扱っていますから、スペースがなくて取り上げられなかったという言い訳も成り立ちません。記事は著名入りでベテラン記者が書いたものでです。

 ベテラン記者やデスクが、オーナー会議で最初の議題になった、フジテレビの二重支配問題を無視していい程度の軽いテーマだと判断したとも考えられません。

 フジテレビの二重支配問題をあえて無視することで、焦点を楽天の二重支配問題だけに絞らせ、元子会社であるTBSに援護射撃をしようとしたのでしょうか。

 いずれにしても、毎日がフジテレビの二重支配問題を無視したいと考えた本当の理由は何だったのでしょうか。(2005年11月10日記)

 新聞の自殺行為(2)―2年続けて渡辺氏に紙面を提供した毎日―

 読売新聞グループ本社会長で読売巨人軍会長(前オーナー)の渡辺恒雄氏や読売新聞にとっては、プロ野球オーナー会議2日前に毎日新聞に掲載された渡辺氏のインタビュー記事には大きなメリットがあります。

 社会的に極めて関心が高く、かつ自らが深く関わり、経営面での損得も大きな問題で、メディアが自らのメディアではなく、他のメディアを使えることには大きなメリットがあります。

 楽天のTBS株大量取得による球団の二重支配問題、村上ファンドによる阪神電鉄株大量取得の結果起きた阪神タイガースの球団株上場問題は、その典型的な例といえるでしょう。

 渡辺氏や読売にとっては、自らの主張の信頼性を毎日の紙面という公平性を担保された「フィルター」を通すことで、より高めることができるからです。さらに、自らの主張を自らのメディアで伝えることによって起きる、「手前味噌」的なマイナスイメージやリスクを避けることもできます。

 渡辺氏の主張が世論や大方の野球ファンに受け入れられなくても、「あのインタビューは毎日が申し入れ、渡辺氏個人がその申し入れを受けただけだ」と釈明できます。意図に反する結果になっても、読売本体への悪影響を回避することができます。

 渡辺氏はオーナー会議には出席できない立場ですから、信頼性のある他のメディアを通して、事前に自らの主張を展開することで、オーナー会議に出席する他球団のオーナーに、事前に「圧力」をかけることができるメリットもあります。

 一方、毎日にとっては、渡辺氏のインタビューをこの時期に掲載することで得られるメリットがあったのでしょうか。一般的なニュース性はない訳ですから、どう考えてもメリットはありません。自らの公平性、公正性を毀損しただけといえます。

 読者の毎日への信頼を損なわせ、『毎日は読売の子会社になった」「毎日は読売のプロパガンダ用広報紙」になったと思わせただけです。

 毎日による渡辺氏への不自然なインタビュー記事の掲載は、今回が初めてではありません。昨年のプロ野球再編騒動の真っ最中にもありました。昨年9月3日付朝刊で毎日は、「本紙単独会見」と銘打っては破格の扱いで渡辺氏のインタビュー記事を掲載しました。1面トップで扱い、3面には解説、そして1ページ・ストリップ(広告なし)でインタビュー詳報を載せたのです。聞き手は東京本社編集局長で、記事によると、インタビューは編集局長が読売本社に出向いて行いました。

 その時点で渡辺氏は、読売巨人軍がアマ選手に裏金200万円を供与した問題の道義的責任を取るとしてオーナー職を辞任していましたから、読売本体のトップではあっても読売巨人軍のトップではありませんでした。

 この問題については、筆者のコラム「球界を開放系へ(6)新聞がおかしい」
http://blogs.yahoo.co.jp/columnoffside/365064.html?p=1&pm=l
に詳しく書いています。興味ある方はお読みください。

 昨年、今年と続いた不自然なインタビュー記事の掲載は、毎日と読売、あるいは毎日と渡辺氏の特殊な関係を強く連想させます。

 昨年の球界再編騒動のさなかに、裏金問題で辞任する以前、渡辺氏は文字通りの「球界のドン」でした。コミッショナーの根来氏は、渡辺氏が法曹界から連れてきた人物です。現材のパ・リーグ会長の小池唯夫氏は毎日の元社長ですが、この人選も渡辺氏の強い影響下で行われたものです。

 今回のインタビュー記事に話を戻します。前回のインタビューでは東京本社編集局長が聞き手であると記事に明記してありましたが、今回は聞き手の記載はありませんでした。渡辺氏ほどの大物をインタビューする際、現場の一記者が聞き手であるとは考えられません。しかも、毎日はストレート記事の大半に記者名を明記している新聞です。

 根来氏のインタビューにも不自然なことがあります。根来氏は第2社会面の記事の中で、2007年1月末の人気満了まで留任する考えを示しています。根来氏は昨年の選手会によるストの後、自らの提案が受け入れられなかったとして辞任を表明しましたが、その後は「当分の間」としてコミッショナー職を続けています。

 責任ある立場にある人間の進退問題は、単独インタビューではなく多くのメディアに伝えられる場、つまり公式の会議や記者会見で伝えるべきものです。そうした常識は、根来氏には理解できないのでしょうか。それとも、何か意図的に毎日だけに明らかにしたのでしょうか。

 毎日の2日付朝刊の紙面づくりは、毎日や読売、渡辺氏と根来氏の意図とは逆に、毎日と読売、渡辺氏と根来氏の特殊な関係をあぶりだす結果になったといえるでしょう。(2005年11月8日記)


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