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「無党派層は宝の山だ。どの党にも属していない有権者から支持を得ない限り、小選挙区で当選する可能性は極めて低い。そこをよく考えないといけない」
総選挙で初当選した83人を対象にした自民党の新人議員研修会、いわゆる「小泉学校」の開校式(9月20日)で、首相、小泉純一郎が冒頭のあいさつで述べた言葉である。コメントは20日配信の共同通信の記事から引用した。
新聞は、取材対象者の言葉を少し乱暴に思えるほど要約してしまう。だから、小泉首相がこのとおり語ったかどうかは分からない。しかし、大意は変わらないだろう。
まさに現在の選挙制度(小選挙区比例代表並立制)の「真実」をついた言葉である。
かつては、竹下登元首相が「選挙学」の博士を自認していた。竹下の薫陶を受けた小沢一郎も、選挙のプロとみなされている。しかし、絶体絶命と与党野党の政治家に思わせる状況を自ら設定し、そこから日本の政治史に残るほどの大勝利を成し遂げた小泉に比べれば、竹下も並みのプロどまりである。
■小沢は大敗北の戦犯の一人
小沢にいたっては、民主党大敗北の戦犯の一人になった。総選挙告示前の段階で、郵政造反組の亀井静香や綿貫民輔らの新党との連携に動いた小沢は、やはり告示前に、亀井、綿貫らの支持を表明した、民主党最大の支持団体である連合会長、笹森清とともに、「民主党=既得権益擁護の守旧派政党」のイメージを決定的にした。
無党派層が存在しない選挙は、数十年前の田舎の村議選だけだった。当時の村議選では、候補者や選対幹部(そんな名称は使わなかった)は、得票数を一桁台まで読んでいた。しかも、多くの場合、その予想は的中した。誰が誰に投票するか(投票せざるをえないか)は誰もが知っていた。だから、裏切り者はすぐ判明したし、裏切り者への仕返しも厳しいものがあった。
■田舎の村長選でも無党派は存在した
しかし、当時の田舎の村でも村長選となると、無党派層は存在した。1つの選挙区で複数の当選者が出る村議選とは違って、1つの選挙区で1人の当選者しか出ない村長選では、無党派層や誰が当選するか見極めてから投票対象を決める日和見層が存在していたからである。
解散前に、岡田克也代表(当時)が「今度の選挙は大勝する気がする。単独過半数を取るチャンスは十分ある。自民党の命脈が尽きようとしている」(8月1日、日本記者クラブでの講演、1日配信の共同通信記事から)と語った民主党は何故、大敗北を喫したのか。
これまでの選挙の「常識」は、まず政党支持層を固めた上で無党派層を呼び込むというものだった。しかし、小泉はまったく逆の戦略を取った。無党派層の支持が得られれば、従来の政党支持層はその後についてくる、というものである。その戦略が、今回の総選挙ではずばり当たった。
「無党派層は宝の山だ。どの党にも属していない有権者から支持を得ない限り、小選挙区で当選する可能性は極めて低い。そこをよく考えないといけない」
民主党の敗因にも、小泉の言葉がそのままあてはまる。都市部の無党派層は民主党支持である。小泉自民党には流れない−−。これまでの選挙での「成功体験」から、民主党はそう信じていた。しかし、今回の総選挙では、都市部の無党派層の票は、流れないはずの自民党に流れた。その結果、東京・首都圏の選挙区で、民主党候補は一部の例外を除いて全滅した。
■「敵失」待ち戦略が裏目に
自民党に比べて組織力が弱く、しかも組織が労組依存に偏っている民主党が、都市部の無党派層に見放されたのでは、総選挙に勝ちようがない。
郵政関係労組への配慮から、国会で郵政法案への大安を出さず、自民党分裂という「敵失」を待った戦略が、完全に裏目にでた。
しかも、党の重鎮である小沢や、最大の支持母体である連合のリーダーである笹森が、小泉の戦略にやすやすと乗ってしまったのだから、岡田が街頭で必死に「政権選択」を叫んでも、その叫びは無党派層には届かなかった。
今回の大敗北は、民主党にとってはむしろ良かったのではないか。今回、政権を取れたとしても、労組依存体質が温存されたまま、外交安保政策での政策がばらばらのままでは、政権は内部崩壊するか、自民党の「からめ手」によって空中分解してしまうだろう。
■余分な肉はそぎ落として
民主党は今回の大敗北で、体力を維持するにはぎりぎりのスリムな「身体」になった。対する自民党は水ぶくれの「超肥満体」になった。
大相撲の世界では、新弟子は入門後、いったん余分な肉を落としてから、力士に必要な筋肉をつけていく。民主党も、官公労との関係の整理など労組依存体質や外交・安保政策の不統一などの余分な肉をそぎ落として、そこから再生をはかるべきである。(文中敬称略)
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