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パのプレーオフを無視したTV局幹部は愚か者
テレビ東京を除くNHKと民放キー局の幹部は、スポーツとスポーツファンの特性を、まったく理解していないようです。
■スポーツは「ステージ」によって違うものになる
スポーツは、同じ競技であっても、その競技が行われる「ステージ」によって、まったくと言っていいほど違うものになります。
ステージが違うと、選手の顔つきまで変わってきます。普段は見られないプレーが随所に披露されます。チームも別物のように変わります。
スポーツファン心理も変わってきます。試合会場の雰囲気が違ってきます。選手やチーム、試合会場の雰囲気の変化は、現場だけでなくTV画面を通して見ている者にもはっきりと分かります。
イチローや松井秀喜の活躍するMLBでは、レギュラーシーズンとポストシーズンでは選手の表情もチームの有り様も、球場の雰囲気もまったく違ってしまいます。 昨シーズン86年ぶりに「世界一」になったレッドソックス(ボストン)を例に挙げてみます。
ポストシーズンに入るとレッドソックスは、選手の多くが髪を切って(あるいは剃って)試合に臨みました。宿敵・ヤンキース(ニューヨーク)との対戦では、ベンチにいる選手全員が、まるで100メートル競走直前の選手のように、ピストルの号砲を待ち構えているようでした。
彼らは号砲と同時にヤンキースナインに飛びかかろうとしているような顔つきでした。レッドソックスの本拠地であるフェンウェイパークの観客もまったく変わります。試合開始から1球ごとにまるで「最後の1球」というほど熱くなっていました。
ステージの違いによって、選手やチーム、そしてTV前も含めた観客まで変わってしまう典型的な例は五輪でしょう。五輪では、マイナー競技においてその傾向がよりはっきりとでてきます。
女子ソフトボールやアーチェリーを、普段はどれだけの人が関心をもって見ているでしょうか。しかし、そのステージが五輪であって、しかも日本チームや日本選手のメダル獲得の可能性があるとなると、選手もチームも、そして観客も大きく変わってきます。
五輪を挙げるまでもなく、高校野球が最も分かりやすい例でしょう。地方大会の予選と甲子園とでは選手もチームも観客もまったく違うものになります。
スポーツとは良くも悪くもそういうものです。いま試合をしているステージが何処なのかが重要になってきます。ステージはいわば「ブランド」でもあります。
ロッテが31年ぶりに優勝したプロ野球パ・リーグのプレーオフは、ロッテ―西武との第1ステージ、ロッテ―ソフトバンクとの第2ステージとも大熱戦になりました。レギュラーシーズンでは見られない熱い試合が続きました。
しかし、パ・リーグのプレーオフを、NHKとテレビ東京以外の民放キー局は無視しました。NHKは放送せず、テレビ東京以外の民放キー局は、テレビ朝日が第1ステージ第2試合を録画中継しただけで、ほとんど誰も見ていない地上波デジタルで「持ち回り中継」をしていました。
全国生中継はテレビ東京の第2ステージ第4、第5戦だけでした。他のTV局は、パ・リーグのプレーオフなど全国中継に値しないと考えたのでしょう。NHKは受信料不払いで予算がない。民法は番組更改期の特番を優先したのでしょう。
唯一生中継したテレビ東京にしても、「確信」ではなかったはずです。プロ野球中継では最後発局です。他のTV局がやらないのであれば、やってみようということだったのでしょう。
■大当たりしたテレビ東京のパ・プレーオフ生中継
しかし、業界の想定に反して、テレビ東京のプレーオフ中継は大当たりしました。第4戦の視聴率も高かったのですが、優勝が決まった第5戦は高視聴率をたたき出しました。ビデオリサーチによると、10月17日の第5戦の平均視聴率は、関東地区で17・0%、関西でも15・2%、北部九州では36・7%を記録しました。
今シーズンのプロ野球の視聴率、いや巨人戦の視聴率は年間平均10%程度と低迷しました。TV局は巨人戦の視聴率から判断してパ・リーグのプレーオフを無視したのでしょう。しかし、彼らの判断はテレビ東京の高視聴率によって間違いであることが明らかになりました。
スポーツはステージの違いによって変化する。スポーツに関しては最も基本的概念すら知らなかったTV局幹部は愚か者というしかない存在です。
プロ野球も巨人も抜本的な改革を怠っていますから、来シーズンも巨人戦の視聴率低迷は続くでしょう。巨人戦はもはやTV局の「ドル箱」番組ではなくなりました。プロ野球中継をどう扱うのか。あるいは扱いを減らすのか。TV局幹部は、テレビ東京が中継した第4戦、第5戦の高視聴率の意味をきちんと考えるべきです。(2005年10月21日記)
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