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ドイツW杯寸評(1)−サビオラ「再発見」
自分が発見した(と思っている)選手が、その後に大舞台で活躍する姿を見ることは、スポーツ観戦の醍醐味のひとつです。
アルゼンチン代表のFW、サビオラは、筆者が発見したと勝手に思っている選手です。サビオラは、筆者が発見する以前から十二分に有名な選手でした。2001年のワールドユース大会ではMVPと得点王になっています。
しかしです。たまたまつけたTVに映っていた、何ひとつ予備知識のない選手から目が離せなくなりました。それがサビオラでした。NHK・BSでスペインリーグのバルセロナの試合を見ていたときのことでした。
何気なくTVを見ていると、何とも不思議なことに気付きました。その時は、こんな風に感じたと記憶しています。
「何で子どもが出ているんだ。この試合はスペインリーグの、バルセロナの試合だぞ。しかも、この子どもはバルセロナのレギュラーFWをやっている」
バルセロナに入団したシーズンでしたから、まだ19歳か20歳くらいだったでしょう。サビオラは実際の年齢以上に若く、いや幼く見えました。背は低く、体の横幅もまだない、童顔の少年は、大男ぞろいのスペインリーグでは小学校の高学年か中学生くらいにしか見えませんでした。
そんな子どもっぽい少年が、世界最高峰のリーグの最有力球団のひとつでFWのレギュラーを張っている。サビオラはこの試合で、ものすごいとしか言いようのない素早い動きでゴールを挙げたと記憶しています。
ドイツW杯で最大の注目選手は、誰が見たってブラジル代表のMF、ロナウジーニョでしょう。メキシコW杯は、「神の手」「5人抜き」のマラドーナのためのW杯でした。ならば、ドイツW杯は、ロナウジーニョのためのW杯になるのでしょうか。
サビオラとロナウジーニョには浅からぬ因縁があります。ロナウジーニョがバルセロナに移籍したため、バルセロナを追われたのがサビオラだったからです。追われたと書いたのは、筆者の思い入れのためで、実際はにレンタル移籍になりました。
ロナウジーニョがバルセロナで、その奔放な才能を十二分に開花させたことは、サッカー好きならば誰でも知っていることです。
ドイツW杯でサビオラは素晴らしいパフォーマンスを見せています。筆者にとっては、サビオラ「再発見」です。
1次リーグの第1試合、対コートジボアール戦では2点目となるゴールを挙げています。しかし、サビオラが最も輝いていたのは、ノーゴールに終わった第2試合、対セルビア・モンテネグロ戦でした。
6−0でアルゼンチンが大勝したこの試合では、筆者がこれまで見てきた中でも、最も美しいゴールのひとつであると確信するゴールが生まれました。
ゴールそのものも美しかったのですが、圧巻はゴールに至るパス回しでした。アルゼンチンは、自陣から20本を超えるパスをつないで、クレスポのヒールから最後にはカンビアッソがゴール左端に打ち込みました。この美しいゴールにも、サビオラは左サイドで決定的な仕事をしていました。
そして何より、筆者が素晴らしいと感じたのは、サビオラの前線でのディフェンスでした。あんなに素早く、しかも美しく前線でディフェンスできるFWは他にいるでしょうか。
ドイツW杯はサビオラのためのW杯にはならないでしょう。ロナウジーニョのための、あるいはポルトガルのロナウドのための杯になるかもしれません。しかし、幼さがすっかり消え精悍な顔つきと体つきになったサビオラは、ドイツW杯での最も美しいバイプレーヤーになると、対セルビア・モンテネグロ戦を見て確信しました。(2006年6月18日記)
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