成田好三のスポーツコラム・オフサイド

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 新聞寸評―箱根駅伝を批判できないメディア―

 □箱根駅伝、亜大が初の総合優勝

第82回東京箱根間往復大学駅伝競走(関東学生陸上競技連盟主催、読売新聞社共催)は3日、神奈川県箱根町から東京・大手町の読売新聞社前までの復路5区間、109・9キロが行われ、29度目出場の亜大が通算11時間9分26秒で初の総合優勝を果たした。
 往路6位からの逆転は史上初。
 5連覇を目指した駒大は5位に終わった。最優秀選手(金栗杯)には前日の5区で区間賞を獲得した順大の今井正人(3年)が2年連続で選ばれた。
 往路1位の順大から2分51秒遅れの6位でスタートした亜大は、8区の益田稔(2年)で2位に浮上、9区の山下拓郎(3年)が駒大を逆転して首位を奪うと、10区の岡田直寛(3年)が逃げ切った。(読売新聞)

 □箱根駅伝、歴代3位の高視聴率

 日本テレビが2日と3日に中継した「第82回東京箱根間往復大学駅伝競走」(箱根駅伝)で、2日の往路の視聴率が27・6%(関東地区)、3日の復路が29・1%(同)だったことが4日、ビデオリサーチ社の調べで分かった。
 往路、復路ともそれぞれ歴代3位の高視聴率を記録した。
 瞬間最高視聴率は34・8%で、脱水症状を起こした順大の難波祐樹主将が何とかタスキをつないだ復路の戸塚中継所での午前11時15分と、総合優勝した亜大がゴールした直後の午後1時37分だった。(読売新聞)

 ■メディアは自らつくりだした怪物に縛り付けられている

 【寸評】今年も、箱根駅伝に批判的な新聞の論評に出合うことはありませんでした。共催の読売新聞はもちろん、ライバルの朝日新聞をはじめ各紙とも、『箱根礼賛』の記事で紙面が埋め尽くされていました。
 毎年正月2、3日に行われる箱根駅伝は、いまやスポーツの枠を超えた巨大な怪物イベントと化しています。

 沿道には延べ数百万人もの観客が集まります。日本テレビが全国生中継する番組は、驚異的な高視聴率をたたき出します。今年は記事にある通り、往路、復路とも歴代3位の視聴率を記録しました。

 箱根駅伝の視聴率がすごいところは、往路、復路とも各7時間もの中継時間の平均がこの数字だということです。サッカー日本代表の試合の視聴率がどんなに高いといっても、それは2時間程度の中継時間の平均です。箱根駅伝の視聴率は、まさに『お化け』としか表現できないものです。

 しかしです。本来は大学生による関東の1ローカル大会にすぎない箱根駅伝は、巨大な怪物イベントと化したことで、さまざまな歪みや倒立現象を生み出すことになりました。

 その辺の事情については、2004年に3回続きのコラムにまとめています。今も根本的な問題点については、いまも何の変化もありません。

 ○東京一極集中を加速させる「怪物」スポーツイベント―箱根駅伝批―判(1)―
 (http://blogs.yahoo.co.jp/columnoffside/399697.html?p=2&pm=l

 ○大学の経営戦略が過度の重圧に―箱根駅伝批判(2)―
  (http://blogs.yahoo.co.jp/columnoffside/399656.html?p=2&pm=l

「箱根から世界へ」つながるのか―箱根駅伝批判(3)―
http://blogs.yahoo.co.jp/columnoffside/399616.html?p=2&pm

 興味のある方は、上記の「オフサイド」バックナンバーでお読みください。

 今回はメディアの対応についてだけ書くことにします。メディアは、特に新聞、テレビといった主要メディアは、圧倒的な国民的人気を誇る対象については、批判的に取り上げることができない存在だといえます。

 田中角栄と主要メディアとの関係がそのいい例といえるでしょう。メディアは田中角栄の総理大臣就任に際して、『庶民宰相』『今太閤』と褒めそやしました。そして、メディアは自ら火をつけた角栄人気に対して、国民が熱狂的に支持すると、今度は角栄人気に逆らえなくなりました。田中角栄を批判できなくなったのです。

 後に田中角栄の「暗部」は、主要メディアではなく雑誌メディアによってあばかれることになりました。 

 高校野球、特に夏の甲子園大会もそうです。朝日新聞が日本高野連とともに主催する高校野球の全国大会は、メディアによってスポーツの枠を超えた国民的イベントと化しています。ライバルの読売新聞をはじめ他紙も朝日新聞以上に力を注いで紙面を埋めています。

 こうなると、メディアは高校野球や甲子園大会に関して、根本的な問題については批判記事を載せなくなります。自ら育てた国民的イベントによって、メディアは自らを縛り付ける状況に陥ってしまいます。

 箱根駅伝の歪みや倒立現象は、日本の陸上男子長距離界に多くの害毒を流しています。最もスピードを身につけるべき20歳前後の年代に20キロをイーブンペースで走る練習に明け暮れることが、世界への挑戦を阻む障害になっていることは、誰が見ても明らかなことです。

 そればかりではありません。日本一人気のある大会の出場資格が関東の大学に限定されるということから、大学の東京一極集中という現象を生み出しています。関東以外の大学は、高校生の首都圏への集中、圧倒的な箱根駅伝による宣伝効果を、指をくわえてながめているだけの存在になっています。

 これらの問題を主要メディアが取り上げることは、箱根駅伝人気が衰退するまで、けしてないでしょう。(2005年1月10日記)

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